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2020年10月12日 (月)

【マネジメントスタイル:雑談7】組織文化について考える(1)~なぜ組織文化が重要か

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Culture2

◆組織文化の歴史
 
米国で組織文化が注目されるようになったのは、トム・ピーターズの「エクセレント・カンパニー」とテレンス・ディールとアラン・ケネディの共著「シンボリック・マネージャー」の2冊の書籍の影響が大きいと言われています。

トム・ピーターズは、「エクセレント・カンパニー」において、持続的成功の推進力は強い組織文化だとし、組織文化の強い企業をピックアップし、文化の構築の方法を整理しました。

また、テレンス・ディールとアラン・ケネディは「シンボリックマネジャー」において、「企業文化とは、職務分掌や業務規定、就業規則などのように必ずしも明文化されたものではないが、企業の行動の価値観を支配し、従業員の行動指針となっている」とし、企業文化は、社是、社訓、社長方針などではなく、誰を出世させ、誰をマネジャーにするかで決まると指摘したうえで、このようなマネジャーをシンボリックマネジャーと名付けました。

その後、組織文化研究の第一人者であるエドガー・シャインが、長年の研究をまとめた

「Organizational Culture and Leadership
                 (邦訳:組織文化とリーダーシップ)」

を発表し、米国では組織文化は多くの企業やマネジャーが取り組むテーマになってきました。また、経営学の中でも組織文化は一つのテーマとして扱われるようになりました。

ところが日本では、ちょっと事情が違いました。神戸大学の金井壽宏先生のように1990年代からこのテーマに取り組む先進的な研究者はいましたが、全体的にはあまり関心がもたれませんでした。エドガー・シャインの知見である、組織文化とリーダーシップの相互関係の中で、リーダーシップは一般的な概念になってきたのに較べるとある意味不思議です。

その原因はやはり、日本の組織の一様性にあるのではないかと思います。組織が一様であれば、行動のレベルで協調がとれ、リーダーは必要だが、組織文化はあまり意識する必要がないからです。あとでも述べますが、むしろ、組織文化は行動の結果としてついてくるような感じだったように思います。つまり、経験論であり、マネジメントの対象ではなかったわけです。

しかし、日本でも多様性のある組織が意識されるようになり、さらにこれからのVUCAの時代には組織の一様性は崩れ去ります。そのため、マネジメントの中心の一つとして組織文化の構築について考えざるを得ないような時代が来たといえます。


◆組織文化の定義と役割

最初に、多様化した組織においても組織文化が必要であることをプロジェクトマネジメントの普及を例に挙げて、説明したいと思います。

多くの組織はプロジェクトマネジメントの定着のために、プロセスを決め、ルールを決めて進めてきました。しかし、このような活動の中で、ポジティブな問題が出てくることがよくあります。例えば、

・ルールより効率的な方法を考えるプロジェクトマネジャーが出てくる
・最初はルール通りに行っているがが、工夫をして変えていくようになる

といった問題です。個別にはよい方法かもしれませんが、全体を考えるとよいかどうかの判断ができず、方法に変えるのも難しく、結構、悩ましい問題です。また、プロジェクトが失敗したときの責任の問題もあります。

こういった場合に、一様性の高い組織ではプロジェクトマネジャーのスキルや組織の指導力の問題だとし、プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)はルールを強化し、統制によって乗り越えようとします。しかし、組織の多様性を高めていくためには、ある程度、認めざるを得ない一面があります。

こういう状況に対して有効なのが、プロジェクトマネジメントを自分の考えで実施することをを組織文化にするというアプローチがあります。つまり、組織としてプロジェクトマネジメントに求める要件を明確にし、それをプロジェクト全体の文化として定着させ、その実現法方法やプロセスにはこだわらないという考え方です。実際に、著者も何度かチャレンジしましたが、効果がありました。

