ほぼ日 読書日記 Feed

2009年6月 8日 (月)

戦略が現場の努力を台無しにする【ほぼ日読書日記 2009年6月7日】

夜の新幹線で東京に。車中、2冊。

一冊目は、ちょっとずつ読んでいた本。

ウィリアム・ホルスタイン(グリーン裕美訳)「GMの言い分」、PHP研究所(2009)

GMという会社の名前や、T型フォードは知っていても、会社の実態は意外と知らないものだなと思った。1927年にGMがT型フォードというドミナントモデルで創った「車」というパラダイムが終わったことがよく分かる。

日本のマスコミでは、「あぐらをかいていた」的な傲慢さを指摘する報道が多かったような印象を持っているが、けっしてそうではない。パラダイムの変化に気がつかなかっただけだというのが、この本を読めばよく分かる。

経営は難しいよなあ。

もう一冊。

森谷 正規「戦略の失敗学―経営判断に潜む「落とし穴」をどう避けるか」、東洋経済新報社(2009)

著者の森谷正規先生は、尊敬する技術マネジメントの研究者。だいたい、書籍は読んでいるが、この本も現場と経営のバランスの問題を指摘している。経営が現場の足を引っ張るというのはそんなに珍しくないが、日本の現場が強いのは、それでも何とかするという印象を持っていた。つまり、現場のやってきたことを台無しにするというのはそんなにないと思っていたが、この本で認識が変わった。経営より、現場の人に読んでほしい本。

2009年6月 6日 (土)

水と油が混ざると何ができるんだろう【ほぼ日読書日記 2009年6月5日】

某社でのワークアウトセッションを終えて、新幹線で京都に戻る。この2~3週間、金曜日でも空席が目立っていたが、今日は、かなり、混んでいた。新型インフルエンザ騒動も一段楽といったところか。

このくらいの方が本を読むには集中してよい。そのせいかどうかは分からないが、3冊ほど、読破。

一冊目の本。なんと、小川先生とコンサルタントの方の共著の「ビジネス書」。

小川 進、平井 孝志「3分でわかる クリティカル・シンキングの基本」、日本実業出版社(2009)

学者と実務家が本を一緒に書いた例は少なくないが、難しいなあと思う。だいたい、理論とプラクティスを集めたムックのように印象の本が多い。最近だと、プロジェクトマネジメントの分野で金井先生と岸良さんが「過剰管理の処方箋」という本を書かれたのが記憶に新しいが、やっぱり、油と水的な雰囲気の仕上りになっている。まあ、この本の場合には、著者がお二人ともキャラ立ちしているので、それが味になっているとは思うが、、、

その点、この小川先生と平井氏の本は、どんな分野でもインフラになる思考術というテーマ性はあるにせよ、よくまとまっていると思う。MIT時代に家族ぐるみのつきあいをされていたということ、平井氏は存知あげないが、小川先生の頭の柔らかさもあるのだろう。

ちょっといい感じ。紹介記事、書きたい。

これで勢いづいて2冊目。

ダン・ローム(小川 敏子訳)「描いて売り込め! 超ビジュアルシンキング」、講談社(2009)

新幹線で読むにはちょっともったいなかった本。パワーポイントが気にいらないのは、本質がわからなく成るから。といっても、それで商売をしているので、あまり大きな声ではいえないが、、、

この本で推奨されている方法には全面的に共感。PMstyleで「ファシリテーショングラフィック」というセミナーをやっている。こちらはファシリテーションなので、あくまでも構造化にポイントがあるのだが、演習をみていると、ビジュアルに表現するところで苦労している人が多い。

イラストの拙攻は埋まらないかもしれないが、思考を図示するというのは後天的な能力だと思うので、この本を読めばかなり、改善するのではないかと思う。

この本も紹介したい。このカテゴリーの本で、加藤昌治さんの書かれた「考具」がいいと思うが、ダン・ロームの本も負けずに良い本。ビジュアルシンキングだけでいえば、こちらの方がよいのではないかと思う。

最後、

チャールズ・クーンラット、リー・ネル(東本 貢司訳)「仕事はゲームだ」、PHP研究所(2009)

こういう本が日本でどのように受け入れられるかは興味津々。ゴールをストレッチして、楽しむためのマネジメントを、かなり技巧的に書かれている。この本も、しばらく様子を見て、紹介したい。

ということで、3冊とも、結構、よい本でした。

2009年6月 3日 (水)

