2007年5月16日 (水)

社会人のための経営学教科書

4641183481 上林憲雄,奥林康司,團泰雄,開本浩矢,森田雅也,竹林明「経験から学ぶ経営学入門」、有斐閣(2007)

お奨め度:★★★★

大学の先生の書いた経営学の本。失礼な言い方かもしれないが、大学の先生にこんな本がかけるとは思わなかったという一冊。

易しい経営学の本は結構ある。代表格は老舗であり、第3版を重ねているやはりこの本だろう。

453213247909 伊丹敬之、加護野忠男「ゼミナール 経営学入門」、日本経済新聞社(2003)

確かにやさしいし、書籍としても名著だと思うが、基本的には、教科書として学生向けに書かれた本である。MBAコースに行っていたときに、このギャップを感じることが多かった。加護野先生自身はいろいろな経験や知識をお持ちで、講義の中では現実との結び付けをしてくださるのだが、教科書はそうではないので、あまり、読む気にならなかった記憶がある。

その点、上林先生たちが書かれたこの本は、まさに経営の現場で働いている人たちが読める本である。実際に会社で行われていることや、おかれている環境、あるいは、自分たちのやっていることと経営理論をうまく結びつけて書かれている。

従って、経営論が何を意味しているのか、実感として分かる非常に素晴らしい本である。

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2007年5月14日 (月)

現場マネジャーのためのMBA

4757211228 スティーブン・ストラッザー(高橋則明訳)「MBAベイシック・マスター」、アスペクト(2005)

お奨め度:★★★★

実践的でないMBAのテキストというのはないのかもしれないが、非常に現場重視のMBAのテキストである。現場マネジャーにお奨めしたいMBAテキストである。

現場重視だと思う理由はいくつかあるが、まず、人間系から入っていることである。MBAのテキストは戦略マネジメントから入るものが多いが、実際に現場で使うのは人間系の知識だろう。チームビルディング、ネゴシエーション、リーダーシップなどの項目が並んでいる。この並びに、コンプライアンスがきているのも評価できる。

次がアカウンティングとファイナンス。そして、その次に戦略がくる。説明は簡潔で、すっと読める。

最後に、プロセスとシステムのマネジメントが取り上げられている。日本で出版されているMBAのテキストではあまりお目にかからない項目である。ここでは、

プロジェクトマネジメント

品質マネジメント

経営情報システム

などの項目が並んでいる。

現場マネジャーで、見よう見まねでやってきたが、限界を感じている人が多い。MBAコースで体系的にマネジメントを学ぶというが理想だろうが、現場マネジャーは忙しくて、そんな環境にはないという人が多いのも事実。そんな人が、とりあえず、手っ取り早くマネジメントを勉強したいという人にお奨めの一冊である。

そのあと、もう少し、詳しく勉強したければ、こちらがお奨め

現場を動かすマネジャーのノウハウ

https://mat.lekumo.biz/books/2006/04/post_8cab.html

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2007年5月11日 (金)

できるマネジャーを目指す人に!

4887595468 ローレン・ベルカー、ゲイリー・トプチック(ディスカバー・クリエイティブ編)「マジマネ1 できるマネジャーになる! 」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2007)

お奨め度:★★★1/2

新任マネジャー向けのマネジメント入門書。できるマネジャーになるための心構えと行動指針、マネジメントの仕事のポイントについて整理されている。

部下のやる気と強みを育てるという副題があるように、

どうやって部下をやる気にさせるか
プロフェッショナルな部下を育てるにはどうするか
褒め方や注意の仕方で気をつけるべき点は何なのか

といった部下との接し方を中心にした現場マネジメントのノウハウ以外にも、ユーモアとか、身だしなみといったマネジャーとしての振舞い方についても書かれているのが特徴。

このブログでも類書はいろいろと紹介しているが、何か、一冊本を読んで、マネジャーとしてのスタートを切りたいと思っている人にはお奨めしたい一冊である。

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2007年5月 9日 (水)

コミットメントを熟知しよう

4478000999 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部編集「コミットメント 熱意とモラールの経営」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★

