コミュニケーションマネジメント Feed

2007年11月20日 (火)

プロジェクトマネジャーの人間術

4872686721 Steven W. Flannes、Ginger Levin(PMI東京支部/吉沢 正文監訳)「プロジェクト・マネジャーの人間術」、アイテック(2007)

2005年に米国で発刊された「Essentail People Skills for Project Management」の翻訳。PMI東京支部の有志が翻訳している。

プロジェクトマネジャーの役割を
 ・リーダー
 ・マネジャー
 ・ファシリテータ
 ・メンター
の4つとし、これらの役割を果たすのに必要なピープルスキル(人間術と訳している)を
 ・対人コミュニケーション
 ・動機付け
 ・コンフリクトマネジメント
 ・ストレスマネジメント
 ・トラブル
の視点から、ツールとして解説している。また、最後にキャリアとそれに伴う人間観という視点でどういう心構えでキャリア形成していくべきかを論じている。
本書の特徴は
(1)プロジェクトマネジメントプロセスに人間術を対応させている
(2)キャリアステージを強く意識した手法を提案している
の2つだろう。書かれている内容は、簡潔ではあるが、独自性が強く、非常に本質をついているように思える。その意味で、ハウツーものというよりも、教科書としてプロジェクトマネジャーが内省のインプットとして使うとか、あるいは、組織でプロジェクトマネジャーの教育やワークショップの教材として使うといった使い方が適しているように思える。

また、明確に書かれていないが、この本に書かれていることはプロジェクトマネジメントのスキルがあることを前提にしているように見える。その点でも、初心者がハウツーものとして読む本ではないように思う。典型的な対象読者を一つ上げると、「PMPを取って、実践しようとしてもなかなかうまくいかなくて困っている人」だ。日本ではPMPホルダーのマジョリティだと言われてるが、米国でこのような本が出版されていることは興味深い。

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2007年11月19日 (月)

プロジェクトは大義と共感

4828413510 小池百合子「小池式コンセプト・ノート―プロジェクトは「大義と共感」で決まる!」、ビジネス社(2007)

お薦め度:★★★★

小池百合子議員がクールビスプロジェクトをどのように進めていったかを、コンセプトづくり、「大義と共感」をキーワードに振り返っている。副題になっているとおり、「大義と共感」が問題だったと振り返り、小泉郵政解散の際の刺客騒動についても、同じ発想が成功をもたらしたと振り返る。

クールビスについては、膨大なプロモーション費用が問題になったが、急速に広まっていったのは事実である。仕事がら、顧客企業にいくことは多いが、最初の年は行く先々でネクタイをしたり外したりしていたが、2年目になると、ほとんどネクタイをすることはなくなった。商品のプロモーションと違い、コストをかければ成果に直結するという類の問題ではないように思うので、本当にコンセプトの勝利だといえるだろう。

そのコンセプトを作った舞台裏をかなり詳細に書いているので、興味深いし、また、参考にもなる。

ステークホルダが多く、複雑なプロジェクトの企画やマネジメントを担当している方にはぜひ、読んでほしい。

タイトルから「大義」というは政治ならではの話だと感じる人も少なくないと思う。しかし、大義というのはビジネスでも非常に効果がある。本質的にも、現実的にも、大義のないプロジェクトに協力する人もいないし、特にプロジェクトが苦境に陥ったときには大義は重要である。

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2007年10月28日 (日)

一体感をめぐる冒険

4862760120 ジョセフ・ジャウォースキー(金井壽宏監修、野津智子訳)「シンクロニシティ 未来をつくるリーダーシップ」、英治出版(2007)

お奨め度:★★★★1/2

この記事で500エントリーになる。500エントリー目に残しておいた本を紹介しよう。「シンクロニシティ 未来をつくるリーダーシップ」。

ジョセフ・ジャウォースキーという「アメリカンリーダーシップフォーラム(ALF)」というリーダーシップ開発の団体を立ち上げた人物が、自叙伝の形で述べているリーダーシップの旅についてかいた本。

もともと、弁護士で、若くして法律事務所を立上げ、成功した著者は、リーダーシップの状況に問題意識を持ち、社会的起業家としてALFの立上げを決意する。それに集中していく中で、どんどん、離婚をし、ALFを立ち上げるまで、シンクロニシティに身を任せ、紆余曲折の中を進んでいく。その中で、自身、リーダーシップをめぐる旅をし、いろいろな人と出会い、いろいろなことを学び、仲間に巻き込んでいく。その中に、この本と一緒に英治出版が翻訳を出版したデヴィッド・ボームがいる。

