人材マネジメント Feed

2007年6月27日 (水)

オーバーアチーブの育て方

4492532323 古田興司「オーバーアチーブ、組織力を高める最強の人材」、東洋経済新報社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

古田氏の前作、「組織力を高める~最強の組織をどうつくるか」のまとめであったオーバーアチーブ(期待を超える)人材の育成が重要だという結論の続き。

オーバーアチーブする人材になるにはどうしたらいいのか、そんな人材を育てるにはどうすればいいのかを具体的に示している。

そのアプローチとして、まず、人材像としてハイパフォーマという人材像を示している。これは

組織の中で働きながら、組織に没頭せず、仕事の質とスピードを追求し

さらには期待を応える結果を出すことにこだわり、

その一方でチームを牽引し、チーム全体の組織力を高める高能力人材

というものだ。このためには、

(1)気概

(2)着眼、解の導出力

(3)チームへの影響力

の3つの要件が必要だという。この本では、この3つの要件をさらにコンピテンシーにわけ、その育成方法を具体的な訓練方法を述べながら解説している。

また、最後にそれらをまとめる形で、6つの基礎トレーニング、4つの実践トレーニングを提案している。

【基礎編】

(1)キャリアプランを考えさせる

(2)新聞を読ませる・朗読させる

(3)本を読ませる・文章を書かせる

(4)人前で発表させる

(5)新しいことを勉強させる

(6)半分の時間でやる練習

【実践編】

(1)役員会の議事録を作成させる

(2)タスクフォースチームを活用する

(3)ウィークリーレポートを書かせる

(4)研修の企画・運営をさせる

感覚的によく合う。特に実践編は効果的な方法だと思う。マネジャーのみなさんも試してみてはどうだろうか?

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2007年6月18日 (月)

プロフェッショナルの人材開発のベールをめくる

4779500583 小池和男編「プロフェッショナルの人材開発」、ナカニシヤ出版(2006)

お奨め度:★★★★

新聞記者、研究者、革新的マネジャー、ファンドマネジャー、融資審査マンなどのプロフェッショナルがその技能をどのように開発されていくかをフィールド調査によって明確にした一冊。

小池先生の指導によるフィールドワークだけあって、どの論考もかなり深く突っ込んであり、かつ、簡潔にまとめられている。技能開発に携わる人にとってはもちろんだが、いわゆるプロフェッショナル人材を育成しなくてはならない人にはとても参考になる本である。

また、読み物としても面白いので、人材開発を仕事にする人だけではなく、プロフェッショナル自身が読んでも、自らの能力開発について気づきのある一冊である。

難点は、ここで選ばれている職業がプロフェッショナルという集団から見たときに、どの程度、一般性があるのかがよく分からない点。例えば、研究者と医者はその技能開発が異なるように思うし、販売員のようなサービス系の技能を持つプロフェッショナルも異なるように思う。

ぜひ、今後、このほかのいろいろなプロフェッショナルについてもフィールドワークをして、第2弾、第3弾を作ってほしい。

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2007年5月30日 (水)

1+1が10にも100にもなる

4887595476_3 ローレンス・ホルプ(ディスカバリー・クリエイティウブ編)「マジマネ2 伸びるチームをつくる! 」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2007)

お奨め度:★★★★1/2

チームマネジメントの入門書として定評のある「Managing terms」の翻訳。チームリーダーのミッションを6つにまとめ、それぞれ、簡潔に説明されている。

興味深いのは、この知見は、1989年に米国企業としてははじめてのデミング賞を受賞したフロリダ電力の品質管理プログラムの中で、変化にうまく対応できたリーダーの特性であったということ。

・チームの活動を調整する

・優先順位をつける上でアドバイスを与える

・チームに必要なものを供給する

・問題解決のためのコーチングをする

・実行をサポートする

・公式もしくは非公式に部下の功績を評価する

の6つである。これを中心にチームマネジメントの方法をまとめた本で、各ミッションで3~4個のポイントを挙げている。

気楽に読める割には、結構深いことが書いてある一冊である。

なお、この本は、「マジマネ」シリーズとして刊行されており、第1弾はすでにこのブログで紹介した「できるマネジャーになる!」である。

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2007年5月25日 (金)

