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2005年8月

2005年8月30日 (火)

文化をエンジニアリングする

4822244679ギデオン・クンダ(金井壽宏監訳、樫村志保訳)「洗脳するマネジメント~企業文化を操作せよ」、日経BP社(2005)

お奨め度:★★★★★

ハイテク企業のエスノグラフィーとして、クスノマ教授の「マイクロソフトシークレット」と並ぶ名作 " Engineering Culture Control and Commitment in a
high Tech Corporation"の翻訳。こちらは対象企業はDEC。

マイクロソフトシークレットが開発プロセスに注目しているのに対して、こちらは組織、特に、組織文化に注目している。

ギデオン・クンダのつけたタイトル Engineering Culture には2つの意味があるそうである。一つは文字通りに、エンジニアリングに適した組織文化という意味であり、もうひとつはカルチャーをエンジニアリングするという意味。

邦訳にこのようなタイトルをつけた経緯については、監訳者である金井先生が巻末に相当な分量の解説を書かれているが、その中で触れられている。

このエスノグラフィーを読むと、プロジェクトと組織の関係も含めたプロジェクトマネジメントにおいて、組織文化がどのような役割を果たしているか、そして、それをどのように構築していくかが手にとるように分かる。

これから組織の成熟度向上に取り組んでいこうという人にはお奨め。プロジェクトマネージャーの方には、むしろ、マイクロソフトシークレットの方をお奨めする。

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2005年8月28日 (日)

木を見る西洋人 森を見る東洋人

4478910189リチャード・ニスベット(村本由紀子訳)「木を見る西洋人 森を見る東洋人思考の違いはいかにして生まれるか」、ダイヤモンド社(2004)

お奨め度:★★★★1/2

まず、この本の原題は ”The Geography of thought”である。このタイトルも素晴らしいが、訳者の村本さんのつけられたタイトルはなんと素晴らしいのだろうと感動ものだ。

日本の比喩に「木を見て、森を見ず」という比喩がある。広辞苑によると

 細かな点に注意をし過ぎて大きく全体をつかまない

こととある。たぶん、10年くらい前までは、日本人の非常に重要な価値観であったように思うが、今は、あまり言われることがなくなった。

この本では、思考の普遍性に対するパラダイムの議論を、東洋と西洋という切り口からさまざまな視点で行っている。結論としては、普遍性がないということになるが、そこで取り上げられている事象は自分たちの立ち位置を確認するために非常に貴重な視点である。

好川は、第3章にある、自己に関する考察が興味深かったが、その人が興味を持っている事項が一通りを入っているのではないかと思う。

ここでは、米国人は

・ひとはそれぞれ、他者と違う個性を持っている。さらにひとは肝心な点で他者と違っていたいと思っている

・ひとは、だいたいにおいて自分の思うとおりに行動している。そして、自分の選択やこのみによって結果が決まると気分がよい

・・・

というのに対して、東洋では「出るくいは打たれる」というように、成功を集団目標とする傾向があるといった指摘から始まり、実にいろいろなことが指摘されている。

関連記事:森を見るか、木を見るか

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2005年8月26日 (金)

リスクの本質を知る

4621047868Nick W. Hurst(花井荘輔訳)「リスクアセスメント―ヒューマンエラーはなぜ起こるか、どう防ぐか」、丸善(2000)

お奨め度:★★★1/2

ちょっと難しい本だが、読めば、リスクマネジメントが、なぜ、プロジェクトや、あるいは組織で、なかなかうまく行かないかがよく分かるので、そのような問題を抱える人には一読の価値がある本である。

ひとことでいえば、リスクとは何かをきちんと考えずに、見よう見まねでうわべだけのリスクマネジメントを導入しようというところに問題があるというところだ。

特に、3章で

“リスク-工学”
“リスク-人間”
“リスクとシステムおよび文化”

の三つの視点について、リスクをどう定量化しているかを議論しているが、この部分はきちんと読んでみたい。

このような思想をきちんと理解しておくと、今、プロジェクトマネジメントの一貫として行われているプロジェクトリスクマネジメントが効果を発揮しない理由、どうすればよいかという方向性のようなものが見えてくる。

リスクマネジメント、特にPMOのような形でアセスメントに関わる人には読んでほしい1冊である。

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2005年8月24日 (水)

議論と内省と実践

4422100637金井壽宏「ニューウェーブ・マネジメント―思索する経営」、創元社(1993)

お奨め度:★★★1/2

金井先生が若いころの作品集。

マネージャーとしての内省、気づきを促す47の視点を提供している。

管理の基本的スタンスを自問する
唯一最善の組織やリーダーシップはない
人はなぜ変化を求め、変化を恐れるのか

など、まさに、今、問題になっていることが続々と出てくる。10年以上前にこれだけの本を書いたというのは本当に驚きである。もっとすごいことは、それに、金井先生やそのお弟子さんがいろいろと有益な意見を発し続けていることだが、、、

議論と内省と実践を通じて探してほしい「なにか」が並んでいる。これから、自分のマネジメントのスタイルを作っていきたい人は、ぜひ、読んでほしい



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2005年8月17日 (水)

