2005年6月 2日 (木)

日本のソフトウエアエンジニアリグの夜明けはくるか

4822207951 情報処理推進機構ソフトウェア・エンジニアリング・センター、日経コンピュータ「ソフトウェア開発データ白書―IT企業1000プロジェクトの定量データを徹底分析」、日経BP社 (2005)

お奨め度:★★★★

米国ではソフトウエア開発の実態を定量的分析した本は、何冊もあるし、名著もあるが、日本ではおそらく、初めての本。

その米国では、ソフトウエアエンジニアリングでは、CMMで有名なカーネギーメロン大学のSEI(Software Engineering Institute)が頂点にある。ビジネススクールでいえば、ハーバードみたいな存在。

ちなみに、中国で、ソフトウエア産業が歴史が浅い割には、やたらとCMMで高レベルの企業が多いのは、ここに留学して帰国したエンジニアの力が大きいといわれている。

日本でも、昨年、日本版SEIを目指すIPAのソフトウェア・エンジニアリング研究機関「ソフトウェア・エンジニアリング・センター」(SEC)ができた。まだまだ、未知数だが、期待されている。

そのSECが中心になり、10社を超えるシステム・インテグレータから、およそ1000プロジェクト分のソフトウェア開発に関する定量的なデータを収集。そのデータを工期、生産性、品質に関して徹底分析し、「工期と生産性・品質の関係」、「適切な工期とは何か」、「品質と外注率の関係」など分析するとともに、課題を提起している。

分析はともかく、データとしては非常に面白いし、ソフトウエア以外の分野でも参考になる部分がある。

日本のソフトエンジニアリングの夜明けがくるか、、、きてほしいなあ!

とりあえず、期待をこめて、今月の1冊は、この本にする。

PMOのすべてがこの1冊に

0849321735 Gerard M. Hill「The Complete Project Management Office Handbook」、Auerbach Pub(2003)

お奨め度:★★★★

プロジェクトマネジメントオフィスについて、その形態、機能を体系的に1冊の本にまとめている。

これから、PMOを構築しようとしている企業、あるいは、今、あるPMOをもっと改善していきたいと考えている企業には不可欠。

この中には、プロジェクトガバナンスのような耳慣れないが、きわめて重要な話も含まれている。PMOの仕事をしている人は一読の要あり!

2005年6月 1日 (水)

システム・シンキング入門

4532110416西村行功「システム・シンキング入門」、日本経済新聞社(2005)

お奨め度:★★★

システムシンキング(システム思考)を軽く勉強したい人にはお奨め。

なかなか、よい事例が結構な数あるのだが、残念ながら、基本理論の説明が大雑把なので、この本だけでは理解できないのではないかと思われる。

とりあえず、雰囲気を学ぶには手軽でよい。

リーダーとしてキャリアをかけた決断をどう乗り越えるか

4492531793 ジョセフ・L. バダラッコ(金井寿宏、福嶋俊造訳)『 「決定的瞬間」の思考法―キャリアとリーダーシップを磨くために』、東洋経済新報社(2004)

お奨め度:★★★★

リーダーとしての意思決定は時として、キャリアをかけたものになることがある。たとえば、あたなが会社から、部下のリストラ計画があることを知らされる。部下の家庭事情などはよく分かっている。その場合、あなたは、その情報を得た時点で、部下に知らせるべきか、知らさざるべきかを悩むことになる。

今までの日本の会社であれば、こんな問題は一笑に付されていただろう。会社がすべてであれば、答えは決まっている。知らせる必要はないのだ。しかし、本当にそれでいいのだろうか?

このような場面は実際のキャリアの中では結構多い。この本はいくつものケースをもちいて、そのような状況におかれたリーダーはどのような思考をすべきかを議論している。

みずから変化をつくりだせ!

