人材マネジメント Feed

2008年6月 9日 (月)

現場から見たソフトウエア業界の問題と対応策

4774134066久手堅 憲之「日本のソフトウェア産業がいつまでもダメな理由」、技術評論社(2008)

お薦め度:★★★1/2

現場の視点から、日本のソフトウェア産業の問題を指摘した一冊。7人の男(賢者?)が対談をし、その内容を著者がうまくまとめている。7人はいずれも、業界では著名な識者で、

西田雅昭さん(自営、カリスマプログラマ)
田倉達夫さん(技術コンサルティング)
中野雅之さん(アクセンチュア調達統括)
庄司敏浩さん(フリーのITコーディネータ)
相楽賢哉さん(ITコンサルティングの会社経営)
三笠大和さん(流通システム開発コンサルティング、プロマネ)
手久堅憲之(ITコンサルタント)

の7人。文中の指摘を見ても、いずれもたいへん高い見識を持つことがうかがえる。

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2008年5月13日 (火)

価値観の共有を前提にしないコミュニケーション

4385363714 北川達夫、平田オリザ「ニッポンには対話がない―学びとコミュニケーションの再生」、三省堂(2008)

お薦め度:★★★★★

今、世界でもっとも注目を浴びているフィンランド教育を日本に紹介したことで有名な北川達夫氏と、演出家であり、演劇での経験をベースにしたコミュニケーションの教育・研究に携わっている平田オリザ氏のコラボレーション本。

教育、コミュニティ、対話などの視点から、コミュニケーションについての「対話」により、極めて深い洞察をしている。200ページほどの中に、今、日本に必要なものが凝縮されてぎっしり詰まっている。

特に、グローバルな社会では「対話力は生きる力」だといい、欧米においては、これがないと生きていけない「キーコンピテンシー」であるという。そして、「子供たちや若い世代の人たちに必要なコミュニケーション力」とは、「論理的に考えて、論理的に相手に伝える力」だとあまり前のように考えらているがそうではなく、「もっと日常的で、お互いの価値観をすり合わせていくようなコミュニケーション能力」だという。

本の作り方もたいへん、うまく、はっとさせられるようなメッセージがどんどん出てくる。2人の対話を読んでいくと同時に、このひとつひとつのメッセージを熟考しながら読んでほしい本だ。

あとがきに、北川氏がこんなことを書いている。

「もっとよく考えろ」というのは、「自分の頭で考えろ」という場合よりも、むしろ、「まわりの考えに合わせろ」という場合の方が多いのではないか

この指摘がこの本のエッセンスだといえる。「考える力」の重要性を説く人は多い。しかし、そこに託されている思いが北川氏の指摘のようになっていることは明らかである。本書でもさんざん繰り返されているように、今の社会では価値観の共有を前提とすることはナンセンスである。だとすると、いくら考えてみたところで「まわりの考えに合わせる」ことなどできないのだ。

この本は僕にとって一言一句まで舐めるように読みたい本だが、その中でもビジネスで特に重要だと思った話が2つあるので、紹介しておく。

ひとつは、重層性の話である。かつての地域社会には重層性があったという。学校では教師と保護者の関係があっても、家に帰れば保護者が自治会長である。これが重層性だ。このような重層性があると発言にはリスクが伴う。保護者がモンスターピアレントをやると、自治会のマネジメントで苦労する。こんな関係があったのだが、重層性がなくなってきている。これは、コミュニティだけではなく、会社の中でもそうだ。たとえば、組合活動が盛んだったころは重層性を実現していたが、だんだん、なくなってきた。ビジネスマンは仕事における重層性を持たなくてはならない。

もう一つは、シンパシーではだめで、エンパシーが必要だという話。

シンパシーはその人の気持ちになって考えることであり、エンパシーは「その人だったらどう感じるか」と考えること。ビジネスに情は必要だが、シンパシーでなんとかなっていた時代は終わった。企業の中にさまざまな価値観が渦巻いているからだ。こうなるとエンパシーを持てないと乗り越えていけない。

この2点を含めて、本当によい本だ。ぜひ、読んでみてほしい!

