人材マネジメント Feed

2006年11月15日 (水)

人材育成担当の必読本

4478440557_01__aa240_sclzzzzzzz_v3856815 中原淳 (編集)、荒木淳子、北村士朗、長岡健、橋本諭「企業内人材育成入門」、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

企業内人材育成に際して必要な心理、教育理論を体系化した本。理論だから実践的ではないということではない。

人材育成については、おそらく、担当者はそれなりの持論を持っている。しかし、人材育成は非常に多面的な仕事であるので、その持論ですべてがうまく行くことが珍しい。うまく行かないときに、別の視点からやり方を見直してみることが大切である。

そのような目的で現場の実践家が使える本だと考えてよい。目次を見て戴くと良く分かるが、学習メカニズム、動機付け、インストラクションデザイン、学習環境デザイン、キャリア開発、と内容は心理学、教育学にわたっており、非常に幅広い。それぞれについて、執筆者が簡潔にまとめていて、読みやすい。

また、この種の編著にありがちな、得意分野を並べているといった風の本ではなく、関連性も比較的明確で、バランスが取れているように思う。その意味でも、企業の人材育成者に一度は読んでほしい一冊である。

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2006年10月27日 (金)

イノベーションマネジメントの全てが分かる一冊

456965546701 大浦勇三「イノベーション・ノート―会社が劇的に変わる! 」、PHP研究所(2006)

お奨め度:★★★★

イノベーションマネジメントのポイント(論点)が実に要領よくまとめられた1冊。以下の6つの視点にまとめられている。

・事業戦略は適切か

・実現に向けた仕組み/プロセスは明確か

・必要なコンテンツ(情報・知識・知恵)は十分か

・推進体制は必要か

・人材教育/人材育成は万全か

・外部連携に死角はないか

それぞれの項目につき、さらに5つの中項目にブレークダウンし、それぞれの中項目に対して、5項目の小項目を、1項目1ページで、図表を駆使して視覚的に理解できるように実にうまくまとめられている。また、各項目とも8行ほどの解説があるが、この解説も分かりやすい。

この本を読んで、まず、最初に思いついた用途は、自社のイノベーション能力のチェックである。政府が政策目標にイノベーションを掲げ、担当大臣を置いた。また、経団連でも「イノベート日本」というキャッチフレーズを掲げた。

イノベーションへの関心の高まりは否が応でも増してくるだろう。そんなときに、とりあえず、何か一冊本を読んで、マネジメントとして何をすればよいかを把握したいときに、絶好の一冊だ。

ただ、中は、いわゆる図解的な入門書ではない。図解であるが、内容はかなり本格的なイノベーションマネジメントの解説書であるので、それなりの覚悟をして読む必要があると思うし、自分の関心の持てた項目については、他に参考書を探して深堀する必要があると思う。

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2006年10月23日 (月)

現場主義の真髄

476319708801高原慶一朗「理屈はいつも死んでいる」、サンマーク出版(2006)

お奨め度:★★★★1/2

ユニ・チャームを創り上げた高原慶一郎会長の現場論。自らの考え、ユニ・チャームの社員の考えなど、豊富なエピソードを交えながら、非常にインパクトの強い本になっている。

最近、現場の重要性を説く人は多い。

が、現場をイメージだけで捉えている人も少なくない。現場主義をいうからにはもっとも重要なことは、先入観を持たず、すべてを現場から得ることである。

中村先生は臨床の知という概念を唱得られた。エスノグラフィーに熱心に取り組んでいらっしゃる経営論の先生も多い。現場主義というのは、このような活動のように、現場から謙虚に学ぶことである。

臨床の知

https://mat.lekumo.biz/books/2005/08/post_73ea.html

にも関わらず、現場のイメージを「適当に」作り上げてしまっているケースは多い。コンサルティングをやっていて、「現場ではこうやっている」といわれて、実際に調査するとそんなことはないという経験は結構多い。要するに、現場マネジメントを行うような立場の人が、現場を自分の主張の道具に使っているようなケースが多いのだ。そのようなにおいのする本も多い。

