メンタルヘルスと経営学の統合
佐藤隆(グロービス経営研究所監修)「ビジネススクールで教える メンタルヘルスマネジメント入門―適応アプローチで個人と組織の活力を引き出す」、ダイヤモンド社(2007)
お薦め度:★★★★
メンタルヘルスマネジメントは検定試験もでき、社会的に関心が高まってきている。書籍出版も増えてきたが、この本はちょっと変わっている。
まず、構成が
・基礎編
・状況把握編
・ソリューション編
の3つにわかれている。
基礎編では、メンタルヘルスの基礎知識ということで、今、世の中で起こっていること、メンタルヘルスとはどのようなものか、この本のスタンスである適応アプローチとは何かといったことが解説されている。また、ストレスとは何かということについても説明されている。どんな本にも書かれているような内容だが、マネジャーやリーダーが何をすべきか、何を知っておくべきかという点にも言及されており、ちょっと一味違っている。
次は状況把握編で、自己のストレス特性や状況の把握、組織のストレス状況の把握方法について説明されている。
この本のメインは次のソリューション編である。この本のスタンスは上に書いたように適応型アプローチで、これは、世の中の変化についていけずストレスが発生している状態を、変化に適応するように変えてやるというアプローチだ。
この変化への適応に関して、
・セルフケア
・リーダーシップ
・人的資源管理
の3つの視点から、マネジメントとしてどのようなことができるか、どのようなことをすべきかについて体系的に述べられている。また、そのための施策についてもオリエンタルランドやTISなどの事例を紹介している。
最初はもっとプロアクティブなアプローチが書かれていると期待しながら読んだのだが、結局は組織による定期的なチェック、および、その結果からの全体的な傾向の把握、そして、個人も組織もコーピング(ストレス対処行動)というところを中心に対処をしていくという受け身のマネジメントという印象がぬぐえない。問題の性格上仕方ないかもしれないが、マネジメントとしては、まだまだ、大きな課題があるようにも思う。
目次
第1部 基礎編
1 身近に起きているメンタル不調
2 メンタルヘルスの基礎知識
3 適応アプローチとは何か
4 ケース解説:誤った対応がもたらす悲劇
5 ストレスを理解する
第2部 状況把握編
第1章 自己のストレス状況・特性を把握する
第2章
第3部 ソリューション編
第1章 セルフケアによるソリューション
第2章 リーダーシップによるソリューション
第3章 人的資源管理によるソリューション
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