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2020年12月16日 (水)

【マネジメントスタイル:雑談10】組織文化変革のエンジンとしての「組織学習」

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◆組織文化を変えるエンジン「組織学習」

これまで3回にわたって、組織文化について書いてきましたが、

「で、結局、どうすれば組織文化は変わるの?」

という疑問を持たれた方も多いと思います。これについては、エドガー・シャイン先生の

「組織文化は、リーダーによって創造され、そしてリーダーシップの最も決定的な機能の一つが文化の創造であり、文化の管理であり、文化の破壊である」

という指摘に従い、noteで

「組織文化とリーダーシップ」
https://note.com/ppf/m/m82cad02a69a0

という連載を始め、リーダーを中心にしてどのように取り組んでいくかをじっくりとお話していく予定です。すでに第1回は公開していますので、是非お読みください。

「第1回 ルールから組織文化へ」
https://note.com/ppf/n/n2d88f0756554

今回は組織文化の変革の背後にある一つの概念を紹介しておきたいと思います。それは、

「組織学習」

という概念です。簡単にいえば、組織文化の構築や変革は、組織学習を経て実現されると考えられるからです。いわば、組織文化を変えるエンジンになるのが組織学習です。


◆センゲの学習する組織

組織学習と似て非なるものでありながら、全く独立な道を歩んでいるのが、「学習する組織」論です。学習する組織の中日本ではピーター・センゲが示すものがもっともよく使われています。学習する組織は、メンバーが知識や技能の取得に動機づけられている組織と,そうでない組織があるという認識の元で、前者を指すものです。

学習する組織はさまざまな研究の中でもう少し詳細な定義がされています。学習する組織の先駆者であるセンゲは、学習する組織を

「目的に向けて効果的に行動するために、集団として意識と能力を継続的に高め、伸ばし続ける組織」

だと定義しています。また、ガービンは

「学習する組織とは,知識を創造・習得,移転するスキルを有し,既存の行動様式を新しい知識や洞察を反映しながら変革できる組織である」

と定義していますし、ダフトは

「組織内のあらゆる人々が,問題の発見と解決に取り組み,実験・変化・改善をくり返し,それにより成長・学習・目標達成をする能力を高める組織」

だと定義しています。

VUCAの時代には、外部環境の把握と戦略の細部の決定を任せていては戦略は有効に機能しません。VUCAの時代には,トップの策定する戦略は「枠組」的になりますので,戦略に具体的内容を付与する役割は現場メンバーにゆだねられる必要があり、現場メンバーは指示を受けるのではなく,自ら「考える」ということが要求されます。センゲが学習する組織を提唱したときからこの指摘をしていましたが、いよいよ、現実になってきた感があります。

ただ、残念なことに、組織学習と学習する組織の研究はあまり交わらず、比較や統合もされようとしていないのですが、VUCAの時代に対応するには早く両者の接近をする必要があるのでしょう。

学習する組織でも、センゲが示しているような実現のための5つのディシプリン(方法)を見ていると、単に組織行動にだけ焦点を当てたものではなく、組織学習全体を見ているように思います。原理的には、学習する組織は、組織学習の一つの方法論として位置付けられるのだと思われます。

ということで、この記事では学習する組織に限らず、組織学習全般の紹介をしたいと思います。


◆組織が学習するという考え方

学習する組織か、組織学習かは別にして、組織が学習するという考え方はビジネスの中でも意外とよく使われています。

例えば、企業のさまざまな不祥事です。企業が不祥事を起こして、経営陣が記者会見し、詫びます。ここまではよく見かける光景ですが、同じような間違いは二度と繰り返さない企業は学習していると言われ、繰り返す企業は学習していないと呼ばれます。

そして、学習しない組織では、組織が変わらないのは経営者が悪いという風に考えられがちです。


◆誰が学習するのか

ここで一つ目の疑問が生まれてきます。それは、組織学習というのはそもそも誰がするのかという問題です。

不祥事で学習しない組織には、経営陣が学習しないケースもあれば、経営陣は反省し変えようとしているにも関わらず、組織を構成している個人が変わらないケースもあります。これについては3つの考え方があります。

一番目は、組織は人間でもないし生物ではないので、学習することはできない。学習するのは組織の一人一人だという考え方です。この場合、組織が学習するというのは比喩的な表現になります。(タイプ1)

二番目は少し複雑ですが、組織と個人は互いに影響を与えあう存在だという前提に立ちます。そして、個人が組織に対して変化を働きかけ、その働きかけによって組織が変わっていくことが組織学習だとする考え方です。(タイプ2)

三番目は、組織を擬人的にとらえ、学習主体とする考え方です。この場合、個人が組織において果たす役割にはあえて注目しないことになります。(タイプ3)

不祥事を起こした組織が学習しないと考えるのは、組織学習を二番目か三番目のように捉えていると思われます。


◆組織文化を変える組織学習

では、組織文化を変えていくには、どのタイプの組織学習が必要なのでしょう。。この問いの答えは、組織文化として定着させたいことに依ると思われます。

前回紹介したシャインの組織文化のモデルでいえば、レベルごとに組織学習のタイプが異なります。すなわち、

レベル1:タイプ1、タイプ2
レベル2:タイプ2、タイプ3
レベル3:タイプ3

となってくると考えられます。

このようにして組織学習を進めていくとして、組織文化の構築や変革が目的であればゴールは望んでいる組織文化が生まれ、維持していくことになりますが、それはどのような状態を作ることになるのでしょうか。一旦、望む文化ができても、組織学習が続けていかないといつの間にか崩れていきます。