組織文化とは、経営学では

「組織構成員間で共有化された考え方に基づく組織全体の行動原理や思考様式」

と定義されています。もう少し詳細に言えば、

「ある特定の組織外部への適応や内部統合の問題に対処する際に学習した、組織自身によって、創られ、発見され、または発展させられた基本的パターン」

だといえます。組織文化は、「我が社の風土」、「あの会社の文化」という風に意外と日常的な会話の中でイメージされているものです。

組織文化を上のような基本パターンだと考えるとその要素は、例えば

・意思決定の方法
・情報共有の方法
・行動の習慣
・権限移譲の程度
・コミュニケーションの取り方
・仕事の進め方
・マネジメントの考え方

などが思い浮かびますが、それ以外にも例えば、

・働き方
・社章
・組織員の服装
・言葉づかい

なども組織文化だと言えますし、また、

・オフィスの配置
・ビジネスツールの選び方

なども組織文化だと考えられます。

ここで注意してほしいのは、これらは組織の雰囲気をつくっているわけですが、目に見えるもの、見えないものもあるということです。


◆組織文化の構築の難しさ

次になぜ組織文化を構築していくのは難しいのかという問題を考えてみます。

どんな会社にも組織文化はあります。どんな経営者にもこんな会社にしたいという考えはもっています。管理者は自分の職場はこういう職場にしたいというイメージは持っているでしょう。また、社員もこんな雰囲気の会社に勤めたいとか、こんな雰囲気の職場で仕事をしたいという思いがあります。

しかし、よく目にするのは、これらがうまくかみ合っていないケースです。経営者がこういう会社にしたいと宣言していても、管理者は自分の部門の進み方は自分で決めると考え、経営者の考えるイメージに従わないというケースは珍しくありません。また、管理者が考える自部門のイメージを嫌う社員は自分の好きなように行動してているケースもよく見かけます。

結果として、組織全体でみれば、共有されている行動原理や思考様式はないという組織は少なくありません。この状況を変えて、組織全体で共有される行動原理や思考様式を作り上げていくのが「組織文化の構築」です。

日本でもこの10年くらい、組織開発が盛んになってきましたが、組織開発の中で組織文化の構築を手掛ける企業はあまり多くありません。しかし、組織開発の本質は組織文化の構築なのです。


◆そもそも、組織とは何か

ここで注意すべきことがあります。それはそもそも、組織とは何を指しているのかです。組織文化という言葉と企業文化や企業風土という言葉は同じ意味で使われていますが、本当にそうなのでしょうか。

組織文化という場合の組織とは、「目的」を同じくする人達のグループです。もう少し、正確にいえば

「組織とは、ある目的を目指し、幾つかの物とか何人かの人とかで形作られる、秩序のあるグループ」

ということができます。

目的にも上位の目的から下位の目的までさまざまです。もっとも上位の目的を持つのが企業です。これは、最近注目されるようになったパーパスが代表的です。企業の規模にもよりますが、企業全体としての目的を実現するための行動原理や思考様式を持っている企業は多くないように思います。実際に、パーパスを設定してマネジメントを行っている企業でててくる例は限られており、あまり大きな企業がありません。

一般的に、目的を実現するための行動原理や思考様式として共有されているのは範囲は事業部が多いように思われます。つまり、事業部門が組織で、その行動の決め方や、モノの考え方が組織文化というパターンが多いと考えられます。

一方で、文化や風土という限り、持続性が必要です。その意味では、事業部は経営環境が変われば無くなったり、新しく生まれたりしますので、結局、持続し続けるものは企業であり、組織文化は企業の文化であるという考え方もでき、実際にこれまではそういうものとして考えられてきました。

事実、一様性のある組織で、その仕事をする方法とか、プロセスが分かっていた時代には、組織文化は「なんとなく」とか「雰囲気」といった言葉で代表されるようなもので、企業として共有していたように感じます。ただし、これはこういう風にやろうというのではなく、どちらかといえば、活動の結果として組織のみんながそのような考えて行動しているとか、ものごとを考えているといったものでした。

そのため、こういう風に行動すればもっと効率的になるとか、こういう風に考えるともっと成功率が価格なるということがなんとなくあって、それを「経験談」という具体的な形で、飲み会のような場で語り伝えられるのが普通でした。そして、それなりに効果がありました。


◆VUCAの時代の組織文化のポイントは抽象度

ところがVUCAの時代になってこのような認識は必ずしも成り立たなくなっています。VUCAの時代には、その仕事を進める方法とか、プロセスがはっきりしないし、また、これだと思ってもすぐに変わってしまいます。

このような中では、経験談は役に立ちません。もちろん、経験が全く無意味なわけではなく、そこから学習される知見は有用です。このため、具体的な経験そのものは共有するのではなく、経験から得られる抽象化された知見を共有することが組織文化の構築になっていきます。

これをうまく実現していくためには、組織文化の中の要素の抽象度をうまく整理する必要があるのです。

ここで気をつけなくてはならないことは、組織文化も抽象度が高いレベルでは反発するメンバーはいないが、具体的なレベルになると反対する人も多いことです。例えば、多くの組織が打ち出しているコミュニケーションのよい組織にしようという方針に反対する人はいないでしょう。

