コミュニケーションマネジメント Feed

2007年5月 9日 (水)

コミットメントを熟知しよう

4478000999 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部編集「コミットメント 熱意とモラールの経営」、ダイヤモンド社(2007)

お奨め度:★★★★

ハーバードビジネスレビューの中から、コミットメント経営に関する論文をまとめた論文集。コミットメントというのは日本語でいえば、公約である。

日本では公約というのがそうであるように、コミットメントというのがどうも、かなり精神的な約束として理解されている気配がある。このため、人によっては、コミットメントを忠誠といった訳しかたをする人もいる。コミットメントとロイヤリティは強い関係があるが、別の概念である(この議論はこの本の8章でも出てくる)。

例えば、プロジェクトマネジメントの分野でコミットメントは計画に基づいて行われる。つまり、定量的な目標に対して、その達成を約束するのがコミットメントの管理である。

ある意味でわかりにくい概念であるが、この本は8つの論文をうまく集めて、コミットメントマネジメントを実行するために必要な要素をつまくつむいでいる。チームマネジメントの中核にコミットメントマネジメントをおきたい人にはお奨めした一冊である。

ハーバードビジネスレビューの論文集なので、決して読みやすい本ではないが、苦労して読めば、それなりの対価は得られるだろう。

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2007年4月13日 (金)

人をあきらめない組織

4820717030_01__aa240_sclzzzzzzz_v2488359_1 HRインスティテュート(野口吉昭編)「人をあきらめない組織―育てる仕組みと育つ現場のつくり方」、日本能率協会(2007)

お奨め度:★★★★1/2

如何に人を育てるかという切り口で、あるべき人を育てる組織になる方法を説いた一冊。

非常に力強いメッセージ「人をあきらめない組織」を作るには、

 プリンシプル(絶対的な人づくりへの理念と意志)
 ウェイ・マネジメント(人づくり遺伝子の仕組み化)
 モチベーション・エンジン(やる気を挽き出すコミュニケーション基盤と進化)

という3つの要素が必要であり、それぞれについて以下のような要素が必要であると説いている。

プリンシプルには

・トップマネジメントの行動・意志

・人に対する信念の存在

・周囲の意識・行動から見える浸透

などが必要である。ウェイマネジメントには

・尊敬できるリーダーシップがあるか

・人材育成・開発の仕組み

・習慣・口ぐせ

が必要である。三番目のモチベーションエンジンには

・オープンコミュニティ

・自己主張・提案できる環境

・チーム意識を醸成する環境

が必要である。

この本では、それぞれの要素について、診断を踏まえて、どのような取り組みをすればよいかをフレームワークとして提示しているので、実践的に使える一冊だ。

2007年3月30日 (金)

プロジェクトチーム崩壊を防ぐ極意

4822283135_01__aa240_sclzzzzzzz_v4254531 伊藤健太郎「プロマネはなぜチームを壊すのか 知っておきたいプロジェクトのヒューマンスキル」、日経BP社(2007)

お奨め度:★★★★

PM書籍のベストセラー「プロジェクトはなぜ失敗するのか」の伊藤健太郎さんの待望の新作。

本の内容とは直接関係のない話題から入る。前作でも感じたのだが、伊藤さんの本はこの日経BPのシリーズが本当によく似合う。このシリーズには

デマルコの一連のシリーズ https://mat.lekumo.biz/books/2005/07/post_0be1.html

ジム・ハイスミスのアジャイルPM https://mat.lekumo.biz/books/2005/06/post_8e2b.html

ヨードンのデスマーチ https://mat.lekumo.biz/books/2006/06/post_7e70.html

など、日本のプロジェクトマネジメントに影響を与えた本がずらっと並ぶ。伊藤さんの本も間違いなく、その一冊だ。このシリーズの特徴は、深いことを、簡潔・平易に書いてあり、非常に考えさせることだ。

さて、今回のテーマは、チームマネジメント、リーダーシップ、ヒューマンスキルという伊藤健太郎さんの得意分野である。結構、深い持論がやさしく簡潔に書かれていて、納得しながら読める。かなり、ポイントが絞られているので、セミナーを受講しているような感じで、すっと頭に入ってきて、かつ、残る。