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2008年2月11日 (月)

メンタルヘルスと経営学の統合

4478003378 佐藤隆(グロービス経営研究所監修)「ビジネススクールで教える メンタルヘルスマネジメント入門―適応アプローチで個人と組織の活力を引き出す」、ダイヤモンド社(2007)

お薦め度:★★★★

メンタルヘルスマネジメントは検定試験もでき、社会的に関心が高まってきている。書籍出版も増えてきたが、この本はちょっと変わっている。

まず、構成が
・基礎編
・状況把握編
・ソリューション編
の3つにわかれている。

基礎編では、メンタルヘルスの基礎知識ということで、今、世の中で起こっていること、メンタルヘルスとはどのようなものか、この本のスタンスである適応アプローチとは何かといったことが解説されている。また、ストレスとは何かということについても説明されている。どんな本にも書かれているような内容だが、マネジャーやリーダーが何をすべきか、何を知っておくべきかという点にも言及されており、ちょっと一味違っている。

次は状況把握編で、自己のストレス特性や状況の把握、組織のストレス状況の把握方法について説明されている。

この本のメインは次のソリューション編である。この本のスタンスは上に書いたように適応型アプローチで、これは、世の中の変化についていけずストレスが発生している状態を、変化に適応するように変えてやるというアプローチだ。

この変化への適応に関して、

・セルフケア
・リーダーシップ
・人的資源管理

の3つの視点から、マネジメントとしてどのようなことができるか、どのようなことをすべきかについて体系的に述べられている。また、そのための施策についてもオリエンタルランドやTISなどの事例を紹介している。

最初はもっとプロアクティブなアプローチが書かれていると期待しながら読んだのだが、結局は組織による定期的なチェック、および、その結果からの全体的な傾向の把握、そして、個人も組織もコーピング(ストレス対処行動)というところを中心に対処をしていくという受け身のマネジメントという印象がぬぐえない。問題の性格上仕方ないかもしれないが、マネジメントとしては、まだまだ、大きな課題があるようにも思う。

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2008年1月26日 (土)

スターバックスの44のベストプラクティス

4887595743 ジョン・ムーア(花塚恵訳)「マジマネSPECIAL スターバックスに学べ」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2007)

お薦め度:★★★★

2年半前に、このブログでスターバックスの人材育成について書いた本を紹介した。

当時は、スターバックスの事業展開については数冊の書籍があったが、マネジメントについて書かれた書籍が少なかったのだが、この1年くらいの間は、結構、本屋で新刊書を目にするようになった。

その中で、お勧めなのが本ブログでも何冊か紹介した「マジマネ」シリーズのスペシャルとして出されたこの1冊。

スターバックスの中で語り継がれている独自の成功のノウハウ(ベストプラクティス)を44個、公開している。ベストプラクティスは

・ブランディングとマーケティング
・サービスマネジメント
・人材育成

の3つに分けて整理している。ブランディングとマーケティングでは、
【ノウハウ1】事業を築く過程からブランドは生まれる
【ノウハウ4】真摯な姿勢が人々から信頼を生む
【ノウハウ14】言葉よりも行動!
など15個。サービスマネジメントでは、
【ノウハウ16】注目に値することが注目される
【ノウハウ18】顧客が笑顔になるサービスを心掛ける
【ノウハウ25】旅行者は土産を持ち帰り、探検家は土産話を持ち帰る
など14個。人材育成では
【ノウハウ30】強い企業は、従業員との間に信頼がある
【ノウハウ35】ブランドは人の情熱によってつくられる
【ノウハウ36】リスクをとり、謙虚さを忘れず、新しいことに挑戦する
など13個。これ以外にプラスアルファとして
【ノウハウ43】利益は副産物である
【ノウハウ44】高い志と情熱を持つことが、競争社会で勝ち抜く唯一の方法
の2つで全部で44だ。
読んでいて、ひとつひとつの項目から、スターバックでの店頭での対応やメニューが目に浮かぶ。つまり、実行されているのだ。なんと素晴らしいことだろう!