マネジメントチームという選択【ほぼ日読書日記 2009年6月2日】

新幹線の中で、何冊か、本に目を通す。まずはこれ。

ルース・ワーグマン、ジェイムズ・バラス、リチャード・ハックマン、デボラ・ニューンズ(ヘイグループ訳)「成功する経営リーダーチーム6つの条件」、生産性出版(2009)

これは、まさにパラダイムシフト。マネジメントチームという概念はそんなに目新しいものではないと思うが、実際にはチームではなく、一人のマネジャーに対して、補佐をするような形で形成されるワーキンググループであることが多い。

経営意志決定の質を高めるためには、こういう考え方が必要だ。どれだけ現実的かはともかく、非常に示唆にとんだ本。

つぎ、話のネタにと思い読んだが、思考実験としては結構おもしろいと思った。

渋谷 往男「戦略的農業経営―衰退脱却へのビジネスモデル改革」、日本経済新聞出版社(2009)

マネジメントの手法を適用してみるというのは一つのアイディアであるが、リードタイムの議論と価格のダイナミックスの議論が抜けているのではないかと思った。いずれも、時間軸絡みの話だが、実は、ビジネスと農業の最大の違いは時間軸ではないだろうか?

2009年6月 2日 (火)

経験からモチベーションは生まれない【ほぼ日読書日記 2009年6月1日】

金井先生の短い解説と、野田先生との対談で構成されたモチベーション論。

この本に限らず、金井先生の書かれるモチベーション論を読んでいると、前提が変わっていることを感じることが多い。この本は特にそれを感じた。もうやる気は、個々人がコントロールすることが「当たり前」の時代になっている。上司がどうにかできるというのは幻想かもしれない。

金井 壽宏「危機の時代の「やる気」学」、ソフトバンククリエイティブ(2009)

テキサス大学の清水先生たちが、おもしろい研究をしていて、理論でどれだけ、実際の経営活動を説明できるかというもの。厳密には違うのだろうけど、単純にいえば、理論がどれだけ役立つか?30%程度だそうだ。

このような議論になってくると、客観性とはそもそも何かという議論になる。工学と経営学の決定的な違いは、適用範囲を明確にする必要があるかどうかだ。工学では、理論を立てるときに、その適用範囲を明確にしない限り、その理論は用をなさない。経営学の理論というのは、そこをはっきりさせない。極論すれば、参考になるかどうかの世界なのだ。

その意味で、金井先生のいう「持論」という発想は正しいと思う。30%に対しては理論を使えるが、70%に対しては理論が使えず、持論を持つ必要がある。

問題は、持論が何に依拠するかだ。日本人は圧倒的に経験である。いわゆる経験論。僕はきらいだ。経験からイノベーションは生まれない。経験が理論化されるからイノベーションの温床ができる。

モチベーション論はおもしろいところがあって、こういった情報発信自体が社会に何らかの影響を与える。結局、行くつくところは信じるかどうかの世界なのかなあ。

2009年6月 1日 (月)

儀式は重要【ほぼ日読書日記 2009年5月31日】

知人のブログで見て、興味本意で読んだが、たいへん、おもしろうございました。

マイケル・チウェ(安田 雪)「儀式は何の役に立つか―ゲーム理論のレッスン」、新曜社(2003)

コミュニケーションの中での儀式の役割を合理的選択理論を使って説明している。清水先生が、「経営の神は細部に宿る」という本の中で、コミュニケーションについて語っている部分で、そもそも、コミュニケーションを合理化しようというのは間違っていると書かれている。清水先生の主張は本を見る限りでは「意見」だと思うが、この本を読むと、ある程度、合理性のある意見であることが分かる。

儀式を省略したがる人が増えているが、そのことがコミュニケーション不全を招いていることが分かっただけでも読む価値のある本だった。

もう一冊、今日読んだ本。

ダン・ガードナー(田淵 健太訳)「リスクにあなたは騙される―「恐怖」を操る論理」、早川書房(2009)

リスクマネジメントの本質が何かということを事例を読みながら考えさせられる本。

先月からのインフルエンザ騒動で、日本人はメキシコ、米国より大騒ぎしたと揶揄する識者の意見も相次いだが、その理由がよく分かる。ビジネス書としても秀逸な一冊。

2009年5月30日 (土)

