規律と自由
是本信義「組織のネジを締め直す鉄壁の「報・連・相」」、技術評論社(2006)
お奨め度:★★★1/2
軍隊の運用をマネジメントの参考にした本は少なくないが、この本は、コミュニケーションに的を絞って論じている。
この本の主張によると、報・連・相は軍隊の動脈であり、
・作戦思想の統一
・意思決定と命令
・作戦のフォロー
・参加部隊の協働連携
の4つの役割を持つとしている。この4つについて各論を展開している。まさに、これはプロジェクトにおけるコミュニケーションの機能であり、その運用はコミュニケーションマネジメントである。
コミュニケーションの重要性は口々に言われる。しかし、突き詰めて考えていくと、なぜ、コミュニケーションが必要かということを実感として感じられる人は多くないように思う。これがコミュニケーションが重要だとされながら、うまく行かない原因になっていることが多い。
この問題を解決するために、軍隊の仕組みを例に引くことは分かりやすい。コミュニケーションがうまくできないと、それは敗北につながり、死につながる。本書ではさらっと書いているが、そのように考えながら読んでみるとよいのではないかと思う本である。
この本を読んで、痛感したことがある。それは情報共有、組織のフラット化、意思決定の迅速さの名の下に、あまりよく考えられていない情報開示が行われているということである。このような現象が生じている原因は責任の回避であるが、混乱を引き起こし、アジリティを失う結果になっているケースが少なくない。この本のタイトルどおり、もう一度、ネジを締め直す必要がある。
その視点を得るために、すばらしい本である。
==========
人気ランキング投票! → クリック!
コメント