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2007年8月20日 (月)

厳しいスケジューリングで使えるノウハウ満載!

4062810999_2 野村正樹「鉄道ダイヤに学ぶタイム・マネジメント」、講談社+α文庫(2007)

お奨め度:★★★★1/2

あまり知られていないが、昨年、発表されたPMIの標準に

1930699840 Project Management Institute「Practice Standard for Scheduling」、Project Management Institute(2007)

がある。内容的にはPMBOKのスケジューリングマネジメントをベースにして、スケジューリングのさまざまな工夫(プラクティス)を体系的に整理してあるので、スケジュールを作る際にも便利だし、また、暇なときに目を通しておくと、PMコンピテンシーの向上にもなるお奨めの一冊である。

で、実はこの記事のお奨め本はこの本ではない。野村正樹さんが書いた「鉄道ダイヤに学ぶタイム・マネジメント」。この本はそのタイトルのとおり、鉄道ダイヤで使われているプラクティスを説明し、ビジネスやプロジェクトのスケジューリング(タイムマネジメント)に応用しようというもの。これがなかなか、よい。例えば、多忙に対応するプラクティスとして

・同じ種類の仕事を集める(2分間隔で電車が走れる秘密)

・メンバーの力を同じレベルに揃える(「のぞみ」と「こだま」)

・パターン化で時間を短縮(浜松・遠州鉄道の秘策)

・事前チェックとクッション時間を忘れない(不便な東京地下鉄の乗換駅)

といったテーマで、鉄道のダイヤスケジューリングのノウハウがいろいろと書いてあるのだ。

さらに、スケジュールに関するリスクについても書かれている。

・東京駅ホーム先端のなぞ

・秋葉原駅の不思議な線路

など。個々をとれば、いわゆるタイムマネジメントハウツー本に書いてあるような内容が並んでいるのだが、この本を読むメリットは、鉄道での原理の説明があるので、理屈がわかり、応用が利くこと。また、鉄道が好きでなくても頭の体操的に楽しく読める。

で、冒頭のPMIに話に戻る。この本を引き合いに出したのは、PMIのスタンダードに書かれているプラクティスのかなりの部分が、この本には書かれているのだ。

日本の鉄道は、世界に誇るタイムマネジメントをしているといわれるが、まさに、それを証明した格好の一冊である。

スケジュールがきついときに、無理に余裕をとろうとするのは落とし穴だ。合理的な工夫をすることによって、厳しいスケジュールでやるほうが楽。日本の鉄道の時間密度は世界一で、その意味で、厳しいスケジューリングのノウハウの塊である。

厳しいスケジュールのプロジェクトを担当し、時間に悩むプロジェクトマネジャー必読!

2007年8月17日 (金)

ホワイトカラーの生産性マネジメントの切り札

4382055717 坂本裕司「ホワイトカラーの生産性を飛躍的に高めるマネジメント―HPTの実践マニュアル」、産業能率大学出版部(2007)

お奨め度:★★★★

経営コンサルタントである著者が、MBA時代の経験、コンサルティングの経験、諸先輩から学んだ経験を集大成し、独自に纏め上げたマネジメント技術HPT(Human Performance Technology)を開示した一冊。

IEのホワイトカラー版というイメージだと言っているが、プロジェクトマネジメントを業務に適用するとこんな感じになるという意味で興味深い。もちろん、ツールは著者のオリジナリティにあふれるものだ。

HPTの中核概念は、PND(Performance Next Door)という概念にあるが、この概念は、現状のパフォーマンスレベルで達成可能なレベルを超える目標を掲げ、ビジョンを明確にし、目標達成のために戦略を練り、組織機能を明確にし、プロセスを改善することによりその目標を達成しようとする考え方。そのために考案されたさまざまなツールが紹介されている。

特徴的であるのは、IEを意識しているだけあり、非常にツールが現場的であること。すぐにでも使えるようなレベルのツールである。非常に体系的に整理されている。

フレームワークとしては少し複雑すぎるきらいがある。加えて本の書き方が簡潔であるため、実践のパートはIEだとか、プロジェクトマネジメントのバックグランドがない人が読むと理解に苦労する部分があるのではないかとも思う。