4478300615 ピーター・ドラッカー(上田惇生訳)「チェンジ・リーダーの条件―みずから変化をつくりだせ! 」、ダイヤモンド社(2000)

お奨め度:★★★★

チェンジマネジメントに関するドカッカーの見識は他の分野よりも一層、含蓄深いものである。そのような論文を集めた論文集である。

ドカッカーの根本的な思想は、社会、組織(企業、NPO)、個人などのあらゆるレベルにおいて、自己責任、自己変革である。現在の社会においては、変化は常態になりつつあり、変化への対応が迫られている。

その中で、自ら変化を創り出し、起こりうるだろう変化を飲み込んでいくという発想が必要であるというのがドラッカーの主張だ。

分かりやすい問題として、昨今、話題になっている郵政民営化問題がある。現時点では事業としても問題がない。将来も問題がないと思われる。しかし、可能性としてはもっと良質の事業になるかもしれない。当然、リスクもある。このような状況において、リーダーが如何に変化を起こしていくか。難しい問題であるが、ここで変化が必要だということに共感できる人には、ぜひ、お奨めしたい本である。

イノベーターの条件

4478300623 ピーター・ドラッカー(上田惇生訳)「 イノベーターの条件―社会の絆をいかに創造するか」、ダイヤモンド社(2000)

紙版><Kindle版

お奨め度:★★★★★

ドラッカーの論文集第3弾で、社会構造の変革について述べた著作を集めている。ひとつひとつの論文を見ると、さすが、ドラッカーという含蓄の深い論文ばかりであり、また、言及している範囲も経済だけではなく、政治、教育など、非常に広範な範囲で言及されており、深く読むと、これらが、非常に深く関連していることが分かる。

ドラッカーの社会論の中で興味深いのは、NPOの議論である。NPOの重要性を古くから訴えてきた一人がドラッカーであるが、ここにきてやっと、予測した未来が現実のものになりつつある。その流れを検証するにも絶好の1冊である。

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PMBOK、相変わらず好調!~2005年5月ベストセラー

ビジネス書の杜 5月の月間ベストセラーです。今月は売り上げが少し減ってきました。その中でも、PMBOKは相変わらず、売れています。今月も29冊売れました。

藤巻氏のチームの教科書が売れてきました。とてもよい本だと思うので、いいですね!最近、チームの本が増えてきました。出版業界にはチームの本は売れないというジンクスがあるそうですが、果たして打ち破ることができるでしょうか?

【2005年5月ベスト5】

(→)第1位 A Guide To The Project Management Body Of Knowledge: Official Japanese Translation (29)

(↑)第2位 チームリーダーの教科書―図解 (13)

(↑)第3位 世界一わかりやすいプロジェクト・マネジメント(7)

(↑)第4位 ソフトウエア企業の競争戦略 (6)

(↓)第5位 プロジェクトマネージャーが成功する法則―プロジェクトを牽引できるリーダーの心得とスキル (5)

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2005年5月31日 (火)

成果主義を活かす自己管理型チーム

4820118099 山口生史(編集)「成果主義を活かす自己管理型チーム―人の視点とプロセス重視のマネジメント」、生産性出版(2005)

お奨め度:★★★

主に労務管理の立場から、自律型チームのあり方について、広範な議論をしている。特に、チームのデザイン、目標によるマネジメントなどは参考になる。

また、編者はコミュニケーション論の専門家であるが、コミュニケーションスキルと、ファシリテーションスキルへ言及している部分は大いに参考になる。

人を活かし、組織を成長させる

4526052175 Bill Curtis, Sally A. Miller, William E. Hefley(前田卓雄訳)「People CMM―人を生かし組織を成長させる能力成熟度モデル」、日刊工業新聞社(2003)

お奨め度:★★★1/2

people CMMは組織の人的能力を示す指標である。この考え方はちょっとわかりにくい点がある。個人の能力だけではなく、総体としての組織としての能力を問題にしている点である。つまり、個人に帰属する知識・スキルだけではなく、組織に帰属するプロセス能力を合わせて、人的組織の力として定義している。

people CMMは、米国では、IBM、インテルなど、いくつかのエクセレントカンパニーで活用されている。米国以外でも、例えば、インド最大IT企業であるタタ・コンサルタンシー・サービシズは、ソフトウェアCMMでレベル5、People CMMでレベル3を認定されている。

本書は、people CMMのガイドの翻訳。ケーススタディを交えてあるので実践的なイメージがつかめる。

問題は9千円という値段だ、、、マネージャーであれば思い切って購入する価値はあるかもしれない。

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2005年5月30日 (月)

