厳しいスケジューリングで使えるノウハウ満載!
野村正樹「鉄道ダイヤに学ぶタイム・マネジメント」、講談社+α文庫(2007)
お奨め度:★★★★1/2
あまり知られていないが、昨年、発表されたPMIの標準に
Project Management Institute「Practice Standard for Scheduling」、Project Management Institute(2007)
がある。内容的にはPMBOKのスケジューリングマネジメントをベースにして、スケジューリングのさまざまな工夫(プラクティス)を体系的に整理してあるので、スケジュールを作る際にも便利だし、また、暇なときに目を通しておくと、PMコンピテンシーの向上にもなるお奨めの一冊である。
で、実はこの記事のお奨め本はこの本ではない。野村正樹さんが書いた「鉄道ダイヤに学ぶタイム・マネジメント」。この本はそのタイトルのとおり、鉄道ダイヤで使われているプラクティスを説明し、ビジネスやプロジェクトのスケジューリング(タイムマネジメント)に応用しようというもの。これがなかなか、よい。例えば、多忙に対応するプラクティスとして
・同じ種類の仕事を集める(2分間隔で電車が走れる秘密)
・メンバーの力を同じレベルに揃える(「のぞみ」と「こだま」)
・パターン化で時間を短縮(浜松・遠州鉄道の秘策)
・事前チェックとクッション時間を忘れない(不便な東京地下鉄の乗換駅)
といったテーマで、鉄道のダイヤスケジューリングのノウハウがいろいろと書いてあるのだ。
さらに、スケジュールに関するリスクについても書かれている。
・東京駅ホーム先端のなぞ
・秋葉原駅の不思議な線路
など。個々をとれば、いわゆるタイムマネジメントハウツー本に書いてあるような内容が並んでいるのだが、この本を読むメリットは、鉄道での原理の説明があるので、理屈がわかり、応用が利くこと。また、鉄道が好きでなくても頭の体操的に楽しく読める。
で、冒頭のPMIに話に戻る。この本を引き合いに出したのは、PMIのスタンダードに書かれているプラクティスのかなりの部分が、この本には書かれているのだ。
日本の鉄道は、世界に誇るタイムマネジメントをしているといわれるが、まさに、それを証明した格好の一冊である。
スケジュールがきついときに、無理に余裕をとろうとするのは落とし穴だ。合理的な工夫をすることによって、厳しいスケジュールでやるほうが楽。日本の鉄道の時間密度は世界一で、その意味で、厳しいスケジューリングのノウハウの塊である。
厳しいスケジュールのプロジェクトを担当し、時間に悩むプロジェクトマネジャー必読!
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