ヒューマンソフトマネジメントスキル Feed

2006年10月17日 (火)

議論を見える化する

453231288401 堀 公俊、加藤 彰「ファシリテーション・グラフィック―議論を「見える化」する技法」、日本経済新聞社(2006)

お奨め度:★★★★

ファシリテーションの本を何冊も読んで、話は分かるのだが、どうも腑に落ちないと思われた方はすくなくないのではなかろうか。この本はこの答えを与えてくれる。

この本では、議論の見える化をテーマにしている。この本で言っている見える化とは、

 議論を如何に図に要約するか

という技術である。この技術を、ファシリテータのあまたの中の動きから、具体的に、ホワイトボードや模造紙に書くときの文字の大きさや書き方、色の使い方、挿絵の使い方など至るまで具体的に説明している。特に第4章は、ファシリテータのあまたの中を解剖するということで、何を考えて何を書くかを時系列で説明しているので、非常に面白いし、有益である。

4章にかぎらず、本の中ではテーマに相応しくふんだんにビジュアルが使われており、たいへんよくイメージがつかめるので、読んだことをそのまま応用できるだろう。また、実際に作例がたくさん掲載されているので、それをじっくりと見ていくのもスキルアップに大いに役立つだろう。

ただし、誰でもがすぐにできるものではない。イメージを掴んだら、ひたすら実践してみることに尽きるだろう。その際、自分のアウトプットを持って、この本を読み直してみるのもよい。この本に書かれている(おそらくベテランファシリテータの)図と自分の図を比較してみることは非常に有効だと思われる。

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2006年10月16日 (月)

プロジェクトマネジメントはサイエンスかアートか

487311299001 スコット・バークン(村上 雅章訳)「アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法」、オライリー・ジャパン(2006)

お奨め度:★★★★★

著者がマイクロソフトで養ったプロジェクトマネジメントの技を披露した本。ソフトウエアプロジェクトの本だと、必ずといってもよいくらい、開発マネジメントのテクニカルな話題に重心が置かれるが、この本は違う。目標のマネジメント、人のマネジメント、組織のマネジメント、コミュニケーションのマネジメント、アイディアのマネジメントなど、本来のプロジェクトマネジメントのイシューを中心にして組み立てられている。具体的な内容は、目次を参考にしてほしいが、開発マネジメントについても、手法ではなく、仕事の進め方としてのポイントが書いてある。

ソフトウエア開発プロジェクトは、ハードウェアのプロジェクトとは違うと主張する人がよくいる。プロジェクトファシリテーションなどが妙にはやっているのもその流れだと思割れる。

しかし、この本を読んでいると、決してそんなことはないと思い知らされるだろう。ソフトウエアという商品の特性は確かにある。

しかし、そこで必要なマネジメントはハードウェアや、ソフトウエア以上にソフト的なサービス開発プロジェクトとなんら変わらない。マイクロソフトという会社のやり方は昔から何かと批判の対象になることが多かった。古くはDOSをめぐるビジネスのスタンス、Windowsに代表されるGUI環境ビジネス、最近ではインターネットへのアプローチなどだ。しかし、結局、最後に勝つのは、MSだった。

その秘訣はマネジメントがビジネスを意識したものであることと無縁ではないだろう。この本は、プロジェクトマネジメントに関心を持つ人に読んでほしいのはもちろんだが、もう少し、広く、マネジメントに関心をもつ人にもぜひ読んでほしい一冊である。ソフトウエアエンジニアリングの知識がない人が読んでも分からないところは少ないだろう。

マーケティングは50%がアートで、50%がサイエンスだといわれる。プロジェクトマネジメントもそういった側面がある。特に、MSが展開しているようなビジネスを強く意識したプロジェクトマネジメントはアートの要素が多い(エンジニアの人は自分たちの領域の方がアートの要素が多いと思っているかもしれないが、それは勘違い)。

その意味で、この本に書いてあることはまさに、プロジェクトマネジメントのアートの部分だ。

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2006年10月 3日 (火)

ファシリテーションによる組織変革

449253218801 堀公俊「組織変革ファシリテーター―「ファシリテーション能力」実践講座」、東洋経済新報社(2006)

