PMstyle 2024年4月~7月Zoom公開セミナー(★:開催決定)

カテゴリ

Powered by Six Apart

« 【コンセプチュアルスタイル考】第54話:「どうやるか」に留まらず、「何をするか」を考える~閉じた場から開いた場へ | メイン | 【マネジメントスタイル:雑談4】VUCAの時代には問題解決より問題発見が重要である »

2020年8月 5日 (水)

【マネジメントスタイル:雑談3】VUCAな時代に適応していくには「オーナシップ」が不可欠である

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

Ownership


◆VUCA時代に適応するには

コロナで一挙に突入した観があるVUCAな世界では、不確実性が高いゆえに、何事にも多様性があり、正解がない(見つからない)という状況が当たり前になります。その中で、ビジネスにしろ、人生にしろ、何かを選んでいかなくてはなりません。

このような選択をするには「自己責任」が前提になり、このためにはオーナーシップが不可欠になります。例えば、BNL(Business Network Lab)に掲載されている

「VUCAを免罪符に思考停止していないか? 国際情勢分析のプロと考える、リーダーが身につけるべき情報との向き合い方」
https://bnl.media/2020/07/globis-dialogue-3-1.html

という記事では、VUCAな世界で生き延びていくには、自ら選び取ることが不可欠であり、そのためには、オーナーシップを持ち、アンテナを張り巡らしていかなくてはならないと指摘しています。まさにその通りだと思います。

この記事では、VUCAを生き延びていくためのオーナーシップの育成について考えてみたいと思います。

 
◆オーナーシップとは

まず、オーナーシップのイメージを明確にしておきたいと思います。

オーナーシップ(ownership)という英単語は「所有権」、「所有者」、「責任感」、「当事者意識」といった意味があります。これから分かりますように、オーナーシップという単語は権利と責任という両方を含んでいますので、日本人の感覚では違和感があるかもしれません。権利と責任が表裏一体であるという意識が乏しく、対立すると考える傾向があるからです。


このような背景がありますが、オーナーシップは

「個人が目の前に存在している課題やミッションに対して当事者意識を持って向き合う姿勢」

という概念として定義されます。ビジネスの中に限定すれば

「個々の従業員が自らに与えられた仕事や役割、自身が属する組織と向き合う際の姿勢や関係性」

といってもよいでしょう。


◆プロジェクトにおけるオーナーシップ

さらに、プロジェクト活動におけるオーナーシップは

「個々のメンバーが自らの作業や役割、自身が属するプロジェクトと向き合う際の姿勢や関係性」

と考えることができます。

プロジェクトやチームではリーダーシップが注目されますが、実はメンバーのオーナーシップというのが同じくらい重要です。特に、VUCAなプロジェクトにおいてはあるリーダーシップよりオーナーシップの方が重要なのかもしれません。

プロジェクトマネジメントにおいてはプロジェクトオーナーという概念があり、オーナーシップをプロジェクトの所有権の意味合いで使っていますので注意してください。

プロジェクトオーナーについてはこちらの記事を参照ください。

「みんなのプロジェクトマネジメント」
第8回 プロジェクトオーナーとプロジェクトスポンサー
https://pmstyle.biz/column/minnna/minna8.htm

プロジェクトオーナーのオーナーシップもプロジェクトオーナー(所有者)のプロジェクトに対する所有権や責任感や当事者意識と考えればこの記事で述べようとしているオーナーシップということになります。この記事ではこの議論は割愛しますが、オーナーシップ=権限ないことだけは頭の片隅に入れておいてください。


◆オーナ=シップとリーダーシップの関係

以上のように整理をすると、そもそも、オーナーシップとリーダーシップはどう違うのかという疑問が出てくると思います。この問題をプロジェクトで考えてみましょう。

プロジェクトでは、リーダーシップは主にプロジェクトマネジャー、リーダーやプロジェクトスポンサーが求められるものです。これらは以下のような活動を実施するものです。

・プロジェクトの目的を決める
・目的実現のために解決するべき課題の洗い出す
・課題解決のため、個々のメンバーの特性を把握し、役割を決める
・メンバーが創造的で生産的に活動できるようにサポートする

といったものです。これに対して、オーナーシップは

・自分の役割に向き合う
・新しい課題を発見し、創造的な仕事をする
・作業プロセスの最適化により生産的な仕事をする

活動を行うものです。

これから分かりますように、リーダーにもオーナーシップが必要です。言い換えると、上に述べたリーダーシップに基づく活動を効果的に行うためにはオーナーシップで求められるような活動が必要になるわけです。


