ヒューマンソフトマネジメントスキル Feed

2007年2月12日 (月)

神の交渉術

4766783891_01__aa240_sclzzzzzzz_v4686911 竹内一正「スティーブ・ジョブズ神の交渉術―独裁者、裏切り者、傍若無人…と言われ、なぜ全米最強CEOになれたのか」、経済界(2007)

お奨め度:★★★★

松下、アップルなどに在籍した著者が、客観的な目でジョブスの交渉術を分析した一冊。この手の本にしてはジョブス信仰はあまりないようで、どちらかというと日本人の視点からジョブスの行動を評価しているのが非常に興味深い。

日本人は交渉について論理性を求めている。これはたぶん、農耕民族独特の発想だと思う。最初は折り合わなくても、何とかして論理性が生まれる条件の設定を行う。それでも論理性が構築できない場合には、「三方一文の損」という和を重視した裁きになる。

ところが、少なくともジョブスの交渉術は異なる。論理性など最初から求めない。ある意味で、強行的な交渉である。面白いのは、自分の立場が弱くても、そのような交渉をすることだ。例えば、中小企業が大企業を相手に自分たちの主張をすべて飲ませようとするなど、ほとんどありえないだろう(ぱっと思い浮かぶのが、岡野工業だが)。

狩猟民族の交渉とは本質的にこのようなものだと思う。問題は弱い立場で如何にそれをひっくり返す交渉を行うかだ。ここではやはり、カリスマ性とか、プレゼン力などが効いてくる。ジョブスの素晴らしさはここだろう。

いずれにしても、アップル社でビートルズを手玉にとり、ピクサー社でディズニーを手玉にとり、iTuneで大手レーベルを纏め上げた交渉術は一読に値する。

ぜひ、読んでみよう!

2007年1月30日 (火)

金より名誉?!

4492532250_01__aa240_sclzzzzzzz_v4847397 太田肇「お金より名誉のモチベーション論 <承認欲求>を刺激して人を動かす」、東洋経済新報社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

太田肇先生と最初にお会いしたのは、神戸大学の大学院で学んでいたときで、太田先生が滋賀大学にいらっしゃった。まだ、今ほど、一般には知られていない時代だった。学位論文になった書籍

プロフェッショナルと組織―組織と個人の「間接的統合」

に共感を覚え、神戸大学のOBだったこともあって、インタビューをさせて戴いた。 金井先生を除くと、おそらく、僕がもっとも影響を受けた経営学者である。

太田先生の得意は、日本人の特性をよく理解し、利用する人材マネジメント論であり、少なくもと現実的であるということでは、東京大学の高橋先生と双璧だろう。

その太田先生の書かれた人材マネジメント論は

ホンネで動かす組織論

認められたい!―がぜん、人をやる気にさせる承認パワー

個人尊重の組織論―企業と人の新しい関係

など、ユニークなものが多い。その中で、最高傑作ではないかと思うのがこの本だ。

組織で働く個人が認められるということに対するこだわり、その安直な方法としてのほめるということの弊害など、独自の視点で、突出を許さないに本の企業の中でいかに個人のモチベーションを高めていくかを述べられている。

非常に面白いのだが、この本によると、承認欲求を満たす方法で、ポストを与える以外の方法はないということも述べられている。

ただし、その代わりに社会から承認を受けようとするというのは確かにプロフェッショナルの感覚だと思うので、結局、それを積極的に認めることが承認欲求を刺激することになるのだろう。そう考えると、積極的に社外講演を認めるとか、学会発表を推進するとか、資格や学位の取得を支援するとか、日本の企業がいろいろやっているなと思う。

非常に面白いモチベーション論であるので、ぜひ、一読をお奨めしたい。

2007年1月26日 (金)

影響力の武器

4414302692_09__aa240_sclzzzzzzz_ ロバート・チャルディーニ(社会行動研究会訳)「影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか」、誠信書房(1991)

お奨め度:★★★★★

1週間くらい前にこの本がアマゾンのビジネス書ランキングベスト10に入っていてびっくりした。見ると、なんと50人以上の★★★★★が並んでいるが、いま、15年以上前の本がなぜと思った。反面、そうかと思った部分があるので、ビジネス書の杜で取り上げた。おそらく、このブログで取り上げている本の中ではもっとも古いものだと思うが、時代に関係なく、★★★★★である。

この本を読んだのはもう10年以上前である。MBAに行っているときに、マーケティングの講義の課題図書になり、レポートを書いた。MBAの2年間で読んだ本はおそらく100冊くらいになると思うが、その中でも印象深い1冊である。

セールスマン、募金勧誘者、広告主など承諾誘導のプロの世界で、「承諾」についての人間心理心理学の視点から、人に影響を与えるにはどうすればよいかを体系立てて説明している。

