マネジメント Feed

2006年8月 5日 (土)

今すぐに返事をくれといわれたら、、、

482074376701 中島一「プロフェッショナルをめざす人のスピード意思決定」、日本能率協会マネジメントセンター(2006)

お奨め度:★★★★

プロジェクトを進めていく中で、意思決定が遅かったという後悔をしたことがない人は珍しいのではないだろうか?意思決定は、マネジメントの基礎中の基礎であるにも関わらず、常に、いろいろな側面から問題になる。特に最近はスピードの問題がよく指摘される。

この本はスピード感のある意思決定を6つのステップで実現する方法について書いている。

6つのステップはそんなに奇抜なものではなく、

1)意思決定のトリガーの確認

2)状況の把握

3)選択目的の確認

4)実行案の作成

5)選択基準の設定と選択

6)リスク評価と対策

の6つである。切れ者マネジャーを頭に思い浮かべる、確かにこの通りにやっているなという納得のステップだ。

書いていることはいわゆる仮説思考である。

仮説思考の本というのはありそうで意外とない。その中では、BCGの内田和成氏の「仮説思考」がお奨め。

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2006年7月31日 (月)

なぜ、ウィスパーに羽根がはえたのか

492511277501 和田浩子「すべては、消費者のために。―P&Gのマーケティングで学んだこと。」、トランスワールドジャパン(2006)

お奨め度:★★★★

和田さんはおそらく、日本のビジネスウーマンで最も有名な方の一人だろう。P&Gのマーケティング部門で活躍。「ウィスパー」に羽根をはやしたブランド戦略の実行で一躍有名になった。ミス・ウィスパーと呼ばれていたとか。その後、2004年のフォーチューンで世界で一番パワフルなビジネスウーマン50傑に選ばれ、世界中で有名になった。

誰にでも等しくチャンスがあることを伝えるために乗っているというまっ白なポルシェでも有名。

という和田浩子さんの自伝的な書籍。マーケティングを中心に、ブランドマネジメントのノウハウをP&Gの経験を時間を追って書かれている。

P&Gは言わずと知れた高品質の経営をしている企業であるが、この本を読んでいると、製品力がブランドを作るという王道を歩んでいることが分かる。その意味で、ブランドマネジメントでありながら、製品マネジメントの色合いが濃い。また、科学的にマネジメントされている点も印象的である。

同じ日用雑貨のビジネスでも、日本のメーカとはテーストの異なるところがあり、その辺りも興味深い部分である。

マネジメントに突拍子もないものもあまりない。その意味で、1冊そのまま、ブランドマネジメントやあるいはもう少し広くマーケティングの教科書になるような本でもある。

2006年7月27日 (木)

マネジャーの正しい育て方

482224516001 ヘンリー・ミンツバーグ(池村千秋訳)「MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方」、日経BP社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

ご存知、ポーターなどと並ぶマネジメントのグルであるミンツバーグのマネジャー育成論。ミンツバーグは単なる机上の理論を振りかざすタイプの学者ではなく、論理的な言論の一方で、「マネジャーの仕事」という一級のエスノグラフィーを書いているくらい、現場に精通している。そのミンツバーグのマネジャー育成論なので、非常に期待して読んだが、期待に反しなかった。

現在のMBA方式によるマネジャーについて客観的な評価をし、マネジャー育成のあるべき姿を模索している。マネジメントに必要な要素を

 ・アート

 ・サイエンス

 ・クラフト

という三角形で表し、この3つが補完することがマネジメントの成功要素だとした上で、現在のMBAの教育をクラフトが完全に抜け落ち、かつ、アートに関しては重要を認識するものの教育プログラムとして何もできていないという評価をしている。

この評価をベースにしてマネジャー育成理論を展開しているが、その中で、面白い問題提起が2つある。

一つは、マネジャーの育成のためには行動が必要なのか、行動を省察する機会が必要なのかという問題提起。ミンツバーグの答えは後者である。マネジャー育成の目的を「行動させる」ことではなく、「行動の質を高めること」だとしている。

