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2006年10月21日 (土)

偉大なる経営論

B000ion7te01 Harvard Business Review2006年 11月号

 【創刊30周年記念号】偉大なる経営論

お奨め度:★★★★★

ハーバードビジネスレビューの創刊30周年記念号。30年間に発表された名論文の中から30本が採録されている。下にリストがあるので見てほしい。経営学にまったく縁のない人でも4~5人くらいは知っている人が多いのではないかと思う。

ほとんどの論文が実践の中で使われるようになってきた概念を示したものだ。これはすごいことだと思う。かつ、この2~30年の間に新しく生まれたマネジメント手法はほぼ、網羅されている。

つまり、そのくらいハーバードビジネスレビューは実務家のマネジメントに貢献している学術論文誌である。

マネジャーという肩書きのある人、あるいは、将来マネジャーを目指している人、いずれも、この記念号はぜひ持っておき、通勤の行き帰りにでも読んでほしい。

最後に神戸大学の加護野先生の「マネジメントの古典に触れる」という提言がある。この提言も味がある。

ちなみに、東京で本屋を探したが、最初の3件は売り切れだった。よく売れているようだ。

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2006年10月20日 (金)

しびれるマネジメント論

406213582501 天外伺朗「マネジメント革命 「燃える集団」を実現する「長老型」のススメ」、講談社(2006)

お奨め度:★★★★★

この本の第4章はフロー理論について書かれている。「燃える集団」を作る方法をフロー理論で説明しようとしているのだが、その方法を「長老型マネジメント」と読んでいる。

文字通り、長老のようなマネジメントを行うことによってフローを作る。キーワードは包容力、やりすごし、空気のような上司など、管理型のマネジメントとは大きく異なる。また、管理型のマネジメントが形を変えたエンパワーメントとも違う。ガバナンスということをマネジメントの中心課題としない、まさに、日本で古くから行われているマネジメントだ。これをソニーの出身の著者が、井深大のマネジメントを引き合いに出して語っている。

読んでいて、こういう上司のいる職場で仕事をしたいと思う人は多いと思う。しびれる一冊だ。

やり過ごしの効用については、東京大学の

453219135109 高橋伸夫「できる社員は「やり過ごす」、日本経済新聞社(2002)

で非常に面白い説明をされている。この本と併せて読んでみるとよいだろう。

この本、文庫本は2002年だが、単行本の初版は1996年。MBAに関心が高まり、戦略経営、成果主義に注目が集まっていたこのような本を書いた慧眼には本当に感服だ。高橋先生は、加護野、野中といったグルとは違った視点から日本型経営のよさを研究している研究者で、実務家としては注目した一人だ。

もうひとつ。フローについては、この本。

https://mat.lekumo.biz/books/2005/09/post_0a78.html

2006年10月16日 (月)

プロジェクトマネジメントはサイエンスかアートか

487311299001 スコット・バークン(村上 雅章訳)「アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法」、オライリー・ジャパン(2006)

お奨め度:★★★★★

著者がマイクロソフトで養ったプロジェクトマネジメントの技を披露した本。ソフトウエアプロジェクトの本だと、必ずといってもよいくらい、開発マネジメントのテクニカルな話題に重心が置かれるが、この本は違う。目標のマネジメント、人のマネジメント、組織のマネジメント、コミュニケーションのマネジメント、アイディアのマネジメントなど、本来のプロジェクトマネジメントのイシューを中心にして組み立てられている。具体的な内容は、目次を参考にしてほしいが、開発マネジメントについても、手法ではなく、仕事の進め方としてのポイントが書いてある。

ソフトウエア開発プロジェクトは、ハードウェアのプロジェクトとは違うと主張する人がよくいる。プロジェクトファシリテーションなどが妙にはやっているのもその流れだと思割れる。

しかし、この本を読んでいると、決してそんなことはないと思い知らされるだろう。ソフトウエアという商品の特性は確かにある。

しかし、そこで必要なマネジメントはハードウェアや、ソフトウエア以上にソフト的なサービス開発プロジェクトとなんら変わらない。マイクロソフトという会社のやり方は昔から何かと批判の対象になることが多かった。古くはDOSをめぐるビジネスのスタンス、Windowsに代表されるGUI環境ビジネス、最近ではインターネットへのアプローチなどだ。しかし、結局、最後に勝つのは、MSだった。