デヴィッド・ボーム(金井真弓訳)「ダイアローグ 対立から共生へ、議論から対話へ」、英治出版(2007)

ALFが軌道に乗ったころ、シナリオプラニングと出会い、請われて、シェルグループのシナリオプラニングのリーダーとなる。その後、この本には出てこないが、金井先生の解説によるとMITの組織学習でコアメンバーとしての役割を果たし、現在はジェネロンコンサルティングを率いて、U理論を世に知らしめることに尽くしているとのこと。

この本の後の活動は、こちらの本を読めばよいだろう(超・難解!)

ピーター・センゲ、オットー・シャーマー、ジョセフ・ジャウォースキー、ベティ・フラワーズ(野中郁次郎, 高遠 裕子訳)「出現する未来」、講談社(2006)

非常に不思議な読後感の残る本である。僕は、この本は金井先生が話題にされているのを何度かお聞きしたし、ジョセフ・ジャウォースキー氏のリーダーシップの旅の根幹を成している、サーバントリーダーシップ、ダイアローグ、U理論という概念を齧っていたので、リーダーシップの本として読んだ。難しい本なので、どれだけ、ジョセフ・ジャウォースキー氏がこの本に託したメッセージが読めているかはよくわからないが、感じるものは多々あった。

ただ、これを前提なしに読めば、副題にある「未来を作るリーダーシップ」というのはきっとピンと来ないのではないかと思う(もちろん、僕なんかに較べるとはるかに洞察力に優れた人はそんなことはないだろうが)。そんなときに、リーダーになりたいと思うあなたが、偶然、このブログ記事を読んだことの意味をかんがえてみて欲しい。ここにも、この本でいうところのシンクロニシティ(共時性;因果関係では説明できない、偶然にもほぼ、時を同じくして生じる事象があること)があるのかもしれない。

併せて、お奨めした本が2冊ある。1冊は、この本で金井先生が紹介されているが、野田さんという方がリーダーシップの旅について書かれた本。

野田 智義、金井 壽宏「リーダーシップの旅 見えないものを見る」、光文社(2007)

もう1冊は、表現の手法は違うが、同じような視点から大規模な調査をした結果をまとめたこの本。

ビル・ジョージ、ピーター・シムズ(梅津祐良訳)「リーダーへの旅路―本当の自分、キャリア、価値観の探求」、社会経済生産性本部(2007)

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2007年10月26日 (金)

禁断のコミュニケーション技術

4894512807 三浦博史「神様に選ばれるただひとつの法則~人生を勝利に導くコミュニケーション術「プロパガンダ」 」、フォレスト出版(2007)

お奨め度:★★★★1/2

プロパガンダとは

 自ら働きかけて自らの思う方向に他人や集団を動かすこと

である。もともと、布教活動をさす言葉だったが、プロパガンダという言葉を有名にし、同時に、世の中から葬ったのは、ナチスの大衆扇動をプロパガンダと呼んだことだろう。それまでの言葉の使い方を考えてみると非常に不遜な使い方であるが、プロパガンダという言葉はいまだにこの言葉を引きずっているし、悪いイメージがある。

そのプロパガンダが欧米のハイクラスのビジネスマンに注目されるスキルになっているという。

・仕事やプライベートでの「人間関係」を良くしたい!
・カリスマ的な「リーダーシップ」が欲しい!
・「広告」「PR」「マーケティング」に関わっている!
・「セールス」関係の仕事をしている!
・上司、部下、お客様、同僚に好かれ、「仕事」で結果を出したい!
・本当の「自分の魅力・実力」を認めてもらいたい!
・転職や就職の「面接」を成功させたい!
・まったく新しいコミュニケーション術の本が読みたい!

などの思いを持つ人が注目しているそうだ。実際にこの本を読んでみると、コミュニケーションをまったく別の体系でまとめており、非常に面白いと思う。

特に面白いのは、コミュニケーションと情報という本来は別のものを結びつけ、情報というのをどのようにコミュニケーションの中で位置づければよいかというビジネスコミュニケーションにとってとても重要な問題をうまく整理している点。

欧米では禁断のコミュニケーションスキルと呼ばれているが、禁断に手を出してみませんか?

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2007年10月 5日 (金)

対話

4862760171 デヴィッド・ボーム(金井真弓訳)「ダイアローグ 対立から共生へ、議論から対話へ」、英治出版(2007)

お奨め度:★★★★★

日本語で「話せば分かる」という言い方がある。この場合の「話す」とはどういう意味であろうか?