楽観主義で行こう

4061856553マーティン・E.P. セリグマン(山村宜子訳)「オプティミストはなぜ成功するか「新装版」」    講談社文庫(1994)

お奨め度:★★★★

楽観主義が成功しやすい理由を心理学的な見地から書いた本。結構、小難しい本なのだが、途中に、自己診断などが入っており、結構、一挙に読める。

この本は悲観主義者が失敗しやすい理由を説明した後で、楽観主義者が成功しやすい理由を事例を引き出しながら書いているので、結構、納得しながら読める。

中でも興味を引かれるのは、過去のワールドシリーズで勝者となった選手や、選挙に勝利した大統領のコメントなどに着眼し、各人またはチームの楽観度を測り、そこから成功との相関性を探ろうとする部分。
 
この本を最初に読んだのは文庫化直後だったので、10年以上前であるが、経営者を見るときにこのような分析をする癖がついてしまった(笑)。おおむね、あたっている。

ただ、同時に、その間に、その人間に対する世間の「評判」を見ていると、必ずしもよくない。「考えが甘い」、「ポリシーがない」などと、徹底的にこき下ろさないと気がすまないらしい。きっと、日本人は楽観主義者が嫌いなのだと思う。

最近、この視点から注目しているのは小泉首相と、ホリエモン。小泉は冷酷だの、なんだのと言われているが、一番の本質はオプティミストだと思う。これが受け入れられるというのは国民性の変わる兆しか、、、

実は、この本の書評を書こうと思ったのは、来る総選挙で小泉首相がホリエモンにラブコールを送ったというニュースをみたから。注目!

※新装版が出ています。(鈴木)

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天才ファミリー・カンパニー

4344803183二ノ宮知子「天才ファミリー・カンパニー―スペシャル版 (Vol.1)」、幻冬舎コミックス(2003) 全6巻

お奨め度:★★★★

二ノ宮知子という漫画かも知らなかったし、幻冬舎がコミックスを出しているもの知らなかった。しかし、思いっきりはまってしまった。

90年代の終焉からバブルの崩壊の中で、天才高校生がビジネスを立ち上げ、成功するまでを描いたコミックス。非常に取材力と構想力があり、この時期の不良債権化、外資系企業の参入、ITベンチャーの成功などがうまく描かれている。高校生であるところがみそ。

が、それはつまみに過ぎず、人間が自立し、人間らしく生きるということがどういうことかというテーマに対して、強烈なメッセージを送っている。こちらがおそらく、メイン。

その中で、さらに、そのような生き方の中で、ビジネスとは何かということが再定義されている。この辺の構想がすごい。

読んだ後で、このタイトルの意味について考えてみたい!

ちょうど、年代的にライブドアの堀江社長と被っている。彼の動きを見ていると、まさに、このような世界に生きているんだなと思ってしまう。

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2005年8月12日 (金)

混戦(2005年7月ベストセラー)

ビジネス書の杜 7月の月間ベストセラーです。どうしようかと迷っているうちに、8月も中旬になってしましました。

売れる本の数は比較的毎月安定しているのですが、異様に売れる本がばらけてきました。1位のPMBOK3でさえ、売れたのは7冊でした。

5冊が順位で行くと3位なのですが、5冊売れた本が、14冊あります。とりあえず、今月は1位と2位だけお知らせします。

【2005年7月ベスト5】

第1位 A Guide To The Project Management Body Of Knowledge: Official Japanese Translation (7)

        https://mat.lekumo.biz/books/2005/02/a_guide_to_the_.html

第2位 アジャイルプロジェクトマネジメント 最高のチームづくりと革新的な製品の法則(6)

        

https://mat.lekumo.biz/books/2005/06/post_8e2b.html

第3位 多数!?

【今月の1冊】

この本がすばらしいです!PMBOKの中にもうまく収まります。

 

アジャイルプロジェクトマネジメント 最高のチームづくりと革新的な製品の法則

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臨床の知

400430203X僕が極めて大きな影響を受けた本に、

中村雄二郎「臨床の知とは何か」、岩波新書(1992)

という本がある。

科学に代表される近代の知の限界を指摘し、その限界を打破するには、「臨床の知」が必要だということを説いている。エンジニアだった僕がマネジメントの勉強をするのに、神戸大学の金井
壽宏先 生を選んだのは、たぶんにこの本の影響がある(と同時に、この時期に懇意にお付き合いをさせていただいていた、今井賢一先生からも臨床知の重要性を教わっ た)。今でも、状況はあまり変わらないが、少なくとも当時は、マネジメントで臨床知の重要性を説いておられたのは、神戸大学の478850197X金井先生、 暴走族のエスノグラフィー―モードの叛乱と文化の呪縛」という本でデビューされ、臨床的な方法でマネジメントの問題に取り組んでおられた一ツ橋大学の佐藤郁哉先生くらいだった。