◆オーナーシップがプロジェクトにもたらすもの

次にプロジェクトにおいてプロジェクトメンバーやプロジェクトマネジャーがオーナーシップを持つとどのような良いことがあるのでしょうか。

例えば、以下のようなものがあります。

・顧客満足度の向上
・プロジェクトチームの創造性の向上
・個々のメンバーの生産性の向上

簡単に説明しておきます。まず、顧客満足度の向上ですが、プロジェクトで顧客満足度が向上しない最大の理由はメンバーの一人一人が自分で考えないことにあります。つまり、、プロジェクトマネジャーや顧客や営業、経営者などプロジェクト外部ステークホルダーからの指示を待つといった姿勢を取る人が多いですが、この原因はオーナーシップの欠如に尽きます。

従って、オーナーシップが身につけば、自身が考え、動き、顧客満足は高まっていくでしょう。

次に創造性の問題です。プロジェクトにおいては決められたことだけしていればよい、あるいは計画にないことはすべきではないという思い込みがあります。これもオーナーシップの欠如です。

プロジェクトにおいて制約になっているのは予算と時間であり、スコープではありません。もちろん、スコープは実現しなくてはならないのですが、それは実現の仕方を決めたり、あるいは計画以上に実現することを禁じるものではありません。

オーナーシップを身に付けることにより、そのあたりの判断を自身でしようとし、チームとして実現するように働きかけ、結果としてチームの成果が創造的になるでしょう。

また、そのために個々のメンバーは自身の生産性を向上しようとします。

オーナーシップには以上のようなメリットをもたらします。


◆オーナーシップの育成

では、オーナーシップをどうやって育成していくかを考えてみましょう。まず、認識しておくべきことは、第三者が研修やトレーニングのような形で付与できるものではないということです。本人が自分の仕事やプロジェクトに対して当事者意識を持って真剣に向き合う気持ちを抱かなければ、本当の意味でのオーナーシップは身につけることはできません。

ではどうすればよいか。場の提供や環境構築が育成のポイントになります。つまり、

・オーナーシップに関して学ぶ機会を提供する
・オーナーシップが育ちやすい環境の構築する

などが必要です。これらは、経営や組織がプロジェクトに対して提供することが望まれますが、現実にはプロジェクトスポンサーが経営や組織を代表してプロジェクトに対して提供することが求められます。


◆学ぶ機会をつくる

学ぶ機会で最もポイントになるのは、「責任」に関する見識を広めることです。プロジェクトにおける責任感として、何とか自力で問題を解決し、求められる成果を実現することだと考えている人が多いと思います。しかし、本来の意味で責任を果たすべきは、求められる成果を実現することであり、自分自身の力で行うことではありません。極論すればすべて他者の力で実現してもいいわけです。

というと、まず予算がないので自分の力でやるしかないという反論が返ってきそうです。もちろん、自身でできることはすればいいわけですが、できそうもないことを自力で何とかしようとするのはそれこそ、予算の無駄遣いです。プロジェクトマネジャーに相談し、他者の力を借りる方向に持っていくべきです。

このような意思決定を行い、行動を取れるようになることがオーナーシップだという認識を創ることにまず取り組む必要があります。


◆育つ環境をつくる

次に、環境構築においてはポイントになるのは、権限委譲です。日本人はオーナーシップに欠けるとみられることが多いですが、その根本的な理由は上からの指示が絶対で、失敗は許されないという文化が残っていることにあります。

それが顕著なのは、権限委譲です。権限委譲というのは上位者が権限を譲り、責任を取ることです。前者、つまり権限を譲ることはプロジェクトでは当たり前ですが、後者の責任を取ることができていないケースが多いのです。プロジェクトにオーナーシップという考え方を入れるコンサルティングを何度かしましたが、多くの人はオーナーシップは自分の権限と責任で仕事をすることだと考えます。

それはそれで正しいのですが、プロジェクトをオーナーシップの育成の場にするには、後者が不可欠です。


◆プロジェクトスポンサーが鍵を握る

以上のように、プロジェクトスポンサーがプロジェクトマネジャーやリーダー、メンバーのオーナーシップを高めるためにすべきことはたくさんありますし、VUCAの時代に対応できるプロジェクトを創っていける組織になるかどうかの鍵を握っているのはプロジェクトスポンサーだという認識を持ちましょう!

コメント

コメントを投稿