ヒューマンソフトマネジメントスキル Feed

2007年8月 6日 (月)

日本初のリカバリーマネジメント本

4822262111 長尾清一「問題プロジェクトの火消し術―究極のプロジェクト・コントロール」、日経BP社(2007)

お奨め度:★★★★

長尾清一さんの書かれた

447837449x09lzzzzzzz先制型プロジェクト・マネジメント―なぜ、あなたのプロジェクトは失敗するのか

は今でも、このブログで最も支持されているプロジェクトマネジメント本である。その長尾さんの待望の新著が出版された。リカバリーマネジメントをテーマに書かれたこの本だ。

全般的には、リカバリーマネジメントを問題解決だと捉え、単に思考するだけではなく、問題解決を実行するためにどのような行動が必要かを具体的に、かつ体系的に書かれた本で、前著に劣らず、非常によい本である。

ただ、前著もそうだったが、書かれていることを理解できたとしても、実践するのは大変に難しいと思う。本としての書き方が悪いのではない。ましてや、内容がまずいわけではない。書き方は非常に丁寧であり、これでもかと思うくらい実践的に書かれている。

難しいのだ。それでも前著は、プロジェクトマネジャーとして一定の資質を持つ人であればかなりの部分は訓練や経験をつめばできると思う。その意味でも非常によい内容だと思った。プロジェクトマネジメントは難しいのだ。安直にできるものではない。

今回の本に書かれていることは半分できればよいのではないかと思う内容だ。そのくらい、リカバリーマネジメントというのは難しい。この本を読んで、何ができればトラブルに対処できるようになるかを知り、精進をして欲しい。

2007年8月 3日 (金)

日本型組織をコーチングで動かす

4532111471 本間 正人「グループ・コーチング入門」、日本経済新聞社(2007)

お奨め度:★★★★

コーチングを組織文化として定着させることを前提に、そのためのコーチング手法としてのグループコーチングを解説した一冊。

コーチングの有効性は徐々に認識されるようになってきたが、あくまでも個人に対する働きかけであり、経営に対しては、個人を介して効果があるというところに留まっている。その中にはエグゼクティブコーチングという、より、経営に強い影響を持つ人に対する手法もあるが、本質的にこの構図が変わっているわけではない。

これが、コーチングに関心を持ちながら、今一歩、取り組みをためらる理由になっている。

本間さんがいうように、コーチングが組織文化として定着すれば、経営に対して直接的な効果がある。もっと、本質的には、個々に対するコーチングよりも、グループに対するコーチングの方が日本型の経営には適しているのではないかと思われる。

この手法は、特にプロジェクトマネジャーがプロジェクトチームを指導していく方法として適しているように思う。この本は、グループコーチングを大変わかりやすく、ポイントを指摘しながら書かれている。また、最後にわかりよいケーススタディが示されており、読めばある程度のことはできると思う。

プロジェクトマネジャーの方は必読の一冊だ。

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2007年7月23日 (月)

チームビルディングの初歩から実践まですべてわかる本

4532313406_2 堀公俊、加藤彰、加留部貴行「チーム・ビルディング―人と人を「つなぐ」技法」、日本経済新聞社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

ファシリテーション技術を使って行うチームビルディングの方法をまとめた一冊。

ベストセラー「ファシリテーション・グラフィック」の著者にもう一名の方が加わって書かれた本で、テーストは前著のテーストが貫かれている。入門書であり、また、実践書としても使える一冊になっている。

まず最初は基礎編ということで、チームの基本が書かれている。独自の目線もあるが、この部分はチームマネジメントの勉強をしたことがある人なら「フンフン」と読み流していけるところだろう。

次に準備編ということで、チームマネジメントの基本的理論が説明されている。この部分になってくると、単に人を集めなさいといった話だけではなく、例えば、どのように声をかけるかといったかなり具体的なノウハウが書かれている。

技術編では、多くのチームビルディングのためのアイスブレークや、エクスサイズを紹介している。

紹介されている手法は、全体の流れが明確であり、運用の細かな工夫まで書かれているので、実際の場で使ってみようかという気にさせる。

その後、実践編として、これらのエクスサイズを使ったチームづくりの推進として、ワークショップやイベントなどの使い方、進め方を解説している。この本の中ではこの部分が最も参考になる。

中で紹介されているアイスブレークやエクスサイズが別冊子としてまとめられているのもよいし、1冊で、チームビルディングの入門から、実践までカバーされている今までにはなかったタイプの本である。

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2007年5月 9日 (水)

コミットメントを熟知しよう

4478000999 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部編集「コミットメント 熱意とモラールの経営」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★

