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2006年10月

2006年10月31日 (火)

ストレスを推進力に変える方法

447873327909 サルバトール・マッディ、デボラ・コシャバ(山崎康司訳)「仕事ストレスで伸びる人の心理学」、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

仕事の成果の大きさはストレスを如何に活かせるかによって変わってくる。そんな前提で書かれた本。

イリノイ・ベル電話プロジェクトで、ストレスは、成長につながるか、破滅につながるかという問題を検証し、その結果分析から、ストレスと「争わず,逃避せず,真正面から立ち向かう』」ことを提案し、具体的なトレーニング方法まで提案している。

理論的であると同時に、非常に実践的である。

この本のキーワードはしょっぱなにでてくる「レジリエンス」、「ハーディネス」であり、その本質は3C姿勢の実現にあるとしている。3Cとは
 ・コミットメント
 ・コントロール
 ・チャレンジ
である。そして、3Cを身につけるための具体的なステップを提案している。さらに、支え、支えられるコミュニケーションのあり方について提言している。

最後に、企業と従業員の問題にも言及している。ここでは、仕事の意味を見出すという点にポイントをおいた提案をしている。

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2006年10月30日 (月)

リーダーシップの5レベル。あなたはどのレベル?

447836094401 ジョン・マクスウェル(宮本喜一訳)「あなたがリーダーに生まれ変わるとき―リーダーシップの潜在能力を開発する」、ダイヤモンド社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

日本ではあまり知られていないが、リーダーシップのグル(権威)であるジョン・マクスウェルのリーダーシップ育成の名著「Developing the leader within you」の翻訳。リーダーシップ育成の方法が体系的にまとめられており、使い勝手の良い本だ。

この本のベースになっているのは、リーダーシップの能力レベル。これがなかなか興味深いので、抜粋しておく。

レベル1:地位

権利。部下が従うのは義務だから

レベル2:相互理解

人のつながり。部下が従うのは、それを望んでいるから

レベル3:成果

結果。部下が従うのは、組織のために積み上げられたリーダーの実績を評価しているから

レベル4:人材育成

再生産。部下が従うのは、リーダーが彼らのためにしたことを、部下自身が評価しているから

レベル5:人間性(人間味)

尊敬。人がついてくるのは、リーダーの人となり、そしてそのリーダーが体現しているものの両方を評価しているから

この階段を昇っていく方法を示している。その示し方としてはTips(断片的な知識)を与えているので、柔軟に使うことができる。まず、自分がどのレベルにあるかを知り、何ができるようになれば次のステップにいけるかを確認し、必要なTipsを読み、実践していく。

そんな方法で使うと非常に役立つ一冊である。また、さすがはジョン・マクスウェルの本だと思えるくらい、読み応えもある。

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2006年10月27日 (金)

イノベーションマネジメントの全てが分かる一冊

456965546701 大浦勇三「イノベーション・ノート―会社が劇的に変わる! 」、PHP研究所(2006)

お奨め度:★★★★

イノベーションマネジメントのポイント(論点)が実に要領よくまとめられた1冊。以下の6つの視点にまとめられている。

・事業戦略は適切か

・実現に向けた仕組み/プロセスは明確か

・必要なコンテンツ(情報・知識・知恵)は十分か

・推進体制は必要か

・人材教育/人材育成は万全か

・外部連携に死角はないか

それぞれの項目につき、さらに5つの中項目にブレークダウンし、それぞれの中項目に対して、5項目の小項目を、1項目1ページで、図表を駆使して視覚的に理解できるように実にうまくまとめられている。また、各項目とも8行ほどの解説があるが、この解説も分かりやすい。

この本を読んで、まず、最初に思いついた用途は、自社のイノベーション能力のチェックである。政府が政策目標にイノベーションを掲げ、担当大臣を置いた。また、経団連でも「イノベート日本」というキャッチフレーズを掲げた。

イノベーションへの関心の高まりは否が応でも増してくるだろう。そんなときに、とりあえず、何か一冊本を読んで、マネジメントとして何をすればよいかを把握したいときに、絶好の一冊だ。

ただ、中は、いわゆる図解的な入門書ではない。図解であるが、内容はかなり本格的なイノベーションマネジメントの解説書であるので、それなりの覚悟をして読む必要があると思うし、自分の関心の持てた項目については、他に参考書を探して深堀する必要があると思う。

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2006年10月26日 (木)

億万長者との会話

487771191001 マイク・リットマン、ジェイソン・オーマン(河本隆行訳)「史上最高のセミナー」、きこ書房(2006)

お奨め度:★★★★

この本、原題は「Conversations with Millionaires」である。著者のマイク・リットマンとジェイソン・オーマンが

ジム・ローン、マーク・ビクター・ハンセン、ジェイ・コンラッド・レビンソン、ジャック・キャンフィールド、ロバート・アレン、シャロン・レクター、マイケル・ガーバー

といった面々に、その成功の秘密をインタビューで解き明かしている。

あなたはこれらのメンバーをどのくらい知っているだろうか?