むしろ、本として読まずに、ツールを中心に追いかけていくとよいかもしれない。

また、HTPの実践を行うに当たってトップとメンバーの役割についても明確にし、必要なスキルを解説している。この点も含めて実践的であるので、ホワイトカラーの方にはぜひお奨めしたい一冊である。

2007年7月30日 (月)

デジタル時代のチームマネジメント

4534042647 大橋悦夫、佐々木正悟「チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術」、日本実業出版社(2007)

お奨め度:★★★1/2

このブログでも紹介したことがあるが、デビット・アレンの提唱するGTD(Getting Things Done、デジタル時代のストレスフリーな仕事術)が日本でも大ブレークしている。

仕事を成し遂げる技術―ストレスなく生産性を発揮する方法

そのきっかけにもなった大橋悦夫さん、佐々木正悟さんの個人の仕事のパフォーマンスを3倍にするためのTips集「スピードハック」に続く第2弾。

4534041837

今度はチームのパフォーマンス向上のさまざまな方法を提案している。大橋さんと佐々木さんは、どうも、日本のGTD本の代表ライターになってきた感があるが、この本も重要なことがたくさん書かれている。

この本のポイントは、たぶん、メンバーシップ。最終章でリーダーシップからメンバーシップへの移行の重要性を説いているのだが、まあ、このあたりがGTD本の所以か?

この本もチームハックしたのだろうか?その辺も知りたかった(笑)

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2007年7月23日 (月)

チームビルディングの初歩から実践まですべてわかる本

4532313406_2 堀公俊、加藤彰、加留部貴行「チーム・ビルディング―人と人を「つなぐ」技法」、日本経済新聞社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

ファシリテーション技術を使って行うチームビルディングの方法をまとめた一冊。

ベストセラー「ファシリテーション・グラフィック」の著者にもう一名の方が加わって書かれた本で、テーストは前著のテーストが貫かれている。入門書であり、また、実践書としても使える一冊になっている。

まず最初は基礎編ということで、チームの基本が書かれている。独自の目線もあるが、この部分はチームマネジメントの勉強をしたことがある人なら「フンフン」と読み流していけるところだろう。

次に準備編ということで、チームマネジメントの基本的理論が説明されている。この部分になってくると、単に人を集めなさいといった話だけではなく、例えば、どのように声をかけるかといったかなり具体的なノウハウが書かれている。

技術編では、多くのチームビルディングのためのアイスブレークや、エクスサイズを紹介している。

紹介されている手法は、全体の流れが明確であり、運用の細かな工夫まで書かれているので、実際の場で使ってみようかという気にさせる。

その後、実践編として、これらのエクスサイズを使ったチームづくりの推進として、ワークショップやイベントなどの使い方、進め方を解説している。この本の中ではこの部分が最も参考になる。

中で紹介されているアイスブレークやエクスサイズが別冊子としてまとめられているのもよいし、1冊で、チームビルディングの入門から、実践までカバーされている今までにはなかったタイプの本である。

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2007年7月18日 (水)

実践マネジメントの金字塔

4532313368 マーク・マコーマック「ハーバードでは教えない実践経営学~ビジネス界の心理戦を勝ち抜け!」、日本経済新聞社(2007)

お奨め度:★★★★★

マネジメントには普遍の原則がある

とすれば、ドラッカーが膨大な著作で述べていることではなく、マーク・マコーマックがこの1冊の本で述べていることではないだろうか。マコーマックの名前を知らなくても、IMGという会社を知っている人は多いのではないだろうか?IMGの生みの親がマコーマックである。

ちょうど、サッカー界で中田選手が出てきたくらいから、日本でもスポーツ選手のマネジメントとマーケティングビジネスは認知されるようになってきたが、マコーマックがIGMを設立したのは1960年代である。いまや巨大な市場になっているこのビジネス分野を確立した人である。

マコーマックがこの本を上梓したのは僕が大学院を出て会社に入った年である。会社に入って5年目にあるきっかけで原書を読んだ。間違いなく、僕のマネジメント感に大きな影響を与えている。

突拍子のないことが書いてある本ではない。「人間」、「営業と交渉」、「企業経営」という非常にオーソドックスな分類でそれぞれを部として、基本事項を淡々と述べている。

例えば、人間だと

・人の心と読む

・印象付ける

・優位に立つ

・出世する

の4項目が並んでいる。

哲学はあるが、理屈っぽくない(ただし、心理学的にはたくさんの理論があるのだろうと思う)。これが20年以上、全世界で20年以上、読み続けられている理由だと思う。

みなさんもぜひ、手にとって見てほしい。マネジメント感が変わるかもしれない。すくなくとも、マネジメントとは何をすることかというのがわかるだろう。

蛇足だが、この時期に日経新聞社が翻訳に踏み切ったのは慧眼だと思う。いやというほど、類似書が出回りだしているからだ。本物を読んでみよう!

