2007年8月20日 (月)

厳しいスケジューリングで使えるノウハウ満載!

4062810999_2 野村正樹「鉄道ダイヤに学ぶタイム・マネジメント」、講談社+α文庫(2007)

お奨め度:★★★★1/2

あまり知られていないが、昨年、発表されたPMIの標準に

1930699840 Project Management Institute「Practice Standard for Scheduling」、Project Management Institute(2007)

がある。内容的にはPMBOKのスケジューリングマネジメントをベースにして、スケジューリングのさまざまな工夫(プラクティス)を体系的に整理してあるので、スケジュールを作る際にも便利だし、また、暇なときに目を通しておくと、PMコンピテンシーの向上にもなるお奨めの一冊である。

で、実はこの記事のお奨め本はこの本ではない。野村正樹さんが書いた「鉄道ダイヤに学ぶタイム・マネジメント」。この本はそのタイトルのとおり、鉄道ダイヤで使われているプラクティスを説明し、ビジネスやプロジェクトのスケジューリング(タイムマネジメント)に応用しようというもの。これがなかなか、よい。例えば、多忙に対応するプラクティスとして

・同じ種類の仕事を集める(2分間隔で電車が走れる秘密)

・メンバーの力を同じレベルに揃える(「のぞみ」と「こだま」)

・パターン化で時間を短縮(浜松・遠州鉄道の秘策)

・事前チェックとクッション時間を忘れない(不便な東京地下鉄の乗換駅)

といったテーマで、鉄道のダイヤスケジューリングのノウハウがいろいろと書いてあるのだ。

さらに、スケジュールに関するリスクについても書かれている。

・東京駅ホーム先端のなぞ

・秋葉原駅の不思議な線路

など。個々をとれば、いわゆるタイムマネジメントハウツー本に書いてあるような内容が並んでいるのだが、この本を読むメリットは、鉄道での原理の説明があるので、理屈がわかり、応用が利くこと。また、鉄道が好きでなくても頭の体操的に楽しく読める。

で、冒頭のPMIに話に戻る。この本を引き合いに出したのは、PMIのスタンダードに書かれているプラクティスのかなりの部分が、この本には書かれているのだ。

日本の鉄道は、世界に誇るタイムマネジメントをしているといわれるが、まさに、それを証明した格好の一冊である。

スケジュールがきついときに、無理に余裕をとろうとするのは落とし穴だ。合理的な工夫をすることによって、厳しいスケジュールでやるほうが楽。日本の鉄道の時間密度は世界一で、その意味で、厳しいスケジューリングのノウハウの塊である。

厳しいスケジュールのプロジェクトを担当し、時間に悩むプロジェクトマネジャー必読!

2007年8月17日 (金)

ホワイトカラーの生産性マネジメントの切り札

4382055717 坂本裕司「ホワイトカラーの生産性を飛躍的に高めるマネジメント―HPTの実践マニュアル」、産業能率大学出版部(2007)

お奨め度:★★★★

経営コンサルタントである著者が、MBA時代の経験、コンサルティングの経験、諸先輩から学んだ経験を集大成し、独自に纏め上げたマネジメント技術HPT(Human Performance Technology)を開示した一冊。

IEのホワイトカラー版というイメージだと言っているが、プロジェクトマネジメントを業務に適用するとこんな感じになるという意味で興味深い。もちろん、ツールは著者のオリジナリティにあふれるものだ。

HPTの中核概念は、PND(Performance Next Door)という概念にあるが、この概念は、現状のパフォーマンスレベルで達成可能なレベルを超える目標を掲げ、ビジョンを明確にし、目標達成のために戦略を練り、組織機能を明確にし、プロセスを改善することによりその目標を達成しようとする考え方。そのために考案されたさまざまなツールが紹介されている。

特徴的であるのは、IEを意識しているだけあり、非常にツールが現場的であること。すぐにでも使えるようなレベルのツールである。非常に体系的に整理されている。

フレームワークとしては少し複雑すぎるきらいがある。加えて本の書き方が簡潔であるため、実践のパートはIEだとか、プロジェクトマネジメントのバックグランドがない人が読むと理解に苦労する部分があるのではないかとも思う。