ハーバードビジネスレビューの中から、コミットメント経営に関する論文をまとめた論文集。コミットメントというのは日本語でいえば、公約である。

日本では公約というのがそうであるように、コミットメントというのがどうも、かなり精神的な約束として理解されている気配がある。このため、人によっては、コミットメントを忠誠といった訳しかたをする人もいる。コミットメントとロイヤリティは強い関係があるが、別の概念である(この議論はこの本の8章でも出てくる)。

例えば、プロジェクトマネジメントの分野でコミットメントは計画に基づいて行われる。つまり、定量的な目標に対して、その達成を約束するのがコミットメントの管理である。

ある意味でわかりにくい概念であるが、この本は8つの論文をうまく集めて、コミットメントマネジメントを実行するために必要な要素をつまくつむいでいる。チームマネジメントの中核にコミットメントマネジメントをおきたい人にはお奨めした一冊である。

ハーバードビジネスレビューの論文集なので、決して読みやすい本ではないが、苦労して読めば、それなりの対価は得られるだろう。

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2007年5月 8日 (火)

PMBOK読本

4774122572_3 司馬 紅太郎「空想プロジェクトマネジメント読本」、技術評論社(2005)

お奨め度:★★★1/2

「機動戦士ガンダム」、「ガラスの仮面」、「あしたのジョー」、「宇宙戦艦ヤマト」、「エースを狙え」、「ゴルゴ13」、「冬のソナタ」、「仮面ライダー」、「サイボーグ009」、「ウルトラマン」という聞けば誰でも知っているようなアニメやドラマをネタに、PMBOKの説明をした一冊。

本のつくりとしては、アニメやドラマのあらすじを紹介し、その上で、登場人物の行動や、ストーリーについて、PMBOKではどのように説明できるか、あるいは、PMBOK的に見てその行動やストーリーをどのように評価できるかということを書いていっている。

読本という名がついている割には、書いてある内容が難しく、PMBOKかアニメのどちらかを知らないと、著者の言いたいことをあまり、理解できないのではないかと思う。

ただ、アニメのストーリーを知っている人がPMBOKの「知ったかぶり」をするために読むプロジェクトマネジメントの本としてはたいへん役に立つ。知識を切り刻んで並べ立てる図解本よりはずっとよい本だと思う。この本を読めば、きっと本に書かれている以上のことを語ることができるだろうしl、その中に真実があろう。

同じような試みに、「ウルトラマン研究序説」という本がある。この本はウルトラマンという「空想プロジェクトマネジメント読本」でも取り上げられているひとつのSFをネタにして、組織論的な観点から、科学特捜隊やウルトラマンを評価している。「ウルトラマン研究序説」の作者の一人である金井先生がゼミで言われていたが、この本は真剣に研究して書いた。それゆえに、一般のケースストーリーでは出てこないようなインプリケーションが得られた立派な研究だと評価できるとのこと。

「空想プロジェクトマネジメント読本」の中で取り上げられている中で、一番、プロジェクトマネジメント本向きなのは、「宇宙戦艦ヤマト」だろう。この本の中ではリスクマネジメントの説明に使われているが、今度はぜひ、沖田艦長、古代進、島大介などの活躍から、現実のプロジェクトでは得られないようなプロジェクト成功の知見を研究してほしい。

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2007年5月 7日 (月)

ゴーポイント

4757213751 マイケル・ユシーム(村井章子訳)「一瞬の判断」、アスペクト(2007)

お奨め度:★★★★1/2

あらゆる意思決定は最後はゴーポイント(一瞬の判断)に行き着く。ゴーポイントとは

情報収集が完了し、計画の是非が論じつくされ、はっきりと態度を決めなくてはならない瞬間

である。ゴーポイントにおいては、今、すぐに何をするかという判断を迫られることが多い。先送りは許されない。この本は、ゴーポイントにおいて、勘やひらめきに頼ることなく、決断を行うための方法を述べた本である。この本で述べられている決断の公式は以下の9つである。

1.決断を恐れる気持ちを克服する
2.強い信念を持つ
3.振り返らない
4.冷静に準備する
5.困難な決断から逃げない
6.重大な責任を引き受ける準備をする
7.小さな決断を積み重ねる
8.状況を見極める
9.心の奥底の決意を知る

9つの決断もなるほどと思わせるものだが、本としては、この9つの決断の公式を説明するために使っている事例が面白いので、読み物としても面白い一冊になっている。

日本のマネジャーはゴーイングポイントまで持っていくことは得意だが、肝心の決断ができない。9つの公式、それぞれについてできていないことがあるように思うが、その中でも決断できる人の行動をみていると、特に7.をうまくやっている。

自分の行動を振り返りながら、読んでみよう!

