【プロデューサーの本棚】ホールシステムアプローチ
香取 一昭、大川 恒「ホールシステム・アプローチ―1000人以上でもとことん話し合える方法」、日本経済新聞出版社(2011)
ちょっと古い本だが、仕事の関係で、本棚から引っ張り出してきて読んだので、紹介。
香取さん、大川さんというホールシステムアプローチのエバンジェリストの書いた概説本。まず、対話(ダイアログ)に関するかなり深いレベルでの解説がある。この本の中では、この部分が一番読みごたえがあるし、実際にホールシステムアプローチを実践している組織でも、あまりできていないこともあるので、真剣に読むといいだろう。
そのあと、
(1)ワールドカフェ
(2)AI
(3)フューチャーサーチ
(4)OST
の4つの手法について、概説、原則や理論的背景、進め方、留意点などが簡潔にまとめらている。
ワールドカフェは、よく知られているが、カフェのようなリラックスできる環境の中で、テーマに集中した話し合いを重ねることにより、多様なアイデアを結び付け、深い相互理解や知識を生み出す対話の手法である。
AIは問題点や欠陥などのネガティブな面も含めて、人や組織のありのままをみつめ、それを肯定的に受け入れた上で、未来の可能性を探求し、実現するための活動である。
フューチャーサーチは、複雑な課題に対して、関係者が一堂に会して、共通のよりどころを探し、より良い未来の実現に向けて協力しあう方法を探求する方法である。
最後のOSTは重要な課題について、関係者を一堂に集めて、参加者が解決したい課題や議論したい課題を自ら提案し、自主的にスケジュールを決めて、対話を重ねていく手法である。
それぞれに特徴があり、使い分けなどもある程度、分かる。ただ、この本だけで、これらの手法を取り入れた活動をするには厳しいものがあるので、それぞれ、専門の本を読むのがいいだろう。
ちなみに、この4つの手法については、それぞれ、開発者の書籍の翻訳が出ており、以下のとおりだ。
アニータ ブラウン、デイビッド アイザックス、ワールド・カフェ・コミュニティ(香取 一昭、川口 大輔訳)「ワールド・カフェ~カフェ的会話が未来を創る」、ヒューマンバリュ(2007)
マーヴィン・ワイスボード、サンドラ・ジャノフ(ヒューマンバリュー編集、香取一昭訳)「フューチャーサーチ ~利害を越えた対話から、みんなが望む未来を創り出すファシリテーション手法」、ヒューマンバリュー(2009)
ダイアナ・ホイットニー( ヒューマンバリュー編訳)「ポジティブ・チェンジ~主体性と組織力を高めるAI」、ヒューマンバリュー (2006)
ハリソン・オーエン(ヒューマンバリュー編訳)「オープン・スペース・テクノロジー ~5人から1000人が輪になって考えるファシリテーション」、ヒューマンバリュー(2007)
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