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2012年7月11日 (水)

【プロデューサーの本棚】ハーバード・ビジネス・レビュー 2012年 08月号 「イノベーション実践論」

B008D3GAWSHarvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 08月号
「イノベーション実践論」


ハーバードビジネスレビュー、待望のイノベーション特集です。読み応えがある論文が並んでいます。「模倣の経営学」の井上先生の論文も採録されています。

じっくり読んでみてください。

■資源配分の黄金比率
「イノベーション戦略の70:20:10の法則」
バンシー・ナジー、モニター・グループ パートナー
ジェフ・タフ、モニター・グループ パートナー

<概要>
優れたイノベーション実績を誇る企業は、「中核的イニシアティブ」「隣接イニシアティブ」「転換的イニシアティブ」のバランスを事業全体で適正に保ち、これら3つのレベルのイニシアティブを、まとまりのある全体の一部としてマネジメントするツールと能力を備えている。時間、予算、注目度、評判を競って、バラバラに実施されるその場限りの取り組みの寄せ集めから自社の未来が切り開かれることを期待する代わりに、「トータル・イノベーション」に向けたマネジメントを実践している。  本稿では3つのイノベーション・レベルに対する資源配分比率と、株価で測るパフォーマンスの向上に、有意な相関があるかを調査した結果、一つのパターンが明らかになった。イノベーション活動の約70%を中核的イニシアティブに、20%を隣接イニシアティブに、10%を転換的イニシアティブに割り振る企業は、同業他社のパフォーマンスを上回り、概して10~20%高いPER(株価収益率)を達成していたのである。

■グローカリゼーションとは明らかに異なる
「リバース・イノベーション 実現への道」
ビジャイ・ゴビンダラジャン、ダートマス大学 タック・スクール・オブ・ビジネス 教授

<概要>
近年話題の「リバース・イノベーション」は、単に新興国市場向けに設計された製品を取り上げ、それを先進国で売ることに留まらない。むしろ、企業そのものを変革するものである。それゆえ、実行に当たっては、内部からの軋轢も多い。
世界的オーディオ・メーカー、ハーマンは、大胆かつ慎重に事を進めた成功事例である。新興国市場を熟知した現地リーダーに大きな権限を与える一方、その先進的な試みを全社でサポートできるようトップは細心の注意を払っている。
そうしたマネジメントの妙があったからこそ、ハイエンド顧客への対応に匹敵する情熱を持って、インド、中国、東南アジアをはじめとするローエンドへの道を切り開くことが可能となった。
リバース・イノベーションには、従来のグローカリゼーションとまったく異なる発想とマネジメントが必要である。

■過去の失敗にも技術やアイデアの種がある
「低予算イノベーションのすすめ」
ランス A.ベッテンコート、ストラテジン 戦略アドバイザー
スコット L.ベッテンコート、ガードマンUSA CEO

<概要>
イノベーションというと、何もかも新しく開発しなければ、と気負ってしまいがちだが、必ずしもそうではない。過去の企画や既存商品のなかにも、見過ごされてきた萌芽がある。
環境や顧客ニーズは常に変化するものであり、それゆえ、過去と異なる視点であらためて評価し直すことで、十分に新たなソリューションが生まれるのだ。
本稿では、それら自社内にすでに存在する「掌中のイノベーション」を体系的に探すための6つの方法を提示する。
レインバード、リョービ、マイクロソフトなどの成功事例が物語るように、過去の蓄積の棚卸しによるイノベーションは、一から開発するよりも低リスクであり、しかも、資源やコストを抑えつつ、迅速に新製品を市場に投入できる。
予算上の制約が厳しいこの時代にこそ試すべき方法である。