ハーバードビジネスレビューの中から、コミットメント経営に関する論文をまとめた論文集。コミットメントというのは日本語でいえば、公約である。

日本では公約というのがそうであるように、コミットメントというのがどうも、かなり精神的な約束として理解されている気配がある。このため、人によっては、コミットメントを忠誠といった訳しかたをする人もいる。コミットメントとロイヤリティは強い関係があるが、別の概念である(この議論はこの本の8章でも出てくる)。

例えば、プロジェクトマネジメントの分野でコミットメントは計画に基づいて行われる。つまり、定量的な目標に対して、その達成を約束するのがコミットメントの管理である。

ある意味でわかりにくい概念であるが、この本は8つの論文をうまく集めて、コミットメントマネジメントを実行するために必要な要素をつまくつむいでいる。チームマネジメントの中核にコミットメントマネジメントをおきたい人にはお奨めした一冊である。

ハーバードビジネスレビューの論文集なので、決して読みやすい本ではないが、苦労して読めば、それなりの対価は得られるだろう。

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2007年5月 2日 (水)

プロジェクトを成功させるリーダーシップ

4062134543 ジョン・サルカ、バレット・ネヴィル(道幸武久監修、甲斐理恵子訳)「人を動かす 火事場の鉄則」、講談社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

2004年に9・11テロの際にニューヨーク消防局のリーダーであったジョン・サルカが1冊の本を出して話題になった。日本でも、ビジネス誌で紹介されているのを見たことがある。

1591840252 John Salka、Barret Neville「First In, Last Out: Leadership Lessons from the New York Fire Department」、Portfolio(2004)

という本である。文字通り、最初に飛び込んで最後まで残るという行動規範(プロデュースした道幸氏の言葉では率先垂範)に基づくリーダーシップについて述べた本だ。

この本、読みたかったのだが、思わぬ形で翻訳が出た。翻訳というのは正しくないかもしれない。今、話題の新進気鋭のビジネスプロデューサ 道幸 武久氏が、単なる翻訳としてではなく、自らとのコラボレーション本としてプロデュースしたのだ。

消防士のように極限で、迅速な判断を要求される業務では、一人ひとりがリーダーシップを持たなくてはならない。リーダーや、マネジャーだけがリーダーシップを持っていても、全体は回っていかない。ジョン・サルカ氏のリーダーシップ論は、そのようなリーダーシップ論であり、そのような伝統的なリーダーシップがニューヨーク消防局にはあったので、多くの人を死なさずに助けることができた。

このようなリーダーシップこそ、プロジェクトを成功させるリーダーシップである。

このリーダーシップ論に共感する道幸 武久氏も、負けずと持論を展開し、全体として非常によくまとまった本になっている。この本の構成はオリジナルの本に章単位で道幸氏の章が混じっているような構成になっている。実は、最初、余計なものが入っている(失礼!)と思って、オリジナルの部分だけを選って読んだ。そのあとで、全部を通して読んだが、全部読んだ方がよい本だということがわかった。道幸氏の企画力はさすがである。

この本はいわゆるリーダーに読んで欲しい本なのだが、それ以上に、メンバーの立場で仕事をしている人と、管理職の立場で仕事をしている人にぜひ、読んで欲しい一冊である。

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2007年4月11日 (水)

鷲、龍、桜

4087203816_01__sclzzzzzzz_v44667512_aa24 キャメル・ヤマモト「鷲の人、龍の人、桜の人米中日のビジネス行動原理」、集英社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

キャメル・ヤマモトさんは僕が共感を覚えるコンサルタントの一人だ。多数の著作を世に出しており、理論の深堀の度合いにはいろいろと批判もあるようだが、実践的なフレームワークを作っている点は深く評価したい。とくに、

4492532196_01__sclzzzzzzz_aa240_グローバル人材マネジメント論―日本企業の国際化と人材活用」、東洋経済新報社(2006)

や、

4532311160_09__sclzzzzzzz_v46957813_aa24稼ぐチームのレシピ」、日本経済新聞社(2004)

などで見られるダイバーシティに富んだマネジメント論は共感を覚える部分が多い。

さて、そのキャメル・ヤマモトさんの原点ともいえるような本が出た。この本。例によって、きっちりフレームワークにはめて説明している。この本では、日本、米国、中国の行動原理を、「行動文法」という規律で要約し、それをベースにして、金銭観、キャリア観、組織観の違いを説明している。