この問題提起は面白い。MITのピーターセンゲの組織学習論以来、マネジャーの育成にはアクションラーニングが不可欠なものだと考えられるようになってきている。アクションとラーニングという2つの極めて重要な課題をこなすのは難しく、行動と学習の混同をやめにすべきかも知れないと述べている。

もう一つの注目すべき指摘は、マネジャー育成の対象者である。マネジャー育成のための教育は現役のマネジャーに限定すべきであると述べている。理由は理解レベルと、意欲なのだが、ちょっと驚くべき見解である。

そのようなことも踏まえて、新しいマネジャー教育に対して5つの定石を示している。

定石1:マネジメント教育の対象は現役マネジャーに限定すべきである

定石2:教室ではマネジャーの経験を活用すべきである

定石3:優れた理論はマネジャーが自分の経験を理解するのに役立つ

定石4:理論に照らして経験をじっくり振り返ることが学習の中核をなす

定石5:コンピテンシーの共有はマネジャーの仕事への意識を高める

定石6:教室での省察だけではなく、組織に対する影響からも学ぶべきである

定石7:以上のすべての経験に基づく省察のプロセスを折り込むべきである

定石8:カリキュラムの設計、指導は、柔軟なファシリテーション型に変える

そして、この本ではこの定石に基づき、よくできた育成プログラムの紹介と、具体的な教育の概念設計を示している。

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2006年7月21日 (金)

マネジャーは何を行うのか

490324122x01 D・クイン・ミルズ(アークコミュニケーションズ監修、スコフィールド・素子訳)「ハーバード流マネジメント「入門」 」、ファーストプレス(2006)

お奨め度:★★★★1/2

以前、ミルズの「ハーバード流リーダーシップ「入門」」を紹介したが、同じ著者のマネジメントの原理をかいた本。

この本では、経営学などのマネジメントの体系にとらわれず、マネジメントの原理を追及しようとしている。この本でマネジャーの役割としているのは

 組織の方針を定める

 計画を立て、予算を作成する

 戦略を立てる

 部下の業務を編成する

 採用と人事配置を行い、インセンティブを与える

 トレーニングと能力開発を行う

 懲戒と解雇を行う

 方針を定め、さまざまなプログラムを管理する

 計画通りに予測可能な結果を出すように努力する

 部下のモチベーションを高めて事業目標と達成する

 予算を管理する

 問題を解決する

といったことである。これらの項目に対して、事例やケースを交えながら、分かりやすく解説した本だ。非常に読みやすいし、役に立つ。

新任のマネジャー、プロジェクトマネジャーなどの専門職マネジャーなどには最適のマネジメント入門書である。

この本と一緒に読んでみたい

ヘンリー・ミンツバーグ(奥村哲史、須貝栄訳)「マネジャーの仕事

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2006年4月28日 (金)

あなたをダメにする無意識の習慣

447836089801lzzzzzzz マーク・エプラー(ルディー和子訳)「その無意識の習慣が部下とあなたをダメにする」、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

すばらしい!

57の失敗に加えて、「失敗を勝利に変える」方法を提案している。

失敗3:リーダーシップの重要要素は権力ではなくて影響力であることに気がつかない(「リーダーシップ」より)

失敗5:聞くことはもっとも説得力のある行為だということに気がつかない(「コミュニケーション」より)

失敗13:モチベーションは心の内部的欲求であり、他人がどうにかできるものではないことを理解しない(「モチベーション」より)

失敗14:社員からの意見を聞かずに、社員の仕事に影響を与える変更を決める(「変化の時代のマネジメント」より)

失敗22:自分を大切にしない(「自己啓発」より)

失敗28:必要なときにリスクを冒さない(「問題解決」より)

失敗32:「ハッスル」が有効な戦略だと理解しない(「顧客サービス」より)

失敗34:管理と自尊心や生産性の関係を理解しない(「結果を出す」より)

失敗39:すべてのマネジャーは成長を目指すリーダーであるべきなのに、それを理解していない(「ゼネラルマネジメント」より)

失敗44:やり甲斐のある目標を立てない(「計画を立てる」より)