むしろ、本として読まずに、ツールを中心に追いかけていくとよいかもしれない。

また、HTPの実践を行うに当たってトップとメンバーの役割についても明確にし、必要なスキルを解説している。この点も含めて実践的であるので、ホワイトカラーの方にはぜひお奨めしたい一冊である。

2007年8月15日 (水)

成功事例で学ぶ顧客視点に立った成長

4903241580 江口一海、矢野英二、木島研二、郷好文「顧客視点の成長シナリオ―モノづくりの原点」、ファーストプレス(2007)

お奨め度:★★★★1/2

顧客中心型経営手法を3つのコンセプトと事例を中心にしてまとめた一冊。

3つの活動コンセプトとは

・顧客価値の本質を実現する、顧客との接点を再編する活動
・顧客価値の本質にマッチする商品とサービスを提供する活動
・売り方と商品が実現する価値を顧客網上に構築する活動

の3つであり、序章では、この3つを、iPod、日亜LED発光ダイオード、キーエンス、デル、スターバックス、ユニクロ、アサヒビール、などのよく知られたベストプラクティスから導きだしている。

その後、第1部では、事例研究編として、コエンザイムQ10サプリメント、新幹線インバーター装置開発の2つのケーススタディでこの3つの活動コンセプトを分析している。

第2部は実践編ということで、この3つの活動コンセプトを実現するための事業モデル、成長シナリオについて提案している。

読みモノとしても面白いし、顧客価値の本質がどこにあるのか、自社のコンピタンスをその本質にあわせこんでいくにはどうすればよいのかについて多くの気付きを与えてくれるよい本である。

また、新幹線のインバーターの開発の事例はプロジェクトマネジメントの視点からも、顧客視点にたった場合に、トレードオフのマネジメントをどうするかといった重要な問題に対するたいへんよい答えになっているので、事業マネジャーだけではなく、プロジェクトマネジャーにとっても得るところの多い一冊である。

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2007年8月13日 (月)

日本のプロジェクトマネジメントオフィス

4883732460_2 仲村薫編著「PMO構築事例・実践法―プロジェクト・マネジメント・オフィス」、ソフトリサーチセンター(2007)

お奨め度:★★★★

日本では初のプロジェクトマネジメントオフィスに関する実践的な解説書。

アルテミスの仲村薫さんの編著で、仲村さんがまず、PMOの基本事項の解説をし、事例を各事例企業の人が書くというスタイルをとっている。取り上げられている事例は

・オムロン パスネットプロジェクト
・日立製作所 情報通信グループ
・三菱電機インフォメーションシステムズ
・NEC
・A社(失敗事例)
・自動車メーカ(マルチプロジェクトマネジメント)
・医薬品企業(開発管理)
・日本IBM研究開発部門

である。

次に、PMOの重点活動ということで

・プロジェクトマネジャーの育成
・ポートフォリオマネジメント

の2項目について、詳細な解説を事例を交えて行っている。解説はわかりやすく、また、事例が入っているので明確なイメージができる。

やっと日本人の書いたPMOの本が出てきた。それも、日本らしく、事例という形。

これまで、訳本では、仲村さんの翻訳された

4820117408_2 トーマス・ブロック、デビッドソン・フレーム(仲村 薫訳)「プロジェクトマネジメントオフィス―すべてのプロジェクトを成功に導く司令塔プロジェクトオフィスの機能と役割」、生産性出版(2002)

や、PMI東京の永谷事務局長がプロジェクトマネジャーを勤める翻訳チームが翻訳した

4885387086 ジョリオン・ハローズ(PMI東京訳)「プロジェクトマネジメント・オフィス・ツールキット」、テクノ(2005)

