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2009年8月18日 (火)

【補助線】プロジェクトの数字は生きているか?

◆生きた数字と形骸化した数字

あるビジネス書を読んでいたら、「生きた数字」という表現が出てきて、はっとした。

内閣府が17日に2009年4―6月期国民所得統計を発表した実質国内総生産(GDP)は前期比プラス0.9%、年率換算プラス3.7%である。この数字を見て、景気は回復したんだと思う人は少ないのではないかと思う。

なぜだろうか?おそらく、リーマンショックからこの1年、毎日のように景気対策、景気対策と繰り返し報道され、4回も予算を組んでいる。

国の補正予算というのは、企業でいえばリストラと同じ位置づけである。普通、リストラというのは一度やって、短期間に二度目のリストラをやるときには経営指標がいくら上向いていても、その企業は危ないと思われても仕方ない。

そんなことを連想させる景気対策があり、いくら、GDPが上がっても、その数字を額面通りに受け取れない。形骸化とまではいわないが、生きている数字だとは思えない。この数字を生かすためには、この数字の背後にある情報が必要である。

◆プロジェクトの数字は生きているか?

実ははっと思ったのは、景気のことではない。プロジェクトで使っている数字は、形骸化した数字ではないかと思ったのだ。

プロジェクトマネジメントでプロジェクトの状態を定量的に管理することがだいぶ普及してきたが、果たしてその数字は生きた数字なのだろうかということ。経営では数字を読む(解釈する)ことが重要だ。読んで、意味に対して対応するから定量管理する意味がある。

例えば、スケジュール遅れが10%以上になったら何かしよう。これはほとんど意味がない。そこで、この数字の解釈を作るために、コストを併せて見る。アーンドバリューであるが、スケジュールやコストの単独の数字に較べると、ずいぶん、解釈の入った数字になる。たとえば、スケジュールに10%の遅れがあっても

スケジュール10%遅れ、コスト10%未達
スケジュール10%遅れ、コスト達成

はまったくプロジェクトの状況が異なり、対処も異なるが、この程度の解釈はできるようになる。ただ、これが「生きた数字」と言われると多少、違和感がなくもない。

◆生きた数字を扱うのがマネジメント

10%がメンバーのやる気がなくて遅れているのと、顧客の対応が遅れて遅れているのでは話が全然違うが、そこまでは見えてこない。生きた数字というのは、この辺りの情報がすべてくっついた数字だろう。

数字が生きているかどうかを議論するときに、常に問題になるのは見積もりである。知り合いのマネジャーで、FPで部下が見積もってきた数字を、最後は自分の感覚で触るという人がいる。

このマネジャーの行動の是非は、ともかく、生きた数字でプロジェクトを動かしていくのがマネジメントであり、形骸化した数字で動かしていくのが管理ということは言えそうだ。

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コメント

はじめまして、湯布院です。
「数字」をどうとらえるか?「景気」をどう定義するか?
非常に曖昧で難しいのですが、数字は単純化言語の極みであり、
「景気」はそれを扱う人の置かれている社会的文脈の中でのみ
意味を持つと考えます。
貨幣流通量によって景気を補足しても、個人のもつ「景気」のイメージ
との距離感が生じるのは、社会には様々なコンテクストがあって、
同じ1円でも、1億円でも、人とTPOによって心理的な価値はバラバラで、
せいぜい(計量経済学的な意味での)物理量でしかないのでは。
むしろ、GDPのような多目的貨幣で補足するのではなく、特定用途
別貨幣(プリペイドカード、各種贈答品、寄付金、ESCカードなどなど
・・・)をきちんと集計すれば、もっと日々の暮らしの場面に則した、
実感の伴う「景気」が見えてくるのでは?
もっとも、景気回復問題解決(実は向上問題?)プロジェクトの目標値
に科学的根拠があるんでしょうか?
どちらかと言うと、どんなプログラムやプロジェクトでも、個人個人が
内観によって、納得して立てた実現可能な目標値が存在しないような
ことが問題のように思いますが、いかがでしょうか?

湯布院さん、コメントありがとうございます。
おおむね、同感です。納得を「作り上げる」のがマネジメントだと思います。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。