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2008年1月22日 (火)

【補助線】年金問題に学ぶリカバリーマネジメント

◆なりすましを防ぐ?!

消えた年金問題で、年金特別便なる通知で不明者の確認をしようという取り組みが始まった。始まるなり、窓口で本人確認のヒントを与えるような対応を一切するなというマニュアルを作ったとかで、顰蹙を買った。なりすましを防ぐというのがその理由だそうだ。そして、それがマスコミに取り上げられると、1週間もしないうちに、方針を変更し、

「持ち主とみられる人が相談者のみ」で「相談者の他の年金記録の加入期間との重複がほとんどない」場合は、〈1〉事業所の所在地〈2〉事業所の業種内容〈3〉事業所での加入期間――の3情報を伝えることを許可する
(読売新聞より)

と変更したとのことだ。現時点で僕のところには来ていないので、よくわからないのだが、一連の対応に違和感を感じている人は少なくないのではないだろうか?

そもそも、「突合」というのは役所用語なので、どんなアルゴリズムでやっているのかよくわからないのだが、普通のマッチングアルゴリズムで照合をして、特別便を持って窓口に来た人がなりすましをする確率がどのくらいあるのだろうか?

◆年金リカバリーの3つの特徴

この点も含めて、一連の対応には、3つの特徴がある。

(1)責任回避のために対応策を狭める
(2)目先の問題に対応するための朝令暮改
(3)自身の利益を最優先する

まあ、役所の論理だといえば、それまでだが、これはプロジェクトがトラブルに陥ったときに傷口を広げる方法を示唆している。

◆責任回避のために対応策を狭める

まず、この3つの行動の根底にあるのは、(1)の自らは責任がないというスタンスである。このスタンスがある限り、効率のよい問題解決はできない。逆にいえば、適切な問題解決をするためには問題があればあることを認めることがスタートである。

年金問題でいえば、自らの責任であると認めれば、その瞬間に無条件に申請に応じるという選択肢が出てくる。そこで初めて本格的調査をし、その選択肢も含めて、オプションを決定することができる。認めない限り、仮に今の方法が無条件に応じるという方法の倍のコストがかかってもやることになる。もちろん、モデルは作って無条件に応じるという選択肢も検討はしていると思われるが、責任はないということだけは決まっている以上、結論ありきのモデルになりがちだろう。

プロジェクトのトラブルでも同じだが、このように責任論を考えて、リカバリーの選択肢を狭めてしまうことがある。気をつけたいところだ。

◆朝令暮改

次に、朝令暮改。年金においては、これだけむちゃくちゃなことをしておきながら、いまさら、なぜ、世間の目を気にするのかという気もするが、そんなものではないのだろう。これ以上、非難されるのは飛んでもないという思いも強いのだと思う。

プロジェクトでトラブルを起こしたときに、特にプロジェクトマネジャーは同じような心境に陥ることが多い。失敗してしまった。これ以上、失敗の上塗りはできないので、とりあえず、ステークホルダが言い出せば何も戦略を持たずに、方針を変える。

大きなトラブルには必ず、この構図がある。なぜか?ステークホルダが一枚岩ではないからだ。そもそも、トラブル時の判断は非常に難しい判断だ。ゆえに、A部長が白といえば白に見えてくるし、そこにB部長がやってきて黒だといえば黒に見える。そんなものだ。これで迷走をする。

最後に責任を押し付けられるのはどうせプロマネなのだ。A部長の言う通りにやって失敗しても、結局、「プロマネ、おまえは何を考えているんだ」ということになる。開き直って自分の方針を貫くべきだ。

◆顧客の利益を最優先する

年金で最も目につくのは(3)だろう。年金特別便なるもの自体、訳がわからない。なぜ、特別便の代わりに、各地域の事務所から訪問をしないのだと思う。人もいないし、予算の制約もあってできないという。この問題よりプライオリティの高い予算など、人の生死にかかわる問題しかない。それこそ、C型肝炎とか、その類だ。

この期に及んでも、まずは自分の利益を確保し、そのあと、できる範囲で対応するのだ。きっと、このやり方は傷を深くする。

プロジェクトのトラブルでも同じような状況をよく見る。たとえば、SIのプロジェクトであればトラブルのときに真っ先に考えるべきなのは、顧客の利益の確保である。しかし、まず、そんなことはしない。自分たちの利益(赤字になるのなら赤字幅)をして、その上で何ができるかと考える。これでは墓穴を掘っているみたいなものだ。

年金もそうだ。予算がほしければ、国民に不安感を与えず、払うべきものを払い、それによって産業が活性化し、税金が増え、自らの活動の予算が増えるというのが道というものだろう。

自らの利益は、顧客の利益から生まれるものだという商売の原則を思い出す必要がある。

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(1)プロジェクトの状況に関する情報収集を行う
(2)プロジェクトの状態を評価し、リカバリーの必要性を検討する
(3)リカバリーシナリオを作る
(4)リカバリーを実施するかどうかの判断をする
(5)ステークホルダの意見を調整し、リカバリーへの協力を取り付ける
(6)リカバリーマネジャーを決定し、リカバリーチームを結成する
(7)プロジェクトリカバリープランを作成する
(8)リカバリープランによりプロジェクトをコントロールする
(9)プロジェクトの状態を安定化させる
(10)レッスンズラーンドを行い、再発防止に努める
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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。