PMstyle 2024年5月~7月Zoom公開セミナー(★:開催決定)

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2020年11月11日 (水)

【マネジメントスタイル:雑談8】組織文化について考える(2)~組織文化の3つのレベル

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Culture3◆組織文化の本質は基本的仮定

前回、シャインの組織文化論の入り口として、3つのレベル、すなわち

レベル1:人工的に創造されたもの(artifact)
レベル2:信条と価値観(espoused belief and values)
レベル3:基本的仮定(assumption)

を紹介しました。前回は英語は紹介していませんが、「組織文化とリーダーシップ」(ダイヤモンド社、白桃書房)の翻訳とは少し表現が異なりますので、念のために英語も併記しておきます。

assumtionを基本的仮定としているのは違和感がある人がいるかもしれませんが、違和感があれば「前提条件」と読み替えてください。ただし、シャインの言うassumptionとは、一般的な意味での前提条件ではなく、組織の中で基本的な深いところに保たれている前提条件であることには注意しておいてください。

さて、この3つのレベルは相互関係があるというのは前回説明した通りですが、シャインの組織文化の本質は三番目の基本的仮定にあります。違う言い方をすると、意識されることなく当然のものとして抱いている信条や価値観です。

基本的仮定は、組織において、問題に対する解決策が繰り返し成功を収め、それが当然のこととして認められるようになってきたものです。これは、直感や価値観によってのみ支持されていた仮説が次第に現実のものとして認められるようになったことを意味しています。

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2020年11月 6日 (金)

12月8日にVUCAマネジメント塾の第2回説明会&体験会を開催します。

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◆はじめに

第1回では好川が前説をやり、スタイリッシュ・アイデアの新井 宏征さんがメインスピーカーとしてシナリオプラニングの解説と体験セッションをやりました。

第2回は役割を入れ替え、新井さんが前説をやり、好川がメインセッションをやります。セッションのテーマは好川のライフワークテーマである「組織文化」です。

メルマガでも書きましたが、好川は90年代の初頭にエドガー・シャイン先生の「組織文化とリーダーシップ」(ダイヤモンド社)を読んでこのテーマに興味を持ち、95年に神戸大学の金井先生のゼミで勉強させて頂き、それ以来、さまざまなコンサルティングの際に「まかない」として提供してきたテーマです。

2000年くらいに開発した「PM養成講座」という連続講座でも組織文化の変革が入っていますし、PMO向けに提供しているプロジェクトマネジメント定着コンサルティングプログラムでは組織文化という言葉は使わないようにしていますが、シャインの考え方が入っています。

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2020年10月27日 (火)

【PMスタイル考】第171話 プロジェクトは「意味」で動かす

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◆プロジェクトは「目標」で動くのか

プロジェクトを動かしているのは、上位組織が戦略計画や事業改革からプロジェクトに落とし込む「目標」であると多くの人が信じている。

これに対して、「最も影響力のある経営思想家」トップ50人にも選ばれているマーカス・バッキンガム氏が興味深いことを言っている。それは、

「最高の企業は目標を落とし込まない。最高の企業は「意味」を落としこむ。」

だ。バッキンガム氏がこのように考える背景には、

「目標が役に立つかどうかの判断する唯一の基準は自分自身で自発的に設定したかどうかだ」

という考え方がある。これを基準に考えると、上位組織が落とし込んだプロジェクトの目標は役に立たないことになる。

今回のPMスタイル考はこの問題について考えてみたい。

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2020年10月20日 (火)

【VUCAマネジメント塾】VUCAについて書いた記事のリスト(VUCAポータル記事)

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◆はじめに

2020年10月から、VUCAマネジメント塾を始めることになりました。

「VUCAマネジメント塾 ~ VUCA時代のマネジメントスタイルを探求する」
https://vuca-mgmt.peatix.com/

いい区切りなので、これまでVUCAについて書いた記事をリストにしておきます。ここをVUCAマネジメントに関する情報発信のポータルにしたいと思います。

◆「マネジメントスタイル」シリーズに書いた記事

まず、この半年くらいかなり意識して書いているのが、PMstyleプロディースのマネジメントスタイルというシリーズに雑談を作り今のところ書いたテーマは、

・リーダーシップか、オーナーシップか
・問題解決から問題発見へ
・全員リーダーシップ
・新しい現場主義

などです。

【マネジメントスタイル:雑談3】VUCAな時代に適応していくには「オーナシップ」が不可欠である
https://mat.lekumo.biz/pmstyle/2020/08/vuca-77e9.html

【マネジメントスタイル:雑談4】VUCAの時代には問題解決より問題発見が重要である
https://mat.lekumo.biz/pmstyle/2020/08/vuca-1a0d.html

【マネジメントスタイル:雑談5】VUCAの時代の「新・現場主義」~自律分散型組織をつくる
https://mat.lekumo.biz/pmstyle/2020/09/vuca-d152.html

【マネジメントスタイル:雑談6】全員がリーダーシップを持つ~VUCA時代のリーダーシップ
https://mat.lekumo.biz/pmstyle/2020/09/vuca-9f24.html

今後は、マネジメントスタイルのVUCAに関するものは、「VUCAマネジメント塾コラム」に書いていこうと思っています。

VUCAマネジメント塾コラム
https://mat.lekumo.biz/pmstyle/vuca_column/

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2020年10月13日 (火)

【VUCAマネジメント塾コラム】コミュニケーションせずに、コラボレーションすることは可能か?