ところが、現実にはコミュニケーションがよいことが組織文化だといえる組織は十組織に一つとかいうレベルだと思われます。コミュニケーションは難しいという一言で済ませている問題ですが、実際にはコミュニケーションをよい組織になるためには現実の行動をとらなくてはならなく、そこには利害関係も出てくるためです。実は組織文化の構築の難しい理由の本質はこの問題にも見え隠れてしています。

これを上の経験との関係で考えてみましょう。経験(行動)と組織文化の関係には

組織で共有されている行動原理や思考様式について活動し、行動や行動結果(経験)から得られる知見によって組織文化が強化されている

という関係があります。ここで重要なことは、この知見には、経験自体や経験から得られる知恵のようなさまざまな抽象度のものが入り混じっていることです。言い換えると、組織文化にはさまざまな抽象度の要素が入り混じっているということです。

組織文化にはさまざまな抽象度の要素が入り混じっていることです。


◆エドガー・シャインの組織文化

この抽象度をうまく表現しているのが、エドガー・シャインの組織文化です。シャインは組織文化を3つのレベルに分け、相互作用があるとしました。以下の3つです。

レベル1:人工的に創造されたもの
レベル2:信条と価値感
レベル3:基本的仮定

レベル1の「人工的に創造されたもの」は、オフィスのレイアウトや社訓・社是、社長のメッセージなど「目に見える」ものです。抽象度が最も低いものです。文化という場合、目に見えないもの、言い換えると抽象度の高いもの、つまりレベル2や3だと考える人も少なくないと思いますが、レベル1を考える意味はこの要素は自由に作り上げることができ、レベル2や3の組織文化の強化に作用することです。これは、組織文化の構築においては極めて重要なポイントです。

例えば、「顧客第一」という抽象的な価値観を作り上げるために、顧客に喜んで貰ったこという具体的項目を入れた訪問報告書を書くというのは多くの企業で行われています(組織文化ができていない組織ではなんのために書いているのか意識が共有されていない場合が多いですが)。

レベル2は「信条と価値感」です。これは、「どうあるべきか」という感覚であり、いわゆる価値感です。もう少し正確にいえば、組織の雰囲気や人間関係など組織に対する基本的な認識を含めた「価値観」です。

このレベルは目に見えません。従って、レベル1の要素を通じて価値観を共有したり、打合せなどのコミュニケーションで共有しているのが普通です。ただし、なかなか共有は難しいのが現実です。

レベル3は「基本的仮定」です。理解しにくい言葉ですが、定義を書くとすれ
ば、

「組織に当たり前に受け入れられており、対立にも議論にもならないまま組織活動の前提条件となっているもの」

です。一般に企業風土とか、組織文化という場合、これを指していることが多いと思われます。目に見えないですし、そういうものがあると認識されないくらい組織の常識になっており、無意識のうちにこの前提によって意思決定が行われます。


では、このようなシャインの組織文化を前提にした場合、組織文化の構築をどのように行えばよいのでしょうか。長くなりましたので、この問題については次回、お話しします。


◆関連セミナー

VUCAマネジメント塾の第2回説明会&体験会を開催します。

今回は、組織文化をテーマに行います。

━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆VUCA時代の事業と組織文化のつくり方~組織文化編◆
 日時:日時:2020年12月08日(火) 14:00-16:00
 場所:ZOOMオンライン
 講師:好川哲人(有限会社エムアンドティ)
    新井宏征(株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役)
 詳細・お申込 https://vuca-mgmt-201105.peatix.com/
 主催:プロジェクトマネジメントオフィス、スタイリッシュ・アイデア
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13:50    開場
14:00-14:15 VUCAと向き合う(新井宏征)
14:15-14:45 組織文化でVUCAを乗り越える(好川哲人)
14:45-14:55 質疑
14:55-15:50 ワーク(好川哲人)
15:50-16:00 VUCAサービス紹介(新井宏征)
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【参考文献】

シャインの組織文化の最新版の原著は

Edgar H. Schein「Organizational Culture and Leadership, 5th Edition
(The Jossey-Bass Business & Management Series)」、Wiley(2016)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/1119212049/opc-22/ref=nosim

です。本書は第5版ですが、初版を翻訳した本は、すでに絶版されていますが、

エドガー・H. シャイン(清水 紀彦、浜田 幸雄訳)「組織文化とリーダーシッ
プ―リーダーは文化をどう変革するか」、ダイヤモンド社(1989)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478360111/opc-22/ref=nosim

があります。

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