人材マネジメント Feed

2007年10月10日 (水)

プロマネ必読の人材マネジメント論!

4334934218 長野慶太「部下は育てるな! 取り替えろ! ! Try Not to Develop Your Staff」、光文社(2007)

お奨め度:★★★★

僕は成果主義の一番の問題は、若年層を飼い殺しにしてする組織が増えたことではないかと思っている。マネジャー自身が自分の目標に追われ、長期的な視点で部下を育成するような余裕がない。一方で、米国と根本的に違う点が、部下を「切り捨てででも、成果を挙げようとする」ほどの覚悟もない。

これは一見、温情のように見えるが、結果として、失敗しないようなことだけを部下にさせるというマネジメントをしているマネジャーが多い。これでは、部下はまったく成長しない。作業に熟練するだけである。

こんなことをやっているのであれば、部下を育てることを放棄した方がよい。この問題を正面から指摘した貴重な一冊。

適材適所、捨てる神あれば、拾う神あり。能動的にチャンスを与える。

そろそろ、真剣にこのような発想を持った方がよいのではないだろうか?

■態度の悪い部下はすぐに取り替えろ!
■もう職場に「協調性」なんかいらない
■「エグジット・インタビュー」で情報王になる
■「質問1000本ノック」の雨あられ
■部下がシビれる! 革命上司の「褒める技術」
■「ヘタクソな会議」を今すぐヤメさせろ!
■あなたを勝てるチームのボスにする人事戦略

など、過激な内容が並ぶこの本を読めば、背中を押されること間違いなし。

特にプロジェクトではメンバーを育てようなどを考えないこと。使えないメンバーは切り捨てる。使えると判断すれば、厳しく使う。これによってのみ、次の世代を支えていく人財が育つのではないだろうか?

まあ、非現実的だと思う部分も多々あるが、とりあえず、読んでみよう!プロジェクトマネジャー必見の人材マネジメント論!

2007年9月24日 (月)

組織の心理的側面

4478001898_3DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編著「組織行動論の実学―心理学で経営課題を解明する」、ダイヤモンド社(2007)

お勧め度:★★★★

ハーバードビジネスレビューに掲載された組織行動論の論文の中で、実践的な論文を14編集めている。以下の14編である。

受動攻撃性:変化を拒む組織の病
信頼の敵
沈黙が組織を殺す
「不測の事態」の心理学
なぜ地位は人を堕落させるのか
楽観主義が意思決定を歪める
「意識の壁」が状況判断を曇らせる
リーダーシップの不条理
転移の力:フォロワーシップの心理学
卑屈な完全主義者の弊害
善意の会計士が不正監査を犯す理由
選択バイアスの罠
道徳家ほどおのれの偏見に気づかない
失敗に寛容な組織をつくる

それぞれ、著名な論文であり、経営学のテキストに取り入れられるようなものばかりである。このシリーズの中でも、すごい一冊である。

と同時に、組織行動論といえば、理屈ばかりだと思いがちであるが、心理的な側面に注目した論文(それも著名な論文)がこれだけあるというのは驚きである。

それだけ組織は深いということだろうか。

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2007年9月21日 (金)

今、注目される「個を活かす組織」

4478001944 クリストファー・バートレット、スマントラ・ゴシャール(グロービス経営大学院訳)「【新装版】個を活かす企業」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

クリストファー・バーレットとスマントラ・ゴシャールの「The Individualized Corporation」が新装版として出版された。ちょうど、原書が出版されて10年になる。

序文には今は亡き、スマントラ・ゴシャールへの追悼もこめて、現代的な「Individualized Corporation」の意味について述べている。また、今回、翻訳を担当したグロービス経営大学院の方があとがきで、組織変革をめぐる日本の状況の変化について述べられている。

旧版は組織行動論の名作「組織行動のマネジメント―入門から実践へ」と同じシリーズで出版されているが、この時期に改めてハードカバーの立派な本として出版した出版社の英断に拍手を送りたい。

内容的には上に述べた追加があるが、基本的に変わらない。訳はかなり、洗練されているように思う。

このブログを初めてから売れた本の中で、PMBOKとこのブログの家主である好川の本を除いて一番売れている本は、スマントラ・ゴシャールの、「意志力革命」である。意志力革命に至る思考プロセスを知る上でこの本の持つ意味は大きく、今回の企画は非常にうれしい。

なお、この後に旧版の書評(2005年8月2日)をつけているので、内容はそちらを参考にしてほしい。

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2007年8月15日 (水)

成功事例で学ぶ顧客視点に立った成長

4903241580 江口一海、矢野英二、木島研二、郷好文「顧客視点の成長シナリオ―モノづくりの原点」、ファーストプレス(2007)

お奨め度:★★★★1/2

顧客中心型経営手法を3つのコンセプトと事例を中心にしてまとめた一冊。

3つの活動コンセプトとは

・顧客価値の本質を実現する、顧客との接点を再編する活動
・顧客価値の本質にマッチする商品とサービスを提供する活動
・売り方と商品が実現する価値を顧客網上に構築する活動