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2007年5月 4日 (金)

マネジメントツールキット

4833418533_2 金健治「「管理職」のための七つの道具術―図表やチャート、シートを満載」、プレジデント社(2007)

お奨め度:★★★★

比較的オーソドックスなマネジメントの体系を全体をツール(フォーマット)やプロセスにして提供している本。自分のマネジメントスタイルを紹介した本というのは結構多いが、この本のように体系的なものはあまりなく、いままでありそうでなかった本だといえる。

扱っているテーマは

・役割を明確にする

・人を育てる

・部下を評価する

・コミュニケーションする

・職場を束ねる

・目標実現

・問題解決

の7つで、ほぼ、マネジャーの仕事の範囲をカバーしている。

この本の価値は一般性にあるように思うが、逆にこのままでは使えない(使う場面で一工夫必要である)というジレンマがある。ある意味で標準化アプローチなのでこの本が云々というよりも本質的な問題である。

僕としては、このような試みをしたことを評価したい!

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2007年5月 2日 (水)

プロジェクトを成功させるリーダーシップ

4062134543 ジョン・サルカ、バレット・ネヴィル(道幸武久監修、甲斐理恵子訳)「人を動かす 火事場の鉄則」、講談社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

2004年に9・11テロの際にニューヨーク消防局のリーダーであったジョン・サルカが1冊の本を出して話題になった。日本でも、ビジネス誌で紹介されているのを見たことがある。

1591840252 John Salka、Barret Neville「First In, Last Out: Leadership Lessons from the New York Fire Department」、Portfolio(2004)

という本である。文字通り、最初に飛び込んで最後まで残るという行動規範(プロデュースした道幸氏の言葉では率先垂範)に基づくリーダーシップについて述べた本だ。

この本、読みたかったのだが、思わぬ形で翻訳が出た。翻訳というのは正しくないかもしれない。今、話題の新進気鋭のビジネスプロデューサ 道幸 武久氏が、単なる翻訳としてではなく、自らとのコラボレーション本としてプロデュースしたのだ。

消防士のように極限で、迅速な判断を要求される業務では、一人ひとりがリーダーシップを持たなくてはならない。リーダーや、マネジャーだけがリーダーシップを持っていても、全体は回っていかない。ジョン・サルカ氏のリーダーシップ論は、そのようなリーダーシップ論であり、そのような伝統的なリーダーシップがニューヨーク消防局にはあったので、多くの人を死なさずに助けることができた。

このようなリーダーシップこそ、プロジェクトを成功させるリーダーシップである。

このリーダーシップ論に共感する道幸 武久氏も、負けずと持論を展開し、全体として非常によくまとまった本になっている。この本の構成はオリジナルの本に章単位で道幸氏の章が混じっているような構成になっている。実は、最初、余計なものが入っている(失礼!)と思って、オリジナルの部分だけを選って読んだ。そのあとで、全部を通して読んだが、全部読んだ方がよい本だということがわかった。道幸氏の企画力はさすがである。

この本はいわゆるリーダーに読んで欲しい本なのだが、それ以上に、メンバーの立場で仕事をしている人と、管理職の立場で仕事をしている人にぜひ、読んで欲しい一冊である。

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2007年4月30日 (月)

プロジェクト力を身につけよう!

4862800106 諸藤一郎、中嶋秀隆「「プロジェクト力」で仕事を変える! 」、総合法令出(2007)

お奨め度:★★★★

仕事力=「専門力」×「プロジェクト力」

という方程式を立て、プロジェクト力として、見積もり力、スケジュール力、調整力、変更力、記録力、コミュニケーション力を身に付けていく方法を説明した一冊。

本書は2部構成になっており、第1部では著者の仕事観が述べられている。第2部がメインで、日常業務において、なぜ、プロジェクト力とは何か、なぜ、必要なのか、そして、プロジェクト力の基になるプロジェクトマネジメントの手法を説明している。

ビジネスパーソン向けのプロジェクトマネジメントの入門書としては、ポイントが押さえられており、また、説明も簡潔でプロジェクトマネジメント専門知識がなくても理解できるので、たいへんよい本だと思う。