ソフトウェア開発の持つべき文化

4798108715 カール・E・ウィーガーズ(滝沢徹、牧野裕子訳)「ソフトウェア開発の持つべき文化」、翔泳社(2005)

お奨め度:★★★1/2

米国のソフトウエアエンジニアのバイブルの一冊。

ソフトウェア開発の上流工程から下流工程に至るまで明瞭かつ独自のスタイルで、事例をふんだんに使って解説。その中での慣行を「文化を生かすもの」と「文化を殺すもの」に分類している。

英語版がお奨め。原書はこちら

0932633331

Creating a Software Engineering Culture

Software people(Vol.6)

4774123048 Software people―ソフトウェア開発を成功に導くための情報誌 (Vol.6)、技術評論社

ソフトウエアエンジニアに好評の Software Peopleの第6巻はPMBOKの入門記事。

常識程度にはPMBOKをかじっておきたい、言葉くらいは知っておきたいというソフトウエアエンジニアはこれで十分だろう。

ちなみに、PM Magazine第2巻にも同じような記事があるが、ソフトウエアエンジニアにはSoftware Peopleの方が分かりやすいので、こちらがお奨め。4798107697

PM magazine vol.002、翔泳社

2005年5月27日 (金)

ここからはじまる人材育成

4502375403 中原淳編纂「ここからはじまる人材育成―ワークプレイスラーニング・デザイン入門」、中央経済社(2004)

お奨め度:★★★★

実用性:★★★★

中原淳氏は、教育の情報化や、ワークプレイスラーニングについて見識を持つ、教育学の若手研究者である。その中原淳氏が編纂したワークプレイスラーニングの事例研究書。

人財は宝、人材育成が大切と、口でいうのは簡単である。また、その方法論も多種多様である。しかし、実際にそれを実行するには、難しい。したがって、人材育成はオープンプロブレムになっており、現実の世界では、「やらないよりまし」というスタンスで取り組んでいる企業が多いのが事実だろう。

中原氏の問題意識は、如何に、人材育成を具現化していくことにあるようで、さまざまなアプローチを試みているようだ。その中で発見したベストプラクティスを集めた本である。

まさに、人材育成の第一歩に読んでほしい本だ。

ちなみに、取り上げられている事例は以下のとおり。

富士ゼロックス(株)における人材育成事例―「やる気の素」を追い求めて ゼロからの出発
(株)オートバックスセブンの人材育成事例―誰のためのコンテンツ?
東京海上火災保険(株)の人材育成事例―人生最大の変化をデザインする
マイクロソフト(株)の人材育成事例―自分をマーケティングする場をつくる
富士通(株)における人材育成事例―FUJITSUらしさをつくる―企業内大学の挑戦
(株)デンソーにおける人材育成事例―チーム力を復活せよ!管理職へのコーチング教育

ザ・ホワイトハウス ― ファースト・シーズン コレクターズ ボックス

B00014N7L4 ザ・ホワイトハウス ― ファースト・シーズン コレクターズ ボックス

2005年5月25日 (水)

あたなのプロジェクトのゴールは?

0749441860 Erling S. Andersen、 Kristoffer V. Grude、Tor Haug 、Mike Katagiri、 J. Rodney Turner「Goal Directed Project Management: Effective Techniques and Strategies」、Kogan Page Ltd(2004)

お奨め度:★★★★1/2

計画とマイルストーンの両方を管理しながら、プロジェクトをゴールに導いていく方法を議論している。

計画ベースの議論は通常のプロジェクトマネジメントの議論であるが、マイルストーンマネジメントはプロジェクトマネジメントの域を超えており、MBS(Mission Breakdown Structure)などの概念を中心に、目標管理、戦略実行の観点からのマネジメントになっている。

ある種のプログラムマネジメント、あるいは、エンタープライズプロジェクトマネジメントの手法について書かれているわけであるが、これらの手法で、PPMだけで漠然とした部分に対して、具体的な手法を示しているので、実用性が高い。

2005年5月24日 (火)

はじめてのプロジェクトマネジメント

4532110599 近藤哲生「はじめてのプロジェクトマネジメント」、日本経済新聞社(日経文庫)(2005)

お奨め度:★★★

注目度:★★★★

ついに、日経文庫にプロジェクトマネジメントが登場!