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◆「あうん」

ちょっと必要があって、阿吽(あるん)ってどういう意味だと思って、ネットで検索したら

「サンスクリット語のアルファベットの最初の字音である「ア」と最後の字音である「フーム」をさす言葉。密教では,この2字が万有の始原と究極を象徴するとし,それぞれ万有の原理,それらの帰着する智徳を示すとする。」(ブリタニカ国際大百科事典)

という説明が出てきました。同じページにあったデジタル大辞典では、このような説明に加えて

「仁王(におう)や狛犬(こまいぬ)などにみられる、口を開いた阿形(あぎょう)と、口を閉じた吽形(うんぎょう)の一対の姿」

という説明があり、また、たぶん、ここから来た意味なのでしょうが、

「吐く息と吸う息。呼吸。」

という説明もありました。

ついでに英語でなんというかを調べたら単語としては、「A-un」としているものが多いようですが、「阿吽の呼吸」にいては、「息がぴったり」や「非常に気が合っている」といった意味だとして、例えば、

They have a good chemistry.

と訳したりしているようです。

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2020年10月12日 (月)

【マネジメントスタイル:雑談7】組織文化について考える(1)~なぜ組織文化が重要か

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◆組織文化の歴史
 
米国で組織文化が注目されるようになったのは、トム・ピーターズの「エクセレント・カンパニー」とテレンス・ディールとアラン・ケネディの共著「シンボリック・マネージャー」の2冊の書籍の影響が大きいと言われています。

トム・ピーターズは、「エクセレント・カンパニー」において、持続的成功の推進力は強い組織文化だとし、組織文化の強い企業をピックアップし、文化の構築の方法を整理しました。

また、テレンス・ディールとアラン・ケネディは「シンボリックマネジャー」において、「企業文化とは、職務分掌や業務規定、就業規則などのように必ずしも明文化されたものではないが、企業の行動の価値観を支配し、従業員の行動指針となっている」とし、企業文化は、社是、社訓、社長方針などではなく、誰を出世させ、誰をマネジャーにするかで決まると指摘したうえで、このようなマネジャーをシンボリックマネジャーと名付けました。

その後、組織文化研究の第一人者であるエドガー・シャインが、長年の研究をまとめた

「Organizational Culture and Leadership
                 (邦訳:組織文化とリーダーシップ)」

を発表し、米国では組織文化は多くの企業やマネジャーが取り組むテーマになってきました。また、経営学の中でも組織文化は一つのテーマとして扱われるようになりました。

ところが日本では、ちょっと事情が違いました。神戸大学の金井壽宏先生のように1990年代からこのテーマに取り組む先進的な研究者はいましたが、全体的にはあまり関心がもたれませんでした。エドガー・シャインの知見である、組織文化とリーダーシップの相互関係の中で、リーダーシップは一般的な概念になってきたのに較べるとある意味不思議です。

その原因はやはり、日本の組織の一様性にあるのではないかと思います。組織が一様であれば、行動のレベルで協調がとれ、リーダーは必要だが、組織文化はあまり意識する必要がないからです。あとでも述べますが、むしろ、組織文化は行動の結果としてついてくるような感じだったように思います。つまり、経験論であり、マネジメントの対象ではなかったわけです。

しかし、日本でも多様性のある組織が意識されるようになり、さらにこれからのVUCAの時代には組織の一様性は崩れ去ります。そのため、マネジメントの中心の一つとして組織文化の構築について考えざるを得ないような時代が来たといえます。

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2020年10月 9日 (金)

【お知らせ】「VUCAマネジメント塾」設立と体験セミナーの開催

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◆「VUCAマネジメント塾」創設

PMstyleでは、株式会社スタイリッシュアイデア(代表取締役:新井宏征)様と共同でVUCA時代に対応するマネジメントの支援サービスの提供を始めます。

そのサービスの中核として「VUCAマネジメント塾」を創設しました。今回、「VUCAマネジメント塾」を立ち上げるにあたって、説明会を兼ねた体験セミナー

「VUCA時代の事業と組織文化のつくり方ル」
https://vuca-mgmt-201007.peatix.com/

を開催する運びになりました。

このお知らせでは、「VUCAマネジメント塾」や体験セミナーで何をやろうとしているのかについてお話します。

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2020年10月 8日 (木)

【VUCA時代のプロジェクトデザイン】第2回 何のためにプロジェクトをやるのかを決める(パーパス・デザイン)

バックナンバー https://mat.lekumo.biz/pmstyle/pdesign/

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◆はじめに

前回はVUCAの時代に増えてくるプロジェクト3.0について、どのような方向性でマネジメントすべきかを整理し、成功のポイントはプロジェクトデザインであることを述べました。今回から、VUCAを前提としたプロジェクトデザインの方法について考えていきたいと思います。