ただ、本書のセールスポイントである日常業務にプロジェクトマネジメントを適用するという部分については、イマイチ、ピンとこなかった。これはこの本の問題ではないかもしれない。本質的に、プロジェクトマネジメントのマネジメント視点で日常業務のマネジメントをすることには無理があるような気がしなくもない。

マネジメントとして行うべきことはほとんど変わらないと思うが、マネジメントフォーカスが違うのではないかと思う。つまり、メリハリをつける部分が違うのではないかと思う。これがピンとこなかった理由かもしれない。

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2007年4月27日 (金)

企業から人に

4862761003_01__sclzzzzzzz_v23803313 ジェリー・ポラス、スチュワート・エメリー、マーク・トンプソン(宮本喜一訳)「ビジョナリー・ピープル」、英治出版(2007)

お奨め度:★★★★1/2

10年前にたいへん多くの人に読まれた

4822740315_09__sclzzzzzzz_v44479440 ジェームズ・コリンズ、ジェリー ・ポラス(山岡洋一訳)「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則」、日経BP出版センター(1995)

の著者の一人、ジェリー ・ポラスが、ビジョナリーカンパニーを支える人を描いた本。ジェリー ・ポラスとは

自分の道を追求しつづける人たちがいる。
ひたむきに、真っ直ぐに、生きていく人たちがいる。
自らのビジョンに向かって突き進み、
彼らは新しい時代を切り拓く。
彼らは、世界に変革を巻き起こす。

人々をビジョナリーピープルと呼んでいる。この本では多くの人を、ビジョナリーピープルの例にとりながら、

意義

行動スタイル

思考スタイル

について整理している。読むと元気になる本だ。

ビジョナリーピープルの基本的な発想は

長期間にわたって続く成功と密接な因果関係があるのは、個人にとって重要な何かを発見することであって、企業にとっての最高のアイデア、組織構造、ビジネスモデルではない、という原則だ。というのも、思考と感情が互いに情報を交換し合い、創造性が生まれ、いつまでも続く組織が生まれ出る潜在的な可能性があるのは、まさにこの個人的なレベルだからだ。

という発想にある。この発想は、最近、注目されている「クリエイティブ・クラス」に近いものである。併せて読んでみよう。

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2007年4月25日 (水)

内部統制を学ぼう

4532313066_01__sclzzzzzzz_v46446930 平野和久、三木晃彦、木村善一(西川郁生監修)「ドラマで学ぶ実践・内部統制―「何をどこまでやればいいか」が手にとるようにわかる」、日本経済新聞出版社(2007)

お奨め度:★★★★

このブログでは、いままで、あまり、内部統制の本を取り上げてこなかった。現在のところのニーズを踏まえているのだと思うのだが、専門書の類の本か、ほとんど内容がない図解本かのいずれかしかなかったからだ(それでも売れているという)。

このテーマが難しいのは、どこにフォーカスして出版するかだと思う。会計・財務部門や、内部統制構築プロジェクトの従事者などにむけた本はある。しかし、内部統制を成功させるには、一般社員の(かなり深い)理解がポイントになる。ここが一般ビジネスマン向けのセグメントになると思うが、これがないのだ。

そのような中でこの本は、一般のビジネスマンにお奨めできる本である。内部統制の説明から、構築、フォーローまでが、夏目マリという経営企画室のスタッフがリーダーになるプロジェクトの様子を物語りにして書かれている。

構築過程が読みやすく書いてあるし、一般の社員が何を求められるか、どう会社が変わって行くかも具体的に分かる。非常によい本である。

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2007年4月23日 (月)

プロジェクトマネジメントの現場は何をしているか?

4822229793_01__sclzzzzzzz_v22419140 能登原伸二「プロジェクトマネジメント現場マニュアル」、日経BP社(2007)

お奨め度:★★★1/2

現場視点から、システム開発プロジェクトのマネジメント方法論をまとめた一冊。

プロジェクトマネジメントというよりも、開発マネジメントに重点が置かれている。現場フォーカスでは結局こういうことになるのだろうと思う。何を、どうするかが非常に明確に書かれている。

ITプロジェクトマネジメントのPMBOKには手をつけにくいという話がある。

開発マネジメントのあり方は開発方法論に依存し、プロジェクトマネジメントは開発マネジメントとの微妙な関係が出てくるが、開発方法論が非常に多様さがプロジェクトマネジメントの定型化のネックになっている。

この本は、この分野では比較的老舗になるジェームス・マーティンの方法論に基づいているようだが、はやり、クセがある(現場マネジメントなので、クセという言い方はよくないか。現実だ)。

その点を心得て読むならば、非常にやさしく書かれているし、ポイントも適切だと思うので、お勧めの一冊である。

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2007年4月20日 (金)

クリエイティブ・クラスを目指そう!

