【プロデューサーの本棚】ひらめきを計画的に生み出す デザイン思考の仕事術
棚橋 弘季「ひらめきを計画的に生み出す デザイン思考の仕事術」、日本実業出版社(2009)
デザインの方法を仕事に取り入れた仕事術「デザイン思考の仕事術」について紹介した本。デザイン思考を仕事に取り入れると、
・今まで見えなかったものが見えるようになる
・結果を早く出せるようになる
・解決できなかった問題が解決できるようになる
・複雑な問題への対処も可能になる
といった変化が生まれるという。
まず、デザイン思考の一般的な紹介として、IDEOの事例と仕事の方法を取り上げている。IDEOの事例で取り上げているのは、バンクオブアメリカの依頼でデザインした「キープ・ザ・チェンジ」というサービス。このサービスはデビットカードで買い物をすると、セントの端数をドルに切り上げ、普通口座から引き落とし、差額を貯金口座に振り込むというもの。このサービスが生まれるに当たって、IDEOは2ヶ月の間、対象となる12家族の生活を起床から就寝まで観察し、
・多くの家族は、出費をセントではなく、ドルでフォローしている
・多くの家族は、貯金をするのに四苦八苦している
というニーズを発見した。ここから、ブレインストーミングによるアイデアをだし、プロトタイピングを行い、生まれてきたのが「キープ・ザ・チェンジ」だったという。
IDEOの事例から分かるように、デザイナーの仕事の方法の中にも、一般的な仕事の方法として形式知化できるものはあり、その方法とプロセスを体系化して学べるようにしたのが、デザイン思考の仕事術である。
仕事の方法としては、「キープ・ザ・チェンジ」でも出てきた、
(a)フィールドワーク
(b)ブレインストーミング
(c)プロトタイピング
を始め、
(d)ワークモデル分析
(e)KJ法
(f)ペルソナ法
(g)シナリオ法、
(h)ユーザテスト法
などの方法がある。これらの方法に共通しているのは、人々の暮らす環境におけるさまざまな行動、その目的やゴール、暮らしの中で関わるもの物や人、かかわりの中で生まれて問題や必要性といったものの構造や関係性に注目し、暮らしの現場、仕事の現場での人間と物事の関係性をよい状態にするにはどうしたらよいかを考えるためのツールだという点だ(p33)。
プロセスとはして、思考レベル(企業の場)と経験レベル(生活の場)の行き来で構成されるプロセスで問題発見と問題解決に分かれる。問題発見では
(0)問題提起(思考):探索の開始
(1)内部探索(具体化):内部で認識している問題の整理
(2)フィールドワーク(経験):利用者の実態と観察&インタビュー
(3)ワークモデル分析(概念化):KJ法で調査データを構造化し問題の全体像を把握
(4)ペルソナ/シナリオ(思考):利用者タイプごとにゴールを満たすシナリオを準備
というプロセスを実行する。これを受けて問題解決では、
(5)要件定義(思考):利用者および組織の要求を比較、優先条件をつける実施要件の絞り込み
(6)プロとタイミング(具体化):問題解決の具体案を検討
(7)ユーザテスト(経験):作成したデザイン案を利用者に評価してもらい問題点を抽出
(8)改善(概念化):テストで明らかになった問題点を改善
(9)思考(思考):最終案を決定し、プランを実行
というプロセスを実行する。
これらの方法やプロセスを活用して、デザイン思考で仕事を行うわけであるが、それ以前の基本姿勢を7つ、上げている。
第1条 分かることよりわからないことにこだわる
第2条 オフィス内の論理ではなく、外の世界の現実に従う
第3条 他人の意見や作ったものを否定しない。厭ならよりよい代替案を示す
第4条 頭の中だけで考えない。言葉や形を外部化して組み立てる
第5条 仲間内で群れない。異分野の人と積極的に接する
第6条 先人に学ぶ。古きものに学ぶ。今に囚われない広い視点を持つ
第7条 グループワークを重視する。協力を惜しまない
以上を基本的な枠組みとして、第2章以下では、
・情報収集術
・企画発想術
・問題解決法
・職場作分術
をテーマに、方法の具体的な使い方、方法の発案者の使い方、著者のノウハウを丁寧に説明している。
情報収集術では、フィールドワークとワークモデル分析について説明されている。企画発想術では、KJ法とペルソナ法について解説されている。また、問題解決法では、プロトタイピング、ユーザテスト法、デザイン案の改善について、ゴールダイレクテッドデザインのプロセスを踏襲した問題解決のプロセスを説明している。最後の職場作分術においては、
・個々の人間の仕様におけるコンテキスト
・言語や人間のコミュニケーションあるいは社会におけるコンテキスト
・人工物のライフサイクルにおけるコンテキスト
・ほかの人工物との間のエコロジーにおけるコンテキスト
という4つのコンテキストにおいて人と物の間にどのような関係性が生まれるのかを理解する方法として、在点という考え方を紹介している。