北朝鮮拉致問題で「対話と圧力」ということが言われている。世界中の紛争のあるところで、政策対話というのが行われている。この場合の「対話」とはどんなものだろうか?

この問題に対して深い洞察をしたコミュニケーション論の名著、「On Dialogue」という本がある。著者は物理学者にして20世紀の偉大な思想家の一人だとも言われるデヴィッド・ボームである。1996年に出版されたこの本は、2004年に第二版が出版されたが、第2版の邦訳が今回、英治出版より出版された。

419860309x ダイアローグというと真っ先に思いつくのが、この本の前書きを書いているピーター・センゲの学習する組織である。ピーター・センゲは学習する組織には、「パーソナル・マスタリー」「メンタルモデル」「システム思考」「共有ビジョン」とともに、ダイアログが必要だといっている。少し、センゲの組織学習論を書いた「最強組織の法則」から抜粋する。

=====
ダイアログの目的は、探求のための「器」もしくは「場」を確立することによって新しい土台を築くことである。その中で参加者たちは、自分たちの経験の背景や、経験を生み出した「思考と感情のプロセス」をもっとよく知ることができるようになる。
=====

この本を読んだことのない人は、ちょっとよく分からないと思うだろう。ダイアログというのは、いわゆる「話し合い」ではないのだ。コミュニケーションそのものである。「On Dialogue」によると、

対話の目的は、物事の分析ではなく、議論に勝つことでも意見を交換することでもない。いわば、あなたの意見を目の前に掲げて、それを見ることなのである

となる。もっと分からないかもしれない。対話ではWin-Winの関係を作ることが目的ではなく、不毛な競争をしないこと、共生することが目的なのだ。

そんな発想がビジネスに必要かと思った人も多いだろう。日本のビジネス慣行というのはもともと、ダイアローグを礎にしている。ただし、価値観の変わってくる中でダイアローグが行われてこなかった。このため、談合だとか、おかしな問題が出てきている。そこをもう一度、再構築するためには、文字通り、ダイアローグが必要だ。

そんなことには興味がないという人。あなたのお客様や上司と「話せば分かる」関係になりたいと思いませんか?思うのであれば、この本を読んでみましょう!

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2007年9月24日 (月)

組織の心理的側面

4478001898_3DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編著「組織行動論の実学―心理学で経営課題を解明する」、ダイヤモンド社(2007)

お勧め度:★★★★

ハーバードビジネスレビューに掲載された組織行動論の論文の中で、実践的な論文を14編集めている。以下の14編である。

受動攻撃性:変化を拒む組織の病
信頼の敵
沈黙が組織を殺す
「不測の事態」の心理学
なぜ地位は人を堕落させるのか
楽観主義が意思決定を歪める
「意識の壁」が状況判断を曇らせる
リーダーシップの不条理
転移の力:フォロワーシップの心理学
卑屈な完全主義者の弊害
善意の会計士が不正監査を犯す理由
選択バイアスの罠
道徳家ほどおのれの偏見に気づかない
失敗に寛容な組織をつくる

それぞれ、著名な論文であり、経営学のテキストに取り入れられるようなものばかりである。このシリーズの中でも、すごい一冊である。

と同時に、組織行動論といえば、理屈ばかりだと思いがちであるが、心理的な側面に注目した論文(それも著名な論文)がこれだけあるというのは驚きである。

それだけ組織は深いということだろうか。

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日本組織の病巣「組織の<重さ>」

4532133378 沼上 幹、軽部 大、加藤 俊彦、田中一弘、島本実著「組織の〈重さ〉―日本的企業組織の再点検」、日本経済新聞社(2007)

お勧め度:★★★★1/2

日本企業の強さの源泉であると考えられてきた創発戦略の創出と実行が機能不全に陥っている。その原因は、「重い組織」にある。つまり、「重い組織」が経営政策を阻害し非合理的な戦略を創発していることにあるという。

この日本組織の病巣ともいえる仮説を沼上先生らしいフィールドスタディで徹底的に調査している価値のある一冊。

研究論文に基づいて書かれた本のようで、問題提起にとどまっているが、この本を読んで連想したのが、柴田昌治氏のこの本。

なぜ社員はやる気をなくしているのか~働きがいを生むスポンサーシップ」、日本経済新聞社(2007)