ネガティブと戦う

447800109x BJ・ギャラガー、スティーブ・ベンチュラ(梅森 浩一)「ノーの中からイエス!を探せ」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

「ネガティブと戦う」をテーマにした一冊。

自分も含めて、自分が関わっている人には、ネガティブな人がたくさんいる。このような人の攻略法をストーリーと、解説の二本立てで伝えようとする本。

第1部のストーリーは、「ノーの国」の物語。いろいろなネガティブキャラが登場し、ノーを繰り広げていく。この物語によって、ノーということがどういうことか、ノーという人がどういう思考をするかに気づくようになっている。

その上で、第2部では、ノーをイエスに変える方法を提案している。

このようなスタンスを取れば、きっと自分も、周囲もポジティブになれる。そんなことを感じさせてくれる一冊である。

参考にもなるが、ノーの国で元気をなくしているあなたに元気を与えてくれる。そんなニーズをお持ちの方、読んでみよう!

2007年5月19日 (土)

リーダーシップからスポンサーシップへ

4532313260 柴田昌治「なぜ社員はやる気をなくしているのか~働きがいを生むスポンサーシップ」、日本経済新聞社(2007)柴田昌治

お奨め度:★★★★1/2

スコラ・コンサルティング代表の柴田さんが、自らの組織変革のコンサルティングの経験から、経営のスポンサーシップのあり方について述べた一冊。スポンサーシップは分かりにくい概念であるが、この本で提唱されているものは非常に合理的で、また、的を得ていると思う。

この本では(強い)リーダーシップの弊害について指摘し、それに変わるチームをまとめる概念としてスポンサーシップを定義している。最初、読んだときにピンとこなかったが、よく考えてみるとその通りだと思った。この本ではスポンサーシップを

リーダーシップの一種。ただ、引っ張っていくリーダーシップではなく、部下が主役になりうる機会を演出することで「質の高いチームワーク」をつくり出して行くリーダーシップ

と定義している。要するにどうだということはいえないような微妙な話である。捉え方によってはファシリテーションリーダーシップやサーバントリーダーシップと似た概念であるが、似て非なるものである。やはりスポンサーシップである。

具体的なスポンサーシップの機能としては

(1)個人のセーフティネット作り

(2)対話でビジョンを描き、共有する

(3)対話力で一緒に答えを作る

(4)当事者としての姿勢と自己革新

を一緒にあげている。

柴田さんは以前から、プロセス変革、組織変革の中で、スポンサーシップの重要性を説かれていた。

4532192048 柴田昌治「なぜ会社は変われないのか―危機突破の風土改革ドラマ」、日本経済新聞社(2003)

この本はここが中心になっている。この本だけ読むと、スポンサーシップで会社が変わるというように読めなくもないが、そういうことではないと思う。ただ、本当にこの部分にフォーカスしないと会社が変わらないということを事例などを通じて切実に伝えてくれる本である。

組織変革に関わっている人はもちろんだが、プロジェクトスポンサーシップを発揮しなくてはならない人はぜひ読んで欲しい。具体的に何をすればよいかが分かるだろう。

2007年4月13日 (金)

人をあきらめない組織

4820717030_01__aa240_sclzzzzzzz_v2488359_1 HRインスティテュート(野口吉昭編)「人をあきらめない組織―育てる仕組みと育つ現場のつくり方」、日本能率協会(2007)

お奨め度:★★★★1/2

如何に人を育てるかという切り口で、あるべき人を育てる組織になる方法を説いた一冊。

非常に力強いメッセージ「人をあきらめない組織」を作るには、

 プリンシプル(絶対的な人づくりへの理念と意志)
 ウェイ・マネジメント(人づくり遺伝子の仕組み化)
 モチベーション・エンジン(やる気を挽き出すコミュニケーション基盤と進化)