などの良書があったが、やはり、日本の組織に米国のPMOの流儀をそのまま持ち込むことは難しい。

その意味で、この仲村さんのまとめられた本は特別な意味があるのではないかと思う。

半年くらい前に、米国で出版事業をやっている知人から、プロジェクトマネジメントに関する出版点数に対してPMOの本がないのはどういうことだと聞かれたことがある。異様に感じるといっていた。ちなみに、米国ではプロジェクトマネジメントの本が500冊、PMOの本が50冊程度出版されており、このくらいの割合が普通ではないかといっていた。

これを契機に、日本でもPMOの本がどんどん、出てくることが望まれる。

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2007年8月10日 (金)

本物のリーダーを目指す人必読

4820118684 ビル・ジョージ、ピーター・シムズ(梅津祐良訳)「リーダーへの旅路―本当の自分、キャリア、価値観の探求」、社会経済生産性本部(2007)

お奨め度:★★★★1/2

ハーバード・ビジネススクール教授が125人のリーダーたちに行った詳細な面接調査をした結果から、キャリア、ライフ・ストーリーから、自分の価値観、プライオリティという視点から、リーダーシップとは何かを考えている。

リーダーシップに対しては、ステレオタイプの議論より、フィールドワークによるあぶり出しから、いろいろなことがわかることを改めて実感させてくれる。追求しているのは、本物のリーダシップとは何かという問題。そして、それをどのように探求していくかという問題。

これらの問題に対して、125人のインタービュー結果が非常に多くのことを雄弁に語ってくれる。どれを読んでも、トレーニングだけでリーダーシップが身につくという幻想を打ち破ってくれる。文字通り、リーダーシップの開発は旅であることを痛感させられる。

ちょっと高い本ですが、本物のリーダーになりたいと願う人、ぜひ、読んでください!値段以上に多くのものが得られるでしょう。

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2007年8月 8日 (水)

組織行動論を学ぼう

4502390003 開本浩矢(編著)「入門組織行動論」、中央経済社(2007)

お奨め度:★★★★

現場でマネジメントをしている人からどのようなマネジメントを勉強すればよいですか?と聞かれることがある。できれば、MBAコースで学ぶことを一式身に付けるに越したことはないが、時間の制約もある。その中で一冊というと、やはり、組織行動論を選ぶ。

組織行動論には、ステファン・ロビンスの書いた定番的な名著がある。

4478430144 ステファン・ロビンス(高木晴夫、永井 裕久、福沢 英弘、横田 絵理、渡辺 直登訳)「組織行動のマネジメント―入門から実践へ」、ダイヤモンド社(1997)

ただ、この本、この分野の専門家であればともかく、他の分野で活動する人が読みこなすには難しい。

その点で、開本先生が、神戸大学の新鋭の学者で書かれたこの本は、学部レベルの学生を対象にしたくらいの書き方がされており、社会人が入門書として読むのに適した本である。

この本で取り上げられているトピックスは

モチベーション
組織コミットメント
キャリア・マネジメント
組織市民行動
組織ストレス
チーム・マネジメント
リーダーシップ
コミュニケーション
組織文化
組織変革
組織的公正
ダイバーシティ・マネジメント
プロフェッショナル・マネジメント

といったトピックスで、章によって若干、内容が偏っているのではないかと思う部分もあるが、おおむね、基本的なことがバランスよく、取り上げられている良書である。

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2007年8月 6日 (月)

日本初のリカバリーマネジメント本

4822262111 長尾清一「問題プロジェクトの火消し術―究極のプロジェクト・コントロール」、日経BP社(2007)

お奨め度:★★★★

長尾清一さんの書かれた

447837449x09lzzzzzzz先制型プロジェクト・マネジメント―なぜ、あなたのプロジェクトは失敗するのか

は今でも、このブログで最も支持されているプロジェクトマネジメント本である。その長尾さんの待望の新著が出版された。リカバリーマネジメントをテーマに書かれたこの本だ。

全般的には、リカバリーマネジメントを問題解決だと捉え、単に思考するだけではなく、問題解決を実行するためにどのような行動が必要かを具体的に、かつ体系的に書かれた本で、前著に劣らず、非常によい本である。