同時期に峯本さんもプロジェクトマネジャーのプロフェッショナル責任に関する書籍「プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル」を出版されたが、伊藤さんの本もまず、「責任」から話が始まる。非常に現実的で、現場ベースでの責任論が展開されている。納得。

次にチームマネジメントの話が続く。ベースは行動規範と動機付けの話だが、両者の関係の説明が薄いので、なにがいいたいのか、少し、わかりにくい部分がある。でも、個々に書いてあることは納得性が高い

そのあと、組織のサポートのあり方の章があり、最後にプロジェクトマネジャー像が述べられている。硬い話だけではなく、問題形式で説明されているので、楽しく読める。

この本、ぜひ、PMPの人に読んでほしい。PMBOKの形式的な知識に魂が入るだろ。

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2007年3月13日 (火)

フランクリン・コビー流プロジェクトマネジメント

4906638619_01__aa240_sclzzzzzzz_v4196786_1 リン・スニード、ジョイス・ワイコフ(フランクリン・コヴィー・ジャパン訳)「PQプロジェクト・マネジメントの探究」、キングベアー出版(2007)

お奨め度:★★★★1/2

7つの習慣で有名なフランクリン・コビー社のプロジェクトマネジメントスキルPQ(Planning Quest)の解説書。

PQには3つのポイントがある。

一つ目は時間管理であり、この部分には、同じくフランクリン・コビーの「TQ(Time Quest)」を取り入れている。TQについては、目標の設定、計画的行動、そして安心領域からの脱出を主軸にした時間管理で、効率だけではなく、「心の安らぎ、すなわち充足や幸福が最高潮に達した感覚」に到達することを目的としている。

4906638058_09__aa240_sclzzzzzzz_ハイラム・スミス(黄木信、ジェームス・スキナー訳)「TQ―心の安らぎを発見する時間管理の探究」、キングベアー出版(1999)

この中から、価値観の明確化が時間管理のベースであるとする生産性のピラミッドの考え方を取り入れている。

その上で、2つ目のポイントとして、プロジェクトのビジュアル化こそがプロジェクトマネジメントの成功要因だとしている。

これらの考え方に併せて3つ目のポイントは、マインドマップ使って思考の幅を広げることを提案している。

PMBOKのような分析的、体系的なプロジェクトマネジメントが必要な分野もあるが、多くのビジネスプロジェクトでは、多少、重い感じがある。そのようなプロジェクトに対するプロジェクトマネジメント手法として注目に値する方法である。

プロジェクトのビジュアル化こそがではこの方法をセミナーとして提供しているが、その前に、この本を読んでみて、自分の仕事に使えるかどうかの評価をしてみてはどうかと思う。ただし、実際に使おうとすると、ツールも含めて本だけでは不十分だと思われるので、セミナーを受けるべきだろう。

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2007年2月 7日 (水)

見える化ではなく「視える化」しよう!

4479791884_01__aa240_sclzzzzzzz__1 若松義人「トヨタ流「視える化」成功ノート―「人と現場が変わる」しくみ」、大和書房(2007)

お奨め度:★★★★1/2

昨年あたりから「みえるか」が大ブームになって、たくさんの本が出版されている。その中で、トヨタイズムの伝道師のカルマン若松社長だけが、「見える」という言葉を使わず、「視える」という言葉を使われている。これもトヨタ流とのことだが、トヨタでは、「みえるか」というのは、「見つける」、「気づく」だけでは意味がなく、改善して初めて意味があるとの考えからこの言葉を使っているとのこと。

この本では、そのような視座で

 ・能力の視える化

 ・問題点の視える化

 ・ノウハウの視える化

 ・市場の声の視える化

 ・失敗の教訓の視える化

 ・現場の空気の視える化

 ・仕事の大局の視える化

の7つの視える化について、42のヒントを提供している。

ヒントの内容は極めて濃く、みえるかの「元祖」はトヨタだといわんばかりのできである。また、書籍としても、事例をふんだんに使って説明してあるので、ピンとくる。

現場のマネジャーなら、一読して損はない。若松さんの本の中でも最もよいできの本ではないかと思う。一読の価値アリ。

2007年1月26日 (金)

影響力の武器

4414302692_09__aa240_sclzzzzzzz_ ロバート・チャルディーニ(社会行動研究会訳)「影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか」、誠信書房(1991)