447800076x_01__sclzzzzzzz_v23679609 リチャード・フロリダ(井口典夫訳)「クリエイティブ・クラスの世紀~新時代の国、都市、人材の条件」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

リチャード・フロリダは都市経済学者である。フロリダによると、今、経済はクリエイティブ・クラスと呼ばれる人材がリードするという時代に入ったという。本書はその論文である。

クリエイティブ・クラスというのをひと言で言うのは難しいが、新しい概念ではない。15年前にピーター・ドラッカーがナレッジワーカーの時代であると指摘したが、クリエイティブクラスそのものはナレッジ・ワーカーである。

ただし、ナレッジワーカーの中で、リードしていける、イノベーションを引き起こすることのできるナレッジワーカーであり、フロリダの主張はそのようなクラスのナレッジワーカーが経済を引っ張り出しているというのだ。

ドラッカーのいうように、いまや、先進国におけるほとんど仕事は知識労働になっている。言い換えると、労働者の多くはナレッジワーカーである。知識労働における価値の増大はイノベーションが全てであるといってもよい。そう考えると、この流れは自然な流れである。

表紙で紹介されているカーデザイナーの奥山清行氏の言葉が印象的である。

「トヨタの成功の理由は製造現場のクリエイティブ・クラスにある」

マネジャーのクリエイティブ・クラスとは、通常ではできないような目標をイノベーションによりクリアしていくような人材であろう。クリエイティブであるかどうかが、これからのマネジャーの評価基準になることをこの本は教えてくれる。

特に30代の人は時間をとってでもじっくりと読んでみて欲しい。人生観が変わるかもしれない。

2007年4月18日 (水)

プロフェッショナルの16か条

4901841564_01__sclzzzzzzz_v24117200 浜口直太「最後のルール―プロフェッショナルになる16条件 THE RULES OF BUSINESS」、ジービー(2007)

お奨め度:★★★★

「あたりまえだけどできない」シリーズで一躍名を馳せた浜口直太氏の新著。

ビジネスの最終結論だということで、プロフェッショナルとしての16の条件というのを述べている。目新しくはないが、非常に説得力があるし、はやり、書き方がうまい!各条件について、できそうなことをうまく選んで書いている。動機付けされること間違いなし!

条件★1 仕事に人生をかける
条件★2 不可能を可能にするために限りなき努力をする
条件★3 自分の仕事に誇りを持つと同時に謙虚に言動する
条件★4 先や時代を読んで仕事をする
条件★5 時間より目標を達成させるために仕事をする
条件★6 高い志、理念、目標に向かって邁進する
条件★7 結果に全ての責任を持つ
条件★8 成果によって報酬を得る
条件★9 仕事において甘えがない
条件★10 能力向上のために常に学び、努力し続ける
条件★11 仕事を通して人間性・能力を高める
条件★12 謙虚にかつ貪欲に誰からも学ぶ
条件★13 仕事を通して周りの人に夢と感動を与える
条件★14 仕事のために自己管理を徹底させる
条件★15 尊敬できる人を持ち、その人から徹底的に学ぶ
条件★16 真剣に人材(後輩)を育成している

2007年4月16日 (月)

エンドユーザに待望のプロジェクトマネジメント解説書

4822262081_01__sclzzzzzzz_v234144_5 KPMGビジネスアシュアランス「ユーザーのためのプロジェクトマネジメント実践講座―計画からベンダー選定、進捗管理、本番移行、評価まで全33講座」、日経BP社(2007)

お奨め度:★★★1/2

情報システム導入プロジェクトのポイントを33の講座の形で解説した一冊。情報技術に関わる話から、プロジェクトマネジメントの方法、プロジェクトマネジャーの育成、PMOまで網羅的にポイントを抑えており、ユーザ企業には待望の一冊。

