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2007年9月24日 (月)

組織の心理的側面

4478001898_3DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編著「組織行動論の実学―心理学で経営課題を解明する」、ダイヤモンド社(2007)

お勧め度:★★★★

ハーバードビジネスレビューに掲載された組織行動論の論文の中で、実践的な論文を14編集めている。以下の14編である。

受動攻撃性:変化を拒む組織の病
信頼の敵
沈黙が組織を殺す
「不測の事態」の心理学
なぜ地位は人を堕落させるのか
楽観主義が意思決定を歪める
「意識の壁」が状況判断を曇らせる
リーダーシップの不条理
転移の力:フォロワーシップの心理学
卑屈な完全主義者の弊害
善意の会計士が不正監査を犯す理由
選択バイアスの罠
道徳家ほどおのれの偏見に気づかない
失敗に寛容な組織をつくる

それぞれ、著名な論文であり、経営学のテキストに取り入れられるようなものばかりである。このシリーズの中でも、すごい一冊である。

と同時に、組織行動論といえば、理屈ばかりだと思いがちであるが、心理的な側面に注目した論文(それも著名な論文)がこれだけあるというのは驚きである。

それだけ組織は深いということだろうか。

目次

まえがき──組織行動学が矛盾に満ちた人間の行動を解き明かす

第1章 受動攻撃性:変化を拒む組織の病
ブーズ・アレン・ハミルトン シニア・バイス・プレジデント ゲイリー・L・ニールソン
スペシャル・オリンピックス 会長兼CEO ブルース・A・パスタナック
ブーズ・アレン・ハミルトン プリンシパル カレン・E・バン・ナイズ
   ◎
健全な組織と不健全な組織
受動攻撃型へと変わってしまう理由
不健全な組織に共通するミスマッチ
組織の病気を治療する

第2章 信頼の敵
センター・フォー・エグゼクティブ・ディベロップメント マネージング・パートナー ロバート・ガルフォード
ビスタ・プリント エグゼクティブ・バイス・プレジデント アン・シーボルト・ドラポウ
   ◎
信頼は築くのに難しく、壊れやすい無形資産
信頼を損なわせるもの
信頼は変革の狭間でどう揺れ動くか
一からやり直す

第3章 沈黙が組織を殺す
ハーバード・ビジネススクール 教授 レスリー・パルロー
ハーバード・ビジネススクール 助手 ステファニー・ウィリアムズ
   ◎
はたして「沈黙は金」なのか
沈黙が組織を支配している
部下たちの静かなる反乱
「沈黙のらせん階段」を下りていく人たち
沈黙の悪循環を断ち切る
仲間を増やす
【章末】こんな時は沈黙したほうがよい
【章末】仕事のスピードと沈黙の関係

第4章 「不測の事態」の心理学
ミシガン大学 ビジネススクール 教授 カール・E・ワイク
[聞き手] HBR シニア・エディター ダイアン・L・クーツ
   ◎
組織は予測不可能な試練に直面している
HROを支えるのは敏感さと意識の高さ
複雑系に生きていることを理解する
宇宙論的症状に対処するリーダーシップ
過剰なる計画信奉の危うさ

第5章 なぜ地位は人を堕落させるのか
スタンフォード大学 経営大学院 教授 ロデリック・M・クラマー
   ◎
なぜ権力を手にすると堕落し始めるのか
勝者はすべてを欲する
「ルールなんて凡人のためにあるものさ」
組織の頂上には滑りやすい急坂がつきもの
ほめ言葉が「裸の王様」をつくる
トップであり続けるための日常習慣
順調ゆえに前途多難であることに気づかない
【章末】失脚の研究
【章末】みずからのリーダーシップを「監査」してみる

第6章 楽観主義が意思決定を歪める
ニューサウスウェールズ大学 オーストラリア経営大学院 上級講師 ダン・ロバロ
プリンストン大学 教授 ダニエル・カーネマン
   ◎
楽観主義の罠
マネジャーのバラ色の「色眼鏡」
よい面を強調し、悪い面は控えめに語る
客観的に予測する「外向的視野」
計画立案の段階で外向的視野を採用する
楽観主義を適度に抑制する
【章末】外向的視野によって予測を立てる方法

