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2021年6月 8日 (火)

【コンセプチュアルスタイル考】第57話:コンセプチュアルリーダーのスキルと行動

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◆コンセプチュアル思考、コンセプチュアルスキル、コンセプチュアルリーダー

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PMstyleでは、2021年4月からコンセプチュアルリーダー塾を設立し、コンセプチュアルリーダーを育成する活動に取り組んでいます。コンセプチュアルリーダーは一言でいえば、

「コンセプチュアルスキルを活用して、センスのよい成果を上げる人材」

のことです。

コンセプチュアルスタイル考にコンセプチュアルリーダーについて本格的に書くのは初めてになりますので、最初に簡単に、コンセプチュアルという概念の整理をしておきたいと思います。

まず、コンセプチュアルスキルは、コンセプチュアル思考で実現されるスキルだと考えています。コンセプチュアル思考は、

・大局/分析
・抽象/具象
・直観/論理
・主観/客観
・長期/短期

の5つの軸を使いながら、概念の世界(大局、抽象など右側)と形象の世界(分析、具象など左側)を行き来する思考法です。もっとも普及しているのは、抽象と具象の軸の行き来で、例えば、抽象的に機能を考え、それを具体化し、さらに、その具体から抽象的な機能を見直すといった行き来で考えることによって、同じ(概念)アイデアから、全く異なる製品(形象)が生まれてイノベーションを起こすといったものです。

詳しく知りたい方は、好川哲人の「コンセプチュアル思考」という本を読んでみてください。

好川 哲人「コンセプチュアル思考」、 日本経済新聞出版社(2017)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532320623/opc-22/ref=nosim

コンセプチュアルスキルは、一般には、

「周囲で起こっている事柄や状況を構造的、概念的に捉え、事柄や問題の本質を見極めるスキル」

という意味で使われます。具体的なスキルとしては、例えば、問題解決や意思決定のスキルがあります。

ポイントは本質を見極めて本質的な問題を解決することや、本質を押さえた適切な意思決定をすることです。問題解決や意思決定をしても本質からずれたものであれば、それがコンセプチュアルスキルとは言えません。

PMstyleでは、コンセプチュアルスキルを使ってこのような活動をした結果、成果に付与される要件をセンスだと考えています。つまり、コンセプチュアルスキルと呼べるクオリティの活動をすることによって、センスのよい成果が得られるわけです。

そして、本質を見極める際に役立つのが、コンセプチュアル思考です。

このように考えていくと、コンセプチュアルスキルを活用した活動をするということは、コンセプチュアル思考を使いこなし、本質を見極めた上で、本質を踏まえてさまざまな活動をしていくことに他なりません。このような活動をするのがコンセプチュアルリーダーです。

ちなみに、コンセプチュアルリーダーが集まって作るチームや組織をコンセプチュアルな組織と呼んでいますので、こちらも覚えておいて頂ければと思います。

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2021年4月26日 (月)

【コンセプチュアルスタイル考】第56話:「コンセプチュアル」とは何か

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【参考文献】
好川 哲人「コンセプチュアル思考」、 日本経済新聞出版社(2017)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532320623/opc-22/ref=nosim
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Conceptual15◆概念とは何か

コンセプチュアルリーダー塾の活動を再開し、何回か「コンセプチュアル」ってどういう意味ですかという質問を受けました。コンセプチュアルスキルに関する活動をはじめて10年近くになりますが、当時と比較すると言葉自体はよく使われるようになってきましたが、明確な定義で普及してきているかというと、今でもはっきりしない人が多いようです。そこで、今回は「コンセプチュアル」の意味を解いてみたいと思います。

コンセプチュアルの名詞はコンセプト(concept)です。コンセプトという言葉は普通に使われるようになってきましたが、どういう意味かと聞かれると説明に困るという人が少なくないと思います。そもそもをいえば、コンセプトは概念、コンセプチュアルは概念的と日本語が当てられますが、概念ってどういう意味かと聞かれると説明に困る人が多いのではないかと思います。難しい「概念」だといえます。

