ほぼ日 読書日記 Feed

2009年9月 4日 (金)

プロジェクトマネジメントの新機軸に出会う【ほぼ日読書日記 2009年9月3日】

「コミュニケーションをよくしなくてはならない」という言葉ひとつで、いろいろなことが思考停止に陥っている。

そう簡単に片付く問題ではないと思うが、情報の交換、支援的な意味あいでのコミュニケーションについては、この本でほぼ、体系化されているのではないだろうか?

ニック・ミルトン(シンコム・システムズ・ジャパン訳)「プロジェクト・ナレッジ・マネジメント―知識共有の実践手法」、生産性出版(2009)

それにしても、このような切り口でプロジェクト(マネジメント)活動をまとめるというのは、すごいなあ。

プロジェクトはオペレーションという思い込みが、情報のダイナミックスに関心を払ってこなかった理由ではないかと思うが、情報のマネジメントだけでプロジェクトのマネジメントはできるのではないとすら思わせるような本。

ひとつだけ不満があるのは、訳語がプロジェクトマネジメントの世界でほぼ標準語になりつつある言葉をかなり無視していること。元の英語が何かよく分からない単語がいくつかある。プロジェクトマネジメントとの関係を考えながら読みたい人には、これは致命的。

まあ、こちらの世界をメインに考えたいという思いもあるだろうから、意図的かもしれないが。

2009年9月 3日 (木)

実用的なゲーム理論【ほぼ日読書日記 2009年9月2日】

あまり、バイアスを乗せるのはよくないが、一昨日、紹介記事を書いた「プレゼンテーション Zen」が、昨日ちょっとびっくりするくらい売れた。1日に売れた冊数としては、歴代2位。同じ記事の中で紹介した、ダニエルピンクの「ハイコンセプト」も10冊くらい売れた。

むう~、このあたりのニーズは高いのか?!

さて、今日は、おそらく、15年以上、おつきあいしている技術評論社の編集の方と5年ぶりくらいに会った。食事をしながら、2時間ほど話をして、楽しかった。

仕事のスタイルなのか、相対的なレベルの問題なのか、齢のせいか、何なのかよくわからないが、最近、人と話をして、自分の潜在的な考えを引き出されたと感じることが少なくなってきた。ひさしぶりに自分の中に眠っていたアイディアを引き出されたと感じた。

記事や本にしたいかどうかは別の問題だが、快感であることは間違いない。編集者はこうでなくてはならない。

興奮冷めやらぬままに、ホテルに戻って、彼に会う前にJRの本屋さんで買ったこの本を読む。

川西 諭「ゲーム理論の思考法」、中経出版(2009)

「おっと」って感じの本です。いい!

ゲーム理論と問題解決と結びつけた本はありそうで、意外と少ない。戦略思考も問題解決の一種であるが、戦略思考と結びつけた本はたくさんある。

アビナッシュ・ディキシット、バリー ネイルバフ(菅野 隆、嶋津 祐一訳)「戦略的思考とは何か―エール大学式「ゲーム理論」の発想法」、ティビーエス・ブリタニカ (1991)

などは、名著だと思うが、あくまでも戦略思考であって、言い難い。ゲーム理論ありきで、それを戦略思考に結びつけているような感じ。

川西先生の本は、どのように、ゲーム理論を使って問題解決を行うかを説明している「気配」があるので、結構、ビジネスの中でゲーム理論を使うきっかけになるのではないかと思う。この本では、ゲーム理論が

・状況を俯瞰的に把握する

・起こりうる未来を予測する

・問題を根本から解決する

の3つに役立つとして、それをわかりやすく解決している。意志決定が弱いと思っている人は、一度読んでみるといいだろう。

2009年9月 2日 (水)

ついに出た!プレゼンテーション Zen【ほぼ日読書日記 2009年9月1日】

青山から丸の内に移動のときに、20分ほど時間が空いたので、オアゾの丸善で時間をつぶす。そこで、発見。

ガー・レイノルズ「プレゼンテーション Zen」、ピアソンエデュケーション(2009)

プレゼンテーションの本としては、最高ではないかと思っている。日本人の書いたプレゼンの本を見ていると、論理が表に出すぎる。あるいは、論理がないものが目立つ。

論理は必要で、かつ、論理は背後にある。そして、右脳思考が論理のインパクトを高める。そんな結果をもたらすプレゼンテーションアプローチを書いた本。

インスピレーションは、新幹線の弁当から得たそう。仕事柄、外人と一緒に新幹線で弁当を食べる機会は何度となくあるが、アングロサクソン系の人は必ず、デザインのすばらしさに言及する印象がある。会議に松花堂を出してもそんな反応はしない。幕の内がよいのだろう。