まず、今回はプロジェクトパーパスを明確にすることを考えます。パーパスをプロジェクトマネジメントに活かすという趣旨では、過去に連載

「VUCA時代のプロジェクトマネジメント」
https://note.com/ppf/m/mc66e1ae06086

を書きましたが、ここでは少し視点を変えて、VUCA以前とVUCAの時代のプロジェクトマネジメントの前提について考え、そこからパーパスのデザインについて考えていきます。

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2020年9月24日 (木)

【マネジメントスタイル:雑談6】全員がリーダーシップを持つ~VUCA時代のリーダーシップ

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◆全員リーダーシップという考え方

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リーダーシップといえばチームの1人のリーダーが突出し、チームを引っ張っていくというスタイルを思い浮べる人が多いと思います。また特にチームが大きい場合や組織の場合、1人ではなく、2~3人の人がリーダーシップを持つことが望ましいという考え方もあります。

これに対して、チームの中の特定の人がリーダーシップを持つのではなく、全員が持つ必要があるものだという考え方があります。この記事では、このような考え方を全員リーダーシップと呼ぶことにします。

著者が最初にこういう考え方を知ったのはジョン・R・ カッツェンバックの著書

「「高業績チーム」の知恵―企業を革新する自己実現型組織」、ダイヤモンド社(1994)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478430098/opc-22/ref=nosim

を読んだときでした。

この本は、リーダーシップ分野のグルの一人であるジョン・R・ カッツェンバック死が、マッキンゼーにおける経験をまとめたもので、グループとチームは異なり、高業績チームを作るには、すべてのメンバーがリーダーシップを持つことが重要だというポイントがあります。

この本を読んだのは1995年でしたので、日本ではリーダーシップという言葉があまり知られておらず、また、世界的に見てもリーダーシップはカリスマリーダーが持つものだというイメージがありました。この中でカッツェンバックの主張に非常に刺激を受けた覚えがあります。その後、プロジェクトマネジメントに関わるようになって、少なくともプロジェクトにおけるリーダーシップは全員リーダーシップでなくてはだめだと思うようになりました。

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2020年9月 8日 (火)

【マネジメントスタイル:雑談5】VUCAの時代の「新・現場主義」~自律分散型組織をつくる

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◆はじめに

現場主義は戦後の日本の高度成長の源泉だったということに異議がある人は少ないでしょう。一方で、今、日本の成長が止まっている原因になっているのが現場主義だと考えている人も少なくないと思います。

今回は、なぜこうなったのか、そしてVUCAというパラダイムシフトの中で、これからどうすべきなのかを考えてみたいと思います。

結論だけ書いておきますと、VUCAの時代に必要なのは今では私語になりつつある、現場主義です。ただし、従来の現場主義ではなく、新しい現場主義だというのがこの記事で言いたいことです。


◆日本の現場主義

戦後の大量生産の時代の競争力の源泉は事業による利益でした。そして、それを実現していたのは、経営(者)でした。

単純にいえば、企業は新しい製品を考え、生産のための設備投資し、製品を生産し、販売して利益を出し、それを活用して設備を拡充し、生産量を増やすことによってコストを下げ、製品価格を下げることによって売り上げを増やし、利益を増やすというモデルでした。このサイクルを繰り返し、企業は競争力を高め、成長していきます。

またこの延長線上で、利益を全く新規の製品の開発に活用し、新しいコンセプトの製品を作りました。これにより、製品ラインナップを充実させるとともにブランドができ、競争力を高めてきました。

この世界的な流れに楔を打ったのが、日本の現場でした。

日本の現場は製品の新規性ではなく、コストを下げることと品質を向上させることの両立で競争力を持つことを考えました。簡単にいえば、製品コンセプトとのもはいわゆる先進国で開発されたものを真似て、生産方法に工夫を加えることによって、より安いコストでより高い品質の製品をで作るというチャレンジに成功し、高度成長を成し遂げました。

ここで注目すべきは、加工方法やプロセスの工夫をしたのは経営スタッフではなく、現場で働く人だったことです。現場を徹底的に教育し、育て、コストを下げ、品質を高めるための工夫をする意識づけをしました。いわゆる改善活動と呼ばれるものです。

最大の日本企業であるトヨタが改善の繰り返しによって成長してきたことは注目に値します。一方で、もともと改善は新しいコンセプトの製品を生み出そうという活動ではなかったことに注意をしておく必要があります。

従来の現場はこのような活動をしていたわけですが、その背景には欧米ではできなかった現場への権限移譲があります。生産方法を現場で工夫するために、現場がある程度自律的に活動できるように現場の監督者に大きな権限を委譲し、現場を動かしていました。これが日本企業の現場主義です。

余談になりますが、日本は海外進出するときにこのような権限移譲を現地に導入しようとしますが、欧米ではほとんど失敗しています。欧米では経営と現場の立場の違いを明確にしているため、思った以上に現場への権限移譲という壁が大きかったためです。

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