例えば、デジタル大辞泉を調べると概念の説明として

「事物の本質をとらえる思考の形式」

だとした上で、「個々に共通な特徴が抽象によって抽出され、それ以外の性質は捨象されて構成される」という説明がされています。そして、これがconceptの説明だともされています。これらを参考に、このあとの議論のためには、ここでは概念を

「共通している点によって、それらを同じ種類だと判断できる考え」

と表現しておきます。

少し脱線しますが、概念の説明で興味深いのは、ブリタニカ国際大百科事典の説明で、

「一般にAの概念といえばAについての経験的事実内容ではなく、Aに関する論理的、言語的意味内容をさす」

という説明があることです。

日本の戦後に生まれた習癖の一つに論理を軽視し、経験を重視するというのがありますが、これによって経験的内容ではないことに関する意味の理解を邪魔しているように感じることがよくあります。だとすれば、これが概念という考え方が理解しにくい理由なのかもしれません。

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2021年4月23日 (金)

【コンセプチュアルスタイル考】コンセプチュアルリーダー塾説明会のお知らせ

バックナンバー https://mat.lekumo.biz/pmstyle/cat9984019/ 

コンセプチュアルリーダー塾 : https://www.facebook.com/groups/354890747963982

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2021年5月にリニュアルしますコンセプチュアルリーダー塾の説明会を開催します。

新しいコンセプチュアルリーダー塾では、2021年は「センス」をテーマに掲げ、個人とチーム/組織の両面から活動を行います。

個人の側面からは、コンセプチュアル思考を使いこなすことによって、センスのよいマネジメントや業務のできるリーダーを育成する場にしていきます。

また、チームや組織の側面からは、センスのよい人材(コンセプチュアルリーダー)が活躍できるチーム、組織をつくる方法を考える場(コンセプチュアル組織ラボ)にしたいと思います。

つきましては、5月12日に個人対象、5月31日にチーム/組織対象のコンセプチュアルリーダー塾説明会を開催します。

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2021年4月 9日 (金)

【コンセプチュアルスタイル考】第55話:コンセプチュアル思考でセンスを磨く!

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【参考文献】
好川 哲人「コンセプチュアル思考」、 日本経済新聞出版社(2017)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532320623/opc-22/ref=nosim
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◆コンセプチュアルスキルってなんですか?

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コンセプチュアルスキルという言葉はだいぶ普及してきましたが、意味を尋ねるとなかなか明確な答えが返ってこない言葉です。もし、あなたが、

「コンセプチュアルスキルって何ですか」

と尋ねられたらなんと答えますか。

多いのは、問題発見、問題解決や意思決定、経験学習のような思考活動という答えなのですが、これは厳密にいえば正しくありません。問題解決がすべてコンセプチュアルスキルとは限らないからです。

例えば、交通事故が起こったときに、警察官が行うのは運転の仕方や運転者のスキルなどに基づく原因分析(問題発見)ですが、コンセプチュアルスキルではありません。コンセプチュアルスキルと言えるのは、なぜ、そのような運転をしたかを深く分析する問題発見です。

これは、洞察といわれる思考活動ですが、見えない部分を分析することが多く、事実かどうかははっきり分かりません。例えば、直線の先にあるカーブでスピードの出し過ぎで事故を起こしたときに、ブレーキが効かなかったという理由であれば見えることとですし、ほぼ事実だと言えます。しかし、ストレス解消のためにスピードを出していたが、先にカーブがあることに気がつかなかったとすれば、本人にしか分からない推測の世界です。

警察の仕事は本人の供述以外には認知されない世界ですが、ビジネスではこの部分をどう考えるかが勝負の分かれ道になることが多いのです。言い換えるとコンセプチュアルスキルが仕事の成否を決めると言ってもいいでしょう。特に、VUCA時代には失敗を成功の一プロセスとして捉えなくてはなりませんので、この問題は影響が大きくなります。


◆失敗を活かすためには

例えば、よく失敗を活かして仕事を進めると言いますが、なかなかうまくできません。その理由として失敗は許されないので、無視するしかないなどという主張が多いのですが、本当の問題は失敗を無視することではなく、失敗した理由、特に目に見えていない理由を十分に考えられるかどうかにあります。