さらに実践力をつけるために、場と作法をどのように持てばよいか、さらにはプロジェクトをどのように進めていけばよいかなどについて説明されている。
デザイン思考の仕事術のプロセスのごとく、思考と経験を行き来する方法でデザイン思考を解説しており、読むのに慣れてくると、理論と実践を紐付ながら学べるので、デザイン思考の実践的なスキルの身につく本である。
・多くの家族は、出費をセントではなく、ドルでフォローしている
・多くの家族は、貯金をするのに四苦八苦している
というニーズを発見した。ここから、ブレインストーミングによるアイデアをだし、プロトタイピングを行い、生まれてきたのが「キープ・ザ・チェンジ」だったという。
IDEOの事例から分かるように、デザイナーの仕事の方法の中にも、一般的な仕事の方法として形式知化できるものはあり、その方法とプロセスを体系化して学べるようにしたのが、デザイン思考の仕事術である。
仕事の方法としては、「キープ・ザ・チェンジ」でも出てきた、
(a)フィールドワーク
(b)ブレインストーミング
(c)プロトタイピング
を始め、
(d)ワークモデル分析
(e)KJ法
(f)ペルソナ法
(g)シナリオ法、
(h)ユーザテスト法
などの方法がある。これらの方法に共通しているのは、人々の暮らす環境におけるさまざまな行動、その目的やゴール、暮らしの中で関わるもの物や人、かかわりの中で生まれて問題や必要性といったものの構造や関係性に注目し、暮らしの現場、仕事の現場での人間と物事の関係性をよい状態にするにはどうしたらよいかを考えるためのツールだという点だ(p33)。
プロセスとはして、思考レベル(企業の場)と経験レベル(生活の場)の行き来で構成されるプロセスで問題発見と問題解決に分かれる。問題発見では
(0)問題提起(思考):探索の開始
(1)内部探索(具体化):内部で認識している問題の整理
(2)フィールドワーク(経験):利用者の実態と観察&インタビュー
(3)ワークモデル分析(概念化):KJ法で調査データを構造化し問題の全体像を把握
(4)ペルソナ/シナリオ(思考):利用者タイプごとにゴールを満たすシナリオを準備
というプロセスを実行する。これを受けて問題解決では、
(5)要件定義(思考):利用者および組織の要求を比較、優先条件をつける実施要件の絞り込み
(6)プロとタイミング(具体化):問題解決の具体案を検討
(7)ユーザテスト(経験):作成したデザイン案を利用者に評価してもらい問題点を抽出
(8)改善(概念化):テストで明らかになった問題点を改善
(9)思考(思考):最終案を決定し、プランを実行
というプロセスを実行する。
これらの方法やプロセスを活用して、デザイン思考で仕事を行うわけであるが、それ以前の基本姿勢を7つ、上げている。
第1条 分かることよりわからないことにこだわる
第2条 オフィス内の論理ではなく、外の世界の現実に従う
第3条 他人の意見や作ったものを否定しない。厭ならよりよい代替案を示す
第4条 頭の中だけで考えない。言葉や形を外部化して組み立てる
第5条 仲間内で群れない。異分野の人と積極的に接する
第6条 先人に学ぶ。古きものに学ぶ。今に囚われない広い視点を持つ
第7条 グループワークを重視する。協力を惜しまない
以上を基本的な枠組みとして、第2章以下では、
・情報収集術
・企画発想術
・問題解決法
・職場作分術
をテーマに、方法の具体的な使い方、方法の発案者の使い方、著者のノウハウを丁寧に説明している。
情報収集術では、フィールドワークとワークモデル分析について説明されている。企画発想術では、KJ法とペルソナ法について解説されている。また、問題解決法では、プロトタイピング、ユーザテスト法、デザイン案の改善について、ゴールダイレクテッドデザインのプロセスを踏襲した問題解決のプロセスを説明している。最後の職場作分術においては、
・個々の人間の仕様におけるコンテキスト
・言語や人間のコミュニケーションあるいは社会におけるコンテキスト
・人工物のライフサイクルにおけるコンテキスト
・ほかの人工物との間のエコロジーにおけるコンテキスト
という4つのコンテキストにおいて人と物の間にどのような関係性が生まれるのかを理解する方法として、在点という考え方を紹介している。
さらに実践力をつけるために、場と作法をどのように持てばよいか、さらにはプロジェクトをどのように進めていけばよいかなどについて説明されている。
デザイン思考の仕事術のプロセスのごとく、思考と経験を行き来する方法でデザイン思考を解説しており、読むのに慣れてくると、理論と実践を紐付ながら学べるので、デザイン思考の実践的なスキルの身につく本である。
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