■ニトリ、ワールド、ポイントの事例に学ぶ
「模倣からイノベーションが生まれる」
井上達彦、早稲田大学商学学術院 教授

<概要>
絵画の巨匠パブロ・ピカソは「優れた芸術家は真似る。偉大な芸術家は盗む」と言った。
画期的、独創的といわれる製品やサービスであっても、その誕生過程には模倣のプロセスがあるものだ。模倣というと「猿真似」と揶揄されるように、独自性から最もかけ離れた言葉のように感じられる。
しかし、その一方で、古来、「学ぶ」の語源は「真似ぶ」にあるとして、模倣は創造の母であるともいわれる。創造性から最もかけ離れているようで、模倣は創造とは逆を行くものではない。イノベーションの代表的企業といわれるアップルも、模倣を大切にしてきた企業の一つである。
本稿では、ニトリ、ワールド、ポイントの事例から、模倣からイノベーションを生み出す手法を紹介する。


■製造プロセスでの効率性は通用しない
「製品開発をめぐる6つの誤解」
ステファン・トムク、ハーバード・ビジネス・スクール 教授
ドナルド・ライナーセン、ライナーセン・アンド・アソシエーツ 社長

<概要>
製品開発マネジャーの大半は、期限までに予算内でプロジェクトを遂行しようとして四苦八苦している。経営資源はけっして十分ではないが、上司からはスケジュールを守って期待通りの製品に仕上げるよう求められる。このため製品マネジャーは部下たちに、よりいっそうコストを切り詰め、詳しい計画書をつくり、スケジュールの変動と無駄を最小限に抑えるようせっつく。
しかし、このやり方は、製品開発の分野では実は逆効果になりかねない。製品開発と製造プロセスは、根本から異なる。モノの製造では繰り返し作業が多く、活動は適度に予測がつきやすい。一方で製品開発では独特の作業が多く、製品仕様は猫の目のように変わる。これら重要な違いを軽視することから誤解が生じ、製品開発プロジェクトのプランニング、遂行、評価に悪影響を及ぼしている。
本稿では、製品開発をめぐる6つの誤解を掘り起こし、誤解から生まれる問題を克服する方法を紹介する。


■飛躍的新製品を設計する秘訣
「ひらめきは組織的に生み出せる」
ロベルト・ベルガンティ、ミラノ工科大学 スクール・オブ・マネジメント 教授

<概要>
インターネットの進展によって、我々はあふれんばかりのアイデアとソリューションを自由に享受できる世界に生きている。ここで重要なのは、新技術を他社に先駆けて開発することではなく、その新技術が切り拓くであろう未開拓市場の巨大さに最初に気づくことである。
たとえば、任天堂、アップル、スウォッチは、他社が開発した新技術を元に、最も有意義かつ最大の利益を生み出せるような製品を開発した。我々はこれらの製品を生み出した企業の戦略を「テクノロジー・エピファニー戦略」と呼んでいる。エピファニーとは「物事の本質を見抜く洞察力」を意味し、一般的には「独創的な天才がある時突然思いつく直観的なひらめき」であると理解される。しかし実は、企業が計画的・組織的に実現できるものである。
本稿ではフィリップス・エレクトロニクスの先進事例を取り上げ、同社がいかにして、ユーザーにまったく新しい経験を提供する製品開発を組織的に実現したかを紹介する。


■特許件数だけでは測れない
「R&D投資を最適化する指標」
アン・マリー・ノット、ワシントン大学 オーリン・ビジネス・スクール 教授

<概要>
これまで、企業業績や時価総額との関連性を検証するR&Dの有効性を評価するよい指標がなかった。指標には「均一性」(どのような状況であっても同じように解釈できる)、「普遍性」(すべての企業に当てはまる)、「信頼性」が欠かせないが、これまでよく用いられてきた特許件数を例に取れば、イノベーションのすべてを特許として申請するわけではない、またその多くが商業化されない、さらに利益を予測することも難しいなど、欠点が多かった。
本稿で提示された新しい指標RQは、経済学で使われてきた資本と労働力の生産性を分析する式をR&Dに当てはめたものである。売上高、有形固定資産、人件費、R&D支出のデータを入れ、回帰分析と対数変換によりRQが求められる。
筆者たちがアメリカで上場しているすべての企業について分析したところ、R&D投資は不足していることがわかった。RQの示す最適値にR&D投資を増やすと、時価総額は何と1兆ドルも増えることが判明したのである。

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