この本では、豊富な実験結果や実例に基づいて、影響力を受けるパターンを以下の6つに整理している。

・返報性
 人間は他人から何かを与えられたら自分も同様に当たる様に努力する
・一貫性
 人間は自分の言葉、信念、態度、行為を一貫したものにしたいと考える
・社会的証明
 人間の多くの振る舞いは、他人を模倣する傾向にある
・好意
 人間は自分が好意を感じている知人に対してイエスと言う傾向がある
・権威
 人間は権威者に対して思考せずに服従する傾向がある
・希少性
 人間は機会を失いかけるとその機会をより価値のあるものとみなす

これらの6つのパターンを活用して、人に影響を与えようというのがこの本の主張。

リーダーシップ、ファシリテーションなど、人に影響を与えることが注目されている今の時代に、そんなに難しくなく、かつ、きちんとした理論を身につけるには絶好の一冊だといえる。

続きを読む »

2007年1月22日 (月)

問題社員

447836091x_01__aa240_sclzzzzzzz_v4627424 DIAMONDハーバードビジネスレビュー編集部編・訳「ケース・スタディ 「問題社員」の管理術」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

・やり手だが会社のルールを守らない若手セールスマン

・頭は切れるが、他人のミスを責め立てるスター社員

・優秀だが、エゴが強く、協調性に欠けるクリエーター

といったいわゆる問題社員のマネジメントをケースを使って解説した一冊。ひとつのケースに対して、複数の識者が意見をつけるという形で進んでいる。その内容もばらばらであり、如何にこの問題の根の深さがよく分かる本だ。

この種の議論は日本にはなじまないという意見が根強いが、このケースブックを読んでいると、コンサルティングの際に、世間話で部下やボスの相談をされることがあるときに、よく出てくるパターンであることが分かった。

ということは、この種の人種はたくさん社内にいるということだ。日本のマネジャーはこの種の問題は顕在化させずに処理するのが有能だとされてきた。だから、こっそりと「ついでに相談を受ける」のだと思うが、非常に蔓延してきたように思うので、まあ、そういう時代でもなくなってきたのだろう。

とりあえず、読んでみて、傾向と対策を仕入れては如何だろうか?読み物として読んでも超・面白い。特に、好川のお奨めは

第7章 対人関係力が問われる仕事に肥満社員は不適格なのか
第8章 カリスマCEOのスキャンダルにどう対処すべきか

の2章(笑)。

なお、同じシリーズから、この前に次の本が出版されている。

4478360790_09__aa240_sclzzzzzzz_ DIAMONDハーバードビジネスレビュー編集部編・訳「いかに「問題社員」を管理するか」、ダイヤモンド社(2005)

お奨め度:★★★1/2

こちらは論文集だ。特にCクラス社員、Bクラス社員といったところに焦点を当ててそのマネジメントを論じた論文が多い。また、ボスザル社員をてなづける、有能人材の悪癖を取り除くといった、人材活用の観点からの論文も何点かある。問題社員に頭を抱えるマネジャーにとっては非常に役立つ一冊である。

併せて読んでみてほしい。

続きを読む »

2007年1月19日 (金)

感情は経営資源である

4777105679_01__aa240_sclzzzzzzz_v4801363 野田稔「燃え立つ組織」、ゴマブックス(2007)

お奨め度:★★★★1/2

「感情のマネジメント」をテーマにした野田先生の新著。

最近のビジネスにおけるEQの注目度をみても、感情がマネジメントにとって無視できない存在であるという認識は定着してきたように思える。

4062562928_09__aa240_sclzzzzzzz_ ダニエル・ゴールマン(土屋 京子訳)「EQ―こころの知能指数」、講談社(1998)

しかし、それらは多くの場合、セルフマネジメント、あるいは、ソフトマネジメントの対象であり、マネジメントの対象として扱われることはなかった。この野田先生の本は、真正面からそこに切り込み、

 正しく使われた「感情」は経営資源である

とまで言い切っている。

その上で、プロジェクトには「感情のV字回復がある」ことを発見し、その谷を乗り越えるための方法論として、モチベーションマネジメントを位置づけている。

モチベーションマネジメントにおいては、野田先生の得意のコミットメントという視点から、リーダーシップ、人材育成などの問題について述べている。また、リクルートHCの高津氏、リンクアンドモチベーションの小笹氏といった著名人をゲストに読んで彼らの持論を語ってもらっている部分も読み応えがある。

なお、野田先生の主張するコミットメントマネジメントについてはこちらの本を読んでみられることをお奨めしたい。

4569628125_1 野田稔「コミットメントを引き出すマネジメント―社員を本気にさせる7つの法則」、PHP研究所(2003)

