マネジメント Feed

2005年8月28日 (日)

木を見る西洋人 森を見る東洋人

4478910189リチャード・ニスベット(村本由紀子訳)「木を見る西洋人 森を見る東洋人思考の違いはいかにして生まれるか」、ダイヤモンド社(2004)

お奨め度:★★★★1/2

まず、この本の原題は ”The Geography of thought”である。このタイトルも素晴らしいが、訳者の村本さんのつけられたタイトルはなんと素晴らしいのだろうと感動ものだ。

日本の比喩に「木を見て、森を見ず」という比喩がある。広辞苑によると

 細かな点に注意をし過ぎて大きく全体をつかまない

こととある。たぶん、10年くらい前までは、日本人の非常に重要な価値観であったように思うが、今は、あまり言われることがなくなった。

この本では、思考の普遍性に対するパラダイムの議論を、東洋と西洋という切り口からさまざまな視点で行っている。結論としては、普遍性がないということになるが、そこで取り上げられている事象は自分たちの立ち位置を確認するために非常に貴重な視点である。

好川は、第3章にある、自己に関する考察が興味深かったが、その人が興味を持っている事項が一通りを入っているのではないかと思う。

ここでは、米国人は

・ひとはそれぞれ、他者と違う個性を持っている。さらにひとは肝心な点で他者と違っていたいと思っている

・ひとは、だいたいにおいて自分の思うとおりに行動している。そして、自分の選択やこのみによって結果が決まると気分がよい

・・・

というのに対して、東洋では「出るくいは打たれる」というように、成功を集団目標とする傾向があるといった指摘から始まり、実にいろいろなことが指摘されている。

関連記事:森を見るか、木を見るか

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2005年8月24日 (水)

議論と内省と実践

4422100637金井壽宏「ニューウェーブ・マネジメント―思索する経営」、創元社(1993)

お奨め度:★★★1/2

金井先生が若いころの作品集。

マネージャーとしての内省、気づきを促す47の視点を提供している。

管理の基本的スタンスを自問する
唯一最善の組織やリーダーシップはない
人はなぜ変化を求め、変化を恐れるのか

など、まさに、今、問題になっていることが続々と出てくる。10年以上前にこれだけの本を書いたというのは本当に驚きである。もっとすごいことは、それに、金井先生やそのお弟子さんがいろいろと有益な意見を発し続けていることだが、、、

議論と内省と実践を通じて探してほしい「なにか」が並んでいる。これから、自分のマネジメントのスタイルを作っていきたい人は、ぜひ、読んでほしい



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2005年8月12日 (金)

臨床の知

400430203X僕が極めて大きな影響を受けた本に、

中村雄二郎「臨床の知とは何か」、岩波新書(1992)

という本がある。

科学に代表される近代の知の限界を指摘し、その限界を打破するには、「臨床の知」が必要だということを説いている。エンジニアだった僕がマネジメントの勉強をするのに、神戸大学の金井
壽宏先 生を選んだのは、たぶんにこの本の影響がある(と同時に、この時期に懇意にお付き合いをさせていただいていた、今井賢一先生からも臨床知の重要性を教わっ た)。今でも、状況はあまり変わらないが、少なくとも当時は、マネジメントで臨床知の重要性を説いておられたのは、神戸大学の478850197X金井先生、 暴走族のエスノグラフィー―モードの叛乱と文化の呪縛」という本でデビューされ、臨床的な方法でマネジメントの問題に取り組んでおられた一ツ橋大学の佐藤郁哉先生くらいだった。

その後、もうひとり、強力な臨床知派である一ツ橋大学の沼上幹先生が登場される。ちなみに、沼上先生は「
液晶ディスプレイの技術革新史:行為連鎖システムとしての技術」という論文で学位をとられ、それまでの研究体験から、行為の経営学―経営学における意図せざる結果の探究」という4561151265すばらしい臨床知論を書かれている。両方とも難物だが、機会があれば、読んでみてほしい。

話が脱線したが、中村先生の指摘は

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科学に代表される〈近代の知〉は大きな成果を生んだ。しかし今日、その限界も指摘されはじめている。人間存在の多面的な現実に即した〈臨床の知〉が構築されねばならない。
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といったものである。

臨床の知は、人間の多面的現実に即した知である。科学というのは、現象を捉えていると考えられ勝ちであるが、社会システムが複雑化し、そこに人間という構成要素が密接に絡んでくると、確かに、現象が多面化してくるため、現象を捉えるのは難しい。

