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2007年11月13日 (火)

【補助線】リスクマインド

◆リスクマインド

リスクマネジメントの環境整備が進んでいる。たとえば、IT系だと日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)が標準的なリスクマネジメントマニュアルの頒布をはじめているし、企業独自でリスクチェックリストを準備している企業も増えている。PMOのメインの役割がリスクのチェックだという企業も少なくない。

さて、そんな中で考えておきたいことがある。それは、リスクマネジメントというのは統制では実現できにくということだ。統制というのは確定的なことがらに対して威力を発揮するものである。

◆リスクマインドがあって初めてリスクマネジメントが活きる

一例としてこんなことを考えてみよう

(1)スケジュールが遅れそうであれば、できるだけ早く申し出てくれ
(2)スケジュール遅れが、各アクティビティに対してベースラインの10%を超えたら、その日のうちに報告してくれ

いずれも、プロジェクトマネジャーがメンバーに対して出す指示としてはありそうな話だ。ところが、(2)は実効的であり、統制しているといえるのに対して、(1)はほとんど実効力がなく、統制しているとは言い難い。聞き流して終わりだろう。リスクマネジメントというのは本来は(1)のようなことをやりたいのだ。

もし、メンバーがこのスケジュールが遅れたら、仲間に迷惑をかけるとか、顧客に迷惑をかけるといった「危機感」を持っていたとしたらどうだろうか?まずいことが起こったらちょっとでも早く相談しようと考えるだろう(もっともプロジェクトマネジャーの対応の仕方にもよるが)。

これがリスクマインドである。メンバーやステークホルダがリスクマインドを持っていなければ、リスクマネジメントは機能しない。

◆リスクマインドの診断

さて、では、あなたのプロジェクトリスクマインドの診断をしてみよう。

プロジェクトマネジャーの方は今、あなたがプロジェクトマネジメントを担当しているプロジェクトを思い浮かべて欲しい。PMOの方は、あなたの組織の代表的なプロジェクトを思い浮かべてみて欲しい。

そして、「あなたのプロジェクトにどのくらい当てはまるか?」について、以下の点数をつけていただきたい。

まったく当てはまらない 1点
しばしばあてはまる 2点
かなりあてはまる 3点

(1)計画を無視して作業をすることはまずない
(2)直面する状況、課題はこのプロジェクトでも他のプロジェクトでも起こっているものだ
(3)作業に必要な情報の全てはメンバーの手に入りにくい
(4)プロジェクトマネジャーやメンバーは業務遂行にあたり、特定の方法の遵守を求められる
(5)納期、予算、収益において厳しい計画が課せられる
(6)メンバーは計画の達成のためにしばしば近道となる案を採ろうとする
(7)プロジェクトにミスの報告を躊躇させる雰囲気がある
(8)リスク事象が発生した際に、メンバーに対策を実行する権限を与えられていない
(9)リスク事象に対処するのに必要なスキルや専門知識に欠けるメンバーが多い
(10)問題の討議の中で、議論の前提に疑問を投げかける発言がメンバーからでくることはほどんどない
(11)ミスをすると責められる
(12)他のメンバーに助けを求めにくい雰囲気がある

12の質問の合計点数はいくらになっただろうか?

[1]13点以下の場合
あなたのプロジェクトは高いリスクマインドがある。リスク計画を十分に立てれば、リスクをうまくコントロールすることができる

[2]14~23点の場合
あなたのプロジェクトはリスクマインドが十分とはいえず、リスク計画を作っていても、リスク事象の発生により、致命的なダメージを負う可能性がある。リスクトラッキングをしつこく実行する必要がある

[3]24点以上の場合
リスク計画を作ってもあまり効果がない。リスクマネジメント以前に、リスクマインドの向上策をとるべき。

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コメント

(1)計画を無視して作業をすることはまずない
は、まずない、ならば、1点ですよね。
少しわかりくく感じましたので。

コメントありがとうございます。

「まずない」なら3点です。

プロジェクトマネジメントの基本的な発想は、実行を計画し、計画を実行することですので、ちょっと違和感があるかもしれませんが、緊急避難的に意図的に計画を守らずに進めることも必要なのではないかと思っています。

たとえば、担当部分のスコープ定義に漏れがあって、リスク計画には想定していなかった、遅らせるとまずい状況だとすれば、計画になくてもやるというのがリスクマインドが高いと考えています。

ははは27点になりんす。

リスクマインドを上げる為に組織として何とかしなくては・・・と考え、仕組みとしてのリスクマネジメントを作る傾向にあるのでは?と思います。(弊社も)

もちろん実際には逆効果になるのですが、大企業の本社機能みたいなところは現場から離れて(高い視点で?)マネジメントするのでそうなるのかな?

結局「現場感」を共有しないとなんともならないんでしょう。

とすると、プロジェクト外レビューアには相当な感性(感受性)が求められるということですかね。

あ、補足。

前お世話になったプロジェクトは、全く違う得点になります。

ん?
ということは、組織論から離れた「プロジェクト自主独立性」がキー?

リスクマインドがないので、リスクマネジメントを導入するんじゃないでしょうか?

もちろん、リスクマネジメントを導入した段階で、オペレーションの問題に転嫁してしまい、マインドの問題には蓋をすることになります。

リスクマネジメントを導入して、リスクに対する関心が高くなったという企業が多いですが、それは計画上の話で、実行時のリスクに対する「リアリティ」は下がる企業が多いです。

この辺がMIMさんの言われる「現場感」の欠如だと思いますね。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。