という3つの要素が必要であり、それぞれについて以下のような要素が必要であると説いている。

プリンシプルには

・トップマネジメントの行動・意志

・人に対する信念の存在

・周囲の意識・行動から見える浸透

などが必要である。ウェイマネジメントには

・尊敬できるリーダーシップがあるか

・人材育成・開発の仕組み

・習慣・口ぐせ

が必要である。三番目のモチベーションエンジンには

・オープンコミュニティ

・自己主張・提案できる環境

・チーム意識を醸成する環境

が必要である。

この本では、それぞれの要素について、診断を踏まえて、どのような取り組みをすればよいかをフレームワークとして提示しているので、実践的に使える一冊だ。

2007年4月11日 (水)

鷲、龍、桜

4087203816_01__sclzzzzzzz_v44667512_aa24 キャメル・ヤマモト「鷲の人、龍の人、桜の人米中日のビジネス行動原理」、集英社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

キャメル・ヤマモトさんは僕が共感を覚えるコンサルタントの一人だ。多数の著作を世に出しており、理論の深堀の度合いにはいろいろと批判もあるようだが、実践的なフレームワークを作っている点は深く評価したい。とくに、

4492532196_01__sclzzzzzzz_aa240_グローバル人材マネジメント論―日本企業の国際化と人材活用」、東洋経済新報社(2006)

や、

4532311160_09__sclzzzzzzz_v46957813_aa24稼ぐチームのレシピ」、日本経済新聞社(2004)

などで見られるダイバーシティに富んだマネジメント論は共感を覚える部分が多い。

さて、そのキャメル・ヤマモトさんの原点ともいえるような本が出た。この本。例によって、きっちりフレームワークにはめて説明している。この本では、日本、米国、中国の行動原理を、「行動文法」という規律で要約し、それをベースにして、金銭観、キャリア観、組織観の違いを説明している。

ベースになる行動文法は以下のようなもの。

米国:スタンダードを自由に決めて守らせる

日本:働く「場」のいうことをきく

中国:1対1の関係で仲間(圏子)を作る

この行動文法によって、金銭観、キャリア観、組織観に以下のような違いが出てくるというのがキャメル・ヤマモトさんの主張。

           米国人         中国人        日本人

・金銭観      カテバリッチ教    学歴圏金       結果金 
・キャリア観    アップ・オア・アウト  リスク分散       職人染色 
・組織的仕事観  分ける人           はしょる人        合わせる人

ステレオタイプかもしれないが、なかなか、面白い分析である。少なくとも、米国流の考え方を適用して失敗するケース、中国人を相手に仕事をしてトラブルケースでは、この分析は当たっていることが多いと思う。

問題はこれを知った上で、どのようにグローバル化をしていくか、どのようにダイバーシティを取り込んでいくかだ。その点で、上に上げた2冊の本も含めて、役立つ本である。  

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2007年4月 9日 (月)

日本人ビジネスマンも捨てたものじゃない

4478000395_01__aa240_sclzzzzzzz_v4228015 マーク・フラー (著), ジョン・ベック(グロービス経営大学院監修)「サムライ人材論―アメリカがうらやむ日本企業の強み」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★

日本は再生がお家芸だと得著者がキーワードに挙げるのが、「武士道」精神。乱世を生き延び、志を持つサムライ人材こそが、日本独自の強みだという。

この本は、このサムライ人材なる人材について、強みという視点から、特性を分析している。同時に、話は組織論までに、および、武士社会の縦型組織のよい点についても分析している。

このような分析に基づいて、日本企業は侮れないという結論をしている。

結構、おっと思うような指摘がある。特に、サムライの階層とのバランスを考えたリーダーシップ論は非常によいヒントになる。

ハンバーガーを食べ飽きて、おバンザイを懐石料理だといっているような気がしないでもないが、彼が説いているマインドセットは確かに持っている人が多いと納得できるものだ。その意味で、日本人が参考にできる人材・組織論だといってもよいし、リーダーが読むとまた、違った意味で学ぶところがおおいだろう。

2007年3月26日 (月)

評価、教育、動機づけ

4478000409_01__aa240_sclzzzzzzz_v4228607 DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー編集部「人材育成の戦略―評価、教育、動機づけのサイクルを回す」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★

ハーバードビジネスレビューに掲載された人材育成に対する優秀な論文を選定して一冊の本にまとめている。内容は目次を見ていただきたい。

過去に読んだもの、読んでいないものの両方があったがどちらもよみごたえがあった。15本の中から3本だけ上げるとすれば、1本目は「行動するマネジャーの心得」。ケースに基づき、