このような問題を興味深く書いたのが、養老
孟司先生の「バカの壁」である。

さて、人間系が絡む問題解決においては、一刀両断のソリューションというものは存在しないことが多い。これは感覚的にお分かりいただけると思う。

そこで何が出てくるか。エスノグラフィーである。エスノグラフィーとは

 フィールドワークという調査の方法、或いは、その調査の全プロセス

である。

組織では、今まで、あまりにも観念的に問題解決を行ってきた。もちろん、現場では現象がある。ところが、それが組織の中で意思決定層に伝わる中で抽象化され、その抽象化された問題に対して、問題解決を行ってきたのだ。これは、しばしば、経営的問題と呼ばれる。

現場感覚のある人はこれが如何に無為なものかよく分かるだろう。それゆえに、問題が複雑化、多面化してくると、そもそも、抽象化そのものが難しく、また、抽象化したところでまともな答えは出てこない。これが、別の記事「答えのない問題に如何に対処するか」で指摘したことだ。

そこで必要になるのが、臨床知に基づく問題解決だ。そのための有力な方法論がエスノグファフィーであり、ディープスマートである。

ディープスマートについては最近、よい本が翻訳された。
「経験知」を伝える技術 ディープスマートの本質」という本である。

エスノグラフィーについては、まずは、佐藤郁哉先生の

46411616824788507889組織と経営について知るための実践フィールドワーク入門

という本を読んでみてほしい。
その上で、もう少し、深い知識を得たいと思ったら、同じく佐藤先生の本で

フィールドワークの技法―問いを育てる、仮説をきたえる

という本がある。これがお奨めだ。


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2005年8月 8日 (月)

エラーを起こす人間的側面

4817191511ジェームズ・リーズン、アラン・ホッブズ(高野 研一、佐相 邦英,、弘津 祐子,、上野 彰)「保守事故―ヒューマンエラーの未然防止のマネジメント」、日科技連出版社(2005)

お奨め度:★★★★

保守エラーが引き起こす事故をヒューマンファクターの観点から未然に防ぐエラーマネジメントの原則や手法を解説している。

エンジニアリングの領域の話であるが、
ヒューマンエラーを含めた人的側面に焦点を当て、その管理方針、管理手法、具体的管理ツールについて、考え方、問題解決のプロセスを提供している。

このため、エンジニアリングに限らず、マネジメントでも非常に有益な本である。

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経営を可視化すると何がみえるか

4861301025石橋博史「可視経営―仕事が見えれば会社は変わる」、日経BP社(2005)

お奨め度:★★★1/2

可視化により、企業の組織や業務のどこに問題があり、どこをどう改革すればいいのかが判る。ホワイトカラーに仕事を可視化することにより、企業改革ができることをといている。

中でも、成果主義を導入したがうまく行かない、情報化したがうまく行かないという最近の企業を悩ませている2つの投資課題について、相当、深く、言及している。

ベースには、一環してトヨタ生産方式・IEを元にした業務革新の実践および支援ツール「HIT」の開発・導入があるが、この手法を抜きにしても、参考になる部分が多い本である。

プロジェクトマネジメントでも可視化の重要性は認識があるが、可視化するというのがどういうことかよく理解できていない議論が多い。PMOの人は一読の価値あり。

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2005年7月17日 (日)

ザ・カイゼン

4542701484 今里健一郎「改善力を高めるツールブック―7つのアプローチと47の手法」、日本規格協会(2004)

お奨め度:★★★1/2

「改善」という活動をかなり抽象的に捉え、一般的な進め方を議論するとともに、そのような進め方をするために必要なツール(手法)を47とりあげ、簡単に解説をしている。

さらに、進め方では、抽象的な進め方を、生産だけではなく、営業、事務など、いくつかの分野に当てはめ、具体的なイメージが持てるように工夫して書かれている。

よく工夫された良書であり、組織の改善、プロジェクトマネジメントの改善などに取り組む人は一冊持っておきたい。

2005年6月13日 (月)

マネージャーに関する超一級のエスノグラフィー

456124218X ヘンリー・ミンツバーグ(奥村哲史、須貝栄)「マネジャーの仕事」、白桃書房(1993)