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2007年7月13日 (金)

改善を科学する

4820744372 オフィス業務改善研究会「業務改善がよくわかる本―すぐに実行できるオフィス業務の改善アイディア」、日本能率協会マネジメント 出版情報事業(2007)

お奨め度:★★★★1/2

オフィスワークの業務改善の視点、方法、スキルをまとめた1冊。

業務改善を以下の8つのアクションにまとめている。

1.テーマの設定する
2-1.現状把握・監察する
2-2.現状把握・取材する
2-3.現状把握・図式化する
2-4.現状把握・定量化を試みる
3.問題点をまとめる
4.問題を掘り下げ、原因を探る
5.改善方法を決める
6.改善策を決める
7.改善を実行する
8.改善レポートを作成する

そして、それぞれのついて、具体的な進め方を解説している。

その上で、36のベストプラクティスを提示して、それぞれの事例でどのような方法で改善を進めて行ったかを述べている。

いままでありそうでなかった本だ。

戦略経営の3つのイネーブラは人材とITと業務改善である。

前の2つがいろいろと体系化されているのに比較すると、改善に関する体系的なアプローチの本はなかったし、本以前に、改善はどろどろとやるものだと考えられていた。一方で、問題解決の本を読むと、結構な数の例題が改善を取り上げている。ずっと、こんな本が出ないかなと思っていたが、やっと出たという感じだ。

特に、マネジャーの方は、ひとごとだと思わず、一度、読んでみて欲しい。人材育成の方向性のヒントになるだろう。

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2007年6月 1日 (金)

スーパーアシスタントを目指す人に!

4495569414 オダギリ展子「ミスを防ぎ、仕事をスムーズにする オフィス事務の上手なすすめ方」、同文舘出版(2006)

お奨め度:★★★1/2

日経BPイベントのスキルアップメールにオダギリ展子さんの連載コラムがあり、読んでいると面白いので読んだ。事務処理のプラクティス集であるが、後半の部分はコミュニケーションとか、ビジネスマナーについてTipsが書かれている。

派遣の品格のいろいろな薀蓄のネタ本といわれている本。

以前、NHKで「グッドジョブ」というドラマをやっていた。営業アシスタントが営業部を仕切っているドラマ。昔かたぎで一般職の女子社員をお茶くみにしか思っていない男性社員の認識の変化がひとつのモチーフになっていたせいもあると思うが、このドラマのアシスタント職を米国的だといっていた人がいたが、おそらく、違う。これが、日本企業に昔からあった事務職の姿だと思う。

事務を適切に行うためには、その職場の仕事の性格をよく理解しておく必要がある。そして、何が求められるかをよく知っておく。これがポイント。中小企業のコンサルに入ると、事務職を見ると、大体、企業の雰囲気が分かる。

この本に書かれていることは、営業アシスタントに限らず、すべてのアシスタントのインフラスキルである。PMアシスタントの方にもぜひお奨めしたい。もちろん、派遣

スーパー派遣であるばかりではなく、スーパーアシスタントでもある大前春子を目指す人は、ぜひ、お読みください(笑)

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2007年5月28日 (月)

PM手法による時間管理

4532111250 佐藤知一「時間管理術」、日本経済新聞社(2006)

お奨め度:★★★★

プロジェクトマネジメントの手法を使って、時間管理のスキル向上をテーマにした一冊。

この本が面白いのは、成熟度レベルを入れていること。

レベル0:時間の問題を認識する

レベル1:記録する

レベル2:日々の予定を立てる

レベル3:スケジュールを組み立てる

レベル4:進捗を計る

レベル5:分析し、改善する

各レベルに対して、プロジェクトマネジメント手法や、ビジネスマネジメント的なタイムマネジメントの手法を使うことにより、そのレベルの目標を達成し、次のレベルに向かうための方法を説明している。

