【補助線】続・孤立するプロジェクトマネジャー
前の記事では、組織の問題を書いたが、プロジェクトマネジャーの孤立という問題に対して、プロジェクトマネジャーの問題はないのかという点についても意見を述べておく。
つい最近、アービンジャー・インスティチュートの箱本の第2弾の邦訳がでた。
アービンジャー・インスティチュート(門田美鈴訳)
箱本は、自分の殻に閉じこもり人間的な発想を失ったマネジャーが、箱から出て人間力を取り戻していくことを書いた本である。
第1弾はPM養成マガジンの書籍プレゼントの対象になったこともあり、読者の方から話題にされることが多かった本である。
アービンジャー・インスティチュート(金森 重樹監訳、富永星訳)
プロジェクトマネジャーが孤立する理由として、「箱に入りたがる」という理由も指摘しておきたい。スコープに関するトラブルを起こしたプロジェクトを見ていると、必ず、見られる理由のひとつがステークホルダコミュニケーション不足なのだが、その背景に「プロジェクトという箱」に入って出てこないプロジェクトマネジャーという問題があることが多い。
箱から出たがらない理由はさまざまだが、箱の中で見えていることですべてを決めてしまう。せいぜい、決まった様式や、形式的な会議での「コミュニケーションごっこ」をやるだけでプロジェクトを進めていこうとする。
こんなことをやっていれば、スコープの問題が起こらないほうが不思議だ。箱から出て顧客やほかの主要ステークホルダと人間としてしっかりと対峙して、一緒にやっていくことが何より重要である。
にもかかわらず、箱から出ないままで、自分の理屈をいい、相手を非難する。さらに、悪質だなと思うのは、プロジェクト全体を箱にしているのだ。つまり、プロジェクトメンバーは仲間であるので、真摯に向き合う。しかし、外部ステークホルダには向き合わない。メンバーまで、箱の中で自分の理屈をいう。こうなると、箱の中ではお互いに慰めあうのでどうしようもない仲良しグループになってしまう。
プロジェクトマネジャーがアホでも、メンバーにはカシコイのがいて、プロジェクトの窮地を救う。これもプロジェクトの醍醐味のひとつであるが、チームに対する誤ったマネジメントで、そんなダイバーシティを取り除いた仲良しチームを作っているプロジェクトは本当に目に余る。
コミュニケーションというのは諸刃の剣である。コミュニケーションによってチームのパフォーマンスがあがる。これは間違いない。しかし、それは箱の中のコミュニケーションになってしまうと、成果に結びつかない。ここをしっかりと把握しておきたい。
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