お奨め度:★★★★★

1週間くらい前にこの本がアマゾンのビジネス書ランキングベスト10に入っていてびっくりした。見ると、なんと50人以上の★★★★★が並んでいるが、いま、15年以上前の本がなぜと思った。反面、そうかと思った部分があるので、ビジネス書の杜で取り上げた。おそらく、このブログで取り上げている本の中ではもっとも古いものだと思うが、時代に関係なく、★★★★★である。

この本を読んだのはもう10年以上前である。MBAに行っているときに、マーケティングの講義の課題図書になり、レポートを書いた。MBAの2年間で読んだ本はおそらく100冊くらいになると思うが、その中でも印象深い1冊である。

セールスマン、募金勧誘者、広告主など承諾誘導のプロの世界で、「承諾」についての人間心理心理学の視点から、人に影響を与えるにはどうすればよいかを体系立てて説明している。

この本では、豊富な実験結果や実例に基づいて、影響力を受けるパターンを以下の6つに整理している。

・返報性
 人間は他人から何かを与えられたら自分も同様に当たる様に努力する
・一貫性
 人間は自分の言葉、信念、態度、行為を一貫したものにしたいと考える
・社会的証明
 人間の多くの振る舞いは、他人を模倣する傾向にある
・好意
 人間は自分が好意を感じている知人に対してイエスと言う傾向がある
・権威
 人間は権威者に対して思考せずに服従する傾向がある
・希少性
 人間は機会を失いかけるとその機会をより価値のあるものとみなす

これらの6つのパターンを活用して、人に影響を与えようというのがこの本の主張。

リーダーシップ、ファシリテーションなど、人に影響を与えることが注目されている今の時代に、そんなに難しくなく、かつ、きちんとした理論を身につけるには絶好の一冊だといえる。

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2006年12月29日 (金)

人脈≠知り合い

4757304226_01__aa240_sclzzzzzzz_v3436483藤巻幸夫「人脈の教科書~図解フジマキ流シビれる人生をつくる」、インデックス・コミュニケーションズ(2007)

お奨め度:★★★1/2

テーマのせいか、前作の「チームリーダーの教科書」ほど、インパクトは感じなかったが、でも、引き込まれるように読んだ。

ほしい人脈を手に入れる方法、人脈の作れるひとになる方法、社内人脈を作る方法、仕事以外の人脈作りなど、人脈に関して藤巻さんが持っている考えをすべて披露したような一冊である。実は、人脈というのは雑読派の僕としては珍しくまったく興味のないジャンルである。実際に立ち読みはしても、本を買ったのはこれが初めて。なぜかというと、第一は藤巻さんの本だからだが、第二の理由は極めて論理的、合理的にまとめてあるからだ。

この本で藤巻さんが言っていることは、「人脈はできるものではなく、作るもの」だということ。そのためには、まず、自分。人脈に恵まれる人のタイプとして

・オリジナリティのある人

・単独で行動できる人

・フットワークの軽い人

・計算より「志」の実現を見据えている人

・志のある人

の5つが上げられている。僕は人脈は恵まれているほうだと思うが、この5つはクリアしていると自負しているので、納得。

よくコミュニティや交流会で知り合いはできるのだが、サラリーマンなのであまり役立たないという人がいる。そんな人は、人脈が何かということを理解できていないと思うので、ぜひ、この本を読んで勉強をしてください!

また、人脈化される場合にもこの本に書かれているようなアプローチをされるとうれしいな!

2006年7月11日 (火)

規律と自由

026597870000 是本信義「組織のネジを締め直す鉄壁の「報・連・相」」、技術評論社(2006)

お奨め度:★★★1/2

軍隊の運用をマネジメントの参考にした本は少なくないが、この本は、コミュニケーションに的を絞って論じている。

この本の主張によると、報・連・相は軍隊の動脈であり、

 ・作戦思想の統一

 ・意思決定と命令

 ・作戦のフォロー

 ・参加部隊の協働連携

の4つの役割を持つとしている。この4つについて各論を展開している。まさに、これはプロジェクトにおけるコミュニケーションの機能であり、その運用はコミュニケーションマネジメントである。