続きを読む »

2006年12月29日 (金)

人脈≠知り合い

4757304226_01__aa240_sclzzzzzzz_v3436483藤巻幸夫「人脈の教科書~図解フジマキ流シビれる人生をつくる」、インデックス・コミュニケーションズ(2007)

お奨め度:★★★1/2

テーマのせいか、前作の「チームリーダーの教科書」ほど、インパクトは感じなかったが、でも、引き込まれるように読んだ。

ほしい人脈を手に入れる方法、人脈の作れるひとになる方法、社内人脈を作る方法、仕事以外の人脈作りなど、人脈に関して藤巻さんが持っている考えをすべて披露したような一冊である。実は、人脈というのは雑読派の僕としては珍しくまったく興味のないジャンルである。実際に立ち読みはしても、本を買ったのはこれが初めて。なぜかというと、第一は藤巻さんの本だからだが、第二の理由は極めて論理的、合理的にまとめてあるからだ。

この本で藤巻さんが言っていることは、「人脈はできるものではなく、作るもの」だということ。そのためには、まず、自分。人脈に恵まれる人のタイプとして

・オリジナリティのある人

・単独で行動できる人

・フットワークの軽い人

・計算より「志」の実現を見据えている人

・志のある人

の5つが上げられている。僕は人脈は恵まれているほうだと思うが、この5つはクリアしていると自負しているので、納得。

よくコミュニティや交流会で知り合いはできるのだが、サラリーマンなのであまり役立たないという人がいる。そんな人は、人脈が何かということを理解できていないと思うので、ぜひ、この本を読んで勉強をしてください!

また、人脈化される場合にもこの本に書かれているようなアプローチをされるとうれしいな!

マーケターの日常

4820744062_01__aa240_sclzzzzzzz_v4840508 末吉孝生「マーケターの仕事術〔入門編〕」、日本能率協会マネジメントセンター(2006)

お奨め度:★★★★

マーケターの書いたマーケターのコンピテンシー。 

マーケターの業務シーンを想定し、それぞれのシーンで役立つ道具を「キット」としてまとめている。うまく構造化されているので、実践的である。

キットには

「チャート」:全体図

「ノウハウ」:実務上のノウハウ(手順、詳細)

「ステップアップ」:事例とトレンド

「ブック」:関連する書籍、資料

という4つの要素から構成されている。

シーンはマーケティングプロセスに沿って25準備されている(目次参照)。

解説スタイルは基本的なことをエッジを効かせて書いてある。なので読んでいて面白い。

また、この手のコンピテンシー本にありがちな、コンピテンシーの羅列という感じがない。一つ一つの道具に存在理由があることを意識し、その理由を一言かきくわえてあるかだらと思う。

たぶん、これが、マーケター末吉孝生の流儀なのだろう。

続きを読む »

2006年11月22日 (水)

今日から役立つ会議TIPS集

4756910394_01__aa240_sclzzzzzzz_v3649441 宇都出雅巳「あたりまえだけどなかなかできない会議のルール」、明日香出版社(2006)

お奨め度:★★★1/2

「あたりまえだけどなかなかできない」シリーズの会議編。会議活性化のノウハウを書いた類書は多いが、この本はシリーズの特徴をとてもうまく使っている。一冊、手元においておきたいTIPS本。

さすがに、会議中にこれを見ながらというわけにはいかないと思うが、101のルールをリスト化しておき、リマインドしながら会議を進めていくとよいだろう。役に立ちそう。

また、内容も半分くらいはどこにでも書いてあるが、半分くらいは、非常に特徴があり、なるほどと思えるものが多い。例えば

場の空気を口に出して表現してみよう

というルールがある。たとえば、「何かあせっているような感じがする」といったことだ。

これは経験上、大変、有効であるが、あまり会議本には書いていない。このようなTIPSが多いのも好感が持てる。

読んでおいて損のない一冊だ。

2006年11月 3日 (金)

あなたは箱の中でリーダーしていませんか?