第7章 「意識の壁」が状況判断を曇らせる
ハーバード・ビジネススクール 教授 マックス・H・ベイザーマン
ニューヨーク大学 スターン・ビジネススクール 助教授 ドリー・チュー
   ◎
メルクと医師たちを襲った「意識の壁」
なぜ重要情報を見落としてしまうのか
反証を探すことで重要情報が見つかる
重要情報を利用し損ねる
重要情報を伝え損ねる
意識の壁を壊す方法

第8章 リーダーシップの不条理
INSEAD 教授 マンフレッド・F・R・ケッツ・ド・ブリース
[聞き手] HBR シニア・エディター ダイアン・L・クーツ
   ◎
CEOの精神分析家、ケッツ・ド・ブリース
偉大なリーダーには孟母の影がつきまとう
経営者の精神分析は精神病患者のそれより難しい
ナルシシズムはリーダーの要件でもある
フロイトの「転移」で考える
なぜリーダーは仕事に埋没してしまうのか
健全なリーダーはおのれの狂気を知っている

第9章 転移の力:フォロワーシップの心理学
精神分析医 マイケル・マコビー
   ◎
フォロワーを知ってリーダーシップを考える
転移はだれにでも例外なく起こる日常的な現象である
転移を賢く利用するために
【章末】お国柄で異なる転移
【章末】部下の転移に対処する

第10章 卑屈な完全主義者の弊害
INSEAD 教授 マンフレッド・F・R・ケッツ・ド・ブリース
   ◎
組織に増加する「神経症的インポスター」
なぜ自分を「まがいもの」と感じるのか
完全主義が招く悪循環
自己卑下が自分を泥沼へと引きずり込む
おのれだけでなく組織にも悪影響を及ぼす
神経症的インポスターを支援する
【章末】女性とインポスター症候群
【章末】真正のまがいもの

第11章 善意の会計士が不正監査を犯す理由
ハーバード・ビジネススクール 教授 マックス・H・ベイザーマン
カーネギーメロン大学 教授 ジョージ・ローウェンスタイン
カーネギーメロン大学 デッパー・スクール・オブ・ビジネス 助教授 ドン・A・ムーア
   ◎
企業監査に潜む深刻な問題
「自己奉仕的バイアス」という曲者
不正監査の心理学
こんな具合に監査は歪められていく
改革案はまず奏功しない
抜本的改革なくして不正会計の撲滅はない
【章末】会計とはあいまいなもの

第12章 選択バイアスの罠
スタンフォード大学 経営大学院 助教授 ジャーカー・デンレル
   ◎
みんな成功例ばかり学んでいる
ケース・スタディは成功例ばかりで失敗例に乏しい
選択バイアスの落とし穴
選択バイアスは身の回りに転がっている
選択バイアスを解決するために
【章末】生還した戦闘機が教えること

第13章 道徳家ほどおのれの偏見に気づかない
ハーバード大学 教授 マーザリン・R・バナジ
ハーバード・ビジネススクール 教授 マックス?H・ベイザーマン
ニューヨーク大学 スターン・ビジネススクール 助教授 ドリー・チュー
   ◎
実はあなたは倫理的な人間ではない
努力だけでは足りない
偏見を自覚できる人が偏見を克服できる
【章末】あなたは「偏見はない」と言い切れるか

第14章 失敗に寛容な組織をつくる
ウェスタン行動科学研究所 共同創立者兼所長 リチャード・ファーソン
コンサルタント ラルフ・キーズ
   ◎
失敗は成功の反対ではない
成功と失敗を等しく評価する
エンゲージメント・リーダーシップの心得
ほめるより分析する
共感を得る
イノベーション・バイ・コラボレーション
普通の人たちから普通以上の価値を引き出す

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