つまり、文化を維持していくためには、組織学習組織学習がどのように機能していればよいのでしょうか。


◆組織学習が機能しているかどうかの判断方法

これには過去の研究から以下のようないくつかの側面があることが分かっています。

(1)思考が変化している
(2)行動が変化している
(3)認知が変化している

(1)や(2)は明確だと思いますが、これだけではどうしても一時的な変化に終わってしまうことがよくあります。シャインのレベルでいえば、レベル1やレベル2は思考や行動が変化すれば、機能していると考えることができます。ところが人工物はともかく、信条や価値観は組織文化を変えようとすると変わるけど、また元に戻ってしまうことがよくあります。これは(3)の認知の変化が起こせないことが原因だと考えられます。

ここでいう認知とは、組織としての物の見方、世界観、信条や価値観、システムの捉え方などを意味しています。一つ、認知の変化がないことが組織学習を阻害した例をご紹介しましょう。


◆認知が組織学習を阻害した例

顧客より自分たちの都合を優先する傾向のある企業(の事業部)がありました。そこで、その組織のリーダーは「顧客の立場になり、顧客に尽くす」という基本的仮定を置くような文化を作りたいと思っていました。

そして、そのために「顧客要求の本質が自分たちが提供するものだ」という価値観を打ち出しました。そして、顧客要求の本質を見極めるトレーニングをしたり、あるいは評価のポイントを変えたりして、取り組んでいきました。

やがて、だんだんそのような活動ができるようになってきましたが、リーダーが変わったり、外部から新しい人材を採ったりしているうちに、今度はやらない人がだんだん増えてきました。つまり、組織の基本的仮定にはなっていなかったのです。

その原因はどこにあるかというと、「自分たちは顧客にサービスを与えてい」という世界観や、「顧客は自分たちの収益の源泉だ」という価値観が変わっていないことです。

こういう現象は結構よく見かけます。一番典型的なのは女性活用でしょう。多くの企業で女性活用は、女性活用ということで思考や行動を変えることはしますが、4~5年経過すると、いつの間にかもとのやり方に戻ってしまします。これは女性に限らず、異能をうまく活用するという意味でのダイバーシティマネジメント一般に見られる現象かもしれません。

また、失敗を許容するという取り組みも同じような光景をよく見かけます。

このように(3)の認知を変えてことが組織文化の変革をしていく際にもっとも大きな壁になりますが、認知の変化が実現できて初めて組織が学習しているといえます。


◆ルーチンの変化

もう一つ、組織学習の機能しているかどうかの判断基準として注目しておきたいのは、フーバーが指摘している

(4)ルーチンの変化

です。

これは認知以上に分かりにくいのですが、認知が変化した結果、即座に思考や行動が変わるとは限りません。しばらくそのような世界観や価値観で仕事をしているうちに、行動が変わってくることも少なくありません。

例えば、上の顧客マネジメントの例でいえば、例えば、「顧客要求の本質が自分たちが提供するものだ」という価値観が認知されるようになっても、すぐに顧客への対応が変わってくるとは限りません。実際にそのような認知に基づく行動ができるようになるまでに時間がかかることがあります。

このような変化を見るために、組織のルーチン(仕事のやり方)の変化に着目しようという考え方があります。つまり、最終的な行動は変わらないまでも、その行動に至る思考ややり方の変化が見られれば組織学習は機能していると考えるわけです。

ルーチンの変化だと認められる変化には、

・存在に対する捉え方
・認知する対象の広がり
・認知の徹底さ

などがあると言われています。

以上のように、組織学習が機能しているかどうかは、思考や行動の変化のように顕在的なルーチンの変化だけではなく、ルーチンの変化のように潜在的な変化があることを見ることで判断できます。


◆組織のルーチンの変化のパターン

以上のようにしてもたらされる組織のルーチンの変化は、安藤史江さんによると3つに分類できるとされています。

パターン1:新たな組織ルーチンの単純な追加
パターン2:新たな組織ルーチン導入に伴う既存ルーチンの修正
パターン3:既存ルーチンの置き換えとしての新たなルーチン

そしてこのような(ルーチンの)変化をもたらすにはサイクルでアプローチしていくのが一般的ですが、組織学習で提唱されている学習サイクルには以下のようなものがあります。
(1)フーバーのサイクル(サブプロセスから捉える)
(2)マーチ=オールセンのサイクル(学習主体から捉える)
(3)キムのサイクル(統合モデル)
(4)クロッサン=レイン=ホワイトのフレームワーク

例えば、(1)はどのようなプロセスで学習するかをモデル化したもので、

知識の獲得 → 情報の移転 → 情報の解釈 → 組織の記憶 → 知識の獲得

というサイクルで学習していくモデルです。

次回は、それぞれの学習サイクルがどのようなものかを説明したいと思います。


◆参考文献

安藤史江「組織学習と組織内地図」、白桃書房(2001)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/456125336X/opc-22/ref=nosim

安藤 史江「コア・テキスト組織学習 (ライブラリ経営学コア・テキスト) 」、新世社(2019)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4883843025/opc-22/ref=nosim

ピーター M センゲ(枝廣 淳子、小田 理一郎、中小路 佳代子訳)「学習する組織――システム思考で未来を創造する」、英治出版(2011)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862761011/opc-22/ref=nosim

リチャード・ダフト(高木 晴夫訳)「組織の経営学―戦略と意思決定を支える」、ダイヤモンド社(2002)

https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478430209/opc-22/ref=nosim

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