「ワン・ミニッツ・ミリオネア」のロバート・アレン、「こころのチキンスープ」のハンセンを知らない人はあまりいないだろう。ジム・ローンも超有名人だ。実は、他の面々も、このレベルの成功者である。

その成功者がかなり本音トークをしている。訳者の河本氏はロバート・キヨサキの通訳で有名な人だが、彼のつけたタイトルが「史上最高のセミナー」。河本氏の指摘しているように、ネットで時々見かける彼らのセミナーの料金は数万円である。

それが一冊の本で、しかも、まとめて読める。確かに画期的な本であるし、米国で大ベストセラーになっているのも当然だろう。

内容についてはいずれも、桁外れの成功者の持論であり、確かに面白い。しかし、本当にそれで成功できるかどうかがよく分からない部分がある。僕はこの本に出てくる人のセミナーを受けた経験はないが、このような感覚はおそらく、セミナーでは生じないのだと思う。

その辺りが、この企画の限界だともいえるが、それにしてもお得感のある一冊だ。

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2006年10月25日 (水)

技術者のためのマネジメント入門

453213324601 伊丹敬之, 森健一編「技術者のためのマネジメント入門―生きたMOTのすべて」、日本経済新聞社(2006)

お奨め度:★★★★1/2

仕事柄、エンジニア出身のマネジャーにマネジメントの勉強をすることをお奨めすることが多い。確かにその目的に適う書籍は、日本にも結構あるのだが、視座がマネジメントにある本がほとんどである。つまり、経営の中でどのように技術を役立てていくかという視点がある。

しかし、この本は珍しく、視座が技術にある。技術を中心に経営をしていくにはどうしたらよいかを説明している。技術者に薦めたい本である。

内容もとてもよい。そんなに高度な内容ではないが、必要最小限の問題として、戦略のあり方、マーケティング活動のあり方、組織のあり方、プロジェクトマネジメントなど一通りの経営プロセスの解説がある。同時に、新事業創造、マーケティングコミュニケーション、ビジネスモデルといった事業マネジメントについても触れられている。

書き方も事例を中心にかかれており、実践的である。

特に、素晴らしいと思うのは、日本のMOTの本はなぜかあまり正面からプロジェクトマネジメントを取り上げていない。この本は経営プロセスの一つとして1章を割いて解説されている。拍手したい!

最後に、どうでもいいが、著者もなんとも豪華。編者の伊丹敬之先生、森健一先生は、もちろんだが、常盤文克先生、徳重桃子先生、佐々木圭吾先生、坂本正典先生、宮永博史先生、齊藤友明先生、西野和美先生。

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2006年10月24日 (火)

変化を受け入れる

448900742601 トニー・ブザン(佐藤哲+田中美樹訳)「トニー・ブザン頭の自己変革―未来を築く7つのツール」、東京図書(2006)

お奨め度:★★★★

日本でも昨年、マインドマップの公式ガイドが出版され、トニー・プザンを多くの人が知るようになってきた。そのプザンが書いた自己変革のガイドがこの本。

この本で、プザンは7つのツール

1+変化志向指数

2+ヴィジョンとフォーカス

3+TEFCASモデル

4+マインドマップ

5+メタポジティブ思考

6+変化の達人たち

7+変革日記

を使って、自己変革を行う方法について述べている。書き方は平易だが、内容はかなり概念的であり、また、哲学的ですらある。

マインドマップを読んだ人であれば、マインドマップに託されたプザンの思想

 個人は大きな存在である

 どんな変化でもポジティブなエネルギーになる

といったものを感じ取れるだろう。もちろん、マインドマップを読んでなくても、読めない本ではないが、まず、マインドマップを読み込んでから、本書を読んで、自分の変化を如何に受け入れるかをじっくり考えてみることをお奨めしたい。

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2006年10月23日 (月)

現場主義の真髄

476319708801高原慶一朗「理屈はいつも死んでいる」、サンマーク出版(2006)

お奨め度:★★★★1/2

ユニ・チャームを創り上げた高原慶一郎会長の現場論。自らの考え、ユニ・チャームの社員の考えなど、豊富なエピソードを交えながら、非常にインパクトの強い本になっている。

最近、現場の重要性を説く人は多い。

が、現場をイメージだけで捉えている人も少なくない。現場主義をいうからにはもっとも重要なことは、先入観を持たず、すべてを現場から得ることである。

中村先生は臨床の知という概念を唱得られた。エスノグラフィーに熱心に取り組んでいらっしゃる経営論の先生も多い。現場主義というのは、このような活動のように、現場から謙虚に学ぶことである。