失敗51:仕事へのプライドを育成しない(「企業文化」より)

失敗53:真の勝利をもたらす強みは製品を創造することではなく価値を創造するところからくることを理解していない(「基本的なこと」)

最後に、「重要なこと」として重大な失敗を上げている。それについては、本を読んでみてほしい。

2006年3月10日 (金)

毒をもって毒を制す

449252159301lzzzzzzzジェームズ・フープス(有賀裕子訳)「経営理論 偽りの系譜―マネジメント思想の巨人たちの功罪」、東洋経済新報社(2006)

お奨め度:★★★

マネジメント論というのは必要悪だと思っている人は多いと思う。しかし、なぜ、必要悪かと問われると答えに窮するのではないだろうか?

僕はこのスタンスはよいと思う。最終的にどういう答えが得られるかではなく、ポジティブな側面だけでなく、ネガティブな側面を見ていかないと、マネジメント論というのはうまく活用できないのではないかと思っているからだ。

企業経営の中で組織にそれだけの余裕があるかどうかは別にして、必要悪という視点から、マネジメントの仕組みを徹底的に議論することによって、初めて何が必要かがわかるように思う。

その意味で、このようなマネジメント書はあってもいいと思う。

ただし、完成度という点ではどうかという気もする。特に、何を基準に、テイラー、ギルブレス夫妻、ガント、メフォレト、イヨー、バーナード、デミング、ドラッカーの9人を選んだのかは疑問である。が、書籍のモチーフに適した9人だとも思える。

まあ、一度、読んでみてください。という一冊ですね。ちょっと高いけど。

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2006年1月29日 (日)

何だ?この会社

477940018x01lzzzzzzz_1 株式会社ライブドア「livedoor?何だ?この会社」、ライブドアパブリッシング(2005)

お奨め度:★★★★

いろいろと意見のある本だと思うが、一級のエスノグラフィー。

ライブドアの組織文化を書いた本。組織論のグルである、エドガー・シャインの説によると、組織文化には、シンボル、価値観、基本的仮定の3つのレベルがあるそうだ。

456123393809lzzzzzzz エドガー・シャイン(金井寿宏、片山佳代子、尾川丈一訳)「企業文化―生き残りの指針」、白桃書房(2004)

このライブドア本に書かれている主要なライブドアのフューチャーをこの区分に分けてみると

「即決・即断」:「検討します」はタブー(価値観)

「固定費削減」:机も椅子もただでもらう(シンボル)

「メールは1日5000通」:仕事はメールに集約する(基本的仮定)

「人材活用」:”伸びしろ”のある人間の付加を徹底的に高める(価値観)

「下克上人事」:年齢・経歴関係なし、稼ぐ人間がトップをとる(シンボル)

「3ヶ月査定」:3ヶ月ごとの成果に応じて、給料も激増・激減(シンボル)

「社長で稼ぐ」:社長をタダでは遊ばせない(価値観)

「福利厚生の充実」:最高7万円まで!半額支給の住宅補助(シンボル)

「ホリエモン」:売れている名前はとことん使う(基本的仮定)

といった感じになると思う。これを見ても、若い会社であることがわかる。ただ、これからの会社に必要な文化を構築しようとしていることは間違いない。

その意味で、エスノグラフィーの素材が面白く、非常に価値のある本である。

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2005年12月 7日 (水)

ドラッカー 365の金言

447830073909lzzzzzzz P.F.ドラッカー(ジョゼフ・マチャレロ編、上田 惇生訳)「ドラッカー 365の金言」ダイヤモンド社(2005)

紙版><Kindle版

お奨め度:★★★★★

The Daily Drucker!