原書をさんざん読んでいたので、すぐに紹介記事を書いた。

プレゼンテーションへの禅的アプローチ
https://mat.lekumo.biz/books/2009/09/post-0a1b.html

そのときに、もう一冊、本を買っておいて、寝る前に読む。本自体は、政治の本であって、ビジネス書ではない。ただ、帯にいいことが書いてあるので紹介する。

起死回生を託された麻生首相は、なぜ、「決断」できなかったのか?
自民党「失敗の本質」を徹底検証

とある。読売新聞政治部が今までの記事を編集したドキュメンタリーだ。

読売新聞政治部「自民崩壊の300日」、新潮社(2009)

失敗の本質といえば、野中先生たちが、1984年に書かれた「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」だが、今回の自民党の失敗は、ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦といった戦いに匹敵するくらい、組織にとって示唆に富むものではないかと思う。

この本に描かれている麻生首相は、今の多くのマネジャーとかぶってしまう。

・情報は集めるが、決断をせず、ああでもない、こうでもないと考えているうちに、状況が変わってしまって、情報が役立たなくなる

・失敗をしたくない、リスクをとりたくないので、決断が渋る

・だからといって、ステークホルダに協力を乞って、リスクをとれる体制を作る努力をするわけではない。あくまでも、自分ができる範囲でしかしない

話は変わるが、ドラゴン桜の作者・三田紀房さんが書いたビジネスコミック「マネーの拳」が完結した。ボクサーの世界チャンピオン花岡拳が、ユニクロをモデルとしたようなTシャツ専業のアパレルビジネスT-BOXを起こして、成功し、上場するというストーリーのコミック。この最後に、ボブソンをモデルにしていると思われる岡山のジーンズメーカーを買収するという話がでてきて、その中で、主人公がメーカの社長に「自分の感情で商売している、自分の願望を最優先する経営をしている」という指摘をする場面がある。会社が発展する、従業員が幸福になるといったことよりは、自分が満足すること、もっとはっきり言えば、自分のプライドが満たされること、自分が傷つかないことの方がはるかに重要なのだ。

麻生首相は、今までの日本の経営者のステレオタイプだと思うし、経営者だけではなく、従業員も本質的に変わらない。その典型が職人であり、職人気質をよいものだとする文化が日本にはある。武士は食わねど高楊枝とかいう。

そんなトップリーダーの姿を見事にあぶり出したドキュメンタリーである。これは研修に使えるわ。

2009年9月 1日 (火)

台風のあとのジグ・ジグラーと三谷宏治【ほぼ日読書日記 2009年8月31日】

台風の影響で予定通りに東京に行けず、楽しみにしていた「任天堂」の井上さんにいろいろと教えて頂くイベントが中止。残念!

台風が過ぎ去ったあとで、新幹線で東京に。10分程度の遅れで到着。念のために3冊ほど、読む本を持って乗車。

1冊目。

ジグ・ジグラー(金森 重樹監修、金井真弓訳)「ジグ・ジグラーのポジティブ思考―可能性を開く6つのステップ」、ダイヤモンド社(2009)

人間の悩みというのはそう変わるモノでもないのか。自己啓発のバイブルの1冊。金森重樹さんの監修。こういう本って、何冊も読むより、1冊選んで繰り返し読んだ方がいいんだろうな。だとすれば、この本か、、、

2冊目。三谷宏治さんの新刊。

三谷 宏治「いまは見えないものを見つけ出す 発想の視点力」、日本実業出版社(2009)

三谷 宏治さんのファンになったのは、「観想力 空気はなぜ透明か」だが、そのあとで出て本はいずれもインパクトがあるものばかり。フレームワークの作り方がうまい。ボスコン出身の面目躍如というところか。

発散と収束ではなく、「発見、選択、探求、組み合わせ」から発想が生まれるというのも、三谷さん独特の発想だと思う。発見が重要で、そのためには、「比べる」と「ハカる」という視点が重要だという。また、収束では単なる収束ではなく、観想が必要だという。

まあ、言われてみるとそのとおりだ。

三谷さんの本がいいのは、普通のマーケティングの本だが、理論→事例で終わるところを、理論→事例→抽象化という手順で説明しているので、納得感が高いことだ。この本も読み終えたあとの満足感は高かった。

2009年8月31日 (月)