ただ、前著もそうだったが、書かれていることを理解できたとしても、実践するのは大変に難しいと思う。本としての書き方が悪いのではない。ましてや、内容がまずいわけではない。書き方は非常に丁寧であり、これでもかと思うくらい実践的に書かれている。

難しいのだ。それでも前著は、プロジェクトマネジャーとして一定の資質を持つ人であればかなりの部分は訓練や経験をつめばできると思う。その意味でも非常によい内容だと思った。プロジェクトマネジメントは難しいのだ。安直にできるものではない。

今回の本に書かれていることは半分できればよいのではないかと思う内容だ。そのくらい、リカバリーマネジメントというのは難しい。この本を読んで、何ができればトラブルに対処できるようになるかを知り、精進をして欲しい。

2007年8月 3日 (金)

日本型組織をコーチングで動かす

4532111471 本間 正人「グループ・コーチング入門」、日本経済新聞社(2007)

お奨め度:★★★★

コーチングを組織文化として定着させることを前提に、そのためのコーチング手法としてのグループコーチングを解説した一冊。

コーチングの有効性は徐々に認識されるようになってきたが、あくまでも個人に対する働きかけであり、経営に対しては、個人を介して効果があるというところに留まっている。その中にはエグゼクティブコーチングという、より、経営に強い影響を持つ人に対する手法もあるが、本質的にこの構図が変わっているわけではない。

これが、コーチングに関心を持ちながら、今一歩、取り組みをためらる理由になっている。

本間さんがいうように、コーチングが組織文化として定着すれば、経営に対して直接的な効果がある。もっと、本質的には、個々に対するコーチングよりも、グループに対するコーチングの方が日本型の経営には適しているのではないかと思われる。

この手法は、特にプロジェクトマネジャーがプロジェクトチームを指導していく方法として適しているように思う。この本は、グループコーチングを大変わかりやすく、ポイントを指摘しながら書かれている。また、最後にわかりよいケーススタディが示されており、読めばある程度のことはできると思う。

プロジェクトマネジャーの方は必読の一冊だ。

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2007年8月 1日 (水)

自分で考え、行動する力が身につく

4478000492 渡辺 健介「世界一やさしい問題解決の授業」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★

マッキンゼーで仕事をし、ハーバードビジネススクールで学んだ渡辺健介さんが、中高生にもわかるというコンセプトで書いた問題解決の本。

マッキンゼー流の数々の問題解決フレームワークを、中学生の行動などを中心に説明している。このため、とりあえず、論理的な思考だけできれば、読める。

ただし、誰でも読めるかというとちょっと違うように思う。例えば、「仮説」だとかは、かなり、奥のあるコンセプトがあるので、やはり、内容的には中高生には難しいように思う。少なくとも、さっと読み流して何か得るものがあるような類の本ではない。

それは、そうとし、社会人が真剣に問題解決の勉強をしたいときに読む本としてはたいへん、優れた本である。コンパクトにまとめられているし、すべてがわかりやすい例で示されている。

そして、フレームについては図できちんとした形で説明されている。

問題解決法の本は分厚いものが多いが、これは理論と例題を組み合わせているからだ。この本のように理論そのものの説明を例を使って行うことでかなりコンパクトに収まるということでは、慧眼の一冊である。

2007年7月30日 (月)

デジタル時代のチームマネジメント

4534042647 大橋悦夫、佐々木正悟「チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術」、日本実業出版社(2007)

お奨め度:★★★1/2

このブログでも紹介したことがあるが、デビット・アレンの提唱するGTD(Getting Things Done、デジタル時代のストレスフリーな仕事術)が日本でも大ブレークしている。

仕事を成し遂げる技術―ストレスなく生産性を発揮する方法

そのきっかけにもなった大橋悦夫さん、佐々木正悟さんの個人の仕事のパフォーマンスを3倍にするためのTips集「スピードハック」に続く第2弾。

4534041837

今度はチームのパフォーマンス向上のさまざまな方法を提案している。大橋さんと佐々木さんは、どうも、日本のGTD本の代表ライターになってきた感があるが、この本も重要なことがたくさん書かれている。

この本のポイントは、たぶん、メンバーシップ。最終章でリーダーシップからメンバーシップへの移行の重要性を説いているのだが、まあ、このあたりがGTD本の所以か?

