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2006年8月 5日 (土)

【補助線】「こと・もの」分析でスコープマネジメント

プロジェクト(マネジメント)の議論をするときに、スコープを仕様というニュアンスで使っている人が多いが、ご存知の通り、これは正しくない。スコープというのは成果物と役務の相対を指す言葉だ。PMBOKではこれをさらに明確にし、

●プロジェクトスコープ:規定された特性や機能を持つプロダクト、サービス、所産等を生み出すために実行しなくてはならない作業

●プロダクトスコープ:プロダクト、サービス、所産に特有の機能や特性

と区別して使えと書いている。

ここまではいいと思うが、では、スコープマネジメントというのは何をすることなのか?問題はこちらだ。仕様管理、構成管理、変更管理だと思っている人が多い。これが冒頭の話。

実は、WBSがうまくかけない悩みを持つPMは極めて多いが、WBSは両方のスコープを統合するツールであるので、このスコープマネジメントの認識がないとまず、上手に作れない。

実際には、ここに工法(仕事の進め方)が絡む。建築プロジェクトを考えてみると分かりやすいが、ある仕様の建築物を作ろうとすれば、必ず、工法を決める必要がある。これがプロダクトスコープとプロジェクトスコープである。プロジェクトスコープとプロダクトスコープは1対1の場合も少なくない。

逆にソフトウエアなどでは自由度が高く、プロダクトスコープは厳密に管理する必要があるが、プロジェクトスコープはあまり真剣に考えない。プロジェクト見積の中でも、プロダクトスコープをベースにして見積もり、それにプロジェクトスコープの配慮を入れるというのが普通である。

実際にはプロダクトスコープとプロジェクトスコープはもっと微妙な関連にある。プロジェクトの目的を達成するためにプロダクトスコープだけを調整するのではなく、プロジェクトスコープを調整することを考える必要もある。つまり、工法の工夫だ(要員数の調整もこの中に含まれる)。

このマネジメントを一口でいえば、プロジェクトスコープで調整するか、プロダクトスコープで調整するかを工夫することより、プロセスをシンプルにし、それによって生産性を上げること。

プロジェクトスコープとプロダクトスコープの両方をマネジメントする方法を説明することは非常に難しいが、よい本を見つけた。経営工学の大家で、良い仕事をされている慶応大学の中村善太郎先生のご本だ。

この本は、仕事を「もの」と「こと」に分けて、整理し、調整することにより、プロセスがシンプルになり、生産性が上がることを書かれた本。

先生の言われている「もの・こと」分析は、例えば

 「素材」を「製品」に変える「こと」

 はじめの「もの」をおわりの「もの」に変える「こと」

として捉え、この変換過程を、「もの・こと」図として書くことによって、スコープがきれいに整理でき、仕事の最適なプロセスを見つけるという発想。これは非常に分かりやすい。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。