研修などで同じケース(問題現象)に対して原因の分析をすると、組織によって全く答えが違うというのは珍しくないのですが、その違うを生み出しているのは、分析の深さだったり、分析の方向性だったりします。

この原因の分析が適切にできていると有効な改善ができますが、不適切だと問題を大きくするばかりになりかねません。

深さに関しては、なぜなぜ分析という手法があります。トヨタの5WHYで知られるように、原因を5回も深掘りすれば見なないところが見えてきて、適切な解に行き着くだろうとよく言われます。しかし、実際にトヨタの人の問題解決行動を見ていると5WHYは深さだけではないことがよく分かりますし、現になぜなぜ分析をして同じ回数、深掘りしても、トヨタの人と他の人では答えのクオリティが違うのです。

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2020年7月13日 (月)

【コンセプチュアルスタイル考】第54話:「どうやるか」に留まらず、「何をするか」を考える~閉じた場から開いた場へ

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【参考文献】
好川 哲人「コンセプチュアル思考」、 日本経済新聞出版社(2017)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532320623/opc-22/ref=nosim
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◆改善だけでイノベーションができない日本

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この10年くらい、日本のビジネスパースンは「どうやるか」を考えることは得意だけど、「何をするか」を考えることは苦手だと批判されることが多くなってきました。このような問題が頻繁に指摘されるようになった背景には、時代的に変化しなくてはならない状況であるにも関わらず、出てくるのは改善のアイデアばかりで、イノベーションのアイデアが出てこないことがあります。これが、経済に深刻な影響を与えています。

現実にこの20年くらいで起こったことを見ていてもよくわかります。バブルの崩壊後、日本が失われた20年とか、30年とか言っているうちに、米国ではアマゾン(1995年)、グーグル(1998年)やフェイスブック(2004年)といった企業が登場し、併せると50兆円近い売り上げをあげています。日本をみれば、例えば1997年に設立され、時代の寵児とみなされている楽天が初の売り上げ1兆円超えを達成したが2918年ですので、規模の違いがよくわかります。

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2020年7月 2日 (木)

【マネジメントスタイル:雑談2】コンセプチュアル思考の各軸を極めるための本

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PMstyleでは、「コンセプチュアル思考」という思考法を提唱しています。

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好川 哲人「コンセプチュアル思考」、 日本経済新聞出版社(2017)

https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532320623/opc-22/ref=nosim

コンセプチュアル思考は5つの軸の軸の行き来で実践します。

大局/分析
抽象/具象
直観/論理
主観/客観
長期/短期

の5軸です。大局や長期は経営者やマネジャーのスキルとしては古くから重要性が指摘されていたものですが、この5年くらいで他の軸についても急速に認知されるようになってきたように感じています。

そこで、この記事では、抽象/具象、直観/論理、主観/客観の3軸に関する書籍を簡単にコメントをつけながら紹介してみたいと思います。

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2020年6月10日 (水)

【コンセプチュアルスタイル考:雑談3】なぜ、レジリエンスにコンセプチュアルスキルが必要なのか

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◆コロナによってマネジメントが変わる
 
コンセプチュアルリーダー塾をZOOMオンラインで再開することになりました。この塾は、6年前に始め、2年間だけやり、事情があって中断していたものです。再開にあたり、何を思って、始めたかを書き留めておこうと思います。
 
ちょっと長くなりますが、最初はコロナの話題からしたいと思います。コロナへの対応を見ていると、見事に日本の特性が表れていると感じているからです。
 
日本でも今年の2月くらいからコロナ伝染が発生し、マネジメントが大きく変わりつつあります。これは、国、自治体、企業、家庭など、すべてに当てはまります。ここでは、生活(社会活動)と経済活動の2つを見ていきたいと思います。
 
