マネジャー・リーダー必読の技術マーケティング論
福田 収一「良い製品=良い商品か?―「モノづくり」から「価値づくり」へ」、工業調査会(2009)
お奨め度:★★★★★
技術的な立場から書かれた本格的なマーケティング論。「期待マネジメント工学(EM)」という考え方を提唱し、さまざまな問題提起とその問題に対するマーケティングのアイディアを体系的に示している。すべての技術系マネジャー、技術者に読んでほしい一冊。
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福田 収一「良い製品=良い商品か?―「モノづくり」から「価値づくり」へ」、工業調査会(2009)
お奨め度:★★★★★
技術的な立場から書かれた本格的なマーケティング論。「期待マネジメント工学(EM)」という考え方を提唱し、さまざまな問題提起とその問題に対するマーケティングのアイディアを体系的に示している。すべての技術系マネジャー、技術者に読んでほしい一冊。
昨日の日記で、
デービッド・メイスター(紺野 登解説、加賀山 卓朗訳)「脱「でぶスモーカー」の仕事術」、日本経済新聞出版社(2009)
が今年読んだ本の中で、一番よかったと書いたが、舌の根の乾かぬうちに、対峙する本に連続して当たった。っていうか、やっと翻訳が出版された。
ロジャー・コナーズ、トム・スミス、クレイグ・ヒックマン(伊藤 守監訳、花塚恵訳)「主体的に動く アカウンタビリティ・マネジメント」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2009)
原書は、「The Oz Principle」。1994年の本。米国のマネジメントモデルの中では、アカウンタビリティという言葉は「レスポンシビリティ」ときちんと区別して盛り込まれているが、そのきっかけを作ったと言われるのがこの本。日本では、まだ、「責任」という一言でくくられているが、それが、責任に対するいい加減な態度を生んでいる。
ディスカヴァー・トゥエンティワン出版で、伊藤守さんが監訳をされていることからも、熱意が伝わってくる。この本が、日本のマネジメントのターンオーバーをもたらすことを期待。
今日はPMAJのPMシンポジウム2009で、SIGのセッションがあったので、お手伝い。その後、このシンポジウムでプロデュース能力の講演をされていた佐々木尚彦さんと落ち合い、少し、話をした。
佐々木さんと別れ、東京から京都へ移動。移動中に2冊。
デービッド・メイスター(紺野 登解説、加賀山 卓朗訳)「脱「でぶスモーカー」の仕事術」、日本経済新聞出版社(2009)
「でぶスモーカー」症候群というのを指摘している。これは、「正しいとわかっていても実行できない」症候群である。「でぶスモーカー」症候群を乗り越えるには、仕事の目的を明確にして、内発的な動機を引き出すしかないというのは、大賛成!そのような仕事の仕方を、「でぶスモーカー」症候群の状態に応じて相当精緻に解説している。今年読んだ本で、一番、よかった。
もう一冊は、コトラーの本。
ジョン・キャスリオーネ、フィリップ・コトラー(齋藤慎子訳)「カオティクス―波乱の時代のマーケティングと経営」、東洋経済新報社(2009)
大学の時、ゼミの先生の専門が非線形システムだったので、門前の小僧なんとかで興味を持ち、仕事をし出してからもなんとなく、このテーマの本は読んでいる。その中で、この本はもっとも実践的である。やはり、リーマンショックを期にパラダイムが替わったのかもしれない。
この本が提唱しているのは、リスクと不確実性を察知するための早期警報のしくみ、それらに対応するためのシナリオプランニングのしくみを企業の中に戦略として埋め込むこと。この仕組みをカオティクスだと言っている。
おもしろいのは、このような仕組みを、短期的な収益と結びつけるのではなく、組織がカオス的な挙動ができるようになるための仕組みとして位置づけていること。おそらく、今後、MBA方式のように極度に管理された経営ではなく、このような経営の方法が必要になってくる。MBAマネジメントは、不確実性に対して、人で対応しようとしているが、おそらくリーダーシップではもう対応できないと思う。リーマンショックはリーダーシップの限界を思い知らされた。そこで、一つのソリューションとして従来の日本型経営に関心が生じているが、これも違うと思う。
そのような混迷した状況で一つの答えを見せてくれている本だと思う。
この問題をここまではっきりと論じられるのは、宮崎学氏しかいないのだろう。
談合は文化である
浮気は文化であるというより、もっと深い。
談合撲滅も一種の思考停止である。深い意味をあまり考えることなく、悪であることを前提にものを考えるのは危険というのを教えてくれる本。
宮崎 学「談合文化論」、祥伝社(2009)
たとえば、公共工事に無駄がある。無駄のうち、職人やリーダーの育成に寄与している部分は少なくない。無駄があるから人を育てることができる。これは、これまでの日本社会では紛れもない事実だったと思う。
談合をなくして、無駄をなくす。税金の使い道はただされる。そこで、無駄を押さえたもので、職人の育成の施策を実施する。透明性は上がる。これが果たして税金の使い方として効果的なのかというと疑問が残る。
談合は汚職と絡んで目の敵にされるようになってきた。この問題のもっとも官僚主義的な解決方法が談合防止法である。