447979177901 アービンジャー・インスティチュート(金森 重樹監訳、富永星訳「自分の小さな「箱」から脱出する方法」、大和書房(2006)

お奨め度:★★★★1/2

PM養成マガジンブログ関連記事:プロジェクトという箱からでよう

この本の原題は「Leadership and self-deception」。deceptionは「騙す」という意味。米国でよく読まれるリーダーシップ読本の一つの邦訳。

邦題からも分かるように、「箱」という一風変わったメタファ(比喩)の中で、寓話を使ってリーダーシップの本質と構築方法をうまく説明している。

誰よりも努力し(ていると思っている)主人公は、ザグラム社という会社でよい職を得る。しかし、それまでのやり方がザグラム社では通用しないという事態に直面する。自分を守り、他人に影響を与えるとするやり方が、ザグラム社の風土に合わなかった。ザグラム社のリーダーシップは、自己原因性(すべての原因は自分にあるという考え方)に基づいていたためだ。

そこで、主人公は上司であるエグゼクティブからの問題指摘を受けると同時に、コーチングを受け、そのことに気がつき、箱の外に出て行くというストーリー。

このストーリーで、「箱」に並ぶキーワードが自己欺瞞。「自分への裏切り」と呼ばれている。自分への裏切りというのは自分の感情に反した行動を取った場合に、自分を正当化するためにさまざまな行動に出る。これが箱に入っている状態であり、人間関係、リーダーシップにさまざまな問題を引き起こすというのがこの本の考え方。「自己原因性(Personal Causation)」の議論として、感情に注目しているのはかなり面白いと思う。

この本では、この行動パターンがある限り、業績に結びつかないとしている。確かにその通りだ。

問題は箱から抜け出すにはどうすればよいか、これが問題だ。この本の示唆で非常に役立つのは、「箱に入っているときにしても無駄なこと」を明確にしている。

(1)相手を変えようとすること

(2)相手と全力で渡り合うこと

(3)その状況から離れること

(4)コミュニケーションと取ろうとすること

(5)新しいテクニックを使おうとすること

(6)自分の行動を変えようとすること

の6つ。この指摘は鋭い。確かに、多くの人が箱に入ったまま、これらの努力やトレーニングをしようとしている。無駄だというのも最初から読み進めていくとちゃんと納得できる。

最後に、箱から出る方法というのが書かれている。

「他の人々に抵抗するのをやめたときに、箱の外に出ることができる」

本の質と同じく感心したのが、翻訳の質が非常に高いこと。米国のオフィスを舞台にしたストーリーであるが、まったく違和感なく読める。米国発のこのスタイルの本は、ストーリーそのものに違和感があって落ちないが、この本にはまったくそれがない。

それからこの本を読んでいく中で、イラストの存在が非常に役立つ。ロジックが結構複雑なので、自分で図を書きながら読んでいかないとおそらく、頭が混乱してくる。それを代わりにやってくれるイラストが入っている。なんと、寄藤文平さんの非常に味のあるイラストだ。

最後に少し違う視点からのメッセージ。10年くらい前に亡くなった安部公房という作家がいる。哲学的な作品を多く残した作家で、抽象的ながらもプラクティカルな文学性は高く評価され、欧米にも多くの作品が紹介されている。その中の一つに、「箱男」という作品がある。

4101121168 安部公房「箱男」、新潮社(1982)

ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男。箱に隠れて覗きをしたり、普段はできないことをすることに快感を感じる。

そのような行動を繰り返しているうちに、やがて主人公は箱男から箱を買い取ろうとした医者の偽箱男へ、少年Dへ、露出狂の画家ショパンへとめまぐるしく移ってゆく。

そうしているうちに、誰が箱男か、箱男のエスノグラフィーを書いているのは誰なのかがわからなくなってしまう。

という話なのなのだが、「小さな箱から脱出する方法」の本質をより深く理解するためには、安部公房の「箱男」を読まれることをお奨めしたい。

続きを読む »

2006年10月31日 (火)

ストレスを推進力に変える方法

447873327909 サルバトール・マッディ、デボラ・コシャバ(山崎康司訳)「仕事ストレスで伸びる人の心理学」、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

仕事の成果の大きさはストレスを如何に活かせるかによって変わってくる。そんな前提で書かれた本。

イリノイ・ベル電話プロジェクトで、ストレスは、成長につながるか、破滅につながるかという問題を検証し、その結果分析から、ストレスと「争わず,逃避せず,真正面から立ち向かう』」ことを提案し、具体的なトレーニング方法まで提案している。

理論的であると同時に、非常に実践的である。

この本のキーワードはしょっぱなにでてくる「レジリエンス」、「ハーディネス」であり、その本質は3C姿勢の実現にあるとしている。3Cとは
 ・コミットメント
 ・コントロール
 ・チャレンジ
である。そして、3Cを身につけるための具体的なステップを提案している。さらに、支え、支えられるコミュニケーションのあり方について提言している。

最後に、企業と従業員の問題にも言及している。ここでは、仕事の意味を見出すという点にポイントをおいた提案をしている。

続きを読む »

PMstyle 2025年1月~3月Zoom公開セミナー(★:開催決定)

アクセスランキング

カテゴリ

Powered by Six Apart

Powered by Google

  • スポンサーリンク
  • サイト内検索
    Google