この本もチームハックしたのだろうか?その辺も知りたかった(笑)

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2007年7月27日 (金)

フロネシス(賢慮)型リーダーシップ

4757121970 野中郁次郎、紺野登「美徳の経営」、NTT出版(2007)

お奨め度:★★★★1/2

卓越した企業が、美しさとしたたかさを併せ持つ。このような企業をフロネシス(賢慮)という概念を中心に、作り上げていこうと説く一冊。

美徳の経営とは

「共通善を念頭に社会共同体の知を生かす経営」

であるとこの本では述べられている。まさに、米国型の経営に対する強烈なアンチテーゼである。非常に興味深く、また、この本の説得力を増しているのは、たくさんの事例が挙げられていることだ。

英国のコオペラティブ・バンク、バングラデシュのグラミン銀行、クラレや資生堂、財閥三井はどが、賢慮に基づく経営の例として取り上げられ、さらには、それらの企業が賢慮をどのように育成しているかを紹介している。

そして、これを人間に対するイノベーションだと位置づけており、そこに、著者たちの取り組んでいる「暗黙知」や「デザイン」が位置づけられる。そして、これから卓越した企業になっていくには不可欠であることを述べている。この中で、不祥事で有名になった企業をチクリとやっているのも見逃せない。

美徳とは何かという話だが、簡単にいえば、共通善によりもたらされるもので、CSRに通じていく概念である。その点でも、米国流の経営に対するアンチテーゼとして説得力のある話である。

昨年、小泉政権が終わり、安部政権が始まったときに打ち出したメッセージは「美しい」と「イノベーション」であった。このメッセージで漠然と思い浮かべたのがこの本にあるような内容だ。

若干迷走気味であるが、ぜひ、産業施策においても、ぜひ、このような方向性を見せてほしいものだ。そのヒントになる本である。

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2007年7月25日 (水)

女子高生の目からみた会社経営

483341855x 甲斐莊正晃「女子高生ちえの社長日記―これが、カイシャ!? 」、プレジデント社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

TBSの日曜日のドラマで「パパとムスメの7日間」というのをやっている。父とムスメが電車事故で幽体離脱して入れ替わって、それぞれの立場で会社に行ったり、学校にいったりするというコメディドラマ。究極の世代間コミュニケーションだ。この中で、ムスメがパパとして仕事をして、常識にとらわれない発想をし、活躍する様子はなかなか興味深い。

知らないことの強さのようなものもあるが、どうも、余計なことを考えすぎている部分も少なくない。シンプルに考えると別の世界が見えてくるわけだ。問題に遭遇したときに、もし、自分が常識も組織に関する情報もまったく持っていなかったとすればどう判断するか?

これが求められるような時代になったきたように思う。

このビジネスノベルは17歳の女子高生が、父親の急死で、突然社長に―。主人公ちえにとっては、知らないことばかり、「これが、カイシャ!?」と、つぶやく「発見」の毎日といったストーリー。

この本は単に経営の入門書というだけではなく、商品開発、営業、工場での生産などを、女子高生という素人の目から見て、どう見えるかを示しているのがミソ。たいへん、わかりやすいので、入門書としてもよいが、ある程度、経験がある人も新たな発見があるのではないかと思う。

なかでも、日本組織の特徴である人間関係に関する部分が面白い。日本人は何にこだわっているのかという思いになるのではないかと思う。

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2007年7月23日 (月)

チームビルディングの初歩から実践まですべてわかる本

4532313406_2 堀公俊、加藤彰、加留部貴行「チーム・ビルディング―人と人を「つなぐ」技法」、日本経済新聞社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

ファシリテーション技術を使って行うチームビルディングの方法をまとめた一冊。

ベストセラー「ファシリテーション・グラフィック」の著者にもう一名の方が加わって書かれた本で、テーストは前著のテーストが貫かれている。入門書であり、また、実践書としても使える一冊になっている。