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2007年12月14日 (金)

あなたはマネジャーに向いているか!?

4534043236 津田 陽一「あなたはマネジャーに向いていない」、日本実業出版社(2007)

お奨め度:★★★1/2

経営コンサルタントである著者が、だめなマネジャーを10タイプに類型化して、その症状を説明し、さらに、タイプごとにだめマネジャー脱出方法を示唆した一冊。

とにかく面白い。10タイプというのは以下の10タイプだ。ネーミングを見ても笑えるし、特徴の中でも特に「よく口にするセリフ」というのを読んでいると、いるいるという感じ。

参考までに5タイプはよく口にするセリフを抜粋しておく。残りが、もっと詳細な特徴、あるいは、脱出策を知りたい人は本を読もう!

ちなみに、面白かったので、本屋で立ち読みでほぼ読み終わってしまった(その後で書評を書くのに買ってきたけど)。そのくらい面白い!

【以下、一部抜粋】

得意技はモグラ叩き「発生主義型」トラブルシューター
「まったく、俺がいないと現場は回らないだからな!困ったもんだよ。世話がかかるなぁ。おちおと休暇もそれやしない。まぁ、しかたないか、俺じゃないと解決できないんだからな!」

机上の空論芸術家「理想主義型」プランナー
「どうだ、このプラン凄いだろう!美しいだろう!問題はすべてカバーしているし、この通りに関係者が動けばすべてうまくいくはず。俺ってやっぱり頭イイだろう!」

能力賞味期限切れ「悲劇の主人公型」ナルシスト
「俺の黄金時代は凄かったんだぞ!あの頃はよかった。俺は運河ないんだ。あのことさえなかったら、あいつさえいなかったら、今頃は・・・。本当は俺は、こんなくだらないところにいる人材じゃない!このままでは俺があまりにもかわいそうだ・・・」

いつも一過性「熱烈感動型」ドリーマー
「面白い! いやぁ、感動した! すごいね。夢があるね。熱いね! ワクワクしてきたよ!彼のためなら、この企画のためなら、あの会社のためなら、オレも役に立ちたいね!」
段取りベタすぎ「抱え込み型」カーペンター
「部下に振っても、どうせ手直しが発生する。経験がなかったり、使えないやつに教える
もの面倒だ。どうせ言ってもわからないし、できないだろう。だったら自分がやるほうが
早い!これは俺の責任だ!休日出勤でも徹夜でもすれば何とかなる!とにかく私が何とか
する!」

流血勝負師「完全主義型」デザイナー
人間不信「性悪説型」レギュレーター
永遠の傍観者「予言者型」コメンテーター
横道愛好会主宰「果てしない物語型」エクスプローラー
適当こそ美徳「やり過ごし型」サバイバー

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2007年12月 7日 (金)

機能不全に陥った上司・部下関係を救う

4492532374 豊田 義博「「上司」不要論。」、東洋経済新報社(2007)

お薦め度:★★★★

良い上司になるには、上司を使うには、といった「上司・部下」本は八重洲ブックセンターにいけば100冊はくだらないだろう。本屋にこの本が平積みされているのを発見したときに、東洋経済新報もついにこの種の本に出したかと、意外感を持って、手に取った。

手にとって、納得。僕は初めての著者の名前のときには、中身ではなく、奥付にある著者のプロフィールをまず見る。この本の著者の豊田義博さんは日本でも有数の人材マネジメントのシンクタンク「リクルートワークス研究所」の主任研究員なのだ。ご本人もまえがきで書かれているが、主任研究員なので、当然部下はいる。

このあたりで、俄然、興味が高まり、とりあえず、買ってホテルに戻り、一気に読んだ。

面白い!