その秘訣はマネジメントがビジネスを意識したものであることと無縁ではないだろう。この本は、プロジェクトマネジメントに関心を持つ人に読んでほしいのはもちろんだが、もう少し、広く、マネジメントに関心をもつ人にもぜひ読んでほしい一冊である。ソフトウエアエンジニアリングの知識がない人が読んでも分からないところは少ないだろう。

マーケティングは50%がアートで、50%がサイエンスだといわれる。プロジェクトマネジメントもそういった側面がある。特に、MSが展開しているようなビジネスを強く意識したプロジェクトマネジメントはアートの要素が多い(エンジニアの人は自分たちの領域の方がアートの要素が多いと思っているかもしれないが、それは勘違い)。

その意味で、この本に書いてあることはまさに、プロジェクトマネジメントのアートの部分だ。

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2006年7月 2日 (日)

Presence

406282019601 ピーター・センゲ、オットー・シャーマー、ジョセフ・ジャウォースキー、ベティ・フラワーズ(野中郁次郎, 高遠 裕子訳)「出現する未来」、講談社(2006)

お奨め度:★★★★★

人格の成長を前提とした問題解決を行うU理論を中心にして、個人や企業の在り方を問う一冊。

久しぶりの5つ星。「The Fifth Discipline」(邦訳「最強組織の法則」)を書いた組織学習のグル ピーター・センゲの新著。15年前に「The Fifth Discipline」を最初に読んだときには、何かよく分からなかった。学習する組織には

システム思考(systems thinking)
自己マスタリー(personal mastery)
メンタル・モデルの克服(mental models)
共有ビジョン(shared vision)
チーム学習(team learning)

の5つのディシプリンが必要だという理論を目の前にして、一つ一つの要素の意味と、組織学習の関係はなんとなく分かるが、この5つといわれたときに、ピンとこなかったのをよく覚えている。その後、何度か読み直して、本当に分かったのは、守部信之氏による翻訳本を読んだときだった。これは一つには言葉の壁があった。例えば、masteryという言葉があるがこの言葉は日本語にはないと思う(ちなみに、この本のフィールドブックの翻訳者であるスコラコンサルティングの柴田氏は「自己実現」と訳されている)。しかし、今回の本は、日本語で読んでも難しい点がたくさんある。

この本の原著のタイトルは「Presence」である。たぶん、この言葉に適切に対応する日本語はないのではないかと思う。著者の野中先生と高遠さんは「出現する未来」という訳をつけられている。この訳はよく分かる。

今回の本は、「U理論」なる理論を提唱する本である。一言でいえば、自らが唱えているアクションラーニングについて書いた本であるが、この本の視座としては、学習には人間の生き方があるというものである。

U理論は仏教に基づく考え方で、二元論的な判断を中止し、全体を内省することによって、より正しい行動が直感的に生まれ、結果として自然に、素早くできるようになるという考え方。

具体的には、以下の3つのステップで構成される。

第1ステップ(Sensing):見るということを知る。
1.保留 - 習慣的な思考の流れから自分自身を切り離す
2.転換 - 生成過程に目を向ける
3.心の目でみる - 我執などを捨てること。これは presensing にもかかわる
第2ステップ(Presensing):プレゼンス
1.手放す - sensingにもかかる。
2.受容
3.結晶化 - 気づき(Mindfullness)が明確に現れること。これはrealizingにも関わる
第3ステップ(Realizing): 自然の力になる
1.目的の結晶化
2.プロトタイピング
3.システム化

前著もそうだが、この本はもっと深く考えないと理解できない。いよいよこの領域に入ってきたかという感じの一冊である。

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学習する組織のバイブルから、未来のマネジメントのバイブルへ

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ピーター・M. センゲ:「最強組織の法則―新時代のチームワークとは何か」、徳間書店(1995)

お奨め度:★★★★★

組織学習のバイブル。組織がシステムであることを正視させる本。組織論の分野でも大きな影響を与えている1冊である。

この本では、学習する組織では

自己マスタリー(personal mastery)
メンタル・モデルの克服(mental models)
共有ビジョン(shared vision)
チーム学習(team learning)