・自分の仕事は自分で管理する(マッキンゼー:ジェシカ・スパンジン) 
・必要な資源はみずから調達してくる(ルフトハンザ航空:トーマス・サッテルバーガー) 
・代替案の存在を認識・活用する(コノコフィリップス:ダン・アンダーソン)

が重要だと述べられてる。

二番目は「リーダーシップR&D」。

常人には不可解な優れたリーダーの意思決定
複雑系の科学こそマネジメント研究の新たな方向性
「認識科学」と「設計科学」の融合
リーダーシップR&Dの「R」
リーダーシップR&Dの「D」
知識教育ではリーダーシップを開発できない

といった項目について述べられている。

三番目は「リーダーシップ開発は一人ひとり異なる」。

リーダー教育の多くが個性を無視していることを主張した上で、マネジャーの四つのタイプにわけ、それぞれに適したリーダー能力の開発方法について述べてる。

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2007年3月21日 (水)

トヨタの秘密

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ジェームズ・モーガン (著), ジェフリー・ライカー(稲垣公夫訳)「トヨタ製品開発システム」、日経BP社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

トヨタウエイの著者 ジェフリー・ライカーによるトヨタの製品開発システムのエスノグラフィ。日米の研究開発拠点12箇所で40人の開発担当者から延べ1000時間に及ぶ聞き取り調査を実施して書き上げた本。

トヨタウエイについてはこちらの記事を参照。

トヨタウエイの実践

トヨタといえば現場とよい意味で泥臭い改善活動の印象がつよい。しかし、マネジメントの研究者のレベルでは、むしろ、製品開発システムに関心が高かった。東京大学の藤本先生、神戸大学の延岡先生をはじめとし、多くの経営学の研究者がトヨタのシステムを研究し、論文を書いている。実際のところ、初代イプサムに代表されるリードタイムの大幅な短縮など、興味深い点は多い。

それらの本と比べるとこのライカーの本は実務者にとって参考になる。あまり、大きな仮説を設定せずに、エスノグラフィーとして淡々と調査、観察したことが書かれており、本当のところの実態がよくわかる。

チーフエンジニア制度、セットベースのコンカレント・エンジニアリング、平準化プロセスなど、トヨタ独自のシステムが丁寧に解説されているので、読んでいて、上記の論文ではわからないことがわかる部分がずいぶんある。特に興味深いのはこれらの制度の背景にあるルールを以下のような原則としてまとめていることである。

 プロセスのサブシステム:リーン製品開発システム原則の1~4
   原則1 付加価値とムダを分離できるように、顧客定義価値を設定する
   原則2 選択肢を十分に検討するため、製品開発プロセスを設計上の自由度が一番高い初期段階にフロントローディングする
   原則3 平準化された製品開発プロセスの流れをつくる
   原則4 厳格な標準化を使ってばらつきを減らし、フレキシビリティーと予測通りの結果を生む

 人のサブシステム:リーン製品開発原則の5~10
   原則5 開発を最初から最後までまとめるチーフエンジニア制度をつくる
   原則6 機能別専門能力と機能間統合をバランスさせる組織を採用する
   原則7 すべての技術者が突出した技術能力を持つようにする
   原則8 部品メーカーを完全に製品開発システムに組み込む
   原則9 学習と継続的改善を組み込む
   原則10 卓越性とあくなき改善を支援するカルチャーを醸成する

 ツールと技術のサブシステム:リーン製品開発システム原則の11~13
   原則11 技術を人やプロセスに適合させる
   原則12 組織全体の意識をシンプルで視覚的なコミュニケーションで合わせる
   原則13 標準化と組織的学習に強力なツールを使う

ただし、このようなトヨタ方式が有効かどうかを判断するのは読者である。これが有効であるという証拠、論拠はない。唯一あるのは、もうすぐ、世界一の自動車メーカになるだろうということだけだ。

逆にいえば、別の業界の人(たとえば、製薬)がベストプラクティスとして読んでも訳に立つ内容ではないかと思う。

それから、いくつかの開発ケースが採録されている。これらは読み物としても面白い。

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