日本の特徴の一つは、考え方や行動を同質にすることによって国が自治体を飛び越えて、国民の生活にまで介入していることでした。多様性を認めないことによって自治体から国民まですべてを同質化し、公に大きな方針を出してその根拠となる情報は出さず、自治体が実行していくことに対して、法的な縛りや予算的な縛りをして介入していました。
 
今回のコロナ対策でもそういう気配が見えました。実際、緊急事態宣言を出すあたりまでは、国は状況分析や予測の情報はほとんど出さずに、その情報を使って地方に介入しようとしていました。
 
しかし、東京や大阪のように感染者が多い地域もあれば、岩手や鳥取のようにほとんど感染者がいない地域もあり、地域によってまったく状況が異ったことで自治体の要望は異質になり、全国のどの自治体にも通用する一律な細かなルールができなくなりました。一方でとにかくスピードが求められる状況の中で、具体的なルールを決めることができなくなってきたため、方針だけ示して、権限移譲を建前だけではなく、実質的に認めるという本来の姿に戻ったように見えます。
 
ちょっと脱線しますが、このような体制を作らざるを得なかったことがコロナ禍のプラスの側面の一つではないかと思います。コロナで地方自治がやっと本格化していくのではないでしょうか。
 

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2020年4月13日 (月)

【コンセプチュアルスタイル考:雑談2】パーパスを描き、不確実な状態に耐え、希望を見出すネガティブ・ケイパビリティ

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◆ネガティヴ・ケイパビリティとは
 
最近、注目され始めている概念に、「ネガティブ・ケイパビリティ」という概念があります。例えば、この記事の参考資料に上げている帚木蓬生さんの書籍はアマゾンの売れ筋でずっと3桁に入っています。
 
この概念はもともと、19世紀に詩人であるジョン・キーツが発見したものです。キーツがこの概念を生み出した背景には、以下のような詩人観があったとされます。
 
「詩人はアイデンティティをもたない。詩人は常にアイデンティティを求めながらも至らず、代わりに何かほかの物体を満たす」
 
つまり、詩人にはアイデンシティがなく、それを必死に模索するなかで物事の本質に到達する。その宙吊り状態を支える力こそがネガティヴ・ケイパビリティである、すなわち
 
「事実や理由を拙速に求めず、不確実さや不思議さ、懐疑のなかにいられる能力がネガティヴ・ケイパビリティである」
 
と指摘しました。
 
そして、この概念を第二次世界大戦に従事した精神科医ウィルフレッド・ビオンが精神医学の世界に持ち込みます。ビオンは
 
「精神医療においては精神以外では先の見えない患者に寄り添い続け、「いつか治るだろう」と耐え続ける必要がある。このため、生身の人と人が接する精神療法の場において、治療者が保持し続けなければならないのがネガティヴ・ケイパビリティである」
 
と説きました。
 
さらに、
 
「精神療法は「記憶」「欲望」「理解」のないところでこそ最も効果を発揮する。従って、自分の知識を頭のなかから消し去り、「患者をこうしたい」という欲望にとらわれず、我田引水のように患者を理解しようとしない。生まれたての赤子のように新鮮な心で、目の前の患者に接し、謙虚に耳を澄ますところから始めよ」
 
と述べています。
 
すなわち、ネガティブ・ケイパビリティゆえに、治療者は自分の特定の視点を離れて患者の心のひだに深く立ち入り、より高い次元で患者を理解し、精神療法の効果を最大限に発揮できると認識されるに至っています。
 
このような概念に対して、帚木さんはネガティブ・ケイパビリティは人間の本能に反する行為であると考えました。すなわち、人間は複雑なものをそのまま受け入れられずに、単純化やマニュアル化をしてしまう。答えがないものや、マニュアル化できないものは最初から排除しようとするという考えです。
 
一方で、このようにすると、理解がごく小さな次元にとどまり、より高い次元まで発展しません。その「理解」が仮のものであった場合、悲劇はさらに深刻になると考えます。だからこそ、宙ぶらりんな状態に耐えた先に、必ず深い発展的な理解が待ち受けていると確信し、耐えていく持続力を生み出すネガティブ・ケーパビリティが重要だと説いています。

