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2005年12月

2005年12月28日 (水)

実感としてわかる組織論

447843022509lzzzzzzz_2 野田稔「組織論再入門―戦略実現に向けた人と組織のデザイン」、ダイヤモンド社(2005)

お奨め度:★★★★

組織論というのは難しい。その難しさは何だろうと考えてみて、思い当たることは、マクロ組織論とミクロ組織論の遊離にあるように思える。組織に属する人が、組織論を実感を持って理解するには、マクロとミクロの関連付けが必要で、そのような組織論の本というのはありそうでなかった。

マクロ組織論を学んだ人も、ミクロ組織論を学んだ人も、新しい視点で組織論を学ぶことができるという意味で、まさに再入門書に適している。

その意味で、組織論のテキストとしては画期的な一冊である。マネジャーはマクロ的な視点から、平社員はミクロ的な視点なら、それぞれの別の世界が見えるような工夫がされているので、ほ~と思って読める組織論の本になっている。

著者の野田先生の本に

4569628125 野田稔「コミットメントを引き出すマネジメント―社員を本気にさせる7つの法則」、PHP研究所(2003)

という本がある。この組織論再入門の組織観はこの辺にあるように思えるので、併せて読まれることをお奨めしたい。この本は

●第1章 コミットメントの引き出し方
●第2章 今なぜコミットメントなのか
●第3章 コミットメント経営のベストプラクティス
●第4章 コミットメントマーケティング~コミットメントの組織浸透

といった内容であるが、とてもよい本であるので、組織論に興味がない人にもこちらの本は薦めたい。

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2005年12月27日 (火)

言行一致の組織を作る

427000099609lzzzzzzz ジェフリー・フェファー、ロバート・サットン(長谷川喜一郎、菅田 絢子訳)「実行力不全 なぜ知識を行動に活かせないのか」、ランダムハウス講談社(2005)

お奨め度:★★★★1/2

5年ほど前に一冊の本が出た。非常に目立つ表紙で、タイトルは「変われる会社、変われない会社」。表紙の背景には、大きく

          019280680000   The Knowing Doing Gap

とある。流通科学大学の出版ででたが、話題になることもなく、絶版された。この本、米国ではベストセラーになった本である。内容は、このタイトルからぼんやりとわかるだろう。

  知っていることと、実行することのギャップ

当時は、日本では、戦略病の発病期だった。あるところで、この本を使って、マネジャー研修を提案したところ、そんなのはうちには必要ありませんと言われたことがある。

日本ではなかなか、この問題意識が芽生えてこない。例えば、仕組みと実行。言うけど、やらないとトップマネジャーが嘆いている企業をたくさん知っている。しかし、そこは個人の問題で片付けられ、組織としての問題に切り込まれることはない。

453231037709この後、もう一冊、同じ問題で、米国でベストセラーになった本の翻訳が出版された。ラリー・ボシディとラム・チャランの経営は「実行」―明日から結果を出す鉄則である。戦略やビジョンを実行するためのアイディアやノウハウを書いた本であるが、この本もあまり売れなかったらしい。

そして、今年、ジェフリー・フェファー、ロバート・サットンと同じ問題意識をうたった1冊の本が出版された。

ハイケ・ブルック、スマントラ・ゴシャールの書いた「意志力革命」である。427000063501lzzzzzzz

これに影響をうけたわけではあるまいが、ジェフリー・フェファー、ロバート・サットンの本が復刊された。これが、冒頭に掲げた「実行力不全」である。なかなか、インパクトのあるタイトルだ。

この本も意志力革命と同じく、綿密な企業調査の上で書かれている。その期間は4年間にも及ぶそうだ。行動ができない組織で、何ゆえに行動できないかを分析し、さらには、ギャップを乗り越えた企業では、どのようにして、あるいは、どのようなメカニズムでギャップを乗り越えたかを解説している。

上の3冊は、すべて、トップマネジャー、ミドルマネジャー必読の一冊。

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2005年12月25日 (日)

タレントになろう!