どのようなポイントについて解説されているかは、目次を見て欲しい。

ただし、全般的にベンダー側の視点から、ユーザが個のような対応をすればプロジェクトがうまく行くという色合いが濃い。情報化プランの策定についても、コンサルティングベンダーの考え方が色濃くでているように思う。

一般的に情報化プロジェクトは、ビジネスプログラムの一プロジェクトとして実際されることが多いが、プログラム中のプロジェクトのマネジメントとは若干ずれがある。

その点をよく理解した上でよめば、まさに待望の一冊になるだろう。

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2007年4月13日 (金)

人をあきらめない組織

4820717030_01__aa240_sclzzzzzzz_v2488359_1 HRインスティテュート(野口吉昭編)「人をあきらめない組織―育てる仕組みと育つ現場のつくり方」、日本能率協会(2007)

お奨め度:★★★★1/2

如何に人を育てるかという切り口で、あるべき人を育てる組織になる方法を説いた一冊。

非常に力強いメッセージ「人をあきらめない組織」を作るには、

 プリンシプル(絶対的な人づくりへの理念と意志)
 ウェイ・マネジメント(人づくり遺伝子の仕組み化)
 モチベーション・エンジン(やる気を挽き出すコミュニケーション基盤と進化)

という3つの要素が必要であり、それぞれについて以下のような要素が必要であると説いている。

プリンシプルには

・トップマネジメントの行動・意志

・人に対する信念の存在

・周囲の意識・行動から見える浸透

などが必要である。ウェイマネジメントには

・尊敬できるリーダーシップがあるか

・人材育成・開発の仕組み

・習慣・口ぐせ

が必要である。三番目のモチベーションエンジンには

・オープンコミュニティ

・自己主張・提案できる環境

・チーム意識を醸成する環境

が必要である。

この本では、それぞれの要素について、診断を踏まえて、どのような取り組みをすればよいかをフレームワークとして提示しているので、実践的に使える一冊だ。

2007年4月11日 (水)

鷲、龍、桜

4087203816_01__sclzzzzzzz_v44667512_aa24 キャメル・ヤマモト「鷲の人、龍の人、桜の人米中日のビジネス行動原理」、集英社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

キャメル・ヤマモトさんは僕が共感を覚えるコンサルタントの一人だ。多数の著作を世に出しており、理論の深堀の度合いにはいろいろと批判もあるようだが、実践的なフレームワークを作っている点は深く評価したい。とくに、

4492532196_01__sclzzzzzzz_aa240_グローバル人材マネジメント論―日本企業の国際化と人材活用」、東洋経済新報社(2006)

や、

4532311160_09__sclzzzzzzz_v46957813_aa24稼ぐチームのレシピ」、日本経済新聞社(2004)

などで見られるダイバーシティに富んだマネジメント論は共感を覚える部分が多い。

さて、そのキャメル・ヤマモトさんの原点ともいえるような本が出た。この本。例によって、きっちりフレームワークにはめて説明している。この本では、日本、米国、中国の行動原理を、「行動文法」という規律で要約し、それをベースにして、金銭観、キャリア観、組織観の違いを説明している。

ベースになる行動文法は以下のようなもの。

米国:スタンダードを自由に決めて守らせる

日本:働く「場」のいうことをきく

中国:1対1の関係で仲間(圏子)を作る

この行動文法によって、金銭観、キャリア観、組織観に以下のような違いが出てくるというのがキャメル・ヤマモトさんの主張。

           米国人         中国人        日本人

・金銭観      カテバリッチ教    学歴圏金       結果金 
・キャリア観    アップ・オア・アウト  リスク分散       職人染色 
・組織的仕事観  分ける人           はしょる人        合わせる人

ステレオタイプかもしれないが、なかなか、面白い分析である。少なくとも、米国流の考え方を適用して失敗するケース、中国人を相手に仕事をしてトラブルケースでは、この分析は当たっていることが多いと思う。

問題はこれを知った上で、どのようにグローバル化をしていくか、どのようにダイバーシティを取り込んでいくかだ。その点で、上に上げた2冊の本も含めて、役立つ本である。  

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2007年4月 9日 (月)

