テレビの報道番組のコメンテータで見て、そのコメントの質の高さに注目していたが、この本はその期待を裏切らない。一度さっと読んで、有料メルマガのネタに使い、もう一度すぐに読み直した。
藤井 清孝「グローバル・マインド 超一流の思考原理―日本人はなぜ正解のない問題に弱いのか」、ダイヤモンド社(2009)
自分の仕事の深みに入り込んでいって、自分の主義主張を語れる人というのは、結構いる。職人系の人、研究者(大学の先生)など。
でも、彼のようにキャリアを綴る中で、自分の主義主張を語れる人はそんなにはいないように思う。ぱっと思いつくのは、岡野工業の岡野 雅行さん。この人の言っていることはプロフェッショナルを超えて、すごみを感じる。
30年だもんなあ。キャリアの節目がきっちりマネジメントされているって感じの人生。自己決定をしているし。今はっていうか、昨年までは東大生の上位はこぞって外資系金融に行くって「悩む力」の姜尚中先生がよく言われているが、30年前に、灘高校から東大法学部に言って、三菱商事の内定を蹴って、マッキンゼーに行くって言うのはすごいことだと思う。
そのあとのキャリアの中では、ケイデンスのイノベーションの孵化器という話が一番おもしろかった。また、ヴィトンの話の中では、日米欧のブランド論というのが印象に残る。
この本でもっとも共感したいのは、本のテーマになっている「日本人はなぜ正解のない問題に弱いのか」に対する論旨。ちょうどよい機会なので「ひとつ上のプロマネ。」ブログに記事も書いた。こちらでかなり詳しく紹介している。
「正解への呪縛」から解き放たれる
さて、今日は寝る前にもう一冊、読んだ。復刊で、すでに読んだ本だったので軽く読み流す。コロンビア大学の哲学の教授、ジョシュア・ハルバースタム先生の「Work」の翻訳。
ジョシュア・ハルバースタム(桜田 直美訳)「仕事と幸福、そして人生について」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2009)
僕がワークライフバランスの本にあまり興味を持たないのは、2000年に出たこの本で終わっていると思っているから。この本の水準を超えた議論をすることは並大抵ではないと思う。この分野の本をこれだけ体系的に、かつ説得力を持ってかける人は日本国内では見あたらないので、これからも出てこないだろう。
かといって、仕事術としてワークライフバランスを語るのは聞くに堪えない。ある時点で切り取れば確かに仕事術である。語れる人は大勢いるだろう。しかし、ライフワークのライフとは人生で、ワークとはキャリアである。その2つの壮大なテーマのバランスなど、語れる人がそうそういるとは思えない。
このテーマはそんなテーマではないだろう。自分でじっくりと考えるテーマだ。その道しるべを与えてくれる貴重な本。
原著が絶版されていたとは知らなかった。どういう事情で復刊されたかは書かれていないが、喜ばしいことだ。結果として良かったかどうかは別にして、丹羽宇一郎さんの前書き、そして千場弓子社長のあとがきとくれば、力が入っていることはわかる。
いずれ、紹介記事を書こうと思っているが、プロジェクトで仕事をしている人には、ぜひ、読んでほしい本である。
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