まず最初は基礎編ということで、チームの基本が書かれている。独自の目線もあるが、この部分はチームマネジメントの勉強をしたことがある人なら「フンフン」と読み流していけるところだろう。

次に準備編ということで、チームマネジメントの基本的理論が説明されている。この部分になってくると、単に人を集めなさいといった話だけではなく、例えば、どのように声をかけるかといったかなり具体的なノウハウが書かれている。

技術編では、多くのチームビルディングのためのアイスブレークや、エクスサイズを紹介している。

紹介されている手法は、全体の流れが明確であり、運用の細かな工夫まで書かれているので、実際の場で使ってみようかという気にさせる。

その後、実践編として、これらのエクスサイズを使ったチームづくりの推進として、ワークショップやイベントなどの使い方、進め方を解説している。この本の中ではこの部分が最も参考になる。

中で紹介されているアイスブレークやエクスサイズが別冊子としてまとめられているのもよいし、1冊で、チームビルディングの入門から、実践までカバーされている今までにはなかったタイプの本である。

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2007年7月20日 (金)

マネジメントチームの教科書

4393641205 デーヴィッド・A. ナドラー、ジャネット・L. スペンサー(斎藤彰悟、平野和子訳)「エグゼクティヴ・チーム」、春秋社(1999)

お奨め度:★★★★

本書が出版された頃にタイトルに興味を持ち、読んだがイマイチ、ピンとこなかった。

デルタ・コンサルティングというコンサルティング会社の提唱するマネジメントスタイルなのだが、日本で考えてみれば役員会の運営のようなイメージが残っていたのだが、最近、目的があってもう一度、読み直したところ、ひょっとすると非常によい本でないかと思い当たり、ブログで紹介することにした。

この概念の背景にはビジネス環境がかつてなく複雑化し、変化することがある。このような中で、米国の企業ではエグゼクティブ・チームを結成して、CEOはそのチームのリーダシップを発揮する形に,変化してきているというというのが本書の主張だ。

そして、そのために必要なチームのデザイン、コンフリクトマネジメント、チームワーク、チーム運用についてかなり体系的、かつ、行動論的に書かれている。

日本という国は不思議な国で、強烈なリーダーシップがないにも関わらず、チームで何かをするということも上手ではない。ひょっとすると、これは表裏一体なのかもしれないが、いずれにしても、このような環境で考えれば冒頭に述べたように、経営チームというのは役員会のイメージなのだが、日本でも日産のゴーンが注目されて以来、プロジェクト的(有期的)ではあるにしろ、このような考え方のトップマネジメントが行われるようになってきていると思う。

ただ、それは変革場面であって、日常的に行われるのはこれからだと思うが、プロジェクトマネジメントではこのようなマネジメントが日常的に行われだしている。

そのような目でこの本を読んでみると、これはトップマネジメントに限ったことではなく、プロジェクトマネジメントや組織マネジメントチームの運営に対しても適用できるスキームであることがわかった。

その意味で、ミドルマネジャーや、プログラムマネジャーの方にぜひ読んでみてほしい。

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2007年7月18日 (水)

実践マネジメントの金字塔

4532313368 マーク・マコーマック「ハーバードでは教えない実践経営学~ビジネス界の心理戦を勝ち抜け!」、日本経済新聞社(2007)

お奨め度:★★★★★

マネジメントには普遍の原則がある

とすれば、ドラッカーが膨大な著作で述べていることではなく、マーク・マコーマックがこの1冊の本で述べていることではないだろうか。マコーマックの名前を知らなくても、IMGという会社を知っている人は多いのではないだろうか?IMGの生みの親がマコーマックである。

ちょうど、サッカー界で中田選手が出てきたくらいから、日本でもスポーツ選手のマネジメントとマーケティングビジネスは認知されるようになってきたが、マコーマックがIGMを設立したのは1960年代である。いまや巨大な市場になっているこのビジネス分野を確立した人である。

マコーマックがこの本を上梓したのは僕が大学院を出て会社に入った年である。会社に入って5年目にあるきっかけで原書を読んだ。間違いなく、僕のマネジメント感に大きな影響を与えている。