この本は、そんな偽者の現場主義を喝破するようなことがたくさん書いてある。

例えば、ユニ・チャームの話で商品開発を担当している男性社員が、生理用ナプキンをつけて、生活するといったエピソードが出てくる。まさに肌で感じてているわけだ。現場から学ぶというのはまさにこういうことだろう。

この本には、このような現場重視経営のための金言があちこちにちりばめられている。すばらしい本だ。

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2006年10月21日 (土)

偉大なる経営論

B000ion7te01 Harvard Business Review2006年 11月号

 【創刊30周年記念号】偉大なる経営論

お奨め度:★★★★★

ハーバードビジネスレビューの創刊30周年記念号。30年間に発表された名論文の中から30本が採録されている。下にリストがあるので見てほしい。経営学にまったく縁のない人でも4~5人くらいは知っている人が多いのではないかと思う。

ほとんどの論文が実践の中で使われるようになってきた概念を示したものだ。これはすごいことだと思う。かつ、この2~30年の間に新しく生まれたマネジメント手法はほぼ、網羅されている。

つまり、そのくらいハーバードビジネスレビューは実務家のマネジメントに貢献している学術論文誌である。

マネジャーという肩書きのある人、あるいは、将来マネジャーを目指している人、いずれも、この記念号はぜひ持っておき、通勤の行き帰りにでも読んでほしい。

最後に神戸大学の加護野先生の「マネジメントの古典に触れる」という提言がある。この提言も味がある。

ちなみに、東京で本屋を探したが、最初の3件は売り切れだった。よく売れているようだ。

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2006年10月13日 (金)

トヨタの口ぐせ

480612533401 OJTソリューションズ「人を育てるトヨタの口ぐせ」、中経出版(2006)

お奨め度:★★★

以前、「最強トヨタの7つの習慣」という本を紹介したことがある。習慣化に当たっては、はやり、言葉が大切である。常に、言う。常に言われる。そんな口ぐせのような言葉を30個あつめて、それぞれに簡単な解説をしている。

解説そのものは簡単なものなので、深く知るには適さないが、何よりも、言葉が書かれているので、その言葉を言い続ければ習慣化が可能になる。これは貴重である。例えば、5回のWhyなどで有名な行動習慣は「真因を探せ」を口ぐせのように言って習慣化されている。

いくつか気にいったものを挙げておく。

「リーダーはやらせる勇気、メンバーややる勇気」

「あなたは誰から給料を貰うの」

「改善は巧遅より即拙」

「自分が楽になることを考えろ」

30個、どれをとっても使いたい言葉が並んでいる。

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2006年10月 1日 (日)

超現場主義で商売繁盛

4774507601 上野和夫「人事のプロが書いた商売繁盛学 ”超現場主義”のすすめ」、現代書林(2006)

お奨め度:★★★★

著者の上野氏は西武百貨店人事部で30年のキャリアを積まれた方で、その上野氏が小売業の「儲かるサービス現場」にこだわって書き上げた一冊である。事例などは小売業を事例に書いてあるが、顧客接点のあるビジネスを展開している企業においては、非常に学ぶところの多い本である。

この本では顧客接点で高い付加価値を生み出す人材をたくさん育成し、顧客から「ありがとう」といわれるプロのサービスを提供する企業をサービスカンパニーと定義し、サービスカンパニーを目指すために必要な人材育成、人事制度について提案されている。

第1章ではサービスカンパニーを作るための超現場主義10か条が提案されている。これが非常に興味深い

1)体制作りの目的は顧客価値創造の一点に向けられている

2)そのためにもっとも効果的で効率的な仕事の仕組みをくつくること

3)顧客価値創造に直接関係しない仕事は徹底的にそぎ落とすこと

4)個々人の能力を最大限発揮させるための仕組みをつくりあげること

5)個人には自己責任の原則が確立していること

(あと、5つあります)

