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2008年10月13日 (月)

【補助線】問題意識と目標意識

問題解決ブームである。本もたくさん売れているし、マネジャーも部下の問題解決力に強い関心を持つようになってきた。

あるSI企業の部長からこんな相談を受けた。2年くらい前に問題解決の研修をやり、問題解決活動(改善活動)を定着化させるためにアクションラーニングのプログラムを実施したそうだ。研修も、そのあとの定着化の活動も盛り上がっているそうだ。ただ、2年たってみると、思ったような効果がでてこない。数こそ多いのだが、その部長がかゆいと思っているところになかなか手が届いてこないそうだ。どうしたものだろうか?

問題解決法で難しいのは、手法の使い方ではなく、問題意識を持つことではないかと思う。問題発見のスキルを持っていても、問題解決のスキルを持っていても、問題意識が低ければ何の変化も起こらない。

出典は覚えていないのが、エニアグラムで有名な聖心女子大学の鈴木秀子先生が「問題解決の責任は問題に気づいた人にある」といっていたが、問題解決とほかの仕事の違いは、担当を決められる性格の仕事ではないことだ。かといって、リーダーがすべての問題に目配り、気配りをして対応できるという問題でもない。鈴木先生の言われるように気づいた人がやらなくてはならないのだ。

そこで問題になるのは、見つけれるどうかである。問題発見法というのもいろいろな手法があるが、どんな手法を使おうと、見つけることができるかどうかは、問題意識にかかっている。事故、不良、苦情があれば、問題を見つけるまでもなく、問題は見つかる。ところが問題が顕在化する前に問題を見つけるためには、高い問題意識が必要である。

人は、同じ状況におかれても、問題だと思うかは個人差がある。たとえば、10日間の仕事をしていて、4日目を終えたところで上司から「明日、1日、今年度の事業計画の修正検討をするので付き合ってほしい」といわれたとしよう。これを問題と捉える人と捉えない人がいる。

というと、残りの5日間で6日分の仕事ができる見通し(自信)があるかどうかの違いだと思う人が多いと思うが、そうとばかりはいえない。この段階では気にしないという人がいる。

なぜだろうか?

端的にいえば、10日という目標に対するコミットメントの問題である。当然だが、コミットメントが強い人は、問題意識が高くなる。ここで興味深いのは、これが8日目だとすれば、5日目より多くの人が問題意識を持つだろう。学生症候群という現象があるが、コミットメントは一定ではなく、締め切りまでの時間が短くなれば強くなる。こういう心理も働いているのかもしれない。

問題意識を高めるというのは、容易なことではない。よくトップが、「問題意識を持とう」という訓示をするが、「はい、わかりました」といって変わるような類のものではない。

したがって、変えるのは非常に難しいのだが、まずは、上にのべたように目標に対する強いコミットメント、言い換えると目標意識のようなものをもてるようにすることが先決であろう。目標に対するコミットメントは上に述べたように、時間的な要素があるので、計画により、できるだけ目標を小刻みに与えて、常にコミットメントを高い状態に保つことが必要である。

その上で、以下のような3つの行動習慣をつけるとよい。

・疑う習慣
 現状把握に問題はないかと疑う習慣
・探求する習慣
 疑いを払拭するためにさらに問題を追及しようとする習慣
・認識を更新する習慣
 問題に対する認識を継続的に更新する習慣

これは、トヨタなどの継続的改善が定着している企業では必ずといってよいくらい、定着している習慣である。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。