地方分権がいよいよ、本格化してきた。行き過ぎた中央集権で、この50年くらいの間に地域コミュニティは崩壊した。地域に限らず、官僚主義はコミュニティを崩壊する。これは歴史が物語っている。談合もコミュニティである。官僚政治と決別が期待できる今、この問題はもう一度考えてみる価値があるのではないかと思う。
だいぶ前だが、プロジェクトマネジメントの研修をしている講師が不用意に談合はプロジェクトマネジメントであると発言して、その会社から出入り禁止になった。プロの講師としては、談合という言葉で思考停止をすることは踏まえておくべきだと思うので、このこと自体に同情の余地はないが、思考停止をきた企業は間違いなく、プロジェクトマネジメント力が落ちていくと思う。プロジェクトの中で、談合の持つ意味を考えてみることは、悪いこともでもないし、ましてや、法律違反でもない。
政権交代以来、経営者と話をするときのネタに、関連本を読みあさっているので、なかなか、ビジネス書を読む時間がない。そのため、日記も途切れがち。
あまり、あけるのも何なので、普段はあまり紹介しない、仕事がらみで読んだ本。
藤野 香織「ヒットする!PB商品企画・開発・販売のしくみ―PB商品の企画、生産から売り場展開、リニューアルまで」、同文舘出版(2009)
PBとは Private Brand の訳で、流通業が主体となり、メーカや提携工場と協業して開発する商品のこと。いろいろな点で、マーケティング、生産管理、物流、流通など、ビジネスやマネジメントのエッセンスが詰まっているビジネスだ。
この本では、ライフサイクルに沿って、簡潔に、かつ、ポイントを押さえたオペレーションの説明をしているので、役に立った。
新入社員などに、一般的なビジネスオペレーションを勉強させるための教科書にいいのではないかと思う。
ついでに、政権交代後に読んだ本でもっともおもしろかった本というか、読み比べるとおもしろい本。
山崎 養世「道路問題を解く―ガソリン税、道路財源、高速道路の答え」、ダイヤモン(2008)
猪瀬 直樹「道路の決着」、文藝春秋(2008)
平成建設の本が出ていたので、読んでみた。むかし、カンブリア宮殿でみて、内製化を売りにして、いろいろと興味深いことをいわれていたのがちょっとだけ印象に残っている会社。
その社長の書かれた本。
秋元 久雄「高学歴大工集団」、PHP研究所(2009)
経営論としてはそれなりのものだと思うが、期待していた内容とは少し違った。大工というのはもう少し、技術とマネジメントの融合した活動ができるものだと思っているのだが、そうでもないのかもしれない。この本を読む限り、高学歴である必要は感じなかった。
大工さんというと、自分が家を建てて貰うときくらいしか縁がないので事情はよくわからないが、製造業を想定するとこういう仕組みというのはそんなに特別なものではないような気がする。
ただし、目指しながらもできていない企業が圧倒的に多く、その意味で、成功事例として、この本に書かれているいろいろなポイントは非常に参考になるように思う。
「コミュニケーションをよくしなくてはならない」という言葉ひとつで、いろいろなことが思考停止に陥っている。
そう簡単に片付く問題ではないと思うが、情報の交換、支援的な意味あいでのコミュニケーションについては、この本でほぼ、体系化されているのではないだろうか?
ニック・ミルトン(シンコム・システムズ・ジャパン訳)「プロジェクト・ナレッジ・マネジメント―知識共有の実践手法」、生産性出版(2009)
それにしても、このような切り口でプロジェクト(マネジメント)活動をまとめるというのは、すごいなあ。
プロジェクトはオペレーションという思い込みが、情報のダイナミックスに関心を払ってこなかった理由ではないかと思うが、情報のマネジメントだけでプロジェクトのマネジメントはできるのではないとすら思わせるような本。
ひとつだけ不満があるのは、訳語がプロジェクトマネジメントの世界でほぼ標準語になりつつある言葉をかなり無視していること。元の英語が何かよく分からない単語がいくつかある。プロジェクトマネジメントとの関係を考えながら読みたい人には、これは致命的。
まあ、こちらの世界をメインに考えたいという思いもあるだろうから、意図的かもしれないが。
あまり、バイアスを乗せるのはよくないが、一昨日、紹介記事を書いた「プレゼンテーション Zen」が、昨日ちょっとびっくりするくらい売れた。1日に売れた冊数としては、歴代2位。同じ記事の中で紹介した、ダニエルピンクの「ハイコンセプト」も10冊くらい売れた。
むう~、このあたりのニーズは高いのか?!
さて、今日は、おそらく、15年以上、おつきあいしている技術評論社の編集の方と5年ぶりくらいに会った。食事をしながら、2時間ほど話をして、楽しかった。
仕事のスタイルなのか、相対的なレベルの問題なのか、齢のせいか、何なのかよくわからないが、最近、人と話をして、自分の潜在的な考えを引き出されたと感じることが少なくなってきた。ひさしぶりに自分の中に眠っていたアイディアを引き出されたと感じた。
記事や本にしたいかどうかは別の問題だが、快感であることは間違いない。編集者はこうでなくてはならない。
興奮冷めやらぬままに、ホテルに戻って、彼に会う前にJRの本屋さんで買ったこの本を読む。
川西 諭「ゲーム理論の思考法」、中経出版(2009)
「おっと」って感じの本です。いい!