の3つであり、序章では、この3つを、iPod、日亜LED発光ダイオード、キーエンス、デル、スターバックス、ユニクロ、アサヒビール、などのよく知られたベストプラクティスから導きだしている。

その後、第1部では、事例研究編として、コエンザイムQ10サプリメント、新幹線インバーター装置開発の2つのケーススタディでこの3つの活動コンセプトを分析している。

第2部は実践編ということで、この3つの活動コンセプトを実現するための事業モデル、成長シナリオについて提案している。

読みモノとしても面白いし、顧客価値の本質がどこにあるのか、自社のコンピタンスをその本質にあわせこんでいくにはどうすればよいのかについて多くの気付きを与えてくれるよい本である。

また、新幹線のインバーターの開発の事例はプロジェクトマネジメントの視点からも、顧客視点にたった場合に、トレードオフのマネジメントをどうするかといった重要な問題に対するたいへんよい答えになっているので、事業マネジャーだけではなく、プロジェクトマネジャーにとっても得るところの多い一冊である。

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2007年8月13日 (月)

日本のプロジェクトマネジメントオフィス

4883732460_2 仲村薫編著「PMO構築事例・実践法―プロジェクト・マネジメント・オフィス」、ソフトリサーチセンター(2007)

お奨め度:★★★★

日本では初のプロジェクトマネジメントオフィスに関する実践的な解説書。

アルテミスの仲村薫さんの編著で、仲村さんがまず、PMOの基本事項の解説をし、事例を各事例企業の人が書くというスタイルをとっている。取り上げられている事例は

・オムロン パスネットプロジェクト
・日立製作所 情報通信グループ
・三菱電機インフォメーションシステムズ
・NEC
・A社(失敗事例)
・自動車メーカ(マルチプロジェクトマネジメント)
・医薬品企業(開発管理)
・日本IBM研究開発部門

である。

次に、PMOの重点活動ということで

・プロジェクトマネジャーの育成
・ポートフォリオマネジメント

の2項目について、詳細な解説を事例を交えて行っている。解説はわかりやすく、また、事例が入っているので明確なイメージができる。

やっと日本人の書いたPMOの本が出てきた。それも、日本らしく、事例という形。

これまで、訳本では、仲村さんの翻訳された

4820117408_2 トーマス・ブロック、デビッドソン・フレーム(仲村 薫訳)「プロジェクトマネジメントオフィス―すべてのプロジェクトを成功に導く司令塔プロジェクトオフィスの機能と役割」、生産性出版(2002)

や、PMI東京の永谷事務局長がプロジェクトマネジャーを勤める翻訳チームが翻訳した

4885387086 ジョリオン・ハローズ(PMI東京訳)「プロジェクトマネジメント・オフィス・ツールキット」、テクノ(2005)

などの良書があったが、やはり、日本の組織に米国のPMOの流儀をそのまま持ち込むことは難しい。

その意味で、この仲村さんのまとめられた本は特別な意味があるのではないかと思う。

半年くらい前に、米国で出版事業をやっている知人から、プロジェクトマネジメントに関する出版点数に対してPMOの本がないのはどういうことだと聞かれたことがある。異様に感じるといっていた。ちなみに、米国ではプロジェクトマネジメントの本が500冊、PMOの本が50冊程度出版されており、このくらいの割合が普通ではないかといっていた。

これを契機に、日本でもPMOの本がどんどん、出てくることが望まれる。

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2007年7月25日 (水)

女子高生の目からみた会社経営

483341855x 甲斐莊正晃「女子高生ちえの社長日記―これが、カイシャ!? 」、プレジデント社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

TBSの日曜日のドラマで「パパとムスメの7日間」というのをやっている。父とムスメが電車事故で幽体離脱して入れ替わって、それぞれの立場で会社に行ったり、学校にいったりするというコメディドラマ。究極の世代間コミュニケーションだ。この中で、ムスメがパパとして仕事をして、常識にとらわれない発想をし、活躍する様子はなかなか興味深い。

知らないことの強さのようなものもあるが、どうも、余計なことを考えすぎている部分も少なくない。シンプルに考えると別の世界が見えてくるわけだ。問題に遭遇したときに、もし、自分が常識も組織に関する情報もまったく持っていなかったとすればどう判断するか?