というより、痛く共感。

リクルート ワークス研究所による職場意識調査の成果をもとに、今までの「上司・部下」本では触れられてこなかった視点から、今日の上司・部下問題を書き起こした一冊。この本に書かれていることを簡単にいえば、職業意識が変わっている中で、当然、上司と部下の心理的な関係も変わる。にも関わらず、新しい関係構築がされていない。これでは、上司と部下の関係は機能不全に陥って当たり前。この問題を解決する方法は関係のリストラクチャリング以外にない。

書き方も工夫されている。ステレオタイプの上司のキャラクタとその行動をマンガで描き、そのキャラクタを使って分析結果を説明するという書き方をしているので、内容そのものは固いのだが、結構、気軽に読める。

ただ、この本、パレートの法則でいうところの20%しか、見ていないような気がする。調査の詳細が書かれていないので、推測にすぎないが、たとえば、僕が最近、はまった本、
田北百樹子「シュガー社員が会社を溶かす」、ブックマン社(2007)4893086715

といった80%の現実に、どのように答えるのだろうか?という疑問は残った。まあ、パレートの法則だから20%に対処すればよいという気もするが、、、

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2007年11月30日 (金)

イノベーションをマネジメントする

4270002719 ジェームズ・アンドリュー、ハロルド・サーキン(重竹尚基、遠藤真美、小池仁訳)「BCG流 成長へのイノベーション戦略」、ランダムハウス講談社(2007)

お薦め度:★★★★

この本が指摘し、かつ、答えを準備している問題は非常に重要な部分である。

日本ではイノベーションはマネジメントするものではなく、言い方は悪いが、「アイディア」と「運」だと思っている人が多い。この議論でよく引き合いに出されるのが、20年前にウォークマンを作ったソニーはなぜ、iPodを作り得なかったかという話だ。実は、本書にもこの話は触れられているので、興味ある人は読んでみてほしい。

日本ではと書いたが、この傾向は欧米でも同じような傾向があった。あまりにも、説明できない(不確実な)ことが多く、体系的にマネジメントできるものではないと考えられてきた。

この傾向が変わる契機になったのが「クリステンセンのイノベーションのジレンマ」ではないかと思う。このあたりから、日本でも著名なものでも、クリステンセンの「破壊的イノベーション」、ムーアの「キャズム」、キム氏&モボルニュは「ブルーオーシャン」など、ロジャースが提示したイノベーションモデルでは説明できないような現象を説明するモデルが多くでてきた。

そのような中で、この本はボスコンの体系的なイノベーションマネジメントの手法を紹介するものである。投資マネジメントをキャッシュカーブというフレームワークで合理的に行っていくことによって、不確実性に対処し、最適なゴールを見つけ出し、到達することができるというものだ。

商品開発を担当している人にはぜひ読んでほしいと思うが、この本は単にイノベーションにとどまらず、「マネジメントの価値」を考えさせられる本である。その意味で、すべてのマネジャーにお薦めしたい1冊である。

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2007年10月19日 (金)

あなたは仕事何段?

4757304811 前田 隆敏「仕事の段位」、インデックス・コミュニケーションズ(2007)

お奨め度:★★★★

この本、どう評価するかは、結構、微妙であるが、個人的にははまった。

仕事の段位を

4級以下 : 仕事が嫌いな人

3級 : 普通の人

2級 : 努力の人

1級 : 仕事ができる人

初段 : エネルギーが強力な人

2段 : 初段5人に勝てる人

3段以上 : 天命のある人

という7クラスに分けて、アセスメント方法と段位をあげていく一般的な考え方を説明している。また、黒帯のスキルだとか、スペシャリストとジェネラリストの段位の違いだとかについても、触れており、その方法がQ&A方式になっていて、なんとなく、納得してしまう。

本としてはオモシロイ。ある程度、客観的な裏づけもあるようだ。でも、人様にご紹介するとなると、なんとなく、正規化されていない段位が気になるのだ。

まあ、それを気にしない人には大いにお奨めできる。そんなところにしておこう。

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2007年10月15日 (月)

