マネジャーが洞察するための最強ツール
P.F.ドラッカー著、特別寄稿:ジム・コリンズ、フィリプ・コトラー、ジェームズ・クーゼス、ジュディス・ローディン、カストゥーリ・ランガン、フランシス・ヘッセルバイン(上田惇生訳)「経営者に贈る5つの質問」、ダイヤモンド社(2009)お奨め度:★★★★★
15年前に、ドラッカーの冠をつけた財団「ピーター・F・ドラッカーNPO財団」(現在はリーダー・トゥー・リーダー財団に改称)ができたときに、その存在意義を問うためにドラッカーが発した5つの質問を紹介した本。
5つの質問とは、
われわれのミッションは何か
われわれの顧客は誰か
顧客にとっての価値は何か
われわれにとっての成果は何か
われわれの計画は何か
の5つ。それぞれの質問について、ドラッカーがコメントし、そして、5人の特別寄稿者が一つずつ質問を担当し、コメントする。さらに、補足質問として、この5つの質問のディスカッションを促進する質問が提示されているという体裁の本。
この5つの質問は、
P・F. ドラッカー、G.J. スターン(田中 弥生訳)「非営利組織の成果重視マネジメント―NPO・行政・公益法人のための「自己評価手法」 」、ダイヤモンド社(2000)
で知った。
この本では、NPOが進むべき道を考える「自己評価」として、この5つの質問を紹介するととにも、ドラッカーとスターンのこの5つの質問に応える形で、NPOのあり方について述べた本である。実際に、ドラッカー自身、ピーター・F・ドラッカーNPO財団としてこの答えを模索している中でできた本だ。
この本はドラッカーの本の中ではあまり著名ではないと思うが、僕にとってはドラッカーを本当の意味で尊敬するようになった一冊であった。それまでにも何冊もドラッカーの書物は読んでいたが、この本を読んだあと、数ヶ月の間に、それまでに日本語で出ていたドラッカーの本を読破した。その意味でも思いの深い本である。
さて、この本は自己評価ツールだと位置づけられており、2つの目的を持って作られていると述べられている。一つは読者自身の考えの助けになること、二つ目は組織における検討と決定の助けになることだ。
そして、この本の使い方として
(1)あなたの組織とその顧客、あなたの組織をとりまく環境のトレンドを精査していただきたい
(2)本書の質問の一つひとつに答えていただきたい
(3)ワークショップ、ヒアリング、その他によって考えを交わしていただきたい
の3つにより、最大の効果が引き出されるとしている。そして、ドラッカーの希望として、
大急ぎでは読まないでいただきたい
としている。繰り返せば繰り返すほど、考えの深まる研ぎ澄まされた質問である。特に経営者の方は、じっくりと考えるためのツールとして使ってほしい一冊だ。
それにしても、これだけのシンプルなツールで、これだけ人々にものを考えさせるツールというのは他に見あたらない。洞察力が問われる時代であるが、少なくとも、経営やマネジメントに対する洞察をするためのツールとしては、これ以上のものはないだろう。
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