擦り合わせのフレームワークってできるんだ【ほぼ日読書日記 2009年8月30日】

選挙報道を見ていた。最初、朝日をつけていたら、8時に200議席以上を出した。統計的な有意性があるだけの出口調査をして当確を出しているのだろうが、ちょっと違うのではないかと思う。

ザッピングしていると、他局が朝日が当確を出した事務所の中継をすると、まだ、真剣に推移を見守っているというのは、何か異様さを感じる。

そんなところで、興味がなくなり、本を読みながら、選挙結果を見ていた。この本。

日本的を米国がフレームワークにするというのは、カンバンに代表されるように多い。これもそうか。

ロジャー・マーティン(村井 章子訳)「インテグレーティブ・シンキング」、日本経済新聞出版社(2009)

擦り合わせという発想は日本人しか受け入られないものだと思っていたが、そうでもないってことらしい。フレームワークにすれば、使おうとするんだ。

っていうか、重要性があると思っているようだ。

それにしても、このフレームワークはすごいと思う。言葉にすると、全然、イメージが変わってしまうが、よく考えてみると擦り合わせそのものである。

ただ、これが対話だと言われると違和感があるかな。矛盾や対立からイノベーティブな解決策を見出しているという点では対話であるが、弁証法的ではない。どちらかというと、談合に近いような気がする。

2009年8月29日 (土)

ドラッカーへ旅をした【ほぼ日読書日記 2009年8月28日】

12時間ワークショップ。

さすがに終わったあとは仕事をする気にならず、とりあえず、食事をして、ホテルで伊坂 幸太郎の新作「あるキング」を読み出した。

が、なかなか、集中できず、放棄。で、一緒に買った本をなんとなくぱらぱらと見ていたら、意外と面白く、はまった。

ジェフリー・クレイムズ(有賀 裕子訳)「ドラッカーへの旅 知の巨人の思想と人生をたどる」、ソフトバンククリエイティブ(2009)

ドラッカーの教えを解説した本、あるいは、伝える本は山のように出ている。しかし、ドラッカー自身について書いた本というのはあまり見かけない。

昔から不思議に思っていることの一つだが、社会科学、人文科学というのは客観性はあるかもしれないが、真理はない。その意味で、理論を世に出した人がどのような人生を送った人かというのは、非常に重要な気がしている。ドラッカーであれば、日本では上田先生が断片的に紹介してくれているが、ドラッカーという人物のイメージを想像するまでには至っていないように思う。

ある意味で、理論が一人歩きするというのはすごいことだと思うが、やっぱり、何を背景にしてそのようなことを言っているのかは知りたいなあと思う。

著者は、ウェルチの本を何冊か書いており、それが認められ、ドラッカー自身について書いた本を世に出すことになる。非常に面白いし、この本を読んで、ドラッカーをもう一度読み直したと思ったくらい!

2009年8月27日 (木)

技術ブランドとは何か?【ほぼ日読書日記 2009年8月26日】

車で移動して、結構、疲れて帰ってきたのだが、読み出したら面白かったので、一挙に読んでしまった。

宮崎 洋、高井 紳二「技術ブランド戦略~コアテクノロジーの分析・選択・展開・管理」、日本経済新聞出版社(2009)

技術ブランドという言葉は、言い得て妙である。プロデュースの必需品。

日本の高度成長から、一挙に成長が停滞した理由の一つはこの議論ではないかと思う。このもっとも典型的な例が半導体だろう。技術的には先行する。そこでその技術を使って何か製品を作り、その製品でブランド構築をしようとする。

ところが、製品になってしまうと、技術は隠れてしまう。結局のところ、縁の下の力持ちのような存在になってしまうし、技術者にもそのような動機付けをしてしまう。

一方で、インテルという会社はテレビコマーシャルをしている。inside intelである。商品を告知するわけでもないし、技術をアピールするわけでもない。パソコンの中にはインテルが入っているいう主張だけだ。これが、コンピュータ業界の中でポジショニングに効果があるように見える。インテルを中心にロードマップが動いている。

日本で見ていてうまいと思うのは、液晶かな。液晶は見える技術なので、半導体よりは、商品ブランドに近いのかもしれないが、、、

次は環境だ。環境もやはり、半導体の初期と似ているように思えるのだが、状況は違う。例えば、ハイブリッドエンジンではトヨタがブランドを気づきつつある。日本企業がどのような技術ブランドを気づいていくか、楽しみだ。

2009年8月24日 (月)

信頼について考える【ほぼ日読書日記 2009年8月23日】

一緒に仕事をしているアイ・ツー・マネジメントの岡野智加さんと、PMIの日本フォーラムの公募枠で発表することになっている。資料を作るのに、この本をもう一度ゆっくりと読み直した。