ゲーム理論と問題解決と結びつけた本はありそうで、意外と少ない。戦略思考も問題解決の一種であるが、戦略思考と結びつけた本はたくさんある。
アビナッシュ・ディキシット、バリー ネイルバフ(菅野 隆、嶋津 祐一訳)「戦略的思考とは何か―エール大学式「ゲーム理論」の発想法」、ティビーエス・ブリタニカ (1991)
などは、名著だと思うが、あくまでも戦略思考であって、言い難い。ゲーム理論ありきで、それを戦略思考に結びつけているような感じ。
川西先生の本は、どのように、ゲーム理論を使って問題解決を行うかを説明している「気配」があるので、結構、ビジネスの中でゲーム理論を使うきっかけになるのではないかと思う。この本では、ゲーム理論が
・状況を俯瞰的に把握する
・起こりうる未来を予測する
・問題を根本から解決する
の3つに役立つとして、それをわかりやすく解決している。意志決定が弱いと思っている人は、一度読んでみるといいだろう。
大木 豊成「ソフトバンク流「超」速断の仕事術―1か月かかる仕事を1週間でやり遂げる!」、ダイヤモンド社(2009)
お奨め度:★★★★1/2
久しぶりにプロジェクトマネジャーやプロジェクトスポンサーが読む価値のあるプロジェクトマネジメントの本に出会った。ソフトバンクグループで活躍されている大木豊成氏が、経験に基づき書いた「短納期」、「大規模」なプロジェクト推進方法論。
青山から丸の内に移動のときに、20分ほど時間が空いたので、オアゾの丸善で時間をつぶす。そこで、発見。
ガー・レイノルズ「プレゼンテーション Zen」、ピアソンエデュケーション(2009)
プレゼンテーションの本としては、最高ではないかと思っている。日本人の書いたプレゼンの本を見ていると、論理が表に出すぎる。あるいは、論理がないものが目立つ。
論理は必要で、かつ、論理は背後にある。そして、右脳思考が論理のインパクトを高める。そんな結果をもたらすプレゼンテーションアプローチを書いた本。
インスピレーションは、新幹線の弁当から得たそう。仕事柄、外人と一緒に新幹線で弁当を食べる機会は何度となくあるが、アングロサクソン系の人は必ず、デザインのすばらしさに言及する印象がある。会議に松花堂を出してもそんな反応はしない。幕の内がよいのだろう。
原書をさんざん読んでいたので、すぐに紹介記事を書いた。
プレゼンテーションへの禅的アプローチ
https://mat.lekumo.biz/books/2009/09/post-0a1b.html
そのときに、もう一冊、本を買っておいて、寝る前に読む。本自体は、政治の本であって、ビジネス書ではない。ただ、帯にいいことが書いてあるので紹介する。
起死回生を託された麻生首相は、なぜ、「決断」できなかったのか?
自民党「失敗の本質」を徹底検証
とある。読売新聞政治部が今までの記事を編集したドキュメンタリーだ。
読売新聞政治部「自民崩壊の300日」、新潮社(2009)
失敗の本質といえば、野中先生たちが、1984年に書かれた「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」だが、今回の自民党の失敗は、ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦といった戦いに匹敵するくらい、組織にとって示唆に富むものではないかと思う。
この本に描かれている麻生首相は、今の多くのマネジャーとかぶってしまう。
・情報は集めるが、決断をせず、ああでもない、こうでもないと考えているうちに、状況が変わってしまって、情報が役立たなくなる
・失敗をしたくない、リスクをとりたくないので、決断が渋る
・だからといって、ステークホルダに協力を乞って、リスクをとれる体制を作る努力をするわけではない。あくまでも、自分ができる範囲でしかしない
話は変わるが、ドラゴン桜の作者・三田紀房さんが書いたビジネスコミック「マネーの拳」が完結した。ボクサーの世界チャンピオン花岡拳が、ユニクロをモデルとしたようなTシャツ専業のアパレルビジネスT-BOXを起こして、成功し、上場するというストーリーのコミック。この最後に、ボブソンをモデルにしていると思われる岡山のジーンズメーカーを買収するという話がでてきて、その中で、主人公がメーカの社長に「自分の感情で商売している、自分の願望を最優先する経営をしている」という指摘をする場面がある。会社が発展する、従業員が幸福になるといったことよりは、自分が満足すること、もっとはっきり言えば、自分のプライドが満たされること、自分が傷つかないことの方がはるかに重要なのだ。
麻生首相は、今までの日本の経営者のステレオタイプだと思うし、経営者だけではなく、従業員も本質的に変わらない。その典型が職人であり、職人気質をよいものだとする文化が日本にはある。武士は食わねど高楊枝とかいう。
そんなトップリーダーの姿を見事にあぶり出したドキュメンタリーである。これは研修に使えるわ。
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