第2章では、プロフェッショナルについて論じられている。西武、プロフェッショナルというと常に出てくるのが、伝説のシューフィッター久保田美智子さんであるが、彼女のプロフェッショナル論が社内研修の内容をベースにして紹介されている。今まで雑誌などで何度が読んだが、よく分からなかった部分が良くわかった。

小売業のプロフェッショナル論というのはITなどの専門性の高いプロフェッショナル論とは異なる部分が多いと思っていたが、この本を読んでそうではないことが明確になり、この本の主張そのものが、どんな分野でも通用するものだという認識に至った。

実は、この本を読む2週間くらいまえに、ある大手IT企業の事業部長さんと話をする機会があり、顧客からの要件がうまく聞きだせない、どうすればよいだろうかという相談を受けた。その際に、小難しい話(要件定義の方法論)はそれはそれで必要だが、もっと根本的に、人間同士が話をするのだから、その場でどういう態度を取るかは極めて重要で、この部分にサービス業や小売業からもっとベタなベストプラクティスを引っ張ってきたほうがいいのではないかという持論を展開したところ、露骨にいやな顔をされた。この部長さんにぜひ、お奨めしたい一冊である。

後半は人事制度について議論されている。前半の主張に整合する形の人事制度の提案であり、なるほどと納得できる内容である。

2006年9月30日 (土)

強い会社はボトムで設ける

453231293001 綱島邦夫「社員力革命―人を創る、人を生かす、人に任す」、日経新聞社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

この5年くらいの間に日本企業のイメージはずいぶん変わったのではないかと思う。日本企業の強みは社員の質にあった。その分、マネジメントがおろそかになっていた企業が多い。

この5年間の本格的なバブルの負の資産の解消の際にこれがはっきりあわられたように思う。この本で書かれていること、ベストプラクティスは少なくともバブルの前までは多くの企業にあったように思う。しかし、この5年のリストラクチャリングを乗り越えた企業は少なく、この本で取り上げられている、トヨタ、武田薬品、松下電器などはいずれもマネジメント力をテコに、人材の強みを残しながら、リストラクチャリングに成功した企業である。人を作るトヨタ、人に任す武田、人を生かす松下である。

著者の綱島邦夫氏はマーサーの方だからかもしれないが、分析のフレームワークがラーニングオーガニゼーションになっている。日本には、自らを説明するフレームワークがない。特にこの3社のようにグローバル化に対応できる組織を展開するためのフレームワークがないのは非常に残念だ。ただ、この本の事例から分かるように、実践している企業は多い。

なんにしても、社員、プロジェクトといったボトムが強くないと儲からないというこの本の主張には強く共感する。

良い本である。

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2006年7月27日 (木)

マネジャーの正しい育て方

482224516001 ヘンリー・ミンツバーグ(池村千秋訳)「MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方」、日経BP社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

ご存知、ポーターなどと並ぶマネジメントのグルであるミンツバーグのマネジャー育成論。ミンツバーグは単なる机上の理論を振りかざすタイプの学者ではなく、論理的な言論の一方で、「マネジャーの仕事」という一級のエスノグラフィーを書いているくらい、現場に精通している。そのミンツバーグのマネジャー育成論なので、非常に期待して読んだが、期待に反しなかった。

現在のMBA方式によるマネジャーについて客観的な評価をし、マネジャー育成のあるべき姿を模索している。マネジメントに必要な要素を

 ・アート

 ・サイエンス

 ・クラフト

という三角形で表し、この3つが補完することがマネジメントの成功要素だとした上で、現在のMBAの教育をクラフトが完全に抜け落ち、かつ、アートに関しては重要を認識するものの教育プログラムとして何もできていないという評価をしている。