柴田氏がこの本で指摘していることを、膨大な調査で裏付けたような形になっている。ということは、この問題の解決策のひとつが柴田氏が必要だと指摘するスポンサーシップであることは間違いない。

日本組織がどのように変わってきているかということを考えてみたときに、はやり、スポンサーシップ(とは昔は言わなかったが)の欠如に行き着くように思う。その原因は柴田氏も指摘しているように業績主義にある。沼上先生の言われる重さは、業績主義と環境づくりのバランスの悪さゆえに出てきているように思う。

一方で、もう、おそらく昔に戻ることはできない。そう考えると、今すべきことは、重さの解消を仕組みとして実現していくことだ。そのひとつがスポンサーシップであることは間違いない。

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2007年9月19日 (水)

気の利いたほめ言葉を持とう

4569659233 本間正人、祐川 京子「ほめ言葉ハンドブック」、PHP研究所(2006)

お奨め度:★★★★

本屋さんで、たまたま、見つけた本だが、こんな本があるのかとびっくり。

ほめるというのがやさしいようで、さあ、やってみようといわれてもなかなかできるものではない。この本では、ほめ言葉の6原則と4つの心がけを述べた上で、それを実践するポイントと具体的なスキルとともに、「ほめ言葉」を例示いる。さらに、よい例だけではなく、「悪いほめ方」も例示しているので、参考になる。

[原則]
1.事実を細かく、具体的にほめる
2.相手にあわせてほめる
3.タイミングよくほめる
4.先手をとってほめる
5.こころをこめてほめる
6.おだてず、媚びずにほめる

[心がけ]
1.ほめる要素を探す
2.ほめ方のレパートリーを増やす
3.力加減をコントロールする
4.あらきらめずに実践する

具体的な言葉は本をお読みください!

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2007年9月10日 (月)

そのドキュメント、本当に必要ですか?

4839924287 石黒 由紀「ドキュメントハックス-書かない技術~ムダな文書を作り方からカイゼンする」、毎日コミュニケーションズ(2007)

お奨め度:★★★★

GTD(Getting Things Done、デジタル時代のストレスフリーな仕事術)本として作られた本のようだが、ドキュメントを書きながら仕事を進めることに関して、常識の枠を超えた本質的な指摘が多く、たいへん、「ため」になる本。

著者が指摘しているように、ドキュメントは何が必要かという点から必要性の分析がされ、作成されている。しかし、その作成プロセスに注目すれば不要な(他のコミュニケーションで代替できる)ドキュメントは多く、そこをうまく組み立てていることにより、「ドキュメントによるコミュニケーション」として本当に必要なドキュメントだけを作成するようにできる。それによって、作成するドキュメントの質も上がるし、情報共有の質もあがるというのがこの本の主張。特に、2章で、品質を上げるためにゴール共有をするという視点から、ドキュメントの必要性を分析している部分は共感できる。

デジタル時代の特徴のひとつは間違いなく、ドキュメントの量である。バーチャル組織、多様な人間の共同作業などで、間違いなく、ドキュメントがストレスになっている。この本はそのようなスタイルの仕事をしている人の救世主ではないかと思う。

GTD本としてTips集的な書き方になっていると感じるが、ぜひ、続編としてコミュニケーション全体を睨んだ体系的な本を書いてほしい。

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2007年8月29日 (水)

ヒューマンスキルの基本としての人間関係づくりをマスターしよう

4760830251 星野欣生「人間関係づくりトレーニング」、金子書房(2002)

お奨め度:★★★★

人間関係作りのポイントを取り上げ、エクスサイズを通じて、気付きを得ながらポイントを掴んでいくスタイルのトレーニングブック。

ポイントとしてあげているのは

・つきあい
・好き、嫌い
・思い込み
・わかちあう、こたえる
・話す、きく
・みる
・感じる
・わかる
・トラブル
・ひらく

の10個。それぞれについて、含蓄のある簡単な講義、エクスサイズ、エクスサイズの振り返りのプロセスシートという構成になっている。

これらに対して、アプローチの視点として

つきあい―人が持っている「枠組み」
好き、嫌い―価値観とは
思い込み―日常生活は「思い込み」でいっぱい
わかちあう、こたえる―コミュニケーションって何だろう
話す、きく―コミュニケーションの実際
みる―サインとしてのからだ
感じる―感情表出のさまざまな形
わかる―人が人を理解すること
トラブル―葛藤とのつきあい方
ひらく―自己開示とフィードバック

の視点を持ち込み、気付きを与えている。

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