お奨め度:★★★★

ファシリテーションの日本の第一人者堀公俊さんの書かれた、ファシリテーションによる組織変革方法論。

これまで、あまり、フォーカスされていなかった分野にファシリテーションの技術を適用している。大変実践的で、まさに、待望の一冊。

3章構成になっており、まず、第1章では、ファシリテーションの考え方を組織変革にどのように生かしていくかを解説している。

第2章では、組織を変えるために有効はファシリテーションの技術として、コミュニティビルディング、ビジョンメイキング、プロセスチェンジの3つについて、ファシリテーション技術を使ったアプローチを解説している。

第3章では、具体的な組織変革の進め方を説明している。

この本に書かれているような話は、断片的にはどこかで聞いたことがある内容が多いが、体系的に使って初めてインパクトがあることが分かる。その意味で、一度読んでおいて損のない本だ。

なお、堀さんは同じシリーズから

4492531580問題解決ファシリテーター―「ファシリテーション能力」養成講座」(2003)

という本を出されている。ファシリテーションの書籍の中では文句なしのNo1だと思う。関連性が深い内容なので、本書と併せて読まれることをお奨めしたい。

【堀公俊さんの書籍のほかの記事】

支援型リーダーシップを身につける

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2006年7月26日 (水)

意思決定はプロセスである

490123494301 マイケル・A・ロベルト(スカイライトコンサルティング訳)「決断の本質 プロセス志向の意思決定マネジメント」、英治出版(2006)

お奨め度:★★★★1/2

英治出版のウォートンビジネススクールのシリーズ。このシリーズ、たぶん、5タイトルくらいは出ていると思う。出版されたものには、だいたい目を通しているが、一冊だけいい本だなあと思ってこのブログで紹介したことがある。

□デビッド・シロタ(スカイライトコンサルティング訳)「熱狂する社員 企業競争力を決定するモチベーションの3要素

この本より、本書の方がよりすぐれものだとと思う。

メインテーマは「意思決定の成否はどんな結論を出したかではなく、どんなプロセスで結論に至ったかで決まる」ということ。このテーマを中心に、では、どのようにプロセスをくみ上げていくか、また、そのプロセスを前提にした場合にリーダーシップはどうあるべきかという感じで、体系的にまとめられている。

本書で掲げているテーマは、仮説に過ぎないと思う。ケネディ大統領の失敗やスペースシャトルの事故、エベレスト登山隊の遭難、ノルマンディー上陸作戦などを取り上げて、仮説の妥当性を主張しているが、逆にこれらの仮説を否定する事例もたくさんあると思う。

しかし、それが仮説かどうかはどうでもよくて、この本に書かれているような意思決定プロセスを構成していくことはビジネスの中では極めて重要なことだと思う。プロセス構成の考え方にも、納得できる部分が多い。

特に8章の実行につながる決断の章は、今までの意思決定論ではあまり省みられることのなかった視点で、ここだけでも読む価値がある。

とにかく、よい本であるので、マネジャーの方は、ぜひ、手に取ってみてほしいと思う。

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2006年7月23日 (日)

マネジメントに直感を活かす

Tensaibookmid 児玉光雄「天才社員の育て方」、日本経営合理化協会出版局(2006)

お奨め度:★★★★1/2

1万5千円とちょっと高い本だが、ひょっとすると、それだけの価値があるかもしれない。著者の児玉光雄氏はトッププロスポーツ選手から指導依頼が殺到するスポーツ心理学の第一人者。その児玉氏が20年以上の研究を経て開発した独自の 「右脳開発メソッド」を、ビジネスリーダー向けに体系化した本。

このメソッドは、ガンガン“自分から働く人材”になる、「持続力」「没頭力」「創造・ 発想力」「人間力」…の4大能力を、無理なく、自然と習得させることができるそうだ。

この本では、さらに、天才育成を社内に「仕組み化」するために、社長としてどう 手を打つかの「戦略記入シート」も各タスク毎に収録されており、これらのシートを使うことによって、すぐに取り組むことができる。

「右脳開発メソッド」自体はもう少し、購入しやすい本がある。

489451230001_1 児玉光雄「直感力 「上手に決断できる人」になる脳力トレーニング」、フォレスト出版(2006)

この本では、直観力をアップするための方法として右脳開発メソッドを説明している。

マネジメントの理論の中では、意思決定の際に、合理的(論理的)な意思決定と直感をうまく統合することがポイントだといわれることが多いが、では、実際に、それをどのように統合するかは難しい。そのヒントというより、方法そのものを示してくれるこの本の1万5千円は高いか、安いか?