戦略論のグル ミンツバーグの書いたマネージャーのエスノグラフィー。

組織の中でもっとも定義しにくい仕事は、いうまでもなくマネージャーの仕事である。そのマネージャーの仕事について、エスノグラフィーを行い

第3章 マネジャーの仕事にある明確な特徴
第4章 マネジャーの仕事上の役割
第5章 マネジャーの仕事の多様性
第6章 科学とマネジャーの職務

という視点で1冊の本にまとめている。

2005年6月 4日 (土)

プロジェクトマネージャーに必要なすべてがここにある

4757211465 マイケル・ワトキンス(村井章子 )「ハーバード・ビジネス式 マネジメント - 最初の90日で成果を出す技術」、アスペクト(2005)

お奨め度:★★★★1/2

管理職のキャリアで成果をあげることができるかどうかは、最初の90日間の間にどのような成果を挙げることができるかにかかっているという主張のもと、その90日を乗り越える方法を実践的に解説した本である。米国でも発売以来ベストセラーになっており、その実用性には定評がある本。

一種の成功法則本である。が、巷の成功法則は一般的な人を対象に書かれているし、精神論的な部分が多い。これに対して、本書はプラクティカルに書かれているので、読めば明日から仕事に使うことができる。これが、第1のポイント。

読んでみると、あることに気がついた。それは、この90日間に求められることは、プロジェクトマネージャーに求められることとまったく同じだ。僕は実は組織の中での管理職の経験がないのでよく分からなかったが、気がついた後で考えてみれば、当たり前のことである。「目からうろこ」だった。管理職の経験にある方にはすぐに分かるだろう。

プロジェクトマネジメントの方法論として書かれているわけではない。しかし、多くの部分はプロジェクトマネジメントですべきこととオーバーラップしており、その効果的な実行方法について述べられている本書はまさに、プロジェクトマネージャーのバイブルといってもよいだろう。

2005年6月 1日 (水)

みずから変化をつくりだせ!

4478300615 ピーター・ドラッカー(上田惇生訳)「チェンジ・リーダーの条件―みずから変化をつくりだせ! 」、ダイヤモンド社(2000)

お奨め度:★★★★

チェンジマネジメントに関するドカッカーの見識は他の分野よりも一層、含蓄深いものである。そのような論文を集めた論文集である。

ドカッカーの根本的な思想は、社会、組織(企業、NPO)、個人などのあらゆるレベルにおいて、自己責任、自己変革である。現在の社会においては、変化は常態になりつつあり、変化への対応が迫られている。

その中で、自ら変化を創り出し、起こりうるだろう変化を飲み込んでいくという発想が必要であるというのがドラッカーの主張だ。

分かりやすい問題として、昨今、話題になっている郵政民営化問題がある。現時点では事業としても問題がない。将来も問題がないと思われる。しかし、可能性としてはもっと良質の事業になるかもしれない。当然、リスクもある。このような状況において、リーダーが如何に変化を起こしていくか。難しい問題であるが、ここで変化が必要だということに共感できる人には、ぜひ、お奨めしたい本である。

2005年5月 7日 (土)

エクセレント・カンパニー

4901234331 トム・ピーターズ、ロバートウォーターマン(大前研一訳)「エクレセント・カンパニー」、英治出版(2003)

★★★★1/2

ビジネス書ではまれに見るベストセラー。巨匠「トム・ピーターズ」の出世作。

エクセレントカンパニーの条件は何か?他の企業がやっていないのに、エクセレントカンパニーだけがやっていることは何か?ベストプラクティスを示している。

20年前(1983年)の本であるが、英治出版により復刊された。拍手!

三菱重工に勤務していた時代に始めてよみ、大学院でもテキストとして読み、何度か読んだ。久しぶりに読んでみて思ったのは、今、成功している企業を見ると、このような特徴が見つからないなということだっだ。

多様化しているのかもしれない。一方で、トム・ピーターズがこの本を書いたのは大変なブレークスルーだと思うが、そのようなブレークスルーを生み出しそうなコンサルタントやジャーナリスト、学者がいないようにも思う。ドラッカーは別格としても、トム・ピーターズの時代にはブレークスルーと呼べる仕事をしているビジネスアドバイザー(グル)が何人かいる。

5年ほど前に「経営革命大全」という画期的な本が出版された。マネジメントの「グル」79名の大まかな業績を紹介した本だ。詳しくはこちらを読んでみてほしい。

このレベルの30代のビジネスアドバイザーというと、ぱっと思う浮かぶ人がいないのも事実である。ひょっとすると、MIcrosoft、Yahoo!、Amazon、DELLにはすごい原則が隠れているのかもしれない。

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