またしても勝間和代さんが市場を作った感がある「模倣からのスキルアップ」というテーマに齋藤先生も参入。
齋藤 孝「頭がよくなる思考法 天才の「考え方」をワザ化する」、ソフトバンククリエイティブ (2009/9/17)
「頭のよい人の考え方を自分の思考パターンに取り入れるのが一番」といい、その方法を説明している。教育者らしく、内容はかなり抽象的で、ハウツーものではない。ゆえに、しっかりと読み込めば、非常に有用な本だと思う。
もれなく考える
やわらかく考える
広く考える
大きく考える
深く考える
論理的に考える
独創的に考える
などの思考に、フッサールの「現象学」とヘーゲルの「弁証法」を使ってパターン化の方法を説明している。「タメ」以来のインパクト。
]]>大阪でコンサル。移動中に新書を一冊読んだ。
原 正紀「優れた企業は「日本流」 」、扶桑社(2009)
事例に取り上げている企業はどれもおもしろい。そして、そこには、著者の言う「日本流」がある。
読んだ改めて認識したのは、著者のいう高度成長期の三種の神器「終身雇用」、「年功序列」、「企業内組合」の3つが「和」と「情」と「不安への備え」という日本的マネジメントというソフトウエアを走らせるプラットホームとして非常に優れたものだということだ。
失ったものは大きいなあ。著者が指摘するように社会環境は変わっている。キャリアパスも多様化している。3つのソフトウエアはプラットホームが代わると暴走する危険性を秘めている。
たとえば、情報共有。和や情が、情報の非対称性に依存する部分は少なくない。アカウンタビリティの高い組織で、和や情を活かすためには相当に強い文化が必要になるだろう。
事例企業のように、新しい環境の中で、日本流を取り戻すことができるかどうかは興味深い。
]]>待望のジョン・スターマンの「Business Dynamics」の翻訳が登場。システムダイナミクスを中心にしたシステム思考の名著。
ジョン・スターマン(小田 理一郎、枝廣 淳子訳)「システム思考―複雑な問題の解決技法」、東洋経済新報社(2009)
実は、小田さんには以前、コンサルティングを受けた経緯があり、その際に1000ページもある原書を読んだ。
その中から、事例的な部分を編集して、500ページの本にまとめた本になっているが、ちょっともの足らない気もするが、良い本であることは間違いない。最初に
・自動車リース
・プロジェクトマネジメント
・メンテナンス
などのモデリングと問題解決を事例として取り上げ、ビジネスダイナミックスのイメージを示した上で、ポイントになるビジネスダイナミックス理論を解説している。
今年の春にシステムシンキングの本を出版された高橋さんと話をしていたら、出版社の編集方針として、システムダイナミックスはカットするというスタンスに押し切られたと言われていた。
システム思考からダイナミックスを割愛すると、ロジカルシンキングに毛の生えた程度のものにしかならないので、あまり、時間が重要な意味を持つビジネスの問題に対しては、実践的なツールにならない。
少なくとも、ビジネスにおける必要性を説いた日本語の本は見あたらないし、今後もきっと出てこないと思うので、多少、ハードルは高いがこの本にチャレンジされるとよいだろう。
]]>先週、マイクロソフトの浦正樹さんとお会いしたときに、頂いた本。決して読みやすい本ではないので、苦労しながらやっと読み終えた。
浦 正樹「プロジェクトを成功に導く組織モデル チームの「やる気」はなぜ結果に結びつかないのか」、日経BPソフトプレス(2009)
機会があればそのうちブログで書くが、米国と日本ではエンジニアのキャリアモデルが違う。米国は日本のように終身雇用で、徐々に組織内での地位が上がっていくというモデルではない。
このため、日本組織はガバナンスが緩い。上司の統制されているというより、上司の見習いという立場がより強い。実際に、僕が最初に勤務した会社では、上司が不在なら、上司の代わりができなくてはならないと言われたし、実際のところ、まったく見えない話は、人事からみの話くらいだという印象がある。
この種のたとえ話としてよく使われる話。自分の担当中のお客から、自分の上司に急ぎの電話があった。外出中の上司の代わって、自分が電話を受け、処理をし、上司には事後報告をした。日本なら機転が利くと言われるが、米国ならクビだという話。