目的と目標の違い、分かります?【ほぼ日読書日記 2009年5月29日】

目標達成の方法について書かれた本はたくさんあるが、「目的」を対象にした本はあるようでない。この本は意味がある。願わくば、浜口さんのネームバリューでたくさん、売れてこのような議論が活性化することを願う。

浜口 直太、上野 則男「「目的達成」の教科書」、ゴマブックス(2009)

このテーマでは、少し古い本だが、山崎 康司さんの

山崎 康司「オブジェクティブ&ゴール―行動の思考法・行動の組織術」、講談社(2003)4062117452

がよい。相当しっかりと体系化されているが、難点は抽象的であり、難しいこと。どちらかといえば、コンサルタントなどの専門家を想定して書かれている。

その点で、浜口さんの本は、自己啓発書的な書き方で、一般的なビジネスリーダーを対象にしているように思う。山崎さんがこの本を書いた時代と今では、このような思考法を必要としている人の範囲が変わってきているということだろう。

一言でいえば、戦略思考が普及してきたことだが、誰もがこのような思考を必要とする時代にうまくマッチした、リーダーであれば誰が読んでも分かる本。

重要なテーマなので、早いうちに紹介したい。

2009年5月29日 (金)

1人も1億人も同じ【ほぼ日読書日記 2009年5月28日】

マツダヒロミさんの新刊。

マツダ ミヒロ「やめる力」、中経出版(2009)

いろんな意味でうまい作り方の本。表紙になにげに、老眼には見えないような字で「Quit to Begin」と書かれている。この

 やめる力 → はじめる力

というフレームがすばらしい。変わるってことだが、変わるっていうよりはるかにインパクトがある。戦略実行や組織でも使えそうなフレームワーク。このフレームを使って勧めていることに関してはコメントしない。個人の信条の問題。

もう一冊読んだのは、日テレのプロデューサーの書かれた仕事術本。

福士 睦「1億人を動かす技術」、ダイヤモンド社(2009)

この本は超・お奨め。

著者は「世界一受けたい授業」の企画者。コミュニケーションの方法と、発想の方法を書いている。もちろん、原体験はテレビの番組づくりなのだが、テレビっていうのは、普段みているからか納得感がある。

紹介記事を書くので、そこで詳しく書くが、たとえば、ひな壇で隣に誰を座らせるかという話はチーム編成に大変参考になる。良くも悪くも、テレビには人間が凝縮されているということを痛感しました。はい。

この本は、この前読んだ、清水先生の「経営の神は細部に宿る」のヒューマンスキル版だな。

2009年5月28日 (木)

Are you hungry?【ほぼ日読書日記 2009年5月27日】

今日は予定行動。昼間、某社のコンサル。夕方、終わったら、とりあえず、汐留に戻り、リブロ汐留店で購入。ホテルで5時間かけて、読みました。満足。心地よい疲れ。

村上春樹「1Q84」、新潮社(2009)

ビジネス書ではないので、中身は紹介しない。

というのはウソ。この本は著者の「予断を持たずに読んでほしい」という意向があるだとかで、アマゾンにも一切の記述がない。これはこれで目立つが、、、僕も何も触れないことにした。

アマゾンでこの本に書評がつくかどうか、興味津々。村上春樹ファンはつけないだろうな、、、

ビジネス書から外れたついでに、昨日、今岡純代さんが亡くなった。大学の頃から、中島梓さん、栗本薫さんともにファンだったのでとても残念。まだ、若いのに。冥福をお祈りします。

「1Q84」は、アマゾンで予約が2万冊以上あるとかいう話を誰かに聞いた。

最近、アマゾンでハングリーマーケットを作るような販促をしている出版社が多い。アマゾンがすべて実売であることを考えるとこの戦略はエクセレントな戦略だといえる。

ビジネス書では、大前研一氏、神田 昌典さん、金井壽宏先生、問題解決の授業の渡辺健介さんといったところが目立っていた。村上春樹氏とは桁が、ひょっとすると2桁違うんだろうけど。

大前 研一「大前の頭脳」、日経BP社(2009/6/25)
神田 昌典「全脳思考」、ダイヤモンド社(2009/6/12)
金井 壽宏「危機の時代の「やる気」学」、ソフトバンククリエイティブ (2009/5/29)