価値観の問題だろう。

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メンタルケアのあり方を考える

416320900x09奥田英朗「イン・ザ・プール」、文藝春秋(2002)

416322870509 奥田英朗「空中ブランコ」、文藝春秋(2004)

416324780701奥田英朗「町長選挙」、文藝春秋(2006)

お奨め度:★★★★

でっぷり体型、患者おちょくりアホ発言連発、笑えば歯茎丸出しの注射フェチの精神科医伊良部一郎が、くわえタバコで、斜にかまえ、ミニミニ白衣の胸の谷間で患者を惑わす相棒の看護師のマユミちゃんと軽度の精神病患者を次々と癒していく短編。

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最初のインザプールが仰天ものだったが、映画化までされた。

そして、第2作の空中ブランコは直木賞受賞。とにかく面白い。何よりも設定がありそうなナンセンスで興味深い。24時間勃起しっぱなしという病に冒された営業マン、家のガス、電気、鍵をしめたか気になって、何度も確認のために帰宅してしまう強迫神経症のルポライターなどがやってくるが、意図的な、無意識か、興味本位でいい加減な対応がどんどん、患者の問題を解決していく。

そして、第3作になる「町長選挙」では少し作風が変わった作品がある。明らかに、実在のモデルをデフォルメして描いている作品がいくつかある。ホリエモン、ナベツネなど。

メンタルヘルスはマネジメントの中でも重要性が高まってきている。カウンセラーや専門家に任せて、マネジメントとしてたタッチしないというのが一般的であるが、それでは問題は解決しないのではないかと思う。仕事の問題は、仕事の中でしか解決しない。それを解決するためには、同じ目線で行動レベルで入り込んで解決していくしかないだろう。

そんなことを思わせる伊良部の奮戦記である。

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2006年7月 4日 (火)

プロジェクトマネジメント向き問題対処法

430924368109 青木安輝「解決志向(ソリューションフォーカス)の実践マネジメント」、河出書房新社(2006)

お奨め度:★★★★

カウンセリングでは、「問題にとらわれないで、如何に解決に向かうかに焦点を当てる」アプローチは基本の一つである。

最近ではマネジャーを対象にしたビジネスコーチングでも注目されるようになってきた。これは問題解決の対極にあるともいえるアプローチで、どうなりたいか、何を手に入れたいかといった未来のイメージを作るプロセスを先行させ、そこから、具体的な行動を変化させていくアプローチである。

このアプローチをマネジメントに取り入れようというのがこの本の主張である。

ソリューションフォーカスアプローチには3つの哲学がある。

・壊れていないものを直そうとしない

・うまく行っていることを見つけ、それを増やす

・うまく行っていないなら違うことをやる

問題解決志向のアプローチからすれば、ある意味で現実逃避のアプローチにも見えるので批判をする人も多い。しかし、確実にこのようなアプローチが有効な分野がある。それはプロジェクトマネジメントである。プロジェクトマネジメントで問題解決というのはずいぶん重視されている。確かに、次のプロジェクトでの再発を防ぐということを考えた場合には問題解決志向のアプローチは重要だ。しかし、プロジェクトの成功だけを考えるのであれば、問題分析に時間をかけるよりは、ソリューションフォーカスでいろいろと試行錯誤を繰り返していく方がはるかに現実的である。

その意味で、ソリューションフォーカスはプロジェクトマネジャーの必須スキルの一つだろう。

この本では基本的進め方の解説、事例を使ったイメージ作りなどを徹底的に行っているので、必ず、自分のやり方を見つけることができるのではないかと思う。

プロジェクトマネジャーの方、ぜひ、読んでみてほしい。

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2006年7月 2日 (日)