著者は「実用企業小説 プロジェクト・マネジメント」の近藤哲生氏。

この本の焼き直しっぽいので、この本を読んだ人にはあまりお奨めできないが、読んでいない人は一読の価値あり。

非常に現実的なプロジェクトマネジメントの方法論が書かれている。

なお、アマゾンのタイトルが間違っているので、ご注意ください!

2005年5月23日 (月)

風のようにうたが流れていた DVD-BOX

B00092QSPK 小田和正「風のようにうたが流れていた DVD-BOX

お奨め度:★★★★★

番組の時間の都合で放映されなかったものも含まれている完全版。

組込みソフトウェア開発におけるプロジェクトマネジメント導入

4798109517 独立行政法人情報処理推進機構 ソフトウェア・エンジニアリング・センター「組込みソフトウェア開発におけるプロジェクトマネジメント導入」、翔泳社(2005)

お奨め度:★★1/2

IPAのソフトウェアエンジアリングセンター(SEC)が、組込みソフトウェア開発のプロジェクトマネジメントに関するさまざまな視点からの見識を1冊の本にまとめている。なんと300円!えらい!

SEC自体、ソフトウェアのミッションなので仕方ない面があるとは思うが、製品開発のプロジェクトのプロジェクトマネジメントの一部だと考えると、少し、ズレているのではないかと思う。

IPAのホームページの紹介は以下のとおり。

(以下、IPAのホームページより抜粋)

体系的なプロジェクトマネジメントの導入が遅れているといわれる組込みソフトウェア開発を対象に、プロジェクトマネジメントとは何か、導入することのメリットは何かを平易に解説した。
あわせてプロジェクトマネジメントを実施するうえで基本となる技術・知識についても紹介し導入への助けとしている。
なかでも4章「プロジェクトマネジメントの心得」はマネジメントのエッセンスを要約したもので、組込みソフトウェア開発に関わっているすべての方にぜひ一読いただきたい章である。体系的なプロジェクトマネジメントの導入が遅れているといわれる組込みソフトウェア開発を対象に、プロジェクトマネジメントとは何か、導入することのメリットは何かを平易に解説した。
あわせてプロジェクトマネジメントを実施するうえで基本となる技術・知識についても紹介し導入への助けとしている。
なかでも4章「プロジェクトマネジメントの心得」はマネジメントのエッセンスを要約したもので、組込みソフトウェア開発に関わっているすべての方にぜひ一読いただきたい章である。

成功の教科書

409837661X 原田隆史「成功の教科書」、小学館(2005)

お奨め度:★★★★1/2

「生活指導の神様」とまで言われる著者の「成功の技術」を体系化した本。

成功は「それ自身が技術である」と断言し、したがって、方法論ができるというのが著者の信念。そして、それを「原田塾」で教え、学校教育のみならず、ビジネス、企業でも大きな効果を挙げている。

成功とは

 自分にとって価値のあるものを未来に向かって目標として設定し、決められた期限までに達成すること

だと定義しているが、そこで展開されている方法論は、納得性が高い。

特に共感できるのは、目標に業績目標と、「ルーチン目標」という2つの目標を設定していること。ルーチン目標とは、業績を上げるために一見無意味にさえ思える目標行動を繰り返し行うことで、「心作り」をするためのもの。

著者の指導する生徒で、砲丸投げで日本一になった生徒が、

 「皿洗いと部活動を毎日欠かさなかった」

ことを勝因としてあげているというエピソードが書かれている。この手の話は、ビジネスの中でも誰もが感じていることだろう。

たとえば、毎日、プロジェクトで朝礼をやって成果を挙げているプロジェクトを知っているが、ルーチン目標の設定というのは間違いなく効果がある。しかし、多くの人は、それを精神論として言うだけであり、ゆえに、ほとんど実践されることはない。

この本では具体的にルーチン目標の立て方と実行の仕方を議論している。これだけでも読んでみる価値がある。

2005年5月21日 (土)

TWIN PERFECT COLLECTION

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