つい最近、逝去したドラッカー先生の言葉から375点を選び出した金言集(ドラッカー逝去:https://mat.lekumo.biz/pm/2005/11/post_911d.html)。

ドラッカー先生の名言集は2003年に一度、出版されている。

P.F.ドラッカー(上田 惇生訳)「仕事の哲学」、ダイヤモンド社(2003)
P.F.ドラッカー(上田 惇生訳)「経営の哲学」、ダイヤモンド社(2003)
P.F.ドラッカー(上田 惇生訳)「変革の哲学」、ダイヤモンド社(2003)
P.F.ドラッカー(上田 惇生訳)「歴史の哲学―そこから未来を見る」、ダイヤモンド社(2003)

これを全部買っているでの、迷ったが、装丁がきれいだし、選ばれている言葉も好きなものが多かったので、結局買った。ドラッカーファンであれば持っておきたい1冊。

365なので、タイトルのごとく、デイリーなのだが、結局、買った日に読んでしまった(笑)。ドラッカーの言葉はメールマガジンを書くときに本当にインスピレーションを与えてくれる。いい本が出た。447833103009lzzzzzzz447833102209lzzzzzzz447833104909lzzzzzzz447833105709lzzzzzzz

2005年10月28日 (金)

ザ・ゴール

447842040809lzzzzzzz エリヤフ・ゴールドラット(三本木亮訳)「ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か」、ダイヤモンド社(2001)

お奨め度:★★★★

A級のビジネス小説。

いまさらという気がしないでもないが、最近、事情があって読み直した。やっぱり、よい本です。

この本、どうしても手法解説本として読んでしまうが、制約論理の枠を超えてものの考え方や、企業とは何かを考えるのに有益な本だと思う。そんな視点でぜひ、一度読んでみたい。

続編も何冊かでている。

447842041609lzzzzzzz

エリヤフ・ゴールドラット(三本木亮訳)「ザ・ゴール2 ― 思考プロセス」、ダイヤモンド社(2002)

こちらは、制約論理の思考プロセスについて書いた本。を自分で体験したかのように理解できる」というウリ。「変化を起こし、実行に移すための手法」。思考プロセスは立体的な問題解決プロセスだが、確かに、これもストーリー形式で書かれているので、知らない間に理解できる。思考プロセスは特に制約論理に限らず、何にでもつかる。

447842044009lzzzzzzz エリヤフ・ゴールドラット(三本木亮訳)「チェンジ・ザ・ルール!」、ダイヤモンド社(2002)

で、第3弾がこれ。ERP開発会社を舞台にして、TOCを成功させる秘訣を書いている。タイトルの通り、ルールを変えてしまうことが必要という話。これは、システムを変える必要はないことを意味している。仕組みより運用ということだ。小説としてはこれが一番面白い。

447842045909lzzzzzzz エリヤフ・ゴールドラット(三本木亮訳)「クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?」、ダイヤモンド社(2003)

で、最後がこれ。クリティカルチェーンプロジェクトマネジメントについて書いた本。4冊の中で、この本が一番価値があるのではないかと思う。納期直前まで作業を始めない「学生症候群」、結局は無駄になる「セーフティー(時間的余裕)」など、通常のプロジェクトマネジメントの問題を洗い出し、その問題への対処を述べている。

思想的には、ムダの排除だが、PMBOKを持ってきても、何を持ってきても適用できる考え方であるところがミソ。

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2005年10月 7日 (金)

見える化

449253201301 遠藤功「見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み」、東洋経済新報社(2005)

お奨め度:★★★1/2

マネジメントでは「見える化」がブームである。マネジメントだけではなく、プロジェクトマネジメントでも同じようなブームが起こりつつある。

さて、では、何のために「見える化」をするのか?ここが、意外とはっきりしているようであって、はっきりしないところがある。一言でいえば、この本でも書かれているように、自律的な問題解決を可能にするためであるが、じゃあ、具体的にどういうことだと考えてみるとう~んとなる。

この本は思いっきり、見える化の事例を集めた本である。トヨタ、キヤノン、エプソン、松下電工、JR東日本といった著名な企業の見える化事例が紹介されている。その数34社。これだけでもこの本の価値は十分になる。

加えて、おそらく、可視化、見える化の本では、最も説得力がある。その理由は、遠藤氏は、先に、「現場力」という本で議論した現場力との関連付けられた議論をしていることにある。現場力を向上させるために、「見える化」が必要だと言う話。

とりあえず、誰もが読んでみて損はない本だ。

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