その後、もうひとり、強力な臨床知派である一ツ橋大学の沼上幹先生が登場される。ちなみに、沼上先生は「
液晶ディスプレイの技術革新史:行為連鎖システムとしての技術」という論文で学位をとられ、それまでの研究体験から、行為の経営学―経営学における意図せざる結果の探究」という4561151265すばらしい臨床知論を書かれている。両方とも難物だが、機会があれば、読んでみてほしい。

話が脱線したが、中村先生の指摘は

=====
科学に代表される〈近代の知〉は大きな成果を生んだ。しかし今日、その限界も指摘されはじめている。人間存在の多面的な現実に即した〈臨床の知〉が構築されねばならない。
=====

といったものである。

臨床の知は、人間の多面的現実に即した知である。科学というのは、現象を捉えていると考えられ勝ちであるが、社会システムが複雑化し、そこに人間という構成要素が密接に絡んでくると、確かに、現象が多面化してくるため、現象を捉えるのは難しい。

このような問題を興味深く書いたのが、養老
孟司先生の「バカの壁」である。

さて、人間系が絡む問題解決においては、一刀両断のソリューションというものは存在しないことが多い。これは感覚的にお分かりいただけると思う。

そこで何が出てくるか。エスノグラフィーである。エスノグラフィーとは

 フィールドワークという調査の方法、或いは、その調査の全プロセス

である。

組織では、今まで、あまりにも観念的に問題解決を行ってきた。もちろん、現場では現象がある。ところが、それが組織の中で意思決定層に伝わる中で抽象化され、その抽象化された問題に対して、問題解決を行ってきたのだ。これは、しばしば、経営的問題と呼ばれる。

現場感覚のある人はこれが如何に無為なものかよく分かるだろう。それゆえに、問題が複雑化、多面化してくると、そもそも、抽象化そのものが難しく、また、抽象化したところでまともな答えは出てこない。これが、別の記事「答えのない問題に如何に対処するか」で指摘したことだ。

そこで必要になるのが、臨床知に基づく問題解決だ。そのための有力な方法論がエスノグファフィーであり、ディープスマートである。

ディープスマートについては最近、よい本が翻訳された。
「経験知」を伝える技術 ディープスマートの本質」という本である。

エスノグラフィーについては、まずは、佐藤郁哉先生の

46411616824788507889組織と経営について知るための実践フィールドワーク入門

という本を読んでみてほしい。
その上で、もう少し、深い知識を得たいと思ったら、同じく佐藤先生の本で

フィールドワークの技法―問いを育てる、仮説をきたえる

という本がある。これがお奨めだ。


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2005年8月10日 (水)

チームマネジメントのバイブル

4478430098ジョン・R. カッツェンバック、ダグラス・K. スミス(吉良 直人、横山 禎徳)「「高業績チーム」の知恵―企業を革新する自己実現型組織」、ダイヤモンド社(1994)

お奨め度:★★★★1/2

チームマネジメントの金字塔ともいえる1冊。

チームとは何かという議論から始まり、如何にチームを作っていくか、リーダーシップはどうあるべきか、チームの業績を如何に計測すべきかなど、チームマネジメントに関するあらゆる問題に対して、現在のチームマネジメント理論の下敷きとなる理論を唱えている。

ドラッカーが「マネジメントを発明した」とすれば、カッツェンバックは「チームマネジメントを発明した」といえる。この1冊を読まずして、チームマネジメントを語るべからず!

# この本は、例によって、絶版されています。さすがダイヤモンド社!

アマゾンではずっと品切れでしたが、たまたま、今、見たら、古本(ユーズド)が出品されていたので、記事を書きました。ただし、一番安いのが、6300円です。ちなみに定価は2900円です。これも良書の証明でしょう!

品切れになっていたらすみません。

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ファシリテーションの威力

B000ami0be01 Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 09月号

特集:ファシリテーション型リーダーシップ

詳細目次はこちら(アマゾンではありません。ダイヤモンド社のサイトですので、ご注意ください)。

好川が参考になった記事ベスト3

(1)ジェフ・ワイ、ジョナサン・ヒューズ「軋轢の解決が協働を育む」

真のコラボレーションを実現し、異なる視点や能力を生かすには「コンフリクト」に注目しなければならない。コンフリクトを阻害要因とみるよりも、むしろ、積極的に使い、マネジメントをしていく必要がある。この記事では、コンフリクトマネジメントの方法論について議論している。

(2)エイドリアン・J・スライウォツキー、ジョン・ドルジク「「戦略リスク」を体系的に管理する」

リスクマネジメントが進歩する中で、事業を混乱させ、企業価値を破壊しかねない「戦略リスク」に対しては、いまだに無防備である。この記事では、戦略リスクをマネジメントする方法について論じている。

(3)リチャード・タナー・パスカル、ジェリー・スターニン「ポジティブ・デビアンス:「片隅の成功者」から変革は始まる」

「ポジティブ・デビアンス」と呼ばれる「ほかの社員とは違うやり方でより優れた成果を上げている社員や手法」は組織の中に必ず存在する。社員たちにこのポジティブ・デビアンスをみずから発見させ、彼ら自身の意志と力で社内に浸透させることこそ、企業を変革する有効な方法である。

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