コミュニケーションの重要性は口々に言われる。しかし、突き詰めて考えていくと、なぜ、コミュニケーションが必要かということを実感として感じられる人は多くないように思う。これがコミュニケーションが重要だとされながら、うまく行かない原因になっていることが多い。

この問題を解決するために、軍隊の仕組みを例に引くことは分かりやすい。コミュニケーションがうまくできないと、それは敗北につながり、死につながる。本書ではさらっと書いているが、そのように考えながら読んでみるとよいのではないかと思う本である。

この本を読んで、痛感したことがある。それは情報共有、組織のフラット化、意思決定の迅速さの名の下に、あまりよく考えられていない情報開示が行われているということである。このような現象が生じている原因は責任の回避であるが、混乱を引き起こし、アジリティを失う結果になっているケースが少なくない。この本のタイトルどおり、もう一度、ネジを締め直す必要がある。

その視点を得るために、すばらしい本である。

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2006年7月 2日 (日)

学習する組織のバイブルから、未来のマネジメントのバイブルへ

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ピーター・M. センゲ:「最強組織の法則―新時代のチームワークとは何か」、徳間書店(1995)

お奨め度:★★★★★

組織学習のバイブル。組織がシステムであることを正視させる本。組織論の分野でも大きな影響を与えている1冊である。

この本では、学習する組織では

自己マスタリー(personal mastery)
メンタル・モデルの克服(mental models)
共有ビジョン(shared vision)
チーム学習(team learning)

の5つの原理と、これらを統合するシステム思考(systems thinking)の5つの原理が必要だと述べている。

組織論として、ひとつの理論だが、ビジネスシステムという概念で企業やビジネスを見た場合、本書のような視点で組織を捉える意味は大きく、また、発展性がある。90年代終わりからずっとビジネス、とりわけ組織に大きな影響を与えてきた1冊であるが、真価がはっきりするのはむしろ、これからかもしれない。

ビジネスマンとしては、ぜひ、読んでおきたい1冊である。

また、この本には、2冊のフィールドブックがある。

453231075x09 一冊は5つの法則を如何に適用していくかを解説した本である。

ピーター・センゲ(柴田昌治訳)「フィールドブック 学習する組織「5つの能力」 企業変革を進める最強ツール」、日本経済新聞社(2003)

フィールドブックであるので、5つの原則が何を言っているのかが具体的な行動像を通じてよく分かる。もちろん、フィールドブックとして実際に使えるようなレベルのものである。

もう一冊は、5つの原則を実行するために、組織にはどのような変革課題があるかを解説し、その課題を解消するためのフィールドブックがある。上のフィールドブックとの関係としては問題解決編453231131409_1という位置づけになっている。

ピーター・センゲ(柴田昌治、牧野元三、スコラコンサルト訳)「フィールドブック 学習する組織「10の変革課題」―なぜ全社改革は失敗するのか?」、日本経済新聞社(2004)

学習する組織の構築の具体的なヒント、フィールドワークの指針も得られる貴重な本だ。必ず併せて読みたい。

(初稿:2005年3月2日)

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2006年5月12日 (金)

プロダクトストラテジー

4822244423マイケル・E・マクグラス(菅正雄, 伊藤武志 訳)「プロダクトストラテジー~最強最速の製品戦略」、日経BP社(2005)

お奨め度:★★★★1/2

戦略、マーケティングマネジメント、技術マネジメントのバランスがよく取れたプロダクトマネジメントの本。米国のビジネススクールの定番テキスト。

マイクロソフト、IBM、デル、インテル、シスコ、アップル、ゼロックスなどグローバルなハイテク企業は、どうやって競争力のある製品を生み、育てたのかという切り口で、ベストプラクティスとなる戦略パターンを提示している。

製品戦略に留まらず、タイミング、計画立案、コンティンジェンシープラン、マーケティングや資金面での検討事項、などといった製品戦略に付随する様々なプロセスについても言及されているので、非常に実践的な内容になっている。

テキストとして書かれているので、それなりに知識がある人が読むと、説明が冗長であり、まどろっこしい部分があるが、初心者が最初に読み、なおかつ、それなりに深い知識を得るには絶好の本である。

特に、戦略、マーケティングマネジメント、技術マネジメントのバランスについて適切な知識が得られると思うので、プロダクトマネジャーになる人にお奨めしたい本である。

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