2007年7月 3日 (火)

企業を発掘し、育てる

4582833578 原丈人「21世紀の国富論」、平凡社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

原丈人さんは日本ではあまり知られていないが、米国ではたいへん注目されている実業家で、ボーランド、SCO、ピクチャーテル、ウォロンゴング、トレイデックスなどの企業の経営と育成を手がけて来られた方だ。ボーランド時代にはビルゲイツのライバルといわれ、またネットの時代になると、早くからドットコム企業のビジネスモデルは成功しないと断言し、ドットコム企業には一切投資をしなかったキャピタリストとしても有名である。

最近では、ポストコンピュータの産業育成の視点から日本や韓国の企業でも事業育成に携わられている。

その原丈人さんが日本の産業を念頭において書かれたポストコンピュータ産業育成論。4章までは、グローバルな視点からの産業論が展開されており、最後の5章で日本への提言がある。

原丈人さんの育成論の基本は企業への愛情に溢れている。いわゆるベンチャーキャピタルとは一線を画している。むしろ、ベンチャーキャピタルやストックオプションのあり方に対して、批判的で、ベンチャーキャピタルは、長期のリスクをとっても、企業を時間をかけて丁寧に育てるべきだという点で一貫している。日本の企業の現在的な育成にはぴったりの育成論ではないかと思う。

詳しい話はこの本を読んでみてほしいのだが、ぼくは比較的早くから原丈人さんというビジネスマンに関心を持っていた。きっかけは、大学院の金井壽宏先生のゼミで、11人のミドルにインタビューをして活動を紹介する「創造するミドル」という本の輪読があった。この本の中で、原丈人さんは「ベンチャーを創造する―会社と会社をつなげてきたひと」というセッションで紹介されている。

金井壽宏、沼上幹、米倉誠一郎編「創造するミドル―生き方とキャリアを考えつづけるために」、有斐閣(1994)

原丈人さんはビジネスマンになる前は考古学の研究者だったそうで、考古学の発掘とベンチャーの発見・育成は同じだという考えに感銘を受けた。この本は、まさにこういう視点で書かれた産業育成、事業育成論が展開されている。

分析する視点は鋭く、独自性があり、丁寧に育てるという原丈人さんのスタンスに興味をもたれる方はぜひ読んでみてほしい。

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2007年7月 2日 (月)

経営を見る眼

4492501746 伊丹敬之「経営を見る眼 日々の仕事の意味を知るための経営入門」、東洋経済新報社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

経営というのは多面性があり、説明するのは非常に難しい。それを

・人はなぜ働くか
・仕事の場で何が起きているか
・雇用関係を断つとき
・企業は何をしている存在か
・株主はなぜカネを出すのか
・利益とは何か
・企業は誰のものか
・人を動かす
・リーダーの条件
・リーダーの仕事上司をマネジする-逆向きのリーダーシップ
・経営をマクロに考える
・戦略とは何か
・競争優位の戦略
・ビジネスシステムの戦略
・企業戦略と資源・能力
・組織構造
・管理システム
・場のマネジメント
・キーワードで考える
・経営の論理と方程式で考える

の21の視点から見事にきっている。

まさに、伊丹先生の知見のすべてを書ききった素晴らしい本である。会社に所属している人はぜひ一度読んでおきた本だ。

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2007年6月29日 (金)

顧客起点のマーケティング

4492555838 平井孝志「顧客力を高める、売れる仕組みをどうつくるか」、東京経済新報社(2007)

お奨め度:★★★★

この本もまた、「組織力を高める」の著者の一人が書いたマーケティング論。顧客中心型のマーケティングと、その具体的な実現方法、仕組み作りについて述べている。

顧客力とはあまり耳にしない言葉だが、著者のいう顧客力は

 顧客起点で売れるモノやサービスを継続的に生み出す能力

であり、これは

 マーケティング脳:顧客と共鳴できるユニークで柔軟な発想力

 場の構築力:顧客のまわりに業務連鎖を設計・構築する能力

の2つの掛け算で生まれるというのが、この本の考えである。

そして、この本では、マーケティング脳の作り方、および、場の構築プロセスを具体的に解説している。デル、スターバックス、トヨタなどを例にとりながら説明されているので、納得性がある。