427000085609lzzzzzzz トム・ピーターズ(宮本喜一訳)「トム・ピーターズのマニフェスト (3) タレント魂」、ランダムハウス講談社(2005)

お奨め度:★★★★1/2

トムピーターズのマニュフェスト第3弾。タレント魂なるものについて書かれている。

トムピーターズがタレント魂と言っているのは、「自分の才能を見極め、極限まで高め、仲間を作り、シナジーを産み出しながらイノベーションを起こしていくこと」である。そこには、「すごいプロジェクト」が必ず実現される。

「セクシープロジェクト」で展開されているトムピーターズのプロジェクト論、あるいはプロジェクトマネジメント論をタレントという視点から見て、どのようなタレントが必要か、どのようにしてそれを身につけていくかを考えさせてくれる一冊。

いわゆるスキル論で、自己完結型の能力論を考えている人には、ぜひ、読んでいただきたい1冊。

ちなみに、同時発売は、第4弾である「トレンド魂」。

427000086409lzzzzzzz トム・ピーターズ(宮本喜一訳)「トム・ピーターズのマニフェスト (4) トレンド魂」、ランダムハウス講談社(2005)

こちらは、男女の特性に注目したマーケティング戦略の専門家、マーサ・バーレッタと一緒に、これからのビジネスの潮流と、注目べき市場について述べている1冊。併せて読んでみよう!

ちなみに、

 第1弾 リーダーシップ魂

  第2段 デザイン魂

こちら

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2005年12月23日 (金)

勝ちぐせで組織は強くなる

449253206401lzzzzzzz 高野研一「勝ちぐせで組織は強くなる―戦略でなく、組織を差別化する」、東洋経済新報社(2005)

お奨め度:★★★★

成功は小さな成功の積み重ねであるとよく言われる。小さな成功が自信を生み、さらに大きな成功に結びつく。しかし、小さな成功を個人の力だけで達成するのは意外と難しい。

そこで、組織力ということになる。

この本では、戦略ではなく、組織力で勝ち残っている企業に焦点をあて、そこで起こっていることを分析している。その結果、組織力で個人の能力を初めとする、さまざまな限界を超えた成果を上げている企業が多いということがわかる。

つまり、優れた組織では

 ・空間的限界を超える(製薬業界)

 ・時間的限界を超える(IT業界、自動車業界など)

 ・個人の能力の限界を超える(IBMなど)

 ・気力の限界を超える(セブンイレブンなど)

の4つの限界を超えることを事例に基づいて議論している。さらに、そのような組織の作り方について説明し、25週間でそのような組織を作る方法を紹介している。

この議論の興味深い点は、持続的イノベーションに強い組織を作ることで、破壊的イノベーションに勝ち残ることができると主張している点。この議論は大変興味深い。

最近の経営の風潮では、戦略ではなく、組織とはなかなかいいにくい。そのように考えている人は少なくないと思うが、戦略病の中で、ある意味でタブーになっている。そのタブーを破り、まさに、日本に適した経営論といえる。

こういう本が堂々と出てくるようになったのは、やはり、現場ブームの影響だろうか?

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2005年12月19日 (月)

すごいプロジェクトマネジメント

447979118301lzzzzzzz 大橋禅太郎「すごい会議-短期間で会社が劇的に変わる!」、大和書房(2005)

お奨め度:★★★★

ガズーバ!―奈落と絶頂のシリコンバレー創業記で日本デビューした大橋禅太郎さんのプロジェクトマネジメント論。484431396709lzzzzzzz

タイトルや内容から昨今、流行の会議術、ファシリテーションの本のように見えるが、実は違う。起業プロジェクトのプロジェクトマネジメント論。大橋氏の現実に経験したガズーバ!での経験をストーリー風にまとめ、その中に、「すごい会議」と称して起業プロジェクトのプロジェクトマネジメントの進め方を体系的に書いてある。

この本がすばらしいのは、人と組織と事業を育てるプロジェクトマネジメントの方法を、具体的に述べていること。起業や新規事業はこれでないとだめだ!