以上は当然ながら未読。金井先生の本はともかく、上の2冊のようなタイトルの本が出てきたというのは、ついに、自己啓発書ブームも終焉だな。

渡辺さんの本は、もう出版されているので、読んだ後で感想を書く。

勝間和代さんの訳本でハングリーマーケティングらしきことを仕掛けた出版社があったのは笑ってしまった。これはデザートマーケティングだな(笑)

渡辺健介さんの本は、問題解決の授業に予告を入れて、増刷をかけるというあまり見かけないことをやっていた。奥付のあとにほかの本の宣伝を入れている本屋は多いが、帯というのは意外といいかも。Aさんの本の帯に○間本の予告入れるって究極のクロスセリングかも(笑)。

2009年5月27日 (水)

あいまいはよくないのか【ほぼ日読書日記 2009年5月26日】

先週の土曜日から、事務所の引っ越しなどでばたばたしていて本を読む気にならない。そんな中で、ぺらぺらとめっくった新書に思わぬ、当たり。

この1年くらい、印象に残っている本はほとんど新書だ。各出版社はこぞって新書に参入するが、実際に、優秀な編集者の多くを新書に投入しているんじゃないかと思うくらい。

さて、今日の当たり本。

呉 善花「日本の曖昧力」、PHP研究所(2009)

あいまいであることは、悪いことなのだろうか?この問題を考えさせられる。

日立系の会社の社長を務められたあとで、プロジェクトマネジメントに関するいろいろな経験や知見を本や講演で披露されている名内泰藏さんという方がいらっしゃる。名内さんの論点は曖昧性とどうつきあうかというもの。本もおもしろいし、講演も一度聴く機会があったが、たいへん、おもしろかった。

名内 泰蔵「曖昧性とのたたかい―体験的プロジェクトマネジメント論」、翔泳社(2005)

ただ、多少の違和感が残った。この本を読んでいて、その違和感が何かわかったような気がした。

あいまいという言葉は、少なくともビジネスワードでネガティブになっているが、韓国出身の比較文化学者である呉 善花さんは、これがこれからの世界の求めるものになるだろうと指摘している。調和がとれた人間関係とか、環境への順応性ということが求められるからだという。

ビジネスでも本当に成果を求めるのであれば、曖昧性を排除することはすべきではない。たとえば、分担の曖昧性。勤勉な国民性を持つ日本では、分担の曖昧性はプラスであった。本当の意味で成果にコミットするからだ。

では、もの作りにおいては曖昧性は悪か?たしかに、仕様が曖昧なままではモノやシステムは作れない。

だからそれを悪いモノだと前提にして考えるのがよいかというとそうとは言い切れない。そんなことすら感じさせる本。

2009年5月22日 (金)

マネジャー育成現場のエスノグラフィー【ほぼ日読書日記 2009年5月22日】

おもしろかったので、新幹線の2時間で一挙に読んだ。

どちらかと言えばMBAに批判的な本であろうが、本質的に批判だとは思わない。どちらかというとなかなかよくできた「エスノグラフィー」である。ここから見える未来もある。

それをわざわざ、最終章のタイトルをサブタイトルに引っ張り出し、MBAの批判論者を監訳者に仕立て、こういうテーストの本に仕立てるところに、世間さまを感じる。

フィリップ・デルヴス・ブロートン(岩瀬 大輔監訳、吉澤 康子訳)「ハーバードビジネススクール 不幸な人間の製造工場」、日経BP社(2009)

日本では、MBAの必要性や意味は二元論で語られ勝ちだ。

しかし、本来二元論で語られるものではなく、それは米国でも一緒。これは、たとえば、ミンツバーグ先生の

ヘンリー・ミンツバーグ(池村 千秋)「MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方」、日経BP社(2006)

を読んでもよくわかる。マネジャーを育てるという仕事はそれだけ難しい仕事であり、発展途上であるというのがミンツバーグ先生の主張だが、存在自体を否定しているわけではない。問題点の指摘と、問題解決の提案をしているだけである。

この本のタイトルも、「Managers not MBAs」という原題で、よくこういう恣意的なタイトルをつけるなと感じた記憶がある。同じ編集者か?

世間さまが君臨し、理論か経験か、現場か会議室かといった二元論をしている限り、この国にまともな経営をする企業はでてこないだろうな、、、

まあ、せっかく500ページにもわたる優れたエスノグラフィーであるので、しっかりと読んで、自分の頭でこの問題を考えてみてほしい。受け入れるかどうかは別にして、今、世界を支配している(米国流)戦略経営の本質の勉強にもなる。

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