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2006年11月19日 (日)

【補助線】誰が土俵を作るか

今年は、PMAJのP2Mの改訂委員会に参加している。先日、委員会の合宿があり、ゆっくりと考えをめぐらせる時間が取れた。

PMBOKはいまや200万人が使う標準である。プロジェクトマネジャーという限定された人が使う標準として、200万という数はすごい。そして、プロジェクトマネジメントだけではなく、プログラムマネジメント、さらにはポートフォリオマネジメントとだんだんその範囲を拡大している。仮に、ポートフォリオマネジメントがメジャーになっていけば、その利用者の数は一桁上がってもおかしくないだろう。

そんな動きがある中で、EUのプロジェクトマネジメントの標準であるICBも今年6月に新しいバージョンであるバージョン3が登場し、PMBOKに遅れはとっているものの、いよいよ、本格的にグローバル展開を開始した(グローバルというか、当面のPMIとの戦場はアジア、特に、インドと中国らしい)。

そんな中で、日本では、P2Mという標準がある。5年前にできた標準で、僕も中小企業経営を中心に、結構、使っている。ただ、5年前というとPMBOK2000と同じ記事であるが、その間の普及を較べると大苦戦をしている。

PMIのアプローチは大変、システマティックであり、実践的である。プロジェクトマネジメントという現場のマネジメントから入り、だんだん、その範囲を拡大し、プログラムはともかくとして、ついに、ポートフォリオまで出てきた。

今のところ、ポートフォリオマネジメント標準については、PMBOK1987程度だと思う。指したり実体はない。しかし、この分野に出てきたことは極めて重要な意味がある。

ポートフォリオマネジメント標準の本にそれぞれの位置づけについて極めて適切な表現がある。それは

ポートフォリオマネジメント : Doing the right work
プログラムマネジメント、プロジェクトマネジメント:Doing work right

という位置づけである。日本語に訳すと

ポートフォリオマネジメント : 正しい仕事をする
プログラムマネジメント、プロジェクトマネジメント:正しく仕事をする

とでも訳すのだろう。「い」と「く」の一字違い。しかし、この一字が現場と経営の違いになっている。いよいよ、この領域に来た。これはエライことだ。

オペレーションのマネジメントはどこの標準でもよいと思う。所詮、如何に合理的にやるかという話であり、よいものはどんどん取り入れていけばよい。しかし、経営レベルで、欧米の標準を使うというのは、文化を受け入れるということ。人の土俵で相撲を取るようなものだ。必ず負けるだろう。

実際のところ、これらの標準に則って仕事をすると、欧米流の考え方により、日本企業が強みの一つにしてきたきた「スカンクワーク」はすべて葬り去られるだろう。ひいては、「人活経営」も崩れ去れる。

ファイナンスの世界で、日本は欧米から、同じ土俵にあがれと非難される。これはそのとおりだと思う。勝手は土俵を作ってビジネスをしていたのでは、迷惑をこうむるのは顧客だ。しかし、問題は、その土俵を誰が作るかという話である。

一方で、P2Mはというと、最初から、正しい仕事をする&正しく仕事をするという両方を睨んだ仕事だった。その意味で、非常に先進性があったし、欧米でも評価されている。

しかし、結局、現在のところ、普及できないままである。土俵になっていない。

話は変わるが、15年くらいまでに、UDL/Iというハードウエア設計言語の標準化プログラムのあるプロジェクトのプロジェクトマネジャーをやったことがある。これも日本発の標準だった。ちょうど、米国の押すVDSLという標準があり、それに対抗する形でMITIが標準を作ろうとした(というか、某企業がMITIを担いで標準を作ろうとした)。

標準はできた。技術的先進性は国際的に評価された。しかし、結局、普及しなかった。このプロジェクトでは、日本で半導体ビジネスをやっている企業が30社近く集まり、コミッティをつくり、進めていった。この中には外資系の会社もあった。しかし、結局、活動の半ばで、既に、VHDLの採用に踏み切る企業もあった。その企業におけるグローバル展開のためである。

P2Mはグローバルな土俵になるのだろうか?

そんなことを考えさせられた1日だった。どれだけ戦力になれるか分からないが、とにかくがんばりたい。

ちなみに、弊社のプログラムマネジメントの標準はP2MとPMIを折衷し、独自の考えで纏め上げたものである。

プログラムマネジメント~複数のプロジェクトを同時に成功させる方法とそのポイント

 http://www.pmstyle.biz/smn/mpm.htm

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。