の5つの原理と、これらを統合するシステム思考(systems thinking)の5つの原理が必要だと述べている。

組織論として、ひとつの理論だが、ビジネスシステムという概念で企業やビジネスを見た場合、本書のような視点で組織を捉える意味は大きく、また、発展性がある。90年代終わりからずっとビジネス、とりわけ組織に大きな影響を与えてきた1冊であるが、真価がはっきりするのはむしろ、これからかもしれない。

ビジネスマンとしては、ぜひ、読んでおきたい1冊である。

また、この本には、2冊のフィールドブックがある。

453231075x09 一冊は5つの法則を如何に適用していくかを解説した本である。

ピーター・センゲ(柴田昌治訳)「フィールドブック 学習する組織「5つの能力」 企業変革を進める最強ツール」、日本経済新聞社(2003)

フィールドブックであるので、5つの原則が何を言っているのかが具体的な行動像を通じてよく分かる。もちろん、フィールドブックとして実際に使えるようなレベルのものである。

もう一冊は、5つの原則を実行するために、組織にはどのような変革課題があるかを解説し、その課題を解消するためのフィールドブックがある。上のフィールドブックとの関係としては問題解決編453231131409_1という位置づけになっている。

ピーター・センゲ(柴田昌治、牧野元三、スコラコンサルト訳)「フィールドブック 学習する組織「10の変革課題」―なぜ全社改革は失敗するのか?」、日本経済新聞社(2004)

学習する組織の構築の具体的なヒント、フィールドワークの指針も得られる貴重な本だ。必ず併せて読みたい。

(初稿:2005年3月2日)

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2006年5月11日 (木)

3つの自問

483795666101lzzzzzzz ダニエル・ピンク(大前研一訳)「ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代」、三笠書房(2006)

お奨め度:★★★★★

ダニエル・ピンクの最新作。3つの「自問」で大変な話題になった本の邦訳。大前研一が翻訳し、自ら、解説を書いている。

3つの自問とは、これからの成功者と脱落者を分ける自問と名づけられ、

1)この仕事は他の国ならもっと安くやれるだろうか

2)この仕事はコンピュータならもっと速くやれるだろうか

3)自分が提供しているものは、豊かな時代の非物質的で超越した欲望を満足させられるだろうか?

の3つである。

実は、ダニエル・ピンクがこのような価値観を主張したのは、この本ではなく、フリーエージェント社会である。

447819044509lzzzzzzz ダニエル・ピンク(池村千秋、玄田有史訳)「フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか」、ダイヤモンド社(2002)

個人的にはこちらの本の方が含蓄があり、面白いと思うが、ハイコンセプトでは、その価値観を具体的な6つのセンスとして表現している分、イメージが分かりやすい。6つのセンスとは

・機能だけでなくデザイン

・論理ではなく共感

・議論よりは物語

・まじめだけでなく遊び心

・個別よりも全体の調和

・ものよりも生きがい

いよいよ、日本人の文化、生き方、価値観を見直す時代がきたのではないだろうか。

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2005年12月 7日 (水)

ドラッカー 365の金言

447830073909lzzzzzzz P.F.ドラッカー(ジョゼフ・マチャレロ編、上田 惇生訳)「ドラッカー 365の金言」ダイヤモンド社(2005)

紙版><Kindle版

お奨め度:★★★★★

The Daily Drucker!

つい最近、逝去したドラッカー先生の言葉から375点を選び出した金言集(ドラッカー逝去:https://mat.lekumo.biz/pm/2005/11/post_911d.html)。

ドラッカー先生の名言集は2003年に一度、出版されている。

P.F.ドラッカー(上田 惇生訳)「仕事の哲学」、ダイヤモンド社(2003)
P.F.ドラッカー(上田 惇生訳)「経営の哲学」、ダイヤモンド社(2003)
P.F.ドラッカー(上田 惇生訳)「変革の哲学」、ダイヤモンド社(2003)
P.F.ドラッカー(上田 惇生訳)「歴史の哲学―そこから未来を見る」、ダイヤモンド社(2003)

