【VUCA時代のプロジェクトデザイン】第2回 何のためにプロジェクトをやるのかを決める(パーパス・デザイン)
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◆はじめに
前回はVUCAの時代に増えてくるプロジェクト3.0について、どのような方向性でマネジメントすべきかを整理し、成功のポイントはプロジェクトデザインであることを述べました。今回から、VUCAを前提としたプロジェクトデザインの方法について考えていきたいと思います。
まず、今回はプロジェクトパーパスを明確にすることを考えます。パーパスをプロジェクトマネジメントに活かすという趣旨では、過去に連載
「VUCA時代のプロジェクトマネジメント」
https://note.com/ppf/m/mc66e1ae06086
を書きましたが、ここでは少し視点を変えて、VUCA以前とVUCAの時代のプロジェクトマネジメントの前提について考え、そこからパーパスのデザインについて考えていきます。
◆従来のプロジェクトマネジメントの前提
従来のプロジェクトマネジメントは、プロジェクトは「戦略実行のため」に行うものであり、戦略実行の範囲内で目的を決定し、目標を設定し、目標達成のための計画を作り、計画を基準にプロジェクトの状況を管理するのがプロジェクトマネジメントということでした。
このようなプロジェクトマネジメントの位置づけの中でよく見かけるのが、どういう戦略であるにせよ結果として求められるのは、売上げを増大し、収益を最大化することであるので、とにかく、顧客や市場の要求を明確にし、コストを削減すればよいというアプローチです。実際にプロジェクト憲章の目的に
・顧客や市場の要求に応える
・売上げを増やす
・コスト削減に知恵を絞る
のを掲げているプロジェクトはどこの企業でもかなりの割合であります。
厳密にいえばこれは目的というより方針ですが、このアプローチが間違っているとは言えません。ただし、このアプローチには大きな前提が含まれていることはよく認識しておく必要があります。
それは、顧客の要求は明確であり、変わらないということです。もちろん、変わることもあるのですが、それはリスクの範囲内で、ある程度想定できるものだと考えています。
◆変わるプロジェクトの前提
しかし、この前提が成り立たなくなってきていますが、今のところプロジェクトマネジメントとしては前提が成り立たないことをリスクとして捉え、リスク対策としていろいろな工夫をしています。
例えば、製品開発プロジェクトではプロジェクトの期間がだんだん短くなってきていますが、これは、市場の要求がどんどん変化し、以前ほど長続きしないことに一因があります。このため、市場の変化というリスクに対応して、プロジェクトマネジメントはプロジェクト期間を短縮したり、スコープに対してはアジャイ手法を活用するなどのリスク回避の工夫をするようになっています。
VUCA時代になるとこの傾向は顕著になり、多くの企業が悩んでいるようにこのような変化をリスクとして扱えなくなってきました。社会やビジネスの環境がどんどん変わっていくため、顧客や市場の要求もどんどん変わっていき、その先の顧客も変化するため、非常に大きな変動になっているためです。
また、市場そのものが変わっていくことも珍しいことではありません。一例をあげれば、さまざまな分野で登場しているサブスクリプションビジネスやシェアリングサービスによって市場の要求は大きく変わってきています。
◆VUCAの時代のプロジェクトマネジメントの前提と対応
このように考えると、顧客の要求は明確であり、変わらないというプロジェクトマネジメントの前提そのものを変える必要があります。つまり、
「顧客の要求はあいまいであり、どんどん変化する」
という前提でプロジェクトをマネジメントしていく必要があります。
このような前提の中で、戦略実行のためにそのプロジェクトでどういう成果物を生み出せばよいかという視点でものを考えることはあまり現実的ではありません。顧客が自身の要求が曖昧で、暗中模索している中で、何らかの戦略貢献というプロジェクト目的を決め、プロジェクトの目標を決めても、結果としてプロジェクトは戦略に貢献できないものになることが多いからです。
例えば、顧客満足を高めるという戦略の実行を考えてみると分かりやすいでしょう。顧客の要求を分析しても顧客の要求が曖昧であれば、顧客満足を高めることは難しく、結果として戦略に貢献できないことになりがちです。
さらに、最近では企業の戦略自体が短期間で見直し、変えていくことは珍しくありません。この20年間、かつてなかったようなパターンで成長を続けてきたGAAFを見ていると明確です。朝改暮令とはいいませんが、クオターで戦略を変えています。
このような前提で考えると、目標や計画だけではなく、プロジェクトの目的そのものが問題になってきます。戦略が変わらなければ、プロジェクトの目的は何らかの方向から戦略実行に貢献するために決定しますので、戦略が変化すればその時点で目的を変える必要が出てきます。
◆プロジェクトパーパスをデザインする
この問題に対する唯一の解は売上げと収益を向上することでした。上に述べましたように企業でもプロジェクトの目的で多いのは収益貢献することですが、これでは苦労してプロジェクトをやる理由はありません。プロジェクトでメンバーのモチベーションを上げ、より大きな成果を得るには、プロジェクトとしての主体的な目的が必要です。
そのためには、戦略に貢献しつつも、広い意味で社会的な貢献をするプロジェクトの目的が不可欠です。これを「パーパス」と呼びます。
戦略実行に貢献し、社会的な貢献をするためには、そのプロジェクトをなんのためにやるのかを徹底的に考え、構造をデザインしていく必要があります。
例えば、顧客満足と収益確保を柱とする企業で、新製品開発プロジェクトに取り組む場合には、顧客が何を望んでいるかを考えるだけでは不十分です。顧客がその顧客や市場、さらには社会に対してどのように影響を与えようとしているかを十分に分析し、そのために顧客に何が必要かを考え、そこに誘導していくようなプロジェクトのパーパスを決めて、そのパーパスに基づいてプロジェクトに取り組んでいく必要があります。
このようなプロジェクトデザインをすることによって、顧客が自分たちの要求を明確にしていないときや、要求が変化していっても、プロジェクトとしてはパーパスを実現するという目標を達成することによって、プロジェクトとしては経営もメンバーも満足できるような成果を上げることが可能になります。
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【カリキュラム】
<第1日>
1.パーパスとプロジェクトデザイン
2.パーパス実現のシナリオ創り
3.成果と成果物を明確にし、プロジェクト目的と目標を決める
<第2日>
4.シナリオからプロジェクトコンセプトを創る
5.成果を実現する本質要求を見極める
6.成果物を実現する本質目標を決定する
7.環境変動時のプロジェクトマネジメントの対応
8.VUCA時代に求められるプログラム&プロジェクトマネジメント
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