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2013年1月17日 (木)

【プロデューサーの本棚】イノベーションを実行する―挑戦的アイデアを実現するマネジメント

475712287Xビジャイ・ゴビンダラジャン、クリス・トリンブル(吉田 利子訳)「イノベーションを実行する―挑戦的アイデアを実現するマネジメント」、エヌティティ出版(2012)


◆イノベーションのイメージと実態

イノベーションという言葉が頻繁に使われるようになって、どうもイメージに踊らされている感がある。その中で最たるものは、よいアイデアが出てきたらイノベーションは成功したも同然だというイメージだ。

このイメージは違うというのはちょっと考えれば分かる。たとえば、商品を考えてみよう。これまでになかった商品のアイデアが生まれた。この商品がイノベーションになるには、商品を作るための技術開発、生産方法、流通方法など、さまざまなハードルを越えなくてはならない。それらに比べると、商品自体のアイデアを作りだすのはそんなに難しいことではないかもしれない。

言い換えると、よいアイデアというのはイノベーションとして実現され、成功した素のアイデアであり、アイデア自体を絶対的に評価できるものではない。僕は一時、公的機関の目利きの仕事をしていたことがあるが、目利きというのはアイデア自体の評価ではなく、実現方法の評価に近い。

さらにいえば、イノベーションとして成功するには、生産能力が鍵になるかもしれないし、流通能力が鍵になるかもしれない。つまり、あるアイデアを実現できるかどうかが、その組織の基本能力に依存することはよくあることだ。たとえば、ホンダが1994年に、生活創造車という新しいコンセプトで、オデッセイという車を開発した。乗用車ベースのミニバンとして、セダン同等の運動性能を持ち、なおかつセダンよりも広い室内空間を売りにしていたが、ワンボックスカーと比べて特長的である車高の低い形状にしたのは生産ラインの制約があったからだという。オデッセイの場合、組織能力の制約がよい方に作用したわけだが、画期的な商品を開発できても生産できなければイノベーションは起こらない。

この本では、組織既存業務の遂行能力を「パフォーマンスエンジン」と呼んでいるが、パフォーマンスエンジンとどのような関係性を持つかは、イノベーションの成功に大きな影響を与える。

全く新しいコンセプトの商品を開発して、新しい工場とサプライチェーンを作り、新しい流通ネットワークを作っていくということが皆無ではないが、ベンチャーの初期を除けば極めて稀である。

その意味で、イノベーションを既存の事業と切り離して行えるというのは幻想である。この本では、イノベーションを組織の中でどのように行っていけばよいかについて、いくつかの成功事例を分析しながら、体系的にまとめている。

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2012年8月22日 (水)

【プロデューサーの本棚】デザイン・ドリブン・イノベーション

4496048795ロベルト・ベルガンティ(佐藤 典司監訳、岩谷 昌樹、八重樫 文、立命館大学経営学部DML訳)「デザイン・ドリブン・イノベーション」、同友館(2012)

イノベーション論のバイブルの一冊がやっと翻訳された。ロベルト・ベルガンティのデザイン・ドリブンイノベーションである。

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2012年8月15日 (水)

【プロデューサーの本棚】ハーバード・ビジネス・レビュー 2012年 09月号 「最強チームをつくる」

B008OXAPJQHarvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年09月号
「最強チームをつくる」

今月のハーバードビジネスレビューはチームマネジメントの特集です。過去のチームマネジメントの重要な論文の大半はハーバードビジネスレビューから生まれているのではないかと思いますが、この特集も読みごたえがあります。

中でも、エイミー・エドモンドソン教授の論文は新しい視点を与えるもので、非常に示唆に富んでいます。

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2012年7月11日 (水)

【プロデューサーの本棚】ハーバード・ビジネス・レビュー 2012年 08月号 「イノベーション実践論」

B008D3GAWSHarvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 08月号
「イノベーション実践論」


ハーバードビジネスレビュー、待望のイノベーション特集です。読み応えがある論文が並んでいます。「模倣の経営学」の井上先生の論文も採録されています。

じっくり読んでみてください。

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2012年5月31日 (木)

【プロデューサーの本棚】ホールシステムアプローチ

4532317290香取 一昭、大川 恒「ホールシステム・アプローチ―1000人以上でもとことん話し合える方法」、日本経済新聞出版社(2011)

ちょっと古い本だが、仕事の関係で、本棚から引っ張り出してきて読んだので、紹介。

香取さん、大川さんというホールシステムアプローチのエバンジェリストの書いた概説本。まず、対話(ダイアログ)に関するかなり深いレベルでの解説がある。この本の中では、この部分が一番読みごたえがあるし、実際にホールシステムアプローチを実践している組織でも、あまりできていないこともあるので、真剣に読むといいだろう。

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2012年5月18日 (金)

【プロデューサーの本棚】デザイン思考と経営戦略

4757122942奥出直人「デザイン思考と経営戦略」、エヌティティ出版(2012)

