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◆組織文化の歴史
米国で組織文化が注目されるようになったのは、トム・ピーターズの「エクセレント・カンパニー」とテレンス・ディールとアラン・ケネディの共著「シンボリック・マネージャー」の2冊の書籍の影響が大きいと言われています。
トム・ピーターズは、「エクセレント・カンパニー」において、持続的成功の推進力は強い組織文化だとし、組織文化の強い企業をピックアップし、文化の構築の方法を整理しました。
また、テレンス・ディールとアラン・ケネディは「シンボリックマネジャー」において、「企業文化とは、職務分掌や業務規定、就業規則などのように必ずしも明文化されたものではないが、企業の行動の価値観を支配し、従業員の行動指針となっている」とし、企業文化は、社是、社訓、社長方針などではなく、誰を出世させ、誰をマネジャーにするかで決まると指摘したうえで、このようなマネジャーをシンボリックマネジャーと名付けました。
その後、組織文化研究の第一人者であるエドガー・シャインが、長年の研究をまとめた
「Organizational Culture and Leadership
(邦訳:組織文化とリーダーシップ)」
を発表し、米国では組織文化は多くの企業やマネジャーが取り組むテーマになってきました。また、経営学の中でも組織文化は一つのテーマとして扱われるようになりました。
ところが日本では、ちょっと事情が違いました。神戸大学の金井壽宏先生のように1990年代からこのテーマに取り組む先進的な研究者はいましたが、全体的にはあまり関心がもたれませんでした。エドガー・シャインの知見である、組織文化とリーダーシップの相互関係の中で、リーダーシップは一般的な概念になってきたのに較べるとある意味不思議です。
その原因はやはり、日本の組織の一様性にあるのではないかと思います。組織が一様であれば、行動のレベルで協調がとれ、リーダーは必要だが、組織文化はあまり意識する必要がないからです。あとでも述べますが、むしろ、組織文化は行動の結果としてついてくるような感じだったように思います。つまり、経験論であり、マネジメントの対象ではなかったわけです。
しかし、日本でも多様性のある組織が意識されるようになり、さらにこれからのVUCAの時代には組織の一様性は崩れ去ります。そのため、マネジメントの中心の一つとして組織文化の構築について考えざるを得ないような時代が来たといえます。