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2006年12月25日 (月)

プロフェッショナルのための業界団体 PMI

ある方から、「プロフェッショナル」という記事に批判コメントを戴いた。掲載を許していただけなかったので、できるだけ、ご本人のコメントに触れない形で反論をしておく。

まず、PMIという組織が何のためにあるかを考えてほしい。PMI(Project Management Institute)ができたのが1969年、アポロが月面着陸に成功した年である。この当時はPMIというのはプロジェクトマネジメントの普及団体であった。しかし、1984年、PMP(Project Management Professional)制度ができて、PMIにはもう一つの性格が加わる。それは、プロフェッショナルのための業界団体である。

プロフェッショナルのための業界団体をもう少し正確にいうと、プロフェッショナルの倫理を保証する団体である。このために、そのような団体は、プロフェッショナルの倫理規定を設け、その倫理規定が遵守されるように監視を行う。ピンと来なければ、弁護士会だとか、医師会といった業界団体を思い浮かべてもらうと分かると思う。

ここでもう一つ注意すべきことがある。それは、プロフェッショナルの活動を規定する「法律」があるかどうかだ。医師にしろ、弁護士にしろ、そのような法律があってそれによって活動倫理が規定されている。いわゆる「士業」だ。倫理というとこのような法律遵守を想像するかもしれないが、これは「人を殺傷してはならない」というレベルの話であって、倫理として議論すべきことではないだろう。法律を犯すことは犯罪であり、倫理感云々という問題ではないように思う。倫理とはプロフェッショナルの責任ともいうべきものだ。これはどのような業界のものでもだいたい3つある。

(1)業務とプロフェッショナルであることに対する真摯な態度
(2)業務責任を果たすために必要な専門性の維持
(3)自らが属するプロフェッショナルの地位向上への貢献

の3つだ。

PMIがプロフェッショナル責任として提示しているものを見るとこの点はよく分かる。以下の5点である。

(a)個人の健全性(真摯さ)とプロフェッショナリズムの確立
(b)個人の能力(コンピタンス)の増進
(c)専門領域の知識集積への貢献
(d)利害関係者間の調整
(e)チームや利害関係者との協調関係

上の3つの項目との関係は

(1):(a)、(d)、(e)
(2):(b)
(3):(c)

といったところだろう。

ここでよく考えてほしいがいくつかある。(d)とか(e)というのはプロジェクトマネジメントスキルだと考えているPMPが多いが、そんなに甘いものではない。これらはスキルではなく、プロフェッショナルとしての責任である。

次に、(b)個人の能力(コンピタンス)の増進という項目があるが、プロフェッショナルであれば、時間がないといういいわけはすべきではない。プロジェクトマネジャーとして従事することも、研修を受講することも同等な重要性を持つ仕事である。この点がよく分かっていないPMPが増えているのは嘆かわしい。

また、時間をとってレッスンズラーンドを行うことは、組織への貢献がない、あるいは評価されないとしてもプロフェッショナルとして行うべきである。(c)専門領域の知識集積への貢献として、他のプロフェッショナルのために知識集積をすると、めぐりめぐって、また自分に戻ってくる。

では、自分はプロジェクトで忙しいのでそれどころではない。これらのプロフェッショナル責任を果たせないと思ったときに、何をすべきか。選択肢は2つある。

ひとつは、自身のタイムマネジメントをより真剣に行い時間を作るという道だ。これはドラッカーがプロフェッショナルの条件で非常に重視しているポイントである。

もう一つは何か。いうまでもないと思うので、書かないことにする。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。