デザイン思考の道具箱」の奥出直人先生の新著。デザイン思考を経営とどのように結びつけるかを議論した一冊。

問題意識として、デザイン思考のワークショップを2年くらい続けて、イノベーションに値するアウトプットを出しても、経営的な意思決定ができず、無駄に終わってしまうことが多いという経験があるそうだ。

書籍の作りとして、1章は戦略経営の基本的な説明をし、デザイン思考をうまく戦略経営の中に取り込んでいる、GEやP&Gとの比較で、多くの企業がデザイン思考をなぜ、うまく活用できないのかを指摘している。

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2012年4月 6日 (金)

【プロデューサーの本棚】インプロ―自由な行動表現

5~6年前からなんとなく気になっているテーマにインプロ(即興劇)がある。それで、なんとなく情報収集をし、ある人のインプロ研修を共同提案したりしていたのだが、2月11日の野村さんの「ゲームストーミング」のワークショップのエクスサイズにインプロが入っていて、様子を見ていたら、これはすごいと思い、体系的に使い方を考えようと決心した。

4845907011調べていたら、東京学芸大学の高尾隆先生がインプロを教育の中で創造性の開発に活用することを研究されていることが分かった。それで、

高尾 隆「インプロ教育―即興演劇は創造性を育てるか?」、フィルムアート社(2006)

という本を読んでみた。その高尾先生が、大人の学びをテーマに、企業における教育でさまざまな試行をされている中原先生とのコラボレーションで作られた本

4385365636高尾 隆、中原 淳「Learning × Performance インプロする組織  予定調和を超え、日常をゆさぶる」、三省堂(2012)

を買おうと思ってアマゾンのページを開いたら、すごい本を見つけてしまった。とりあえず、高尾先生の本は後回しにして、こちらを速攻で読んだ。



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2012年4月 2日 (月)

【プロデューサーの本棚】〈先取り志向〉の組織心理学--プロアクティブ行動と組織

4641173850古川 久敬、山口 裕幸編集「〈先取り志向〉の組織心理学--プロアクティブ行動と組織」、有斐閣(2012)

◆リアクティブとは

組織における「プロアクティブ」をテーマにした本。大学の研究者の研究成果に基づく共著なので、表現は固いが、内容は意外と実践的である。

プロアクティブに対する言葉は、リアクティブである。この本でいうリアクティブとは、

規則への順応、従前からの活動の反復継続、ほかからの指示や要請への対応、苦情や不具合への対処

などのことをいう。組織において、リアクティブな活動が確実に、安定的にできることは基本であり、かつきわめて重要である。

組織が社会に認められ、一定の成果を生み続けるためには、以下のことが必須である。

(1)自らの社会的責任を自覚し、コンプライアンスを遵守すること
(2)組織内外の現在を意識し、構想した課題や目標を、着実な活動によって達成すること
(3)組織内外の未来を見越して、これまでの前提を問い直し、発想を更新し、新たに取り組む課題や目標を定め、体制や活動、そして成果物の革新を図ること
(4)遭遇したリスク事象から、組織としての定常の活動へ、整然かつ迅速に復元できること

の4つがある。このうち、(1)、(2)はリアクティブな活動の重要性を示している。また、(4)もリアクティブな活動の重要性を示している。

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2012年3月 8日 (木)

【プロデューサーの本棚】「経験学習」入門

4478017298松尾 睦「「経験学習」入門」、ダイヤモンド社(2011)

◆あまりない経験学習の形式知

日本は経験主義である。経験にこだわって新しいことができないという実情を見ると、経験偏重だといってもよいだろう。その是非の議論をするつもりはないが、一つ思うのは、経験主義の割には、経験から学ぶノウハウを持たない人が多いし、そもそも、その方法は形式知化、言語化されていない。

その中で、例外的に形式知化されるのが「失敗経験」に対するもので、畑村洋太郎先生などの尽力で、「失敗学」として学問体系化されている。

それ以外の分野では、経験に学ぶことを主テーマにした議論というのはあまりなされていないが、その中で、プロフェッショナルの経験による成長プロセスを解明する研究をされていたのが、本書の著者である松尾睦先生である。松尾先生の著書の中で、

松尾 睦「経験からの学習:プロフェッショナルへの成長プロセス」、同文舘出版(2006)

という本があるが、この本は何度読んだかわからない。非常に示唆の多い本である。この本の対象はタイトルの通り、プロフェショナル人材であるが、もう少し、範囲を広げ、ビジネスマンやマネジャーにおける経験学習について論じたのが本書だ。

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2012年2月28日 (火)

【プロデューサーの本棚】ひらめきを計画的に生み出す デザイン思考の仕事術

4534045727棚橋 弘季「ひらめきを計画的に生み出す デザイン思考の仕事術」、日本実業出版社(2009)

デザインの方法を仕事に取り入れた仕事術「デザイン思考の仕事術」について紹介した本。デザイン思考を仕事に取り入れると、

・今まで見えなかったものが見えるようになる
・結果を早く出せるようになる
・解決できなかった問題が解決できるようになる
・複雑な問題への対処も可能になる

といった変化が生まれるという。


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