これこそ、ネガティブ・ケイパビリティの本質だと考えられます。
 

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【コンセプチュアルスタイル考】第53話:正解のない問題を解決する抽象と具象の行き来

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【参考文献】
好川 哲人「コンセプチュアル思考」、 日本経済新聞出版社(2017)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532320623/opc-22/ref=nosim
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Tyusho1

◆抽象病と具体病
 
ブログ「コンセプチュアル・マネジメント」に掲載している「コンセプチュアル講座コラム」で、楠木建先生が山口周さんとの対談集 「仕事ができるとはどういうことか?」(宝島社、2019)で、
 
「抽象的な理解ほど実用的で実践的なものはない」
 
という発言をされたのを取り上げて共感するという記事を書いたところ、読まれた方(Aさんと表記)からコロナ問題を取り上げてかなり長いメッセージを頂きました。内容は後で触れますが、一言でいえば抽象的であることが実践的であるというのはよく分からないということでした(紹介することはご了解いただいています)。書いた記事はこちらです。
 
【コンセプチュアル講座コラム】「抽象的な理解ほど実用的で実践的なものはない」
https://mat.lekumo.biz/ppf/2020/02/post-9a1f.html
 
2020年3月に発刊された細谷功さんの新刊「「具体⇔抽象」トレーニング 思考力が飛躍的にアップする29問 (PHPビジネス新書)」(PHP出版、2020)で、細谷さんは抽象病と具体病という話をされていますが、まさに、具体病だと思います。
 
さて、細谷さんはこの本で、問題解決には以下の3つがあると指摘されています。
 
(1)具体→具体→具体・・・(表面的問題解決)
(2)抽象→抽象→抽象・・・(机上の問題解決)
(3)具体→抽象→具体・・・(根本的問題解決)
 
なかなか、的を得た命名だと感心しました。これは、楠木先生が「抽象的な理解ほど実用的で実践的なものはない」とおっしゃられているのと合致します。好川もコンセプチュアル思考の一つの軸として抽象と具象の行き来の軸を設定していますが、まさにこの指摘と同じ感覚を持っているからです。
 

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2019年10月15日 (火)

【コンセプチュアルスタイル考】第52話:全体最適を考え、本質に迫る

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【参考文献】
好川 哲人「コンセプチュアル思考」、 日本経済新聞出版社(2017)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532320623/opc-22/ref=nosim
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Jobs

◆本質とは何か
 
本質はコンセプチュアルスキルの中核であり、本質を見極め、本質をベースに行動することはコンセプチュアルスキルの向上に欠かすことができません。今回のコンセプチュアルスキル考は本質に迫るためにとるべきスタンスについて考えてみたいと思います。
 
辞書によると本質は
 
「すべてのものに共通している/当てはまるさま」(大辞林)
 
と説明されています。
 
例えば、本質的問題というとすべてのトラブルに共通する問題点ですし、本質的要求というとすべての顧客が求めていることがらになります。
 
すべてのものごとに共通しているものごとを見つけようとすれば、抽象度を上げる必要があります。だからといって抽象度を上げすぎると、共通はしますが、本質に基づいて適切な行動を起こすことができなくなります。
 
例えば、働き方改革で社員の望むことの本質を考えてみましょう。
 
「満足な生活を送れること」を本質だと考えてしまうと確かにすべての社員に共通していることで、またすべての要素を包含しているといえます。しかし、何をもって「満足な生活」なのかがはっきりせず、具体性に欠けます。
 
そのため、本質をベースに、何か改革行動をしようとすると考える範囲が広すぎて改革として具体的な行動に落としていくのは困難になります。つまり、抽象度が高すぎるのです。
 
一方で、本質を「残業をしないこと」ことだと考えると、改革で取るべき具体的な行動として仕事の効率を上げるなどはっきりしましすが、それだけがすべてでないことは明らかです。やりがいのある仕事をしたい人もいるでしょうし、高い報酬を得たい人もいるでしょう。
 
このように、本質に迫るためには、適切な抽象度を見極めることがポイ
ントになります。このためには何ができればよいのでしょうか?

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