この評価をベースにしてマネジャー育成理論を展開しているが、その中で、面白い問題提起が2つある。

一つは、マネジャーの育成のためには行動が必要なのか、行動を省察する機会が必要なのかという問題提起。ミンツバーグの答えは後者である。マネジャー育成の目的を「行動させる」ことではなく、「行動の質を高めること」だとしている。

この問題提起は面白い。MITのピーターセンゲの組織学習論以来、マネジャーの育成にはアクションラーニングが不可欠なものだと考えられるようになってきている。アクションとラーニングという2つの極めて重要な課題をこなすのは難しく、行動と学習の混同をやめにすべきかも知れないと述べている。

もう一つの注目すべき指摘は、マネジャー育成の対象者である。マネジャー育成のための教育は現役のマネジャーに限定すべきであると述べている。理由は理解レベルと、意欲なのだが、ちょっと驚くべき見解である。

そのようなことも踏まえて、新しいマネジャー教育に対して5つの定石を示している。

定石1:マネジメント教育の対象は現役マネジャーに限定すべきである

定石2:教室ではマネジャーの経験を活用すべきである

定石3:優れた理論はマネジャーが自分の経験を理解するのに役立つ

定石4:理論に照らして経験をじっくり振り返ることが学習の中核をなす

定石5:コンピテンシーの共有はマネジャーの仕事への意識を高める

定石6:教室での省察だけではなく、組織に対する影響からも学ぶべきである

定石7:以上のすべての経験に基づく省察のプロセスを折り込むべきである

定石8:カリキュラムの設計、指導は、柔軟なファシリテーション型に変える

そして、この本ではこの定石に基づき、よくできた育成プログラムの紹介と、具体的な教育の概念設計を示している。

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2006年7月18日 (火)

プロジェクトマネージャ育成法

481719186401 佐藤達男、伊藤英雄「プロジェクトマネージャ育成法―ITプロジェクトを成功させる人材育成」、日科技連出版社(2006)

お奨め度:★★★★

非常によく考えて書かれた本であるし、読み易く、また、自動車教習所のメタファも主張したいことを分かりやすくしている。

闇雲にプロジェクトマネジャーの育成をするのではなく、自社に必要なプロジェクトマネジャー像を明確にして、戦略的に育成していく必要性をといている。その中で、壁を

・組織の壁

・育成手法に関する壁

に分けて、整理している。その上で、これらの壁を破って育成するために必要なものを

・環境

・資質

・仕事

の3つに分けて議論している。

プロジェクトマネジャーの育成に携わる人、必読の一冊である。ただし、書かれていることを実行するのは難しい。そこに踏み込むのは読者の責任である。

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2006年2月18日 (土)

これからの働き手のマネジメントをどうするか

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大久保幸夫、リクルートワークス研究所「正社員時代の終焉-多様な働き手のマネジメント手法を求めて」、日経BP社(2006)

お奨め度:★★★1/2

リクルートワークス研究所らしい切り口の研究の結果をまとめた本。多くの人がもやもやと感じていることを、体系的に整理しているので、現場のマネジャーが読んでも、人事マネジャーが読んでも、多くの気づきのある1冊だ。

基本的な問題意識は、社員、契約社員、パート、派遣、業務委託など、働く目的も、働き方も異なるこの“混成集団”を、どう管理していけばいいのか?という点にある。これに大して、組織側の視点から、正社員に任せるべき仕事はなにか、非正社員に任せる仕事はなにかという議論がベースになっている。

面白いのだが、ある種の非現実感が伴うのも確かだ。変化が起こるという意味で、現在の組織を基準にした場合に何が起こり、どう対処していけばよいのかという議論になることは間違いないのだが、新しい組織の姿というのがもうひとつ説得力に欠けるように感じた。

一つの提案ではあるが、もう少し、社員も含めた個々人の組織へのコミットメントの変化が起こってきて、例えば、プロジェクトのような新しい組織形態が発生していくのではないかと思える。

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