日本人ビジネスマンも捨てたものじゃない

4478000395_01__aa240_sclzzzzzzz_v4228015 マーク・フラー (著), ジョン・ベック(グロービス経営大学院監修)「サムライ人材論―アメリカがうらやむ日本企業の強み」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★

日本は再生がお家芸だと得著者がキーワードに挙げるのが、「武士道」精神。乱世を生き延び、志を持つサムライ人材こそが、日本独自の強みだという。

この本は、このサムライ人材なる人材について、強みという視点から、特性を分析している。同時に、話は組織論までに、および、武士社会の縦型組織のよい点についても分析している。

このような分析に基づいて、日本企業は侮れないという結論をしている。

結構、おっと思うような指摘がある。特に、サムライの階層とのバランスを考えたリーダーシップ論は非常によいヒントになる。

ハンバーガーを食べ飽きて、おバンザイを懐石料理だといっているような気がしないでもないが、彼が説いているマインドセットは確かに持っている人が多いと納得できるものだ。その意味で、日本人が参考にできる人材・組織論だといってもよいし、リーダーが読むとまた、違った意味で学ぶところがおおいだろう。

2007年4月 7日 (土)

コンサルティングってなんだ?

4822245713_01__aa240_sclzzzzzzz_v4212086_1 デイヴィド・クレイグ(松田和也訳)「コンサルタントの危ない流儀 集金マシーンの赤裸々な内幕を語る」、日経BP社(2007)

お奨め度:★★★1/2

シニカルなコンサルタント論。

「御社の人と組織には無駄が多過ぎます。まさに瀕死の恐竜なのです」「この戦略パッケージなしには、もはや業界で生き残っていくことはできません」といった巧言を操り、企業に入り込んでいく。

一旦、入ってしまえば、「実際、この20年間、雀の涙ほどの魅力や機転を適当な経営用語で粉飾すれば、何百万ドルものカネが我々の懐に転がり込んできた」という程度の仕事しかしない。

その様子を「目の玉の飛び出るようなカネを払って、餓えた狼を雇い、大事な鶏小屋の管理を任せるようなもの」だという。

さらに、IT革命が彼らに、ITコンサルティングという新たな活躍の場を与えたと嘆く。

言いたい放題だが、おおむね、当たっているように思う。

しかし、それを企業も知っているのだ。その上で、コンサルティングを採用する。ここに何があるのか、これが問題である。

コンサルティングとは何かということを深く考えさせてくれる一冊だ。クライアント向けに書かれた本だが、クライアントより、コンサルタントに読んで欲しい一冊だ。

読みようによっては、コンサルタントのマーケティング論である。ひとつ、確実にいえることは、このぐらいの論理展開ができない人は、おそらく、この本に書いてあるようなおいしい果実にはありつけないということだ。

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2007年4月 6日 (金)

コーポレートファイナンスを勉強しよう!

482224525x_01__aa240_sclzzzzzzz_v4483658 リチャ4822245268_01__aa240_sclzzzzzzz_v4483617ード・ブリーリー、スチュワート・マイヤーズ、フランクリン・アレン(藤井眞理子、国枝繁樹訳)

コーポレート ファイナンス第8版(上)

コーポレート ファイナンス第8版(下)

日経BP社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

コーポレートファイナンスのバイブル中のバイブル。1981年の刊行以来、8版を重ねている。

この版の特徴は、コーポレートガバナンスを解説した章ができたことだ。「コーポレートガバナンスと企業支配権(34章)」。ご時勢として、ビジネスマンはこの話題は避けて通れない

その意味で、特に、コーポレートファイナンスの専門家以外の人にお奨めしたい本だ。コーポレートガバナンス以外にも、ポートフォリオ理論、プロジェクトファイナンス、リアルオプション、NPV、リスクリターンなどビジネスのさまざまな場面で出てくる理論だが、普通の本であれば、概念だけか、難しい数式が並ぶ説明しかないような話。ところが、この本では簡単な数学の知識があれば「意味」が分かるような説明がされている。これは素晴らしいのひと言に尽きる!

今回から新たに加わった「ファイナンス・イン・ザ・ニュース」も、素人にも読んでいて楽しいし、クイズもある。

値段(上下で1万円)を考えると、ちょっと高い気もするが、一冊もっておいて、1年くらいかけてちょっとずつ読んではどうだろうか?

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