よいか、わるいかは、価値観の問題であるが、プロジェクトマネジメントは米国のキャリアモデルやガバナンスのあり方を前提に考えられることは、認識しておく必要がある。
浦さんの本は、米国流の現場モデルを前提にして、日本の現場の良さを活かすにはどうすればよいかを考察した本。力作である。
]]>この数日、懲りない金融業界的なニュースが流れている。悪いことではないと思うのが、死亡の証券化とか、自然災害の証券化とか、まあ、そこまでやるかという感じ。オバマ大統領は、「歴史を繰り返すことは許されない」ということで、監視を強化する構えのようだが、こんなニュースを耳にしながら読むと、ちょっと複雑な感じ。
スペンサー・ジョンソン(門田 美鈴訳)「頂きはどこにある?」、扶桑社(2009)
書いていることはすばらしい。素直に読めば、不況に限らず、仕事と人生における山谷を自分の思いどおりにあやつることは、すべてのビジネスマンの願望かもしれない。
もっとも、山谷というのはそういうものでない、そんなことをしていたら疲れてしまうという考え方もあるが、、、
金井 壽宏「働くみんなのモティベーション論」、NTT出版(2006)
]]>昨日の日記で、
デービッド・メイスター(紺野 登解説、加賀山 卓朗訳)「脱「でぶスモーカー」の仕事術」、日本経済新聞出版社(2009)
が今年読んだ本の中で、一番よかったと書いたが、舌の根の乾かぬうちに、対峙する本に連続して当たった。っていうか、やっと翻訳が出版された。
ロジャー・コナーズ、トム・スミス、クレイグ・ヒックマン(伊藤 守監訳、花塚恵訳)「主体的に動く アカウンタビリティ・マネジメント」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2009)
原書は、「The Oz Principle」。1994年の本。米国のマネジメントモデルの中では、アカウンタビリティという言葉は「レスポンシビリティ」ときちんと区別して盛り込まれているが、そのきっかけを作ったと言われるのがこの本。日本では、まだ、「責任」という一言でくくられているが、それが、責任に対するいい加減な態度を生んでいる。
ディスカヴァー・トゥエンティワン出版で、伊藤守さんが監訳をされていることからも、熱意が伝わってくる。この本が、日本のマネジメントのターンオーバーをもたらすことを期待。
]]>今日はPMAJのPMシンポジウム2009で、SIGのセッションがあったので、お手伝い。その後、このシンポジウムでプロデュース能力の講演をされていた佐々木尚彦さんと落ち合い、少し、話をした。
佐々木さんと別れ、東京から京都へ移動。移動中に2冊。
デービッド・メイスター(紺野 登解説、加賀山 卓朗訳)「脱「でぶスモーカー」の仕事術」、日本経済新聞出版社(2009)
「でぶスモーカー」症候群というのを指摘している。これは、「正しいとわかっていても実行できない」症候群である。「でぶスモーカー」症候群を乗り越えるには、仕事の目的を明確にして、内発的な動機を引き出すしかないというのは、大賛成!そのような仕事の仕方を、「でぶスモーカー」症候群の状態に応じて相当精緻に解説している。今年読んだ本で、一番、よかった。
もう一冊は、コトラーの本。
ジョン・キャスリオーネ、フィリップ・コトラー(齋藤慎子訳)「カオティクス―波乱の時代のマーケティングと経営」、東洋経済新報社(2009)
大学の時、ゼミの先生の専門が非線形システムだったので、門前の小僧なんとかで興味を持ち、仕事をし出してからもなんとなく、このテーマの本は読んでいる。その中で、この本はもっとも実践的である。やはり、リーマンショックを期にパラダイムが替わったのかもしれない。
この本が提唱しているのは、リスクと不確実性を察知するための早期警報のしくみ、それらに対応するためのシナリオプランニングのしくみを企業の中に戦略として埋め込むこと。この仕組みをカオティクスだと言っている。
おもしろいのは、このような仕組みを、短期的な収益と結びつけるのではなく、組織がカオス的な挙動ができるようになるための仕組みとして位置づけていること。おそらく、今後、MBA方式のように極度に管理された経営ではなく、このような経営の方法が必要になってくる。MBAマネジメントは、不確実性に対して、人で対応しようとしているが、おそらくリーダーシップではもう対応できないと思う。リーマンショックはリーダーシップの限界を思い知らされた。そこで、一つのソリューションとして従来の日本型経営に関心が生じているが、これも違うと思う。