本の書き方も面白い。マネジメントコーチのコーチを受けながら進んでいくのだが、まるで、ロールプレイを見ているように、事業を成功させるための「鍵」を手に入れていくというストーリーになっている。最終的に手にいれたものは

・経営の中心となるメンバーが緊張感を持ってそろった

・人の意見を気にすることなく、それを発表する仕組みを手に入れた

・参加させられているという感じから「なにかやってやろう」という気分

・前向きな雰囲気にする

・達成しようとしていることの本当の障害が前向きな形で明らかになる

・なんとかやってやろうという気分になっている

・共有共感の持てる短期的で明確な目標

・目標の達成の担当分野の明確化

・目標達成のための計画

・計画の進行管理方法

である。

起業だけではなく、新規事業、新規商品開発などに関わる人は必読!の一冊。

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2005年12月17日 (土)

エンドユーザイノベーション

490324107609lzzzzzzz エリック・フォン・ヒッペル(サイコム・インターナショナル訳)「民主化するイノベーションの時代」、フォレスト出版(2005)

お奨め度:★★★★1/2

1988年にイノベーションマネジメントの分野で画期的な本が出版された。

エリック・フォン・ヒッペルが自らの研究をまとめて書いた本で、ずっとメーカの問題だと考えられてきたイノベーションの生起が、ユーザやあるいは、サプライヤにおいてもあり得る。そして、それは、イノベーションがどのような利益をもたらすかに依存しているという主張をした本である。そして、イノベーションに対して重要な役割を果たすユーザである「リード・ユーザー」という概念とともに、「ユーザー・イノベーション」というコンセプトをイノベーションマネジメントの中に確立した。

日本では、ダイヤモンド社から「イノベーションの源泉」というタイトルで出版されたが、現在は絶版になっている。

エリック・フォン ヒッペル(榊原清則訳)「イノベーションの源泉―真のイノベーターはだれか」、ダイヤモンド社(1991)

原書も絶版になっているが、原書のリプリント版(ペーパーバック)は今でも購入できる。

019509422001
Eric Von Hippel「The Sources of Innovation」、Oxford Univ Pr(1994)

この指摘は極めて重要な指摘だったと思われる。その後、クリステンセンによって、トップメーカにおいて、組織が破壊的なイノベーションに対応できなく衰退していく「イノベーションのジレンマ」が指摘されたが、この問題に対する本質的な問題解決はおそらく、ユーザやサプライやによるイノベーションをメーカがうまくマネジメントしていくことである。

インターネット時代における製品開発においては、リードユーザの役割はますます重要になってきており、企業が抱えるさまざまなイノベーションマネジメントの問題、技術経営の問題を解決する上で不可欠なものになってきているといってよい。

この本ではイノベーションの源泉の主張をさらに進化させ、企業は、エンドユーザイノベーションにそれに適応していくための長期的ビジネスモデルへと根本的な変革を行わなければならないことを主張している。

エリック・フォン・ヒッペルのイノベーション研究の集大成ともいえる一冊である。メーカでR&Dに従事している人、経営企画に従事している人、営業を担当している人などは、必読の一冊である。

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プロ論

419862106301lzzzzzzz B-ing編集部編「プロ論。2」、徳間書店(2005)

お奨め度:★★★

プロ論。の第2号。今回は以下の50名。

【経済界からは】堺屋太一氏、樋口泰行氏、堀義人氏、伊藤元重氏、吉越浩一郎氏、渡邉美樹氏、森永卓郎氏、伊藤洋一氏、白石真澄氏、幸田真音氏 【マスコミ文化人では】浅田次郎氏、丸山和也氏、リリー・フランキー氏、假屋崎省吾氏、弘兼憲史氏、樋口裕一氏、水木しげる氏、角田光代氏、森田芳光氏、石田衣良氏、富野由悠季氏、倉田真由美氏、山本一力氏、いとうせいこう氏、勝谷誠彦氏、米村でんじろう氏、木村政雄氏、細野真宏氏、荒俣宏氏、鎌田實氏、coba氏、水野晴郎氏、宮本亜門氏、嶋田隆司氏、谷川浩司氏、青島幸男氏、岡康道氏、矢口史靖氏、立松和平氏、角田光代氏 【芸能界からは】竹中直人氏、哀川翔氏、今村ねずみ氏、パパイヤ鈴木氏、田口トモロヲ氏 【スポーツ界からは】大黒将志氏、杉山愛氏、古賀稔彦氏、片山右京氏、角田信朗氏。

前作と同じスタイルだが、若干、希薄に感じる。雑誌の連載なので仕方のない部分があるが、前作はプロフェッショナリズムを感じる人が多かったし、紹介されている言葉もそうだったが、今回は、どちらかといえば成功者紹介風。