最後に、顧客力を組織力に高める方法について述べている。前著の組織力を高めるとの関連がここにあるようだ。

その方法とは、マーケティングの専門部隊を置き、それを組織のマーケティング脳にしていく。そして、その部隊を中心に

・場の見える化

・標準化の推進

・現場での適応化

の3つを行うことだという。この部分はさらなる検討がほしいところだが、方向性としては共感できる。

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2007年6月27日 (水)

オーバーアチーブの育て方

4492532323 古田興司「オーバーアチーブ、組織力を高める最強の人材」、東洋経済新報社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

古田氏の前作、「組織力を高める~最強の組織をどうつくるか」のまとめであったオーバーアチーブ(期待を超える)人材の育成が重要だという結論の続き。

オーバーアチーブする人材になるにはどうしたらいいのか、そんな人材を育てるにはどうすればいいのかを具体的に示している。

そのアプローチとして、まず、人材像としてハイパフォーマという人材像を示している。これは

組織の中で働きながら、組織に没頭せず、仕事の質とスピードを追求し

さらには期待を応える結果を出すことにこだわり、

その一方でチームを牽引し、チーム全体の組織力を高める高能力人材

というものだ。このためには、

(1)気概

(2)着眼、解の導出力

(3)チームへの影響力

の3つの要件が必要だという。この本では、この3つの要件をさらにコンピテンシーにわけ、その育成方法を具体的な訓練方法を述べながら解説している。

また、最後にそれらをまとめる形で、6つの基礎トレーニング、4つの実践トレーニングを提案している。

【基礎編】

(1)キャリアプランを考えさせる

(2)新聞を読ませる・朗読させる

(3)本を読ませる・文章を書かせる

(4)人前で発表させる

(5)新しいことを勉強させる

(6)半分の時間でやる練習

【実践編】

(1)役員会の議事録を作成させる

(2)タスクフォースチームを活用する

(3)ウィークリーレポートを書かせる

(4)研修の企画・運営をさせる

感覚的によく合う。特に実践編は効果的な方法だと思う。マネジャーのみなさんも試してみてはどうだろうか?

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2007年6月25日 (月)

ISO思考

4334934110 有賀正彦「「不祥事」を止めるISO思考」、光文社(2007)

お奨め度:★★★★

このブログで、光文社ペーパーバックスの本を取り上げるのははじめてだが、主要キーワードに英語がつけてあるというこのシリーズはなかなか、よい。

ISOのドキュメントは、昔から、対訳本が必ず出ている。結局、日本語に翻訳したときに、ニュアンスが伝わらない部分があるからだろう。

この本はISOそのものの本ではなく、最近、世間を騒がせたいわゆる不祥事、不二家、関テレ、社会保険庁を取り上げ、なぜ、不祥事が起るのか、不祥事の発生を防ぐにはどうすればよいかを述べ、その対策を打っていくときに、ISOの考え方、あるいはシステムの導入が如何に有効であるかを述べた本である。

これらの不祥事はひと言でいえば、日本流の組織文化の悪い部分が原因になっている。そこに新しい組織文化を導入しなくてはならないが、その概念は、そもそも日本語にはない。そこで、ISOという話になる。

その中で著者がもっとも重要だと主張しているのは、顧客重視ということだ。これは、ISOの最もベースになっている発想である。著者の主張は、顧客を重視した仕事をすれば、そもそも、こんな不祥事は起らないだろうと述べている。

顧客重視というと、みなさんはどういうニュアンスで受け取られるだろうか?顧客にこびるとはいわないまでも、顧客の主張を受け入れると解釈される人が多いのではないだろうか?