トヨタの奇跡

4478000794 高木 晴夫「トヨタはどうやってレクサスを創ったのか―“日本発世界へ”を実現したトヨタの組織能力」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

トヨタものは多いが、この高木先生の一冊は分析の切り口(仮説)が見事で、非常に読み応えのある一冊である。

この本では、レクサスの成功要因を分析している。レクサスについては、これまでのトヨタスタイルで本当にできるのだろうかと懐疑的だった人が多い。現に、LSが出てくるまでに出たレクサスに関する本は、どうして失敗したのかとか、挫折とかそんなテーマだった。

この背景にいくつかの理由があるようだが、何よりも、トヨタとブランド確立、それも、高級ブランドの確立というのはイメージが分からないという人が多いのではないだろうか?

この一冊はトヨタの成功をいずれも人がベースになる5つの組織能力に整理している。以下の5つである。

(1)人のつながりによって仕事を成し遂げる能力
(2)創造の革新を人々のつながりを行き来させる活動の中から形成する能力
(3)リーダーの洞察を情熱で人々のつながりのエネルギーレベルを上げる能力
(4)誰と誰がつながると仕事が成し遂げられるかを誰もが考える能力
(5)誰がつながっても仕事が成し遂げられるような問題解決の共通基盤を持つ能力

この本はこの5つをケースストーリーで説明されており、最後に、それぞれの論理的な分析を解説するという形態をとっている。そのケースストーリーを読めば分かるのだが、当事者もやはりためらっていた。ところが、カローラをどんどん進化させるのと同じ流儀でやり遂げてしまうのだ。

その背景にあるのが、上の5つの組織能力というわけだが、何よりも人の持つ可能性を強く感じさせる。それはトヨタマン独特のものかもしれないし、日本人全般に通じるものかもしれない。

トヨタというのは成功要因が非常に分かりにくい企業である。ホンダなどと比べると、なぜ、成功しているのかまったく分からないといってもよい。しいてあげるのであれば、「やれることはすべてしている」といえよう。日産やホンダの特色のある部分と比べても、決して遜色を取らない。ある意味で、マネジメントとはこうやるという鏡だともいえる。

その中で、人と組織能力に注目して見事に成功要因を整理した本書は一読の価値があろう。

もちろん、高木先生の専門分野の組織行動論のテキストとしても一級品である。

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2007年10月12日 (金)

人材開発は愚直に!

4478312192_3 井上久男「トヨタ 愚直なる人づくり―知られざる究極の「強み」を探る」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

トヨタの競争優位源泉はひとにある。これは多くの人が認めていることだろう。実際にトヨタウェイの多くはひとの考え方、行動習慣などを示すものである。

トヨタ本は多く出版されており、ひとに何を求めるかはあるん程度、ぼんやりとした輪郭くらいは見えている。しかし、どうやってそのひとをどのように育てているかということになるとほとんど分からない。組織に文化があり、ひとはその文化に染まっていくことにより、トヨタウェイを身につけた人材が生まれていくという風に思われ勝ちであるが、そんなに単純ではない。

精神的な部分があまりにも語られるので、表に出ないが、トヨタ流を実行するためには、かなり、高いスキルレベルが必要である。心技体である。

この本は、朝日新聞の元記者が、深く組織に入り込み、50人以上の 取材により、トヨタの教育システムを克明に紹介している。この本を読んで分かるのは、ひとというのはコストをかけないと育たないということだ。タイトルに「愚直」とあるが、二兆円の利益を上げる企業グループでさえ、人材育成に王道はないということがいやというほどよく分かる。

トヨタの教育システムが他社の参考になるかは若干疑問だが、少なくとも人材開発は愚直にやらなくては効果がでない。何の信念も持たず、短期的な成果を求めるような企業では人材は育たないことはよく分かるだろう。

同時に、経営とは難しいものだなと思わせる一冊でもある。

その意味で、そのことを実感している人材開発担当者よりも、トップマネジャーに読んでほしい本だ。

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