ちなみに、前作

419861961109lzzzzzzz B-ing編集部編「プロ論。」、徳間書店(2005)

では、

秋元康、安西水丸、石橋貴明、井筒和幸、糸井重里、今井彰、 おちまさと、乙武洋匡、金子勝、香山リカ、カルロス・ゴーン、北川正恭、北村龍平、木村剛、邱永漢、清宮克幸、小谷真生子、齋藤孝、櫻井よしこ、佐々淳行、佐藤可士和、笑福亭鶴瓶、重松清、白石康次郎、鈴木光司、高橋がなり、高橋源一郎、田原総一朗、堤幸彦、野口悠紀雄、中島義道、中村修二、成毛眞、野口健、日比野克彦、藤子不二雄A、藤巻幸夫、古舘伊知郎、堀紘一、三木谷浩史、宮内義彦、柳井正、横山秀夫、平尾誠二、 養老孟司、松本大、本宮ひろ志、森島寛晃、和田アキ子、和田秀樹。

の50名を収録している。

好川塾でテキストとして使ったところ、なかなか、好評だった。

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2005年12月14日 (水)

利益を生む営業マネジメントとは

447853039409lzzzzzzz リチャード・クラフォルツ、アレックス・クラークマン(三本木亮訳)「ザ・キャッシュマシーン」、ダイヤモンド社(2005)

お奨め度:★★★★

ザ・ゴールの姉妹編。ザ・ゴールの知恵を営業マネジメントに使うとどうなるかを解説した本。

TOCのプロセス

 (1)制約条件を見つける
 (2)制約条件を活用する
 (3)制約条件以外を制約条件に従属させる
 (4)制約条件の能力を向上させる
 (5)上記ステップを繰り返す

を営業マネジメントのプロセスとして適用するとどうなるかということを述べた本。著者は異なるが、ゴールと同じく、ストーリー形式で書かれている。

テーマが営業マネジメントであることが興味深い。営業にはマネジメントが必要となる分野と、マネジメントは必要としない分野がある。営業にはマネジメントなどいらないと思っている人も結構多い。しかし、本書を読むと、営業マネジメントの本質がわかり、必要性がよくわかる。

TOCの本として読めば、TOCの可能性を大いに感じさせてくれる一冊であるが、同時に営業マネジメントの本としても一級品である。

2005年12月11日 (日)

現場力のエッセンス

477710278509lzzzzzzz 遠藤功「図解 現場力―「強い企業」には「強い現場」が存在する」、ゴマブックス(2005)

お奨め度:★★★1/2

今年のキーワードの一つは「現場力」であろう。この分野で、古くから独自の視点で体系的な提唱をされてきたのが遠藤功さんである。この分野は欧米では、オペレーションマネジメントという言い方をされているが、日本では、「現場」と呼ばれている。

遠藤功さんのオペレーションマネジメントの本はとても読みやすく、斬新な視点でマネジメントについて書かれているものが多い。

このブログでも何冊か紹介している。

 見える化 https://mat.lekumo.biz/books/2005/10/post_7830.html

 現場力を鍛える https://mat.lekumo.biz/books/2005/04/post_f7bd.html

などである。これらの本は、オペレーションマネジメントについて体系的に独自の視点でかかれている類のない本なので、ぜひ、読んでほしい本である。

が、とりあえず、遠藤功さんの本を何か一冊読んでみようという向きには、この本がお奨め。遠藤さんのエッセンスの部分が図解で読みやすく書かれている。

現場力の本質

453403989109lzzzzzzz 酒見和行「「段違い品質」を実現する現場力」、日本実業出版社(2005)

お奨め度:★★★1/2

著者のホンダでの35年間の経験をまとまた本。

本質の理解、ものの見方・考え方、こころがまえ、改善推進の基本、人の育て方等々、の基本セオリーと、それを現実化する実践ノウハウなどを述べている。

書かれていることは本質的にはトヨタウェイと同じであるが、トヨタはシステムが出来上がっているので、それに隠れで本質がぼやけてしまっている点が多い。多くのトヨタOBがその部分を抉り出すような本を書いているが、あまりすっきりしない。

その点、この本に書かれていることは、すっきりしており、品質やコストの作りこみの本質がよくわかる。

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