説明は例を駆使して、分かりやすい。また、全体を通して、若いビジネスマンに、コンサルタントの叔父さんが、いろいろと手ほどきをしているような構成をとっていて、人から教えられているような感覚で読み進めていける。

また、用語はプロジェクトマネジメントやオペレーションズリサーチで使う用語がそのまま使われているので、これらの分野の概念を理解するのにも有益な一冊だ。

この中で、レベル5だけが説明が日常と乖離しているなあと感じた。このテーマそのものがレベル4のような視点から説明するのが難しいのかもしれないが、ちょっと残念。

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2007年5月 2日 (水)

プロジェクトを成功させるリーダーシップ

4062134543 ジョン・サルカ、バレット・ネヴィル(道幸武久監修、甲斐理恵子訳)「人を動かす 火事場の鉄則」、講談社(2007)

お奨め度:★★★★1/2

2004年に9・11テロの際にニューヨーク消防局のリーダーであったジョン・サルカが1冊の本を出して話題になった。日本でも、ビジネス誌で紹介されているのを見たことがある。

1591840252 John Salka、Barret Neville「First In, Last Out: Leadership Lessons from the New York Fire Department」、Portfolio(2004)

という本である。文字通り、最初に飛び込んで最後まで残るという行動規範(プロデュースした道幸氏の言葉では率先垂範)に基づくリーダーシップについて述べた本だ。

この本、読みたかったのだが、思わぬ形で翻訳が出た。翻訳というのは正しくないかもしれない。今、話題の新進気鋭のビジネスプロデューサ 道幸 武久氏が、単なる翻訳としてではなく、自らとのコラボレーション本としてプロデュースしたのだ。

消防士のように極限で、迅速な判断を要求される業務では、一人ひとりがリーダーシップを持たなくてはならない。リーダーや、マネジャーだけがリーダーシップを持っていても、全体は回っていかない。ジョン・サルカ氏のリーダーシップ論は、そのようなリーダーシップ論であり、そのような伝統的なリーダーシップがニューヨーク消防局にはあったので、多くの人を死なさずに助けることができた。

このようなリーダーシップこそ、プロジェクトを成功させるリーダーシップである。

このリーダーシップ論に共感する道幸 武久氏も、負けずと持論を展開し、全体として非常によくまとまった本になっている。この本の構成はオリジナルの本に章単位で道幸氏の章が混じっているような構成になっている。実は、最初、余計なものが入っている(失礼!)と思って、オリジナルの部分だけを選って読んだ。そのあとで、全部を通して読んだが、全部読んだ方がよい本だということがわかった。道幸氏の企画力はさすがである。

この本はいわゆるリーダーに読んで欲しい本なのだが、それ以上に、メンバーの立場で仕事をしている人と、管理職の立場で仕事をしている人にぜひ、読んで欲しい一冊である。

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2007年4月30日 (月)

プロジェクト力を身につけよう!

4862800106 諸藤一郎、中嶋秀隆「「プロジェクト力」で仕事を変える! 」、総合法令出(2007)

お奨め度:★★★★

仕事力=「専門力」×「プロジェクト力」

という方程式を立て、プロジェクト力として、見積もり力、スケジュール力、調整力、変更力、記録力、コミュニケーション力を身に付けていく方法を説明した一冊。

本書は2部構成になっており、第1部では著者の仕事観が述べられている。第2部がメインで、日常業務において、なぜ、プロジェクト力とは何か、なぜ、必要なのか、そして、プロジェクト力の基になるプロジェクトマネジメントの手法を説明している。

ビジネスパーソン向けのプロジェクトマネジメントの入門書としては、ポイントが押さえられており、また、説明も簡潔でプロジェクトマネジメント専門知識がなくても理解できるので、たいへんよい本だと思う。

ただ、本書のセールスポイントである日常業務にプロジェクトマネジメントを適用するという部分については、イマイチ、ピンとこなかった。これはこの本の問題ではないかもしれない。本質的に、プロジェクトマネジメントのマネジメント視点で日常業務のマネジメントをすることには無理があるような気がしなくもない。

マネジメントとして行うべきことはほとんど変わらないと思うが、マネジメントフォーカスが違うのではないかと思う。つまり、メリハリをつける部分が違うのではないかと思う。これがピンとこなかった理由かもしれない。

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