突拍子のないことが書いてある本ではない。「人間」、「営業と交渉」、「企業経営」という非常にオーソドックスな分類でそれぞれを部として、基本事項を淡々と述べている。

例えば、人間だと

・人の心と読む

・印象付ける

・優位に立つ

・出世する

の4項目が並んでいる。

哲学はあるが、理屈っぽくない(ただし、心理学的にはたくさんの理論があるのだろうと思う)。これが20年以上、全世界で20年以上、読み続けられている理由だと思う。

みなさんもぜひ、手にとって見てほしい。マネジメント感が変わるかもしれない。すくなくとも、マネジメントとは何をすることかというのがわかるだろう。

蛇足だが、この時期に日経新聞社が翻訳に踏み切ったのは慧眼だと思う。いやというほど、類似書が出回りだしているからだ。本物を読んでみよう!

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2007年7月16日 (月)

アメリカ国防総省直伝 プロジェクト・マネジメント

4534042507 岩田治幸「アメリカ国防総省直伝 プロジェクト・マネジメント実戦教練ブック」、日本実業出版社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

タイトルのとおり、米国国防省で使われ、自衛隊にも持ち込まれているプロジェクトマネジメントについて、概要と、重要なコンピテンシー(手法、ツール)をまとめた一冊。

日本でもそうだが、プロジェクトマネジメントをプロトコルとして決めているのは、商務・経済・産業といった分野と軍事、および、宇宙が圧倒的に多い。英国だと、PRINCE2は商務省の策定だし、日本ではいえばP2Mが経済産業省の策定である。

米国ではPMBOKがメジャーであるためか、あまり、国務関係のプロトコールになっているプロジェクトマネジメントは表にでてこないが、著者の経験からするとNASAのプロジェクトマネジメントはすごく進んでいる。おそらく、国防省も相当進んでいるものと思われるが、この本を読んでみると、その一端を垣間見ることができる。

特に、戦略目標からプロジェクトに落とし込む部分というのは、PMBOKやPRINCE2では見られない実践的な手法があることがわかる(P2Mはこの部分にチャレンジしているが、残念がらなこんなに精錬されていない)。

その意味で、日本のビジネスの中でのプロジェクトマネジメントとして実践的かどうかは別にして、プロジェクトの上流側をしっかりと把握しておきたい人にはお奨めしたい一冊である。

もちろん、多くの部分はPMKOBに既に取り込まれているので、プロジェクトマネジメント本としての書くべきことは書いてあるし、また、解説方法が難しいことを妙な単純化をせずに、図表をうまく使ってきちんと説明しているもの好感が持てる。これも米国流ということだろう。

ある出版社の人が今年から来年にかけて、第2次のプロジェクトマネジメント本ブームになるといっていたが、もし、そうなったとしても生き残れる一冊だと思う。

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2007年7月13日 (金)

改善を科学する

4820744372 オフィス業務改善研究会「業務改善がよくわかる本―すぐに実行できるオフィス業務の改善アイディア」、日本能率協会マネジメント 出版情報事業(2007)

お奨め度:★★★★1/2

オフィスワークの業務改善の視点、方法、スキルをまとめた1冊。

業務改善を以下の8つのアクションにまとめている。

1.テーマの設定する
2-1.現状把握・監察する
2-2.現状把握・取材する
2-3.現状把握・図式化する
2-4.現状把握・定量化を試みる
3.問題点をまとめる
4.問題を掘り下げ、原因を探る
5.改善方法を決める
6.改善策を決める
7.改善を実行する
8.改善レポートを作成する

そして、それぞれのついて、具体的な進め方を解説している。

その上で、36のベストプラクティスを提示して、それぞれの事例でどのような方法で改善を進めて行ったかを述べている。

いままでありそうでなかった本だ。

戦略経営の3つのイネーブラは人材とITと業務改善である。

前の2つがいろいろと体系化されているのに比較すると、改善に関する体系的なアプローチの本はなかったし、本以前に、改善はどろどろとやるものだと考えられていた。一方で、問題解決の本を読むと、結構な数の例題が改善を取り上げている。ずっと、こんな本が出ないかなと思っていたが、やっと出たという感じだ。