臨床の知

https://mat.lekumo.biz/books/2005/08/post_73ea.html

にも関わらず、現場のイメージを「適当に」作り上げてしまっているケースは多い。コンサルティングをやっていて、「現場ではこうやっている」といわれて、実際に調査するとそんなことはないという経験は結構多い。要するに、現場マネジメントを行うような立場の人が、現場を自分の主張の道具に使っているようなケースが多いのだ。そのようなにおいのする本も多い。

この本は、そんな偽者の現場主義を喝破するようなことがたくさん書いてある。

例えば、ユニ・チャームの話で商品開発を担当している男性社員が、生理用ナプキンをつけて、生活するといったエピソードが出てくる。まさに肌で感じてているわけだ。現場から学ぶというのはまさにこういうことだろう。

この本には、このような現場重視経営のための金言があちこちにちりばめられている。すばらしい本だ。

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2006年10月21日 (土)

偉大なる経営論

B000ion7te01 Harvard Business Review2006年 11月号

 【創刊30周年記念号】偉大なる経営論

お奨め度:★★★★★

ハーバードビジネスレビューの創刊30周年記念号。30年間に発表された名論文の中から30本が採録されている。下にリストがあるので見てほしい。経営学にまったく縁のない人でも4~5人くらいは知っている人が多いのではないかと思う。

ほとんどの論文が実践の中で使われるようになってきた概念を示したものだ。これはすごいことだと思う。かつ、この2~30年の間に新しく生まれたマネジメント手法はほぼ、網羅されている。

つまり、そのくらいハーバードビジネスレビューは実務家のマネジメントに貢献している学術論文誌である。

マネジャーという肩書きのある人、あるいは、将来マネジャーを目指している人、いずれも、この記念号はぜひ持っておき、通勤の行き帰りにでも読んでほしい。

最後に神戸大学の加護野先生の「マネジメントの古典に触れる」という提言がある。この提言も味がある。

ちなみに、東京で本屋を探したが、最初の3件は売り切れだった。よく売れているようだ。

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2006年10月20日 (金)

しびれるマネジメント論

406213582501 天外伺朗「マネジメント革命 「燃える集団」を実現する「長老型」のススメ」、講談社(2006)

お奨め度:★★★★★

この本の第4章はフロー理論について書かれている。「燃える集団」を作る方法をフロー理論で説明しようとしているのだが、その方法を「長老型マネジメント」と読んでいる。

文字通り、長老のようなマネジメントを行うことによってフローを作る。キーワードは包容力、やりすごし、空気のような上司など、管理型のマネジメントとは大きく異なる。また、管理型のマネジメントが形を変えたエンパワーメントとも違う。ガバナンスということをマネジメントの中心課題としない、まさに、日本で古くから行われているマネジメントだ。これをソニーの出身の著者が、井深大のマネジメントを引き合いに出して語っている。

読んでいて、こういう上司のいる職場で仕事をしたいと思う人は多いと思う。しびれる一冊だ。

やり過ごしの効用については、東京大学の

453219135109 高橋伸夫「できる社員は「やり過ごす」、日本経済新聞社(2002)

で非常に面白い説明をされている。この本と併せて読んでみるとよいだろう。

この本、文庫本は2002年だが、単行本の初版は1996年。MBAに関心が高まり、戦略経営、成果主義に注目が集まっていたこのような本を書いた慧眼には本当に感服だ。高橋先生は、加護野、野中といったグルとは違った視点から日本型経営のよさを研究している研究者で、実務家としては注目した一人だ。

もうひとつ。フローについては、この本。

https://mat.lekumo.biz/books/2005/09/post_0a78.html

2006年10月19日 (木)

主導権を握る営業

475691006801 西野浩輝「営業のキーワードは「主導権」―営業はパワーゲージで考えるとよくわかる」、クロスメディアパブリッシング(2006)

お奨め度:★★★★

リクルート出身の著者が、リクルート流の営業を、「主導権」という観点からまとめた本。もちろん、リクルートのやり方そのままということではなく、著者の工夫が数多く含まれている。

第3章では、主導権を取れる営業マンのマインドについて述べている。そのマインドとは

(1)会社・商品に他する自信

(2)営業という仕事へのポジティブイメージ

(3)高いセルフイメージ

(4)プロ意識

の4つだ。さらに、4章では、主導権営業を実現するスキルとして

(1)外見力で印象をよくする

(2)主導権を握るコミュニケーション力

(3)イメージを作れるシナリオ力

(4)自己規律力

という4つである。

さらにまとめの5章では、営業をプロセスをアプローチ、ヒヤリング、プレゼンテーション、クロージングの4つのプロセスに分けて、それぞれ、主導権を握るポイントを述べている。

営業について書いた本だが、内容はステークホルダマネジメントを念頭において読むと非常に興味深い。まさに、ステークホルダに対して主導権を持つにはどうすればよいかと読み替えることのできる内容になっている。プロジェクトマネジメントを担当している人にはぜひ読んでみてほしい。

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