これが求められるような時代になったきたように思う。

このビジネスノベルは17歳の女子高生が、父親の急死で、突然社長に―。主人公ちえにとっては、知らないことばかり、「これが、カイシャ!?」と、つぶやく「発見」の毎日といったストーリー。

この本は単に経営の入門書というだけではなく、商品開発、営業、工場での生産などを、女子高生という素人の目から見て、どう見えるかを示しているのがミソ。たいへん、わかりやすいので、入門書としてもよいが、ある程度、経験がある人も新たな発見があるのではないかと思う。

なかでも、日本組織の特徴である人間関係に関する部分が面白い。日本人は何にこだわっているのかという思いになるのではないかと思う。

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2007年7月11日 (水)

幻の組織構築論

4047100919 山本七平「日本人と組織」、角川書店(2007)

お奨め度:★★★★1/2

日本人論の金字塔だといわれる「日本人とユダヤ人」などの著書で多くの読者を持つばかりでなく、日本型組織論、日本型経営など、多くの分野での研究に多大な影響を与えている日本研究者山本七平先生の幻の組織論といわれる原稿がついに書籍化された。

この本は70年代にかかれたものである。従って、書かれていることについてはある程度、結論が出ていることも多い。その中にはもちろん、現実となっていない論考もあるが、重要なところでは恐ろしく当たっている。

組織のコミットメントに宗教(神)の議論を持ち込み、日本人の組織観の特殊性を説明したのが山本先生である。この本に書かれている大枠の話は他の研究者や評論家によって引用されることが多く、有名なものが多いのだが、この本を読むと、その背景の考え方が非常によくわかる。

この10年くらい、日本の企業も山本先生の描かれた日本型組織から徐々に外れつつあるが、そこに大きな軋みが生じつつある。なぜ、軋みが生じるか、どのように改革すればよいのかを明確に示されている本書は、このような時代であるからこそ、一読の価値があるといえよう。

マネジメントに関わるすべての人に一読することをお奨めしたい。

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2007年7月 9日 (月)

プロフェッショナルを育てる、プロフェッショナルに成長する

4495375814 松尾睦「経験からの学習-プロフェッショナルへの成長プロセス」、同文舘出版(2006)

お奨め度:★★★★1/2

人はいかに経験から学び、プロフェッショナルへと成長するのかという命題に対して、経験に焦点を当てて、学習メカニズムを明確にしようとした本。

本書は、人材育成の7割は経験によるものだとし、その経験をどのように成長に結び付けていくかが人材育成のポイントになると説いている。結び付けの視座として、組織活動、マーケティング活動など、現実の経営活動の中で学習が機能するかを説いている。その意味で、研究書ではあるが、かなり実践的であり、実務に役立つインプリケーションがたくさん盛り込まれている。

また、ケースもふんだんに盛り込まれているので、書かれていることの理解も容易にできる。さらに、心理学的な視点も踏まえているので、自分自身の成長を考えるに際しても参考になる一冊である。

プロジェクトマネジャーに代表されるプロフェッショナル人材を育てることを課題とする人材育成担当者にぜひお奨めしたい一冊である。

また、マネジャーは、この本と「最強組織の法則」など、組織学習の本と併せて読むと、個人の成長(自己マスタリング)と組織の学習の関連性も想像でき、面白いだろう。

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2007年7月 2日 (月)

経営を見る眼

4492501746 伊丹敬之「経営を見る眼 日々の仕事の意味を知るための経営入門」、東洋経済新報社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

経営というのは多面性があり、説明するのは非常に難しい。それを

・人はなぜ働くか
・仕事の場で何が起きているか
・雇用関係を断つとき
・企業は何をしている存在か
・株主はなぜカネを出すのか
・利益とは何か
・企業は誰のものか
・人を動かす
・リーダーの条件
・リーダーの仕事上司をマネジする-逆向きのリーダーシップ
・経営をマクロに考える
・戦略とは何か
・競争優位の戦略
・ビジネスシステムの戦略
・企業戦略と資源・能力
・組織構造
・管理システム
・場のマネジメント
・キーワードで考える
・経営の論理と方程式で考える

の21の視点から見事にきっている。

まさに、伊丹先生の知見のすべてを書ききった素晴らしい本である。会社に所属している人はぜひ一度読んでおきた本だ。

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2007年6月29日 (金)

顧客起点のマーケティング

4492555838 平井孝志「顧客力を高める、売れる仕組みをどうつくるか」、東京経済新報社(2007)

お奨め度:★★★★

この本もまた、「組織力を高める」の著者の一人が書いたマーケティング論。顧客中心型のマーケティングと、その具体的な実現方法、仕組み作りについて述べている。

顧客力とはあまり耳にしない言葉だが、著者のいう顧客力は

 顧客起点で売れるモノやサービスを継続的に生み出す能力

であり、これは

 マーケティング脳:顧客と共鳴できるユニークで柔軟な発想力

 場の構築力:顧客のまわりに業務連鎖を設計・構築する能力

の2つの掛け算で生まれるというのが、この本の考えである。

そして、この本では、マーケティング脳の作り方、および、場の構築プロセスを具体的に解説している。デル、スターバックス、トヨタなどを例にとりながら説明されているので、納得性がある。

最後に、顧客力を組織力に高める方法について述べている。前著の組織力を高めるとの関連がここにあるようだ。

その方法とは、マーケティングの専門部隊を置き、それを組織のマーケティング脳にしていく。そして、その部隊を中心に

・場の見える化

・標準化の推進

・現場での適応化

の3つを行うことだという。この部分はさらなる検討がほしいところだが、方向性としては共感できる。

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