ベースになる行動文法は以下のようなもの。

米国:スタンダードを自由に決めて守らせる

日本:働く「場」のいうことをきく

中国:1対1の関係で仲間(圏子)を作る

この行動文法によって、金銭観、キャリア観、組織観に以下のような違いが出てくるというのがキャメル・ヤマモトさんの主張。

           米国人         中国人        日本人

・金銭観      カテバリッチ教    学歴圏金       結果金 
・キャリア観    アップ・オア・アウト  リスク分散       職人染色 
・組織的仕事観  分ける人           はしょる人        合わせる人

ステレオタイプかもしれないが、なかなか、面白い分析である。少なくとも、米国流の考え方を適用して失敗するケース、中国人を相手に仕事をしてトラブルケースでは、この分析は当たっていることが多いと思う。

問題はこれを知った上で、どのようにグローバル化をしていくか、どのようにダイバーシティを取り込んでいくかだ。その点で、上に上げた2冊の本も含めて、役立つ本である。  

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2007年3月30日 (金)

プロジェクトチーム崩壊を防ぐ極意

4822283135_01__aa240_sclzzzzzzz_v4254531 伊藤健太郎「プロマネはなぜチームを壊すのか 知っておきたいプロジェクトのヒューマンスキル」、日経BP社(2007)

お奨め度:★★★★

PM書籍のベストセラー「プロジェクトはなぜ失敗するのか」の伊藤健太郎さんの待望の新作。

本の内容とは直接関係のない話題から入る。前作でも感じたのだが、伊藤さんの本はこの日経BPのシリーズが本当によく似合う。このシリーズには

デマルコの一連のシリーズ https://mat.lekumo.biz/books/2005/07/post_0be1.html

ジム・ハイスミスのアジャイルPM https://mat.lekumo.biz/books/2005/06/post_8e2b.html

ヨードンのデスマーチ https://mat.lekumo.biz/books/2006/06/post_7e70.html

など、日本のプロジェクトマネジメントに影響を与えた本がずらっと並ぶ。伊藤さんの本も間違いなく、その一冊だ。このシリーズの特徴は、深いことを、簡潔・平易に書いてあり、非常に考えさせることだ。

さて、今回のテーマは、チームマネジメント、リーダーシップ、ヒューマンスキルという伊藤健太郎さんの得意分野である。結構、深い持論がやさしく簡潔に書かれていて、納得しながら読める。かなり、ポイントが絞られているので、セミナーを受講しているような感じで、すっと頭に入ってきて、かつ、残る。

同時期に峯本さんもプロジェクトマネジャーのプロフェッショナル責任に関する書籍「プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル」を出版されたが、伊藤さんの本もまず、「責任」から話が始まる。非常に現実的で、現場ベースでの責任論が展開されている。納得。

次にチームマネジメントの話が続く。ベースは行動規範と動機付けの話だが、両者の関係の説明が薄いので、なにがいいたいのか、少し、わかりにくい部分がある。でも、個々に書いてあることは納得性が高い

そのあと、組織のサポートのあり方の章があり、最後にプロジェクトマネジャー像が述べられている。硬い話だけではなく、問題形式で説明されているので、楽しく読める。

この本、ぜひ、PMPの人に読んでほしい。PMBOKの形式的な知識に魂が入るだろ。

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2007年3月13日 (火)

フランクリン・コビー流プロジェクトマネジメント

4906638619_01__aa240_sclzzzzzzz_v4196786_1 リン・スニード、ジョイス・ワイコフ(フランクリン・コヴィー・ジャパン訳)「PQプロジェクト・マネジメントの探究」、キングベアー出版(2007)

お奨め度:★★★★1/2

7つの習慣で有名なフランクリン・コビー社のプロジェクトマネジメントスキルPQ(Planning Quest)の解説書。

PQには3つのポイントがある。

一つ目は時間管理であり、この部分には、同じくフランクリン・コビーの「TQ(Time Quest)」を取り入れている。TQについては、目標の設定、計画的行動、そして安心領域からの脱出を主軸にした時間管理で、効率だけではなく、「心の安らぎ、すなわち充足や幸福が最高潮に達した感覚」に到達することを目的としている。

4906638058_09__aa240_sclzzzzzzz_ハイラム・スミス(黄木信、ジェームス・スキナー訳)「TQ―心の安らぎを発見する時間管理の探究」、キングベアー出版(1999)

この中から、価値観の明確化が時間管理のベースであるとする生産性のピラミッドの考え方を取り入れている。

その上で、2つ目のポイントとして、プロジェクトのビジュアル化こそがプロジェクトマネジメントの成功要因だとしている。

これらの考え方に併せて3つ目のポイントは、マインドマップ使って思考の幅を広げることを提案している。

PMBOKのような分析的、体系的なプロジェクトマネジメントが必要な分野もあるが、多くのビジネスプロジェクトでは、多少、重い感じがある。そのようなプロジェクトに対するプロジェクトマネジメント手法として注目に値する方法である。

