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2020年11月25日 (水)

【マネジメントスタイル:雑談9】組織文化について考える(3)~組織文化を変革する

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「組織文化について考える」のバックナンバーはこちら
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◆はじめに

前回は、シャインの3レベルの組織文化のモデルを説明して、シャインが行ったDEC社のケーススタディの例を紹介しました。シャインの組織文化のポイントが、人工の産物(レベル1)と信奉されている価値観(レベル2)のベースにある基本的仮定(レベル3)であることは理解いただけたかと思います。

シャインはこの基本的仮定(前提認識)について、

・外的適用に関する前提認識
・内部的統合のマネジメントに関する前提認識
・深いところの文化の前提認識

の3つに分け、それぞれについて詳細に分析しています。これらについては、この記事では深掘りせず、基本的仮定として一括りに考えますが、、新しく始めた連載

「組織文化とリーダーシップ」
https://note.com/ppf/m/m82cad02a69a0

で紹介したいと思います。

ここでは、組織文化の話題の最後として、どのように組織文化を変革していくのかを簡単に説明し、新連載につないでいきたいと思います。


◆グループの進化と基本的仮定の変化

組織文化の変化は組織の変革に伴って起こるものでです。言い換えれば組織の変革によって基本的仮定が変わっていきますが、組織の変革はリーダーが主導して起こすものです。これが議論の大前提になります。

そこで問題になるのは組織変革によるグループの進化の段階ですが、シャインは、

第1段階:グループの形成
第2段階:グループの構築
第3段階:グループの稼働
第4段階:グループの成熟
 
の4段階でとらえています。ここでグループという言葉は、人の集まりで、必ずしもチームを意味していないことに注意しておいてください。むしろ、グループの基本的仮定が進化していくことによりチームになっていくと考えると分かりやすいと思います。

このループの進化基が意味しているのは本的仮定の違いです。以下にその進化を説明します。

まず、第1段階である「グループの形成」では

「リーダーはわれわわれわれがなすべきことを理解している」

という基本的仮定があります。これは、他者(リーダー)に依存した状態だといえます。

これが第2段階の「グループの構築」では、

「われわれはすぐれた集団だ。お互いに尊重しあっている」

という基本的仮定に進化します。つまり、相互依存した状態から融合した状態に変わっていきます。これが、現実にもっとも多い集団の状態だと思われます。

さらに第3段階の「グループの構築」になると

「われわれはお互いを知り、認め合っているので、効果的に仕事ができる」

という基本的仮定に変わっていきます。このような集団の状態になると初めて、グループが稼働します。これがチームと呼ばれる状態です。

そして、第4段階の「グループの成熟」になると、

「われわれが誰であり、何を望み、どのように実現するかを理解している。これまで成功を続けてきたことはわれわれが正しかったからだ」

という基本的仮定を持ちます。これが組織文化が成熟した姿であり、リーダーが創り上げていきたい状態だと変えることができます。

ここで組織文化というのは、ビジョンやミッションとは根本的に性格の異なる概念だということに注意しておいてください。ビジョンやミッションは未来のあり方を表現したもの、つまり目指すものですが、組織文化は目指すものではなく、現在どうあるかを示すものです。


◆価値観の「定着」、および「明確化と補強」のメカニズム

では、第4段階を目指して、リーダーはどのように、自分の信条や価値観を定着させ、、基本的仮定を浸透していけばよいのでしょうか。

この問題についてシャインは大きな枠組みとして、

・第一義的なものである「定着」
・第二義的なものである「明確化と補強」

の2つの種類のメカニズムがあるとしています。

まず、「定着」のメカニズムとしては

・リーダーが定例的に関心を寄せ、測定をし、コントロールしているか
・重要な出来事、組織の危機に如何にリーダーが反応するか
・リーダーはどのようにリソースを配分しているか
・意識的なロールモデリング、ティーチング、コーティングをしているか
・リーダーはどのように褒賞と地位を配分しているか
・リーダーは人材をいかに採用し、選考し、昇進させ、退職させているか

といったものがあるとしています。さらに、「明確化と補強」のメカニズムとしては、

・組織デザインと構造
・組織のシステムとプロセス
・組織の習慣と伝統
・物理的なスペース、様式、建物のデザイン
・重要な出来事や人物に関するストーリー
・組織の哲学、信条、憲章などの公式的な記録