特に、マネジャーの方は、ひとごとだと思わず、一度、読んでみて欲しい。人材育成の方向性のヒントになるだろう。

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2007年7月11日 (水)

幻の組織構築論

4047100919 山本七平「日本人と組織」、角川書店(2007)

お奨め度:★★★★1/2

日本人論の金字塔だといわれる「日本人とユダヤ人」などの著書で多くの読者を持つばかりでなく、日本型組織論、日本型経営など、多くの分野での研究に多大な影響を与えている日本研究者山本七平先生の幻の組織論といわれる原稿がついに書籍化された。

この本は70年代にかかれたものである。従って、書かれていることについてはある程度、結論が出ていることも多い。その中にはもちろん、現実となっていない論考もあるが、重要なところでは恐ろしく当たっている。

組織のコミットメントに宗教(神)の議論を持ち込み、日本人の組織観の特殊性を説明したのが山本先生である。この本に書かれている大枠の話は他の研究者や評論家によって引用されることが多く、有名なものが多いのだが、この本を読むと、その背景の考え方が非常によくわかる。

この10年くらい、日本の企業も山本先生の描かれた日本型組織から徐々に外れつつあるが、そこに大きな軋みが生じつつある。なぜ、軋みが生じるか、どのように改革すればよいのかを明確に示されている本書は、このような時代であるからこそ、一読の価値があるといえよう。

マネジメントに関わるすべての人に一読することをお奨めしたい。

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2007年7月 9日 (月)

プロフェッショナルを育てる、プロフェッショナルに成長する

4495375814 松尾睦「経験からの学習-プロフェッショナルへの成長プロセス」、同文舘出版(2006)

お奨め度:★★★★1/2

人はいかに経験から学び、プロフェッショナルへと成長するのかという命題に対して、経験に焦点を当てて、学習メカニズムを明確にしようとした本。

本書は、人材育成の7割は経験によるものだとし、その経験をどのように成長に結び付けていくかが人材育成のポイントになると説いている。結び付けの視座として、組織活動、マーケティング活動など、現実の経営活動の中で学習が機能するかを説いている。その意味で、研究書ではあるが、かなり実践的であり、実務に役立つインプリケーションがたくさん盛り込まれている。

また、ケースもふんだんに盛り込まれているので、書かれていることの理解も容易にできる。さらに、心理学的な視点も踏まえているので、自分自身の成長を考えるに際しても参考になる一冊である。

プロジェクトマネジャーに代表されるプロフェッショナル人材を育てることを課題とする人材育成担当者にぜひお奨めしたい一冊である。

また、マネジャーは、この本と「最強組織の法則」など、組織学習の本と併せて読むと、個人の成長(自己マスタリング)と組織の学習の関連性も想像でき、面白いだろう。

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2007年7月 6日 (金)

技術マネジメントをケース演習で学ぼう

4532313376 原田勉「ケース演習でわかる技術マネジメント」、日本経済新聞社(2007)

お奨め度:★★★★

技術マネジメントの課題から「実務的」な視点から最小限の話題をピックアップし、理論を説明するだけではなく、ケース例題で実践的な議論をし、かつ、演習で頭を使いながら読み進めていける一冊。

特に、特徴的なのは、プロジェクトマネジメントに全体の四分の一を割いている点。技術開発型の新製品開発のプロジェクトマネジメントを詳しく解説している。

各章で取り上げているケースは

・技術マネジメント全体像

  トクヤマ:ハイリスク下での意思決定

・製品・技術開発戦略

  テキサル・インスツルメンツ

・プロジェクトマネジメント

  コマツ

・製品技術戦略

  ソニー

である。いずれも適切なコメントをし、また、各視点からの評価ポイントについて述べてあるので、演習の中でも使えるし、また、実務の中でも使える。

さらに、知的好奇心で読んでも面白い一冊である。

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