これを全部買っているでの、迷ったが、装丁がきれいだし、選ばれている言葉も好きなものが多かったので、結局買った。ドラッカーファンであれば持っておきたい1冊。

365なので、タイトルのごとく、デイリーなのだが、結局、買った日に読んでしまった(笑)。ドラッカーの言葉はメールマガジンを書くときに本当にインスピレーションを与えてくれる。いい本が出た。447833103009lzzzzzzz447833102209lzzzzzzz447833104909lzzzzzzz447833105709lzzzzzzz

2005年8月30日 (火)

文化をエンジニアリングする

4822244679ギデオン・クンダ(金井壽宏監訳、樫村志保訳)「洗脳するマネジメント~企業文化を操作せよ」、日経BP社(2005)

お奨め度:★★★★★

ハイテク企業のエスノグラフィーとして、クスノマ教授の「マイクロソフトシークレット」と並ぶ名作 " Engineering Culture Control and Commitment in a
high Tech Corporation"の翻訳。こちらは対象企業はDEC。

マイクロソフトシークレットが開発プロセスに注目しているのに対して、こちらは組織、特に、組織文化に注目している。

ギデオン・クンダのつけたタイトル Engineering Culture には2つの意味があるそうである。一つは文字通りに、エンジニアリングに適した組織文化という意味であり、もうひとつはカルチャーをエンジニアリングするという意味。

邦訳にこのようなタイトルをつけた経緯については、監訳者である金井先生が巻末に相当な分量の解説を書かれているが、その中で触れられている。

このエスノグラフィーを読むと、プロジェクトと組織の関係も含めたプロジェクトマネジメントにおいて、組織文化がどのような役割を果たしているか、そして、それをどのように構築していくかが手にとるように分かる。

これから組織の成熟度向上に取り組んでいこうという人にはお奨め。プロジェクトマネージャーの方には、むしろ、マイクロソフトシークレットの方をお奨めする。

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2005年7月31日 (日)

テクノロジストの条件

4478300720 ピーター・ドラッカー(上田惇生訳)「テクノロジストの条件    はじめて読むドラッカー (技術編)」、ダイヤモンド社(2005)

紙版><Kindle版

お奨め度:★★★★★

ドラッカーの著作を読んでいると、その端々に、技術に対する非常に深い造詣を感じることがある。ただ、その全体像が見えなかった。

このように著作集として整理されると、改めて、ドラッカーの技術に対する造詣の深さに改めて驚かされるばかりである。

MOTにかかわっている人はもちろんであるが、技術者として、目先の技術を追いかけるだけではなく、高い志をもち、技術による社会貢献に取り組んで行きたいと考えている人に特にお奨めしたい。

また、最近、MOTブームの一方で、飛行機や鉄道などでは、技術軽視によると思われる災害、事故が目につく。また、携帯電話などの電子商品では技術、あるいは技術者の社会的な責任を全うしていない事例が目につく。もう一度、技術者、あるいは技術のスタンスを考え直す時期に来ている。

そのような時期にぜひ読んでみたい1冊である。

また、あわせて、

プロフェッショナルの条件~いかに成果をあげ、成長するか

https://mat.lekumo.biz/books/2005/02/post_4.html

チェンジリーダーの条件~みずから変化をつくりだせ!

https://mat.lekumo.biz/books/2005/06/post_7754.html

イノベーターの条件~社会の絆をいかに創造するか

https://mat.lekumo.biz/books/2005/06/post_234dB0084066JM.html

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2005年6月 1日 (水)

イノベーターの条件

4478300623 ピーター・ドラッカー(上田惇生訳)「 イノベーターの条件―社会の絆をいかに創造するか」、ダイヤモンド社(2000)

紙版><Kindle版

お奨め度:★★★★★

ドラッカーの論文集第3弾で、社会構造の変革について述べた著作を集めている。ひとつひとつの論文を見ると、さすが、ドラッカーという含蓄の深い論文ばかりであり、また、言及している範囲も経済だけではなく、政治、教育など、非常に広範な範囲で言及されており、深く読むと、これらが、非常に深く関連していることが分かる。

ドラッカーの社会論の中で興味深いのは、NPOの議論である。NPOの重要性を古くから訴えてきた一人がドラッカーであるが、ここにきてやっと、予測した未来が現実のものになりつつある。その流れを検証するにも絶好の1冊である。

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