この言葉のISOでの用語は、customer forcus である。つまり、商品やサービスを顧客が使うところにフォーカスして、品質を考えようという意味だ。結果として、顧客満足が生まれる。

書いていることはそんなに難しいことではないが、このように英語の意味を吟味しながら読んでみると、非常に奥のある一冊である。ISOの思想を知りたいと思うのであれば、ぜひ、読んでみてほしい。

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2007年6月22日 (金)

変革を定着させる

4862760074 佐藤文弘「チェンジマネジメント―組織と人材を変える企業変革プログラム」、英治出版(2007)

お奨め度:★★★★1/2

企業変革の本というと、話は分かるが具体的にどうするの?という本が多い。その中で、定着に重点を置き、具体的な施策を述べている貴重な一冊。

この本では、

プラニング

  ⇒コミュニケーション

    ⇒教育

      ⇒サポート

というステップで進めていくとし、各ステップで使う手法やツールについて解説している。

前提として、

 ・人はルールを守らない

 ・組織は戦略に従わない

といった現実的な(問題のある)前提で展開されているので、現実的である。このあたりも、よくある、それなら変革はいらないだろうという前提の変革本とは一線を画している。

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2007年6月20日 (水)

組織を巻き込むチーム問題解決

4788907461 福山穣「チームで取り組む問題解決の考え方・すすめ方―組織全体を巻き込んで現状打破する方法論」、実務教育出版(2007)

お奨め度:★★★★

チーム問題解決について書かれた実践書。

基本的な話は要因追求型とビジョン設定型の2つの方法であるが、読者の経験からくるさまざまなノウハウが書かれているので、読んでいて、役にたつことが多い。また、チーム問題解決を阻害する原因についても整理されているので、取り組みの切り口も見えてきやすい。その2つの意味で、実践的な一冊である。

全体的なトーンとしては、チームによって問題解決をし、チャレンジをしようというトーンだ。それを小さなリスクで行うために、組織のサポートが問題になってくる。それを如何に引出すかが問題解決のひとつのポイントになるが、その方法について具体的に示されている。

また、マネジメントサポート、組織サポート、人材開発の3つの視点から組織としてはチームのそのようなニーズにどう応えていくべきかについても述べられている。

チーム問題解決というと何か、難しいことをしているように思うが、この本では、非常に現場的で、泥臭いことをやろうといっている。そのため、現場の現実の問題に容易に適用できるだろう。

その意味で、類書がなく、ぜひ、読んでおきたい一冊である。

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2007年6月18日 (月)

プロフェッショナルの人材開発のベールをめくる

4779500583 小池和男編「プロフェッショナルの人材開発」、ナカニシヤ出版(2006)

お奨め度:★★★★

新聞記者、研究者、革新的マネジャー、ファンドマネジャー、融資審査マンなどのプロフェッショナルがその技能をどのように開発されていくかをフィールド調査によって明確にした一冊。

小池先生の指導によるフィールドワークだけあって、どの論考もかなり深く突っ込んであり、かつ、簡潔にまとめられている。技能開発に携わる人にとってはもちろんだが、いわゆるプロフェッショナル人材を育成しなくてはならない人にはとても参考になる本である。

また、読み物としても面白いので、人材開発を仕事にする人だけではなく、プロフェッショナル自身が読んでも、自らの能力開発について気づきのある一冊である。

難点は、ここで選ばれている職業がプロフェッショナルという集団から見たときに、どの程度、一般性があるのかがよく分からない点。例えば、研究者と医者はその技能開発が異なるように思うし、販売員のようなサービス系の技能を持つプロフェッショナルも異なるように思う。

ぜひ、今後、このほかのいろいろなプロフェッショナルについてもフィールドワークをして、第2弾、第3弾を作ってほしい。

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2007年6月15日 (金)

31の考察課題と103の演習課題で身につくリーダーシップ

4492532277 大中忠夫「リーダーシップ強化ノート―変革ビジョンの設計と実行のための演習帳」、東洋経済新報社(2007)

大中氏は、グロービスのMBAシリーズで「リーダーシップ」という本を書かれている。このブログでも取り上げている。

行動に注目したリーダーシップ

https://mat.lekumo.biz/books/2006/04/post_e936.html

このブログでも書いたが、この本はリーダーシップ本の中で、特筆すべきものだと思う。これまでリーダーシップ本というと理論本とハウツーものしかなかったが、この本は理論をベースにした行動の方法を解説した本である。