があるとしています。


◆組織変革のフェーズと文化に影響を与える要素

そして、これらのメカニズムにより、組織は、創造と早期の成長期。中年期、成熟と衰退期と変化していきます。

それぞれのフェーズにおいて組織文化に影響を与えるものとしては、以下のような活動や状況が考えられます。

第1段階:創造と早期の成長期
・総体的、または具体的な進化を通した斬新的な変革
・文化の洞察
・文化に対応するハイブリッド人材の登用

第2段階:中年期
・特定の文化からの制度的な昇進
(例えばオペレータ、エンジニア、エグゼクティブなどのカテゴリー)
・アウトサイダーの参入
・技術的な革新や変化

第3段階:成熟と衰退期
・スキャンダルと神話の崩壊
・人材交代
・合併と買収
・破壊と再生

これらの活動や状況を踏まえて、組織文化を変革していくには、心理的な側面を中心にしたマネジメントが不可欠です。これもリーダーの役割になります。


◆組織文化の変革と必要なマネジメント

一般的に変革のステップは、「解凍」、「学習」、「内面化」という3段階があることはよく知られていますが、組織文化の変革も同じステップで進んでいきます。そして、それぞれの段階で、以下のようなマネジメントが必要になります。

第1段階:解凍(動機付けを行う)
・現在の状況の不当性を指摘する
・生き残りのための不安感を創成する
・学習に対する不安感の克服のための心理的な安全性を創成する

第2段階:学習(新しい意義、判断のための新しい基準を得る)
・新しいソリューションの選択と同一化を行う
・ロールモデルの模倣する

第3段階:内面化(新しい考え方、意義、基準の定着を図る)
・自己イメージ、自己同一性へ統合する
・以前から継続している考え方へ統合する

このような観点からマネジメントが必要になりますが、特に重要なのは安心感を生み出すことです。このためにマネジメントとしてできることには、

・力強いビジョン
・公式のトレーニング
・学習者の参画
・適切な「ファミリー」グループやティームに関するインフォーマルなトレーニング
・実習の場、コーチング、フィードバックの提供
・効果的なロールモデル
・学習に伴う問題をガス抜きし、議論できる支援グループ
・新しい思考と仕事の進め方と一貫したシステムと構造

といったことがあります。


◆組織文化の変革に関する原則的な認識

このようなマネジメントを行うに当たり、リーダーは組織文化の変革に関する原則的な認識を持ち、変革に取り組んでいく必要があります。シャインは以下のような原則認識が必要だと指摘しています。

原則1:生存に伴う不安、または罪意識のほうが学習に伴う不安感より大きい。

原則2:生存に伴う不安感を増大させるよりは、むしろ学習に伴う不安感を減少させるべきだ。

原則3:変革のゴールは、「文化の変革」という文脈のなかではなく、自分が解決したい問題という文脈の中で具体的に記述されなければならない。

原則4:文化の古い部分はその部分を「担っている」人たちを除去することを通じて打ち壊すことができる。これに対して、新しい文化は、新しい行動が成功し、組織の成員が満足できたときにはじめて学ぶことができる。

原則5:文化の変革は、心理的な苦痛を伴う解凍の期間を要する大規模で根本的な変革である。


◆終わりに

駆け足になりましたが、シャインの阻止文化のモデルを前提にした組織文化の変革の概要は以上のようなものです。より詳細な進め方は、新連載「組織文化とリーダーシップ」で述べていきたいと思います。

重要なことは、原則の5にありますように、組織文化の変革はトランスフォーメーショナルな変革だということです。これが組織文化変革が進まない理由でもありますが、スピードの求められるVUCAの時代にどのように進めていくかが、重要な課題です。

これについても、「組織文化とリーダーシップ」で少しずつ述べて行こうと思っていますので、ご期待ください。

「組織文化とリーダーシップ」
https://note.com/ppf/m/m82cad02a69a0


【参考文献】

シャインの組織文化の最新版の原著は

Edgar H. Schein「Organizational Culture and Leadership, 5th Edition
(The Jossey-Bass Business & Management Series)」、Wiley(2016)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/1119212049/opc-22/ref=nosim

です。本書は第5版ですが、初版を翻訳した本は、すでに絶版されていますが、

エドガー・H. シャイン(清水 紀彦、浜田 幸雄訳)「組織文化とリーダーシッ
プ―リーダーは文化をどう変革するか」、ダイヤモンド社(1989)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478360111/opc-22/ref=nosim

があります。

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