ドロシー・レナード、ウォルター・スワップ(池村千秋訳)「「経験知」を伝える技術 ディープスマートの本質」、ランダムハウス講談社(2005)
お奨め度:★★★★
本書の原書のタイトルであるディープスマート(Deep Smarts)とは、その人の直接の経験に立脚し、暗黙の知識に基づく洞察を生み出し、その人の信念と社会的影響により形作られる強力な専門知識のことを言っている。
本書はディープスマートを如何に計画的に蓄積していくかについて議論した、ナレッジマネジメントの書籍である。
著者は多くの企業の人材開発プログラムには人間の学習方法に関する洞察が欠けていると主張している。目に見える技能や経営知識ばかりを詰め込み、ディープ・スマートを継承する仕組みがなっていないと指摘している。
ディープスマートの蓄積の方法として、システマティックな徒弟制度の有効性を主張している。単に「俺の背中を見て技術を盗め」ではなく、学ぶ者がレセプター(脳内の受動器)を形成しつつ経験させることを促すのである。その方法論が、指導の下での経験、指導の下での観察、指導の下での問題解決、指導の下での実験である。
この発想は、「経験により人を育てる」ことと深く関連している。CCLなどが提唱している経験による学習においても、経験の体系化とシステマティックな指導を中心にしており、その意味で単にナレッジマネジメントの方法論というより、もう少し、深い意味合いのある手法である。
その意味で、注目に値する。
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