今回の「リーダーシップ強化ノート」は、この流れで、演習として具体的な課題をあて、考えさせることによって、リーダーシップを強化を図ろうという画期的な書籍である。

この本は、31の考察課題と103の演習課題に60時間程度をかけて取り組みながら、リーダーシップ4領域行動、EQリーダーシップ、期待理論、マズローの5段階欲求、の4つの理論モデルを日常行動に適用し、リーダーシップ能力を体系的に「考える」ような構成になっている。

考察課題は、論述的なものだけではなく、実際に自分の行動をセルフチェックしてその結果を見ながら考察するようなものもある。

リーダーシップのセミナーは数多いが、本気で身に付けたいのであれば、セミナーにいくよりもこの本を繰り返し、読んだ方が効果的だ。と書くと、極論かもしれないが、そんな可能性を感じさせてくれる本であることは間違いない。

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2007年6月11日 (月)

直感がビジネスを成功させる

4478000719 アンディ・ミリガン、 ショーン・スミス(酒井光雄監訳、西原徹朗、松田妹子訳)「できない人ほど、データに頼る」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

ビジネスが複雑になってくる中で、データに依存してビジネスを進めていくことの危険性を指摘し、また、どのようにこの危険を回避していくかを解説した1冊。

この本では特に「感じる」ことを重視して、

 見て、感じて、考えて、実行する

というモデルを提唱し、そのモデルをベースにして主張をしている。ポイントはいかの通り。

見る:モカシンで歩く

 ・専門家の目

 ・ソフトフォーカス

 ・全体像を描けるか

感じる:あなたも人間です

 ・感情を素直に出そう

 ・顧客と接点を持とう

 ・共感を持とう

考える:くだらないアイディアなどない

 ・原因と結果

 ・理想的な世界

 ・なんでできないのか

実行する:実行あるのみ

 ・基本的なこと

 ・ちょっとしたマジック

 ・機能しているか

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2007年6月 8日 (金)

ビジョンマッピング

4569655505 吉田 典生「ビジョンマッピング やる気を創る技術」、PHP研究所(2006)

お奨め度:★★★★

吉田典生さんというと、斬新な視点からの人材育成論が印象的である。たぶん、最も多くの人が読んでいるのは

吉田典生「なぜ、「できる人」は「できる人」を育てられないのか? 」、日本実業出版社(2005)

4534040032

4534040741吉田典生「 「できる人」で終わる人、「伸ばす人」に変わる人」、日本実業出版社(2006)

の2冊ではないかと思うが、この本は、これらの本の本質が何かを明確に教えてくれる一冊である。

展開の中で、いまもっとも大切な「ビジョンマッピング」へ落とし込む。その具体的な手法と意義をつかみ、自分に応用できることを目的に書かれている。

ある自動車販売代理店で生じた危機からの再生物語をネタにして

危機―会社が消える

出発―何のための仕事なのか

火種―生命力の源

接続―意味づける力

連携―協働する場

促進―ギャップを埋める

共創―一枚の絵を全員で描く

管理―変わらない姿勢で変え続ける

の流れの中で、「思い」がいかに凄い力を持つかを説こうとしている。ストーリー仕立てで、かつ、簡潔に書かれているので、ポイントが手に取るように分かる。

「仕事が面白くない」、「部下にやる気がない」、「組織力をもっと高めたい」といった悩みを持つマネジャーにお奨め。

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2007年6月 6日 (水)

イノベーションの実態

4569690661 片山修「イノベーション企業の研究 日本型成長モデルは現場がつくる」、PHP研究所(2007)

お奨め度:★★★★

日本のイノベーション書籍は学術研究的なものが多い。理論的な仮説を持ち、その仮説を検証する形で書かれている本が多い。そのような中で、研究者というよりはジャーナリストの目から見て、イノベーションによる成長企業に何が起っているかをまとめたこの本は、イノベーションのヒントを得る上で、非常に貴重な一冊だと思う。取り扱っている視点もユニークである。企業は、何かとよく取材される企業が多いが、