学習する組織のバイブルから、未来のマネジメントのバイブルへ

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ピーター・M. センゲ:「最強組織の法則―新時代のチームワークとは何か」、徳間書店(1995)

お奨め度:★★★★★

組織学習のバイブル。組織がシステムであることを正視させる本。組織論の分野でも大きな影響を与えている1冊である。

この本では、学習する組織では

自己マスタリー(personal mastery)
メンタル・モデルの克服(mental models)
共有ビジョン(shared vision)
チーム学習(team learning)

の5つの原理と、これらを統合するシステム思考(systems thinking)の5つの原理が必要だと述べている。

組織論として、ひとつの理論だが、ビジネスシステムという概念で企業やビジネスを見た場合、本書のような視点で組織を捉える意味は大きく、また、発展性がある。90年代終わりからずっとビジネス、とりわけ組織に大きな影響を与えてきた1冊であるが、真価がはっきりするのはむしろ、これからかもしれない。

ビジネスマンとしては、ぜひ、読んでおきたい1冊である。

また、この本には、2冊のフィールドブックがある。

453231075x09 一冊は5つの法則を如何に適用していくかを解説した本である。

ピーター・センゲ(柴田昌治訳)「フィールドブック 学習する組織「5つの能力」 企業変革を進める最強ツール」、日本経済新聞社(2003)

フィールドブックであるので、5つの原則が何を言っているのかが具体的な行動像を通じてよく分かる。もちろん、フィールドブックとして実際に使えるようなレベルのものである。

もう一冊は、5つの原則を実行するために、組織にはどのような変革課題があるかを解説し、その課題を解消するためのフィールドブックがある。上のフィールドブックとの関係としては問題解決編453231131409_1という位置づけになっている。

ピーター・センゲ(柴田昌治、牧野元三、スコラコンサルト訳)「フィールドブック 学習する組織「10の変革課題」―なぜ全社改革は失敗するのか?」、日本経済新聞社(2004)

学習する組織の構築の具体的なヒント、フィールドワークの指針も得られる貴重な本だ。必ず併せて読みたい。

(初稿:2005年3月2日)

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2006年6月26日 (月)

プロジェクトファシリテーションのノウハウ

479811081701 中西真人「実務で役立つ プロジェクトファシリテーション」、翔泳社(2006)

お奨め度:★★★

ついに、プロジェクトファシリテーションの本が出版されたかというのと、同時に、こういう形で出たかというのが正直な一冊。

プロジェクトファシリテーションというと、アジャイル開発やアジャイルプロジェクトマネジメントを中心に概念形成がなされてきたイメージが強い。しかし、この本はどちらかというと、一般論である。ファシリテーションの本質である会議の進め方を、プロジェクトミーティングに適用するにはどうすればよいかを書いた本である。

その意味で、いろいろなプロジェクトでミーティングを中心にして使える手法を紹介した本になっているが、反面、アジャイル開発で言われてきたプロジェクトファシリテーションより、範囲が狭い。その意味で、少し物足らない部分があるのは事実である。

そうはいいながらも、「プロジェクトのファシリテーション」についてまとめた初めての本であるので、プロジェクトリーダーやプロジェクトマネジャーは読んでおいて損のない一冊である。

プロジェクトファシリテーションの全体像を知りたければ、平鍋健二さんが雑誌やブログに書かれているプロジェクトファシリテーションの記事などと併せて読むのがいいだろう。

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2006年6月20日 (火)

ザ・ファシリテータ

447836071509 森時彦「ザ・ファシリテーター~人を伸ばし、組織を変える」、ダイヤモンド社(2004)

お奨め度:★★★★

非常に分かりにくいファシリテーションの概念を小説スタイルで解説した本。ファシリテーションの難しい理由は、流れがあることだ。その流れが製品開発センターの改革物語を通じて、誰にでもコンセプトが理解できるようになっている。

ファシリテーションを知りたい人にはお奨めしたい一冊だが、なかなか、こんなにできるものではない。人物描写が理想的過ぎ、あまりリアリティがないのは残念である。

それが、ファシリテーションにとって本質なのかどうか、ここが問題である。

そんなことを思わせるのだが、とりあえず、その点はおいても面白い一冊である。

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