プロジェクトのビジュアル化こそがではこの方法をセミナーとして提供しているが、その前に、この本を読んでみて、自分の仕事に使えるかどうかの評価をしてみてはどうかと思う。ただし、実際に使おうとすると、ツールも含めて本だけでは不十分だと思われるので、セミナーを受けるべきだろう。

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2007年3月12日 (月)

コンサルタントの秘密の道具箱

4822281728_01__aa240_sclzzzzzzz_ ジェラルド・ワインバー(木村泉訳)「コンサルタントの道具箱」、日経BP社(2003)

お奨め度:★★★★
 

コンサルタントとしてのものの見方、行動の仕方を解説した本で、分野を限らず、コンサルティングのバイブルだといってもよい一冊である。

この本では、思考法や、行動法を道具に見立てて、コンサルタントはそれを道具箱に収め、必要に応じて取り出して、問題を解決するというメタファーを作っている。

それぞれのツールについても

イチゴジャムの法則
知恵の箱
金の鍵
勇気の棒
願いの杖
探偵帽と虫めがね
イエス・ノーのメダル
ハート

望遠鏡
魚眼レンズ
ジャイロスコープ
卵、カラビナ、羽根
砂時計
酸素マスク

といったメタファーで書かれたウィット満載の一冊である。コンサルタントやその志望者であれば読んでおいて損のない一冊だろう。

なお、この本にはシリーズが存在する。20年ほど前に出版された本だ。

4320025377_09__aa240_sclzzzzzzz_ ジェラルド・ワインバー(木村泉訳)「コンサルタントの秘密―技術アドバイスの人間学」、共立出版(1990)

今、読んでみると、荒削りな感じがするが、コンサルタントの道具箱の原点であるので、こちらもとてもよい本であるので、併せて読んでみるとよいだろう。
 

2007年2月27日 (火)

リーダーシップの旅

433403389x_01__aa240_sclzzzzzzz_v4457439_1 野田 智義、金井 壽宏「リーダーシップの旅 見えないものを見る」、光文社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

ILSというNPOを立上げ、次世代のリーダーの輩出に取り組んでいらっしゃる野田智義先生と、日本のリーダーシップ論の第一人者である神戸大学の金井先生のコラボレーションによるリーダーシップ論。

野田先生のリーダーシップ観はサーバントリーダーシップの色合いが濃いが、そこに金井先生もいろいろな視点から意見を述べ、全体としては非常にダイバシティーの強いリーダーシップ論の本になっている。

この本の評価というか、サーバントリーダーシップへの評価は分かれると思う。ちょっと気になってアマゾンの書評を見たが、期待を裏切らず、全面否定派と全面肯定派が登場していた。僕はもちろん、全面肯定派である。

リーダーシップの獲得過程を「旅」というメタファーにしているのは、非常に興味深い。リーダーシップ研修などいろいろなリーダーシップ開発の方法はある。効果も出ている。しかし、この本で野田先生と金井先生が訴えているリーダーシップは、誰かに教わるものではなく、自分自身が選択をし、生きていく中で初めて身につくものだ。そのプロセスを旅に例えているが、まさに、旅であり、この本は旅のガイド本でもある。この本の最終章は「返礼の旅」と名づけられている。この中に野田先生の印象的なコメントがあるので、抜粋しておく。

心からの熱い思いがあり、何かを実現したいと夢や志を真剣に語る人に、周囲の人は喜んで手助けをしてくれる。リーダーシップの旅を歩む私たちは、人に助けられ、支えられる中で、自分が人を活かしているのではなく、人に自分が活かされている、そしてそのことによって、自分はさらに行動できるのだという意識を持つ。
利己と他利が渾然一体とはり、「自分のため」が「人のため」、「人のため」が「自分のため」と同一化する中、リーダーは自分の夢をみんなの夢に昇華させる。

何度読んで素敵な言葉である。さらに、こう続く。

リーダーはリーダーシップの旅の中で、大いなる力というギフトを授かる。旅を続けられること、それ自体がギフトでもある。私たちはもらったギフトを他人と社会に返す責務を負う。(中略)。ギフトを社会に返す中で、私たちはさらに真の意味での社会のリーダーへと成長する。

この本を読むときには、野田先生の訳されたスマトラ・ゴシャールの名著

意志力革命

を併せて読まれることをお奨めしたい。

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