・キヤノンを支える本社力
・JR東日本の事業創造力
・ホンダのモノづくり基礎力
・トヨタのブランド創造力
・日本精工の部品力
・全日空の構造改革力

という風に独自の視点で取材をし、分析をしている。というか、実はこのテーマは、外部からこれらの企業をみたときに、真っ先に見える顔というのはこの当たりではないかと思う。その意味で、ジャーナリズム本であるし、読んでいて楽しい。

この中で、著者が着目しているのは、トップとのコミュニケーションに裏打ちされた現場力である。例えば、キャノンの本社力であれば、

・トップが現場にいけば、現場は刺激をうけ、張り合いを倍加させる

・全体最適がただのお題目ではなく、会社全体がひとつになって動くような仕組み作りをしなくてはならない

・経営のスピードはコミュニケーションの伝達の速さと深さによる

といったポイントをあげている。

プロジェクトX的な本はあるが、組織の取り組みをこのような視点で取り上げた本は珍しく、ありそうでなかった本。

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2007年6月 4日 (月)

田坂流プロフェッショナル論

4569690386 田坂広志「プロフェッショナル進化論 「個人シンクタンク」の時代が始まる」、PHP研究所(2007)

お奨め度:★★★★

プロフェッショナルのロールモデルとして人気の高い田坂氏のプロフェッショナル論。

これからは、一人のプロフェッショナルがシンクタンクの役割を担う次代で、そして「個人シンクタンク」の機能を身につけたプロフェッショナルが、縦横に結びついて活躍する時代」になっていくと主張している。

そして、個人シンクタンクになっていくには

インテリジェンス力:必要な情報や知識を集め、分析・統合する力

コミュニティ力:人々の智恵を集め、新たな智恵を生み出す力

フォーサイト力:これから何が起こるのかの未来を予見する力

ビジョン力:これから何をめざすのかのビジョンを提示する力

コンセプト力:これから何を為すべきかのコンセプトを提案する力

メッセージ力:未来予見、ビジョン、コンセプトを広く伝える力

ムーブメント力:ビジョンとコンセプトにより変革の動きを生み出す力

の7つの力が必要だと説いている。

最初に読んだときの印象は、理想論だと思ったが、これはよく考えてみると、非常にバランスがとれており、現実的な話ではないかと思う。みなさんも、読んで考えてみてほしい。

2007年6月 1日 (金)

スーパーアシスタントを目指す人に!

4495569414 オダギリ展子「ミスを防ぎ、仕事をスムーズにする オフィス事務の上手なすすめ方」、同文舘出版(2006)

お奨め度:★★★1/2

日経BPイベントのスキルアップメールにオダギリ展子さんの連載コラムがあり、読んでいると面白いので読んだ。事務処理のプラクティス集であるが、後半の部分はコミュニケーションとか、ビジネスマナーについてTipsが書かれている。

派遣の品格のいろいろな薀蓄のネタ本といわれている本。

以前、NHKで「グッドジョブ」というドラマをやっていた。営業アシスタントが営業部を仕切っているドラマ。昔かたぎで一般職の女子社員をお茶くみにしか思っていない男性社員の認識の変化がひとつのモチーフになっていたせいもあると思うが、このドラマのアシスタント職を米国的だといっていた人がいたが、おそらく、違う。これが、日本企業に昔からあった事務職の姿だと思う。

事務を適切に行うためには、その職場の仕事の性格をよく理解しておく必要がある。そして、何が求められるかをよく知っておく。これがポイント。中小企業のコンサルに入ると、事務職を見ると、大体、企業の雰囲気が分かる。

この本に書かれていることは、営業アシスタントに限らず、すべてのアシスタントのインフラスキルである。PMアシスタントの方にもぜひお奨めしたい。もちろん、派遣

スーパー派遣であるばかりではなく、スーパーアシスタントでもある大前春子を目指す人は、ぜひ、お読みください(笑)

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2007年5月30日 (水)

1+1が10にも100にもなる

4887595476_3 ローレンス・ホルプ(ディスカバリー・クリエイティウブ編)「マジマネ2 伸びるチームをつくる! 」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2007)