そのような混迷した状況で一つの答えを見せてくれている本だと思う。
]]>この問題をここまではっきりと論じられるのは、宮崎学氏しかいないのだろう。
談合は文化である
浮気は文化であるというより、もっと深い。
談合撲滅も一種の思考停止である。深い意味をあまり考えることなく、悪であることを前提にものを考えるのは危険というのを教えてくれる本。
宮崎 学「談合文化論」、祥伝社(2009)
たとえば、公共工事に無駄がある。無駄のうち、職人やリーダーの育成に寄与している部分は少なくない。無駄があるから人を育てることができる。これは、これまでの日本社会では紛れもない事実だったと思う。
談合をなくして、無駄をなくす。税金の使い道はただされる。そこで、無駄を押さえたもので、職人の育成の施策を実施する。透明性は上がる。これが果たして税金の使い方として効果的なのかというと疑問が残る。
談合は汚職と絡んで目の敵にされるようになってきた。この問題のもっとも官僚主義的な解決方法が談合防止法である。
地方分権がいよいよ、本格化してきた。行き過ぎた中央集権で、この50年くらいの間に地域コミュニティは崩壊した。地域に限らず、官僚主義はコミュニティを崩壊する。これは歴史が物語っている。談合もコミュニティである。官僚政治と決別が期待できる今、この問題はもう一度考えてみる価値があるのではないかと思う。
だいぶ前だが、プロジェクトマネジメントの研修をしている講師が不用意に談合はプロジェクトマネジメントであると発言して、その会社から出入り禁止になった。プロの講師としては、談合という言葉で思考停止をすることは踏まえておくべきだと思うので、このこと自体に同情の余地はないが、思考停止をきた企業は間違いなく、プロジェクトマネジメント力が落ちていくと思う。プロジェクトの中で、談合の持つ意味を考えてみることは、悪いこともでもないし、ましてや、法律違反でもない。
]]>政権交代以来、経営者と話をするときのネタに、関連本を読みあさっているので、なかなか、ビジネス書を読む時間がない。そのため、日記も途切れがち。
あまり、あけるのも何なので、普段はあまり紹介しない、仕事がらみで読んだ本。
藤野 香織「ヒットする!PB商品企画・開発・販売のしくみ―PB商品の企画、生産から売り場展開、リニューアルまで」、同文舘出版(2009)
PBとは Private Brand の訳で、流通業が主体となり、メーカや提携工場と協業して開発する商品のこと。いろいろな点で、マーケティング、生産管理、物流、流通など、ビジネスやマネジメントのエッセンスが詰まっているビジネスだ。
この本では、ライフサイクルに沿って、簡潔に、かつ、ポイントを押さえたオペレーションの説明をしているので、役に立った。
新入社員などに、一般的なビジネスオペレーションを勉強させるための教科書にいいのではないかと思う。
ついでに、政権交代後に読んだ本でもっともおもしろかった本というか、読み比べるとおもしろい本。
山崎 養世「道路問題を解く―ガソリン税、道路財源、高速道路の答え」、ダイヤモン(2008)
猪瀬 直樹「道路の決着」、文藝春秋(2008)
]]>平成建設の本が出ていたので、読んでみた。むかし、カンブリア宮殿でみて、内製化を売りにして、いろいろと興味深いことをいわれていたのがちょっとだけ印象に残っている会社。
その社長の書かれた本。
秋元 久雄「高学歴大工集団」、PHP研究所(2009)
経営論としてはそれなりのものだと思うが、期待していた内容とは少し違った。大工というのはもう少し、技術とマネジメントの融合した活動ができるものだと思っているのだが、そうでもないのかもしれない。この本を読む限り、高学歴である必要は感じなかった。
大工さんというと、自分が家を建てて貰うときくらいしか縁がないので事情はよくわからないが、製造業を想定するとこういう仕組みというのはそんなに特別なものではないような気がする。
ただし、目指しながらもできていない企業が圧倒的に多く、その意味で、成功事例として、この本に書かれているいろいろなポイントは非常に参考になるように思う。
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