山岸 俊男「日本の「安心」はなぜ、消えたのか―社会心理学から見た現代日本の問題点」、集英社インターナショナル(2008)

安心社会「統治の倫理で閉鎖系社会」
信頼社会「市場の倫理で開放系社会」

ずっと山岸先生が主張されていることを、社会心理学のさまざまな実験、今の社会問題、経済問題を取り上げながら、対比し、説明されている。

管理は安心社会の維持の仕組みである。これを信頼社会の仕組みである、マネジメントに変化させていかないと、歪みが起こる。特に、経営では、安心社会と信頼社会のそれぞれの エッセンスを混在させるという手法がよく採られるが、山岸先生はこれは社会を腐敗させると指摘する。信頼社会の皮を被った安心社会で、人材が腐敗している企業は掃いて捨てるほどある。

さあ、どうするのだろうか。

2009年8月23日 (日)

マネジメントへの認識が一変する【ほぼ日読書日記 2009年8月22日】

愛媛県の松山から、山口県の柳井まで、2時間半の船旅。船旅というのは何年かに1度あるかどうか。飛行機の中ではビジネス書は読まない主義なので、船は特に決めていないので、どうしようかと迷って、結局、読んだのが、この本

佐藤悦子「SAMURAI 佐藤可士和のつくり方」、誠文堂新光社(2007)

僕的には、佐藤可士和さんより、奥さんの佐藤悦子さんの活動により興味があり、たいへん、楽しく読めた。

興味深いのは、やはり、マネジメントによって新しい付加価値が生まれると信じている点。プロデュースという言葉がはやり始めたが、人に対して、プロデュースという言葉を当てはめることに限って言えば、マネジメント以外の何者でもないと思う。

もし、違和感があるとすれば、それはマネジメントのとらえ方がずれているのだと思う。まさに、そんなことを教えてくれる本。例えば、スケジュール管理をきちんとやればこそ、よい意味でのスラックが生まれ、仕事の品質が上がる。クリエイティビリティが高まる。

マネジメントへの認識を一変させる本だった。

2009年8月21日 (金)

劇場型のリーダーシップ【ほぼ日読書日記 2009年8月20日】

京都に戻る。久しぶりに真っ昼間に移動。雪を冠さない富士山はなんとなく座りが悪い。人間の感覚ってこんなものだろうと思う。

新幹線が結構混んでいたが、旅行客かと思いきや、名古屋でごっそりと降りていった。名古屋は景気は戻ったのだろうか。

車中2冊本を読む。1冊目。演出家であり、劇作家でもある平田オリザさんと蓮行さんの書かれた演劇ワークショップの本。

平田オリザ、蓮行「コミュニケーション力を引き出す」、PHP研究所(2009)

演劇ワークショップの流れをコミュニケーション能力の開発に使おうという提案だが、平田オリザさんの演劇とビジネスのアナロジーの議論は参考になる。今までの本よりも、少し、踏み込んだ感じの本。

劇場型のビジネスといったところか。

もう一冊。

大木豊成「ソフトバンク流「超」速断の仕事術―1か月かかる仕事を1週間でやり遂げる!」、ダイヤモンド社(2009)

久しぶりに読む価値のあるプロジェクトマネジメント本に当たったような気がする。

ソフトバンクグループに勤務し、Yahoo!BBの立ち上げに関わった大木豊成氏が、孫正義社長の要求にどのように答えてきたかをいろいろなエピソードを引きながら紹介し、大木さんなりの教訓にまとめている。

本を読むと、たぶん、大木氏は優秀なビジネスマンであり、優秀なプロジェクトマネジャーであることはよく分かる。この本で主張している戦略的な仕事の仕方をしようというのも100%共感する。

しかし、もっと印象に残ったのは、彼の能力を引き出した孫正義社長のスポンサーシップ(大木さんはファシリテーティブなリーダーシップと呼んでいる)である。孫社長のやっていることを、普通にやれば、下はつぶれると思う。つぶさないためには、信頼関係の構築がもっとも重要である。これが実にうまく出来ている。

ソフトバンク流というのは、結局、そういうことだろう。

一つだけ、かなり重要な見解の相違がある。この本で、大木氏はサーバントリーダーシップの時代は終わったような記述をされているが、この本に書かれている孫社長のリーダーシップはサーバントリーダーシップそのものである。行動が派手な人だからそう見えないが、こういうサーバントリーダーシップの形もあるのだと思う。

まさに、劇場型のサーバントリーダーシップだね。

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