お奨め度:★★★★1/2

チームマネジメントの入門書として定評のある「Managing terms」の翻訳。チームリーダーのミッションを6つにまとめ、それぞれ、簡潔に説明されている。

興味深いのは、この知見は、1989年に米国企業としてははじめてのデミング賞を受賞したフロリダ電力の品質管理プログラムの中で、変化にうまく対応できたリーダーの特性であったということ。

・チームの活動を調整する

・優先順位をつける上でアドバイスを与える

・チームに必要なものを供給する

・問題解決のためのコーチングをする

・実行をサポートする

・公式もしくは非公式に部下の功績を評価する

の6つである。これを中心にチームマネジメントの方法をまとめた本で、各ミッションで3~4個のポイントを挙げている。

気楽に読める割には、結構深いことが書いてある一冊である。

なお、この本は、「マジマネ」シリーズとして刊行されており、第1弾はすでにこのブログで紹介した「できるマネジャーになる!」である。

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2007年5月28日 (月)

PM手法による時間管理

4532111250 佐藤知一「時間管理術」、日本経済新聞社(2006)

お奨め度:★★★★

プロジェクトマネジメントの手法を使って、時間管理のスキル向上をテーマにした一冊。

この本が面白いのは、成熟度レベルを入れていること。

レベル0:時間の問題を認識する

レベル1:記録する

レベル2:日々の予定を立てる

レベル3:スケジュールを組み立てる

レベル4:進捗を計る

レベル5:分析し、改善する

各レベルに対して、プロジェクトマネジメント手法や、ビジネスマネジメント的なタイムマネジメントの手法を使うことにより、そのレベルの目標を達成し、次のレベルに向かうための方法を説明している。

説明は例を駆使して、分かりやすい。また、全体を通して、若いビジネスマンに、コンサルタントの叔父さんが、いろいろと手ほどきをしているような構成をとっていて、人から教えられているような感覚で読み進めていける。

また、用語はプロジェクトマネジメントやオペレーションズリサーチで使う用語がそのまま使われているので、これらの分野の概念を理解するのにも有益な一冊だ。

この中で、レベル5だけが説明が日常と乖離しているなあと感じた。このテーマそのものがレベル4のような視点から説明するのが難しいのかもしれないが、ちょっと残念。

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2007年5月25日 (金)

ネガティブと戦う

447800109x BJ・ギャラガー、スティーブ・ベンチュラ(梅森 浩一)「ノーの中からイエス!を探せ」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

「ネガティブと戦う」をテーマにした一冊。

自分も含めて、自分が関わっている人には、ネガティブな人がたくさんいる。このような人の攻略法をストーリーと、解説の二本立てで伝えようとする本。

第1部のストーリーは、「ノーの国」の物語。いろいろなネガティブキャラが登場し、ノーを繰り広げていく。この物語によって、ノーということがどういうことか、ノーという人がどういう思考をするかに気づくようになっている。

その上で、第2部では、ノーをイエスに変える方法を提案している。

このようなスタンスを取れば、きっと自分も、周囲もポジティブになれる。そんなことを感じさせてくれる一冊である。

参考にもなるが、ノーの国で元気をなくしているあなたに元気を与えてくれる。そんなニーズをお持ちの方、読んでみよう!

2007年5月23日 (水)

極めろ上司道!

4887595379 リチャード・テンプラー(米谷敬一訳)「極めろ上司道1 グレイトな上司」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2007)

お奨め度:★★★★

マネジメントの基本を100のルールとして体系的に示している。非常に軽い口調で、抵抗なく受け入れられると思う。新任のマネジャーの座右の書にしてほしい一冊。

Part1はグレイトなチームをつくれ(チーム管理編)。

利益を語るな、貢献を語れ

自分を語るな チームを語らせろ

非現実的な目標から部下を守れ

成功はすべてチームのおかげと主張せよ

など、かなり本質的なことが、並んでいる。いわゆるチームマネジメントの本に書いてある常識とは少し異なる点が興味深い。

Part2はグレイトな上司であり続けろ(自己管理編)

懸命に働け

部下が憧れる手本となれ

仕事を楽しめ

家族を大事に 早く家に帰れ

など、こちらもやはり、一風変わったルールが並んでいる。

ちなみに、このシリーズには3部あるらしいが、すでに第2弾は出ている。

4887595433
ケン・マレル、ミミ・メレディス(ディスカバリー・クリエイティブ訳)「極めろ上司道2 ブライトな上司」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2007)

著者は異なるが、同じようなテーストで、こちらはスポンサーとしての上司がテーマになっている。

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2007年5月19日 (土)

リーダーシップからスポンサーシップへ

4532313260 柴田昌治「なぜ社員はやる気をなくしているのか~働きがいを生むスポンサーシップ」、日本経済新聞社(2007)柴田昌治

お奨め度:★★★★1/2

スコラ・コンサルティング代表の柴田さんが、自らの組織変革のコンサルティングの経験から、経営のスポンサーシップのあり方について述べた一冊。スポンサーシップは分かりにくい概念であるが、この本で提唱されているものは非常に合理的で、また、的を得ていると思う。

この本では(強い)リーダーシップの弊害について指摘し、それに変わるチームをまとめる概念としてスポンサーシップを定義している。最初、読んだときにピンとこなかったが、よく考えてみるとその通りだと思った。この本ではスポンサーシップを

リーダーシップの一種。ただ、引っ張っていくリーダーシップではなく、部下が主役になりうる機会を演出することで「質の高いチームワーク」をつくり出して行くリーダーシップ

と定義している。要するにどうだということはいえないような微妙な話である。捉え方によってはファシリテーションリーダーシップやサーバントリーダーシップと似た概念であるが、似て非なるものである。やはりスポンサーシップである。

具体的なスポンサーシップの機能としては

(1)個人のセーフティネット作り

(2)対話でビジョンを描き、共有する

(3)対話力で一緒に答えを作る

(4)当事者としての姿勢と自己革新

を一緒にあげている。

柴田さんは以前から、プロセス変革、組織変革の中で、スポンサーシップの重要性を説かれていた。

4532192048 柴田昌治「なぜ会社は変われないのか―危機突破の風土改革ドラマ」、日本経済新聞社(2003)

この本はここが中心になっている。この本だけ読むと、スポンサーシップで会社が変わるというように読めなくもないが、そういうことではないと思う。ただ、本当にこの部分にフォーカスしないと会社が変わらないということを事例などを通じて切実に伝えてくれる本である。

組織変革に関わっている人はもちろんだが、プロジェクトスポンサーシップを発揮しなくてはならない人はぜひ読んで欲しい。具体的に何をすればよいかが分かるだろう。

2007年5月17日 (木)

CGMは何をどう変えるか?

4839923094 伊藤史「CGM-消費者発信型メディア―Web2.0時代のマーケティング戦略」、毎日コミュニケーションズ(2007)

お奨め度:★★★★

Web2.0がいろいろな変化を期待されている中で、大いに注目されているCGM(Consumer Generated Media)について、体系的にまとめた一冊。非常に分かりやすく書かれている。

まず、第1章で、CGMの定義や最新動向、CGMが発達する要因について述べられている。CGMが何かよく分からない人もこの章を読めば大枠を把握することができる。

2章以下では、CGMが消費者行動を変えつつあることと丹念に述べている。
 ・語り始める
 ・つながりはじめる
 ・能動化する
といった切り口から消費者行動の変化をまとめている。その上で、企業はそれにどのようなマーケティングで対応すればよいかを述べている。

さらに、それを踏まえて、変化に対応するというより、もう少し、プロアクティブな意味で、企業がどのようにCGMを活用していけばよいかをまとめている。

あまり知らなかった分野だが、この本を一冊読んでだいたいのことが分かった。ただ、ひとつだけ残った疑問がある。それは消費者行動が変わるという議論ではなく、消費者という概念そのものはこれからどう変わって行くかという疑問。能動化する消費者のところで少し触れられているが、そもそも、生産者と消費者という区分そのものが意味があるのかという気もしてくる。Web2.0が、単に、google化、amazon化だけではなく、パラダイム変化を引き起こす可能性があるのはこの辺りではないかと思われる。場合によっては、マーケティングの概念そのものを変えるポテンシャルも秘めているのではないかと思う。

